日刊 アジアのエネルギー最前線

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ー 日刊アジアのエネルギー最前線 2008年9月26日分 ーメコン流域会議開催と中国

「メコン流域会議開催と中国」,今日のこのメモを書く直前に,友人の紹介で,2006年に執筆された東大の大西香世氏になる修士論文で,「メコン流域に於ける中国と下流国の国際流域の政治学」,と言う論文を見せて貰った。それは勿論,非常に学術的で,私には,まどろっこしい,と思わせるものがあるが,このように深くメコン河に突っ込んでいる研究者が居られるのか,と驚いた。

国際河川の最上流に地域の強国が存在すると,その強国は思うがままに上流の開発を行う,と言う学説があると言うことだ。氏は,中東や欧州などの歴史と比べて,どうして中国はメコン川下流国と,このように協調的なのであろうか。それは,この中国が下流の東南アジア諸国と,水資源以外で深い結びつきがあり,中国が,水資源と他の経済条件を同時に,下流国と折衝しているからだ,としている。

今日の記事の中でも,中国紙が,下流のメコン諸国から感謝されている,と言う記事を載せている。今回正式に調印された洪水時の水文資料の提供のことを言っているわけである。それは,洪水時期,6月15日から10月15日まで,流量資料をメコン河委員会事務局に提供する,と言うものである。大西氏の論文の中にも取り上げられているので,これは2006年には既に資料の提供が始まっていたのだろう。

しかし,私の実感は少し違う。私の実感は,中国の上流部でのダム開発に対して,下流国はよくここまで我慢しているな,と言うことである。確かに環境団体はいろいろ発言をしているが,政府,少なくともミャンマー,ラオス,タイの政府は,一言も不満を言っていないし,これらの政府によって管理されているメコン河委員会も,公式には中国政府に対して,何もアクションをとっていない。

1990年代初め,既に上流の漫湾ダムの建設が終わっていた頃,当時は上流は全く闇の中であった。今でこそ,我々は詳細なダム計画を知っているし,その進捗状況も分かっている。中国の代表が,メコン委員会の前に姿を現したのは,1991年のルワンプラバンの総会の時が初めてである。1998年頃,よく雲南省を訪ねた。下流国は大丈夫か,と幹部に聞いたら,「ASEAN会議で説明して,下流国はノーコメントだ,了承していると言うことだろう。」,と言っていた。

私は,上流のダム開発は,理論的には下流国に恩恵をもたらすと思っている。それは渇水量の補給であり,洪水の制御である。しかしいずれの場合も,両者が話し合って,ダム運用を適切に行った場合の話である。もし下流のことを全く考えずに運用すると,下流国にいろいろな影響が出てくる。もっとも,便益があるから下流国も,上流ダムにお金を出しなさい,とは中国は言わないと思うが。


本文

●メコン河委員会のトップは,中国の協力に満足している

中国側の報道である。9月25〜27日までビエンチャンで MRC's Regional Multi-Stakeholder Consultation が開かれている。ここで,中国から Ministry of Water Resources of China の代表が参加して,メコン事務局長 Jeremy Bird, Chief Executive Officer of the MRC との間で,中国側から河川流量観測所のデーターが提供される,と言う協定が結ばれ,それに事務局長が感謝した,と言う記事である。

上流の Lancang River の2カ所 Yunjinghong and Man'an ,の流量データーを,洪水期,6月15日〜10月15日まで,事務局に通知するというもの。この観測所は,漫湾ダムと景洪ダムの2カ所を意味するのだろう。事務局はこれをどう処理するのか,メコン河委員会のHPには,水位がかなり時間を追って出ているので,そこで情報は公開されるのだろう。

洪水に関しては一応の上下流連絡体制がとれたことになるが,渇水の問題については,両者とも,なかなか触れがたいようだ。実際には舟運や灌漑にも影響が出ているのだが,ダムの影響については,一旦出ると問題は大きくなる。基本的には下流に便益が出る,と考えるべきだ。今回の会議では,中国のコンサルタントが上流の問題をプレゼンテーションしたようだ。

Ph. D. Chen Guanfu, Senior Engineer of China Hydropower and Water Resources Planning and Design General Institute が説明を行ったが,上流ダムの下流への影響は小さい,と断じている。それは,Lancang river が河口の流域面積に対して僅か13.5%だから,と記事は説明している。しかしこれは不適切で,ラオスのビエンチャンでは,30平方kmの流域に対して,上流は20平方kmある。まだまだフランクに議論し合う雰囲気までには達していないようだ。

●メコン河のダム開発は悲劇的な危険をはらんでいる

このメコン河委員会の会議で,環境グループの Dr. Carl Middleton, coordinator of the International Rivers Mekong Programme が88ページに及ぶ報告書を提出して,ラオス政府に,ダム建設を一時中止するよう勧告している。長文の記事であるが,ただ一点,ダムの犠牲となる地元住民の問題を取り上げているようだ。

ダム建設を一時中止せよ,少なくとも,流域全体の総合計画が確定して,ラオス政府が環境保護立法を確立することが前提だ,と主張している。その一方で,ダム建設による便益は,地元住民も含めた関係者全体で分配されるべきだ,と言っている。ダム建設が駄目だ,と言っているのか,ダム建設をして便益を分けようと言っているのか,よく分からない。

●メコン河の水力開発の持続的発展はないのか

ジェームスボンド,どこかで切った名前だな。James Bond is Chief Operating Officer of the World Bank Group's Multilateral Investment Guarantee Agency,彼が昨日のメコンの会議で演説した内容を,5点にまとめてある。彼の前半のポイントはともかくとして,後半の部分に一つの論点がある。それは,メコン河が民間セクターによって開発が進んでいる,という点である。彼はここでMRCを持ち出している。

実は,15年前,メコン河の開発が民間資本に委ねられることが決定したときに,私もメコン委員会にいて,これに関して随分議論した。個別のプロジェクトを個々の民間に委ねる場合は,ラオス政府の法整備が欠かせないと,と主張していた。日本政府にもこの面での支援を要請した。技術基準については,JICAの支援が得られたが,開発そのものについては,結局,世界銀行がナムテン2で,そのコントロールを行うことになった。事実上のラオスのダム開発の法律そのものである。これが他のプロジェクトにも適用されるという保証はない。

●フィリッピン,化石燃料に頼ることを危ぶむ,水力資源はないのか

フィリッピンは,常に国産エネルギーの開発を最重点に置くべき,と言う議論が先行する。余りにも海外の化石燃料,特に石油に頼りすぎだ,と言うのである。これは実際どうしようもない話なのであるが,フィリッピンにはまだ包蔵水力が残されている,と主張している。未開発の水力は,大小併せて13,097MWと言われている。

水力開発の難点は,資本集中型で資金調達が困難なこと,開発に7年のような長い期間が必要なこと,社会的な受容性に問題のあること,それから特に小水力では,経済性に難点があること,などを挙げて,政府の税優遇制度など,公的なインセンティブが必要である,と論じている。

●中国建国50周年,雲南省の麗江など,観光客で賑わっている

写真が素晴らしく綺麗である。今や水力開発を最大のターゲットにしている雲南省であるが,建国50周年行事として,昆明,麗江,大理などを中心に,大々的な観光宣伝に乗り出している。ダムが出来,更に道路が整備されると,メコン上流,ランサン川周辺も,大きな観光スポットになるだろう。

●中東諸国が,カンボジアの食糧生産への投資を視野に入れている

全部読んでいないが,こういう動きがあるとは知らなかった。東南アジアが,水と土地という面から如何に恵まれているか,私たちはよく知っている。中東諸国が,近い将来の食糧問題から,東南アジアの土地に目を付けている,それに特のカンボジアだ,と言うわけである。将来の食糧増産の基礎として土地を買い,安い食糧を持ち帰る,と言うこと。


Reference

Philippines,

●080926A Philippines, bworldonline
化石燃料に頼ることを危ぶむ,水力資源はないのか
An alternative approach to energy self-sufficiency Hydro Energy
http://www.bworldonline.com/BW092608/content.php?id=056

Laos

●080926B Mekong, Bangkok Post
メコン河の水力開発の持続的発展はないのか
Sustainable development of Mekong hydropower
http://www.bangkokpost.com/260908_News/26Sep2008_news25.php
●080926C Mekong, peopleandplanet
メコン河のダム開発は悲劇的な危険をはらんでいる
Study reveals tragic dangers of Mekong dam boom
http://www.peopleandplanet.net/doc.php?id=3385
●080926D Mekong, xinhuanet
メコン河委員会のトップは,中国の協力に満足している
MRC chief satisfied with cooperation with China
http://news.xinhuanet.com/english/2008-09/25/content_10110507.htm

China

●080926E China, gokunming.com
中国建国50周年,雲南省の麗江など,観光客で賑わっている
Around Northwest Yunnan: Lijiang, Tiger Leaping Gorge and Dali
http://gokunming.com/en/blog/item/711/around_northwest_yunnan_lijiang_tiger_leaping_gorge_and_dali

Cambodia

●080926F Cambodia, Asia Times
中東諸国が,カンボジアの食糧生産への投資を視野に入れている
Gulf states covet Asian farms
http://www.atimes.com/atimes/Southeast_Asia/JI26Ae01.html


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