小説 福清から来た女「龍燕」
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桜木純

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小説 福清から来た女「龍燕」 ー

プロローグ


福清 黄檗山

上背
がありあくまで色白く,その高い頬骨を一段と上に向けて,大阪の日本橋を闊歩する女,化粧抜きで無造作に髪を頭の上で丸めて,短いジーパンに高いヒールを履いた彼女が歩く姿は,周囲の目を惹き付ける。それが福建から日本に来た龍燕である。

日本滞在は長い,その立ち居振る舞いは,とても中国の田舎都市から出てきた女とは思えない洗練されたものを備えている。日本語も殆ど完璧であり,傍にいる人も外国人とは思わない。

しかしその性格は鮮烈で,完全に日本社会にとけ込んではいるが,不正に対しては例えそれが地元の日本人であっても決して許さない。

日本で苦労してきたその結果,自分がやってきたことを日本人がまともに出来ないと,途端に怒り出す,せっかちで短気な福清女そのままである。ここに,そのスタイルの良いそうして聡明でセクシーで強烈な性格を持った異国の女,龍燕,を描いてみたくなった。

龍燕は,福建省の福清市の出身である。福清市は,人口約120万人,台北の目と鼻の先にあるが,日本からはかなりの時間を要する。日本からは二つのルートがある。

一つは,関空から廈門までが4時間,ここから海岸に沿うように北東に伸びた高速道路を4時間近く乗ってやっと福清の中心部に着く,

他の一つは,日本から上海に入り乗り換えて空路福州の長楽空港,ここから車で2時間で福清につく。乗り換えの時間を入れると日本の自宅を出てから10時間ぐらいを要するのではないか。

日本人は中国は近いと思っているが,このような地方都市に行こうとすると,さすが大陸国家で,容易なことではないことが分かる。

龍燕は,日本へのビザがおりたとき,勇躍家族に見送られて一つ目のルート,長楽,上海経由で日本に入ったと思われるが,彼女は,期待と不安に戦きながら,タクシーに2時間揺られ,初めて乗る国際線で4時間,やっとの思いで成田に着いたのであろう。

この福清のある福建省は,黄檗山萬福寺法席の隠元で有名であるが,「八山一水一分田」と言われて全体に山や丘陵に囲まれていて,昔から貧困地域として清末から苦力と呼ばれる単純労働者を海外に送り出した歴史を持っている。

特に龍燕の生まれた福清は都市人口120万人に対して世界に点在する福清華僑華人は51万人と言われ,解放後の日本への移民は約2万5千人で半数が非合法滞在と言われている。

福清には多くの鎮があるが,龍燕の生まれ故郷は高山鎮西江村で,福清地区の中でも芋類しかとれない痩せた土地が多く,歴史的に海を頼って生存してきたので,海外で困難に耐え,積極的に出ていく冒険心,開拓精神を持っている。

特に,数百年の歴史をかけ,海外へ散らばっている福清人の「移民鏈」(移民の環)が,改革開放以後再び機能を発揮するようになってきた。龍燕も,もって生まれた血と家族への深い思いやりが,龍燕を日本へと駆り立てたに違いない。

(続く)
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