私の主張 18

-- フィリッピン電力セクターの主たる論点 --

(2004/03/06)


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本稿は,ごく最近の報道資料が中心になったもので,余りフィリッピンに深く関わってこなかった私自身の勉強のためにまとめたものである。フィリッピンの電力セクターは将に激動の時期にあり,今,毎日毎日がここ数年の改革を成功させるかどうか,重要な時期である。電力公社NAPOCORの設備資産の分割,売却処理のもたつきが,改革そのものの基本方針を揺るがすことにもなりかねず,関係者は苛立ちの中にある。「競売せよ,直ちに入札希望者が押し寄せる」,と豪語していた政府であるが,結局,大統領選挙を控えた政治と改革後の制度の不透明が外国資本の躊躇となり,これがこのまま推移すれば,民間資金に頼ることになるルソンの電源開発が遅れ,2008年と言われる電力危機に遭遇することになる。ミンダナオ,人口1800万人の島も,目前に迫った電力危機に不安の中にあるが,20万KWの石炭火力が2006年に投入されることになっている。原価主義を標榜する電力料金で,水力中心のため安く,民間資金が入りがたい,そこに州政府を対象に公的資金をつぎ込んでこの緊急事態に対処する,という決断に関係者の苦労が偲ばれる。


フィリッピン共和国は、国土面積約30万平方km、人口約7,050万人、GDP約700億ドル。電力的には、ルソン、ビサヤス、ミンダナオ、3地域に大別される。ルソンの人口は4,040万人、設備出力は約10,520MW、ビサヤスは、人口1,552万人、設備出力1,424MW、ミンダナオは、人口1,813万人、設備出力1,321MW、である。現在、電力セクターの改革を進めているが、いろいろの問題が論じられている。最近の報道を中心に、7つの論点(電力改革問題、電気料金問題、資産処理問題、電源開発問題、送電公社問題、ミンダナオ問題、ビサヤ問題)についてまとめたものである。

フィリッピンの行政区画と人口分布(政府ウエッブより)
ルソン・ビサヤス・ミンダナオ3大系統の人口と設備

1.電力改革問題

フィリッピンに於ける電力改革は,アジア諸国の中でもその先頭を走っているとの認識でここまで来たが,最近に至ってIMFも懸念を示しているように,もたつきが目立ってきた。最も大きな問題は,現在のNAPOCORの発電所資産を分割して競争市場を形成しようとした試みが,議会などからの懸念や民間資金の動きの鈍さから,円滑に進んでいないところに問題がある。

電力改革後の電力産業構造

(1) エネルギー省内の組織改編

平成4年1月2日,ペレス・エネルギー長官は,アロヨ大統領に対して,行政命令第38による組織の改編がほぼ終了したと報告した。新しい二つの局の新設は,電気事業改革法に基づく電力事業運営局,石油下流産業規制撤廃法に基づく石油事業運営局であり,他に外局として,天然ガス開発を扱う天然ガス庁,増大する需要家保護のニーズに対応する需要家保護推進庁,エネルギーへの投資を促進するエネルギー投資推進庁,三つの庁が新設,既存の三つの局,エネルギー資源開発局ERDB,エネルギー利用運営局EUMB,エネルギー政策計画局EPPB,はそのまま存続する。040102B

(2)国会,発電会社分割に不同意

議会の電力合同委員会JCPCは,発電会社 gencos 分割のPSALM案を承認することに乗り気でない。PSALMは,IPPから政府に委譲されたものも入れた38の発電所を22の発電会社に構成し直すというものであるが,JCPCは,資産分割は資産価値最大となるよう行う,という電気事業改革法EPIRAの第47条の規定に反している,と考えている。再度,資産の経済的な価値を見直して,配分を行うよう求めている。政府の悪い発電所だけが残る,と言うことを避けなければならず,発電会社再編成にはゴーサインが出せないと言うことである。031122K

(3)NAPOCORの未回収分処理

NAPOCORは,59億ペソに上る Ilijan 天然ガス供給コストの需要家からの回収について,規制委員会ERCの承認を求めている。これは,Bataangas の1,200MW天然ガス発電所に関するもので,2002年10月1日から2003年1月31日までの積み重ねで,これを需要家を通して回収できれば,NAPOCORの財政に大きく寄与する。このガス供給協定GSPAはERCの承認が必要なもので,これがまだ許可されていない(電気料金上昇の要素でERCも決し兼ねていると思われる)。NAPOCORにとっては,なお懸案のプロジェクトとして,Casecnan 発電プロジェクト,Caliraya ? Botocan Kalayaan プロジェクト,Mindanao diesel plant プロジェクト,Paragua 発電プロジェクト,ミンダナオの島嶼発電プロジェクト,サンロケ水力発電所,Bakun 水力発電所などの費用の処理が懸案となっている。

2.電気料金問題

フィリッピンの電気料金は,本来は比較的高止まりしていると考えられており,これを適切に低下させて需要家の便益を生み出す,ものと説明されてきた。しかしながら,原価主義といわれる料金構造は複雑で内部補助に頼っているところがあるうえに,民間資金の出動がはなはだ鈍い,と言う問題があり,政府も最近は,安いだけという言い方には修正が見られる。

ルソンの系統の日負荷曲線

(1) MERALCO料金の基本

NPCは,大統領令によって,2002年5月より購入電力価格調整PPCAとして一律にKWh当たり0.40ペソを導入した。この結果,MERALCOの購入単価は,2001年に4.22ペソであったものが,7.8%減少して3.89ペソとなった。従って,MERALCOの平均売電単価は,2001年の5.67ペソから2002年は5.27ペソ(9.4セント)となり,7.2%低下した。

(2)内部補助制度の改善

電気料金の構造改善において政府は,電気料金の内部補助制度の撤廃を考えている。特に、産業料金が家庭用需要の料金を支えている状態は、この3年以内に解消させる。この計画によって、産業用電気料金は、KWh当たり0.75ペソ低下するはずである。しかし、家庭用の需要家の最低ライン以下は、電気料金の値上がりを押さえられる予定で、現在の最低ライン月75KWhは300KWhに引き上げられる予定である。040216D

(3)大統領の強権による値下げ措置

遂にアロヨ大統領が、ERCに対してMERALCOの買電料金を、来月より(2004年3月)全400万の需要家に対しKWh当たり0.2779ペソ下げるよう措置せよ、と命令、強権を発動した。何の訴える手段も持たない一般需要家を守るためのERCが、何の行動も起こさないことに業を煮やしたものである。MERALCOは過去に、公聴会も開かずに、12センタボの値上げを強行した過去がある。040128F

(4)大口需要家の高料金への反発

アブラハム米国エネルギー長官の来比に際して,フィリッピンに駐在する米国企業群,Mirant,Intergen,Sithe,Unocal,CalEnergy などが属する米国商工会議所は,長官とアロヨ大統領との会談で,フィリッピン側が,「NPCの電気料金は,真の発電コストに基づくものであるべき」との言質を与えるよう要請している。膨張する赤字に押されて政治的に決められる電気料金の大きな不満を持っているものである。040119F

(5)民間投資意欲とのバランス

電力セクター改革によって需要家重視の低廉な電気料金,を主張してきたエネルギー省は,電力料金政策で二つの方向をバランス指せる方向に舵を切ったようだ,それは,需要家のニーズと投資意欲への配慮のバランスである。MERALCOは既にKWh当たり0.12ペソの値上げを決定し,NAPOCORのLRACを基礎にした0.34ペソ値上げを申請中である。政府は,Panay 島の計画停電への対処で投資企業が二の足を踏み,Visaya,特に Cebu 市で電力危機が迫っていることを背景にしている。世界的にも,このような見直しの必要が主張されている。031203K

3 資産売却問題

改革の目玉である発電資産の分割,売却,と言う流れが完全に止まってしまっている。これは今年の選挙を控えた議会の動きもさることながら,分割方法が余りにも姑息であったためであろう。今後,改革の要が問われるところである。

(1)発電所資産売却第1パッケージ

電力資産負債処理事業団PSALMは,来月に予定されている二つの水力発電所の売却に先立って,送電公社委譲の公告を2週間以内に行い,更に他の発電所の売却に踏み切る。これらはもはや暫定供給契約TSCが必要ないもので,Barid Cauayan と Agusan の小規模水力,Manila 火力,Bataan 火力が含まれる。PSALMは年初に,35発電所の売却を決定しており,最初の資産売却に予定されている Davao の Talomo 発電所は3月第2週,Navotas I ディーゼル発電所は,4月に売却が予定されている。040229D

(2)発電資産売却の基本政策

NAPOCORの発電所の売却については,EPIRA (電気事業改革法)によって,ERC の承認の元,PSALMが計画に従って順次売却してゆくことになっているが,売却に当たっては,譲渡時供給契約TSCが必要になってくる。しかし,このTSCを必要としない8つの発電所については,2004年第1四半期に売却することが決定した。それは,1月28日に売却された Talomo 発電所(ミンダナオの Davao 北北東か),続いて Navatos I 発電所(ケソン西か),更に4つの小水力,Agusan(ミンダナオの北岸 Butuan に河口を有する Agusan 川),Bohol (セブの対岸 Bohol 島か),Lobo (ルソン南端か),Amlan (ネグロス島か)であり,マニラとバターンの火力発電所である。計画では全部で35発電所が売却されることがPSALMの重役会で決定している。2002年6月の原案では,全部で28の発電所が売却され,このうち15発電所は個別に売却され,残り13発電所は5つのグループに分割委譲されることとなっていた。040122E

(3)NAPOCORに対する政府保証

PSALM(電力資産負債処理公社)は,外資法に定められている政府保証の上限75億ドルの問題に,頭を悩ませている。NAPOCORの負債とともに資産を引き継ぐ会社は,既に65億ドルの政府保証を使ってしまっているので,もうこれ以上資金を調達することが困難になってしまっている。PSALMとしては,外資法の改正によって特例を得たいとしているが,議会は選挙を控えて,全く取り合ってくれない。040119G

(4)IPPとの売電契約交渉

電力資産負債処理公団PSALMにおれば,IPPとの売電契約再交渉は殆ど終了し,その値引き額は現在価格に換算して,1,042百万ドルに達すると発表した。2004年第1四半期で完全に終了する予定である。これより,Bauang Power,Alstom,Mindanao power barges,Covanta Energy の4企業と契約更改に関する交渉を始める。現時点では,32の契約のうち,28が終了した。最近に再交渉が終了したものは,いずれも問題のあった二つ,一つは,アルゼンチンのIMPSAと米国の Edison Mission Energy の CBK Power Company による Caliraya-BotocanKalayaan (CBK) プロジェクトと,二つは,12億ドルの San Roque 水力プロジェクトである。特にサンロケの場合は,節約額は238百万ドルに達し,これは,特に最初の数年の定格出力を見直したものである。最近交渉が進んで殆ど完了の段階にあるのは,米国企業Mirant Philippines Corporation による Navotas 発電所,および San Pascual 発電所
である。031202I

(5)NAPOCOR買取企業の不明確

NAPOCOR資産の買い取り企業が,今持ってはっきりしない。投資企業の関心を呼ばないのは,これからの選挙日程と電力産業の規制過程の不確定が,その原因と考えられている。PSALMは,220MWのNavotas 発電所資産の25年間権益の入札企業を探しているが,十分な候補企業が現れていない。送電公社 Transco の売却であるが,政府は,誰にも門戸を開いている段階,としているが,シンガポール電力以外には,名前が挙がっていない。このように,民間資金の関心が薄く資産の売却が進まない場合は,電力危機が現実のものとなる。民間資金にとって見れば,ERCが依然として民営化後電気料金が安くなる,と言う神話を取り下げないかぎり,関心を起こさないと感じている。長期回避費用LRACだけでは十分でなく,需要家と投資家のバランスをとる,と言うことが必要で,「適切な価格」という表現が「低廉」を意味しないということをはっきり明言する必要があろう。031118H

4 電源開発問題

完全民営化,発電所資産分割,と進んだ現在では,今後の需要に対応する新規電源は,民間資金に頼らざるを得ない。しかるに,選挙の動向と今後の規制の改革の方向が見えないところから,民間資金が動かないので,政府が焦っている。許された時間は余りなく,2008年には,ルソンにも電力危機が訪れる。

ルソン系統の需要想定と開発計画グラフ(政府サイト)
ルソン系統の電源開発計画

(1)民間資金期待の電源プロジェクト

近い将来予測される電力危機を避けるために,NAPOCORは開発計画を準備するが,すべて民間資金に頼ることになる。6つのプロジェクトが民間資金の出動を待っている。一つはネグロス島の Isabela 石炭火力総合プロジェクト,二つはルソン北西沿岸の Ilocos ガス又は石炭火力,三つはルソン北部の水力プロジェクト,4つはセブ島のNaga 石炭およびディーゼル発電所増設,5つはミンダナオの Cotobato 石炭火力総合プロジェクト,6つはネグロスの Bukidnon の Plangui 水力増強プロジェクト(設備は255MWであるが砂で60MWまで落ちている),である。更にこの10年内に新たな電力危機が予測されているが,新出来事業法の下で売却が予定されている35の発電所について,NAPOCORはまだ行動を起こしていない。040207B

(2)石炭燃料契約の今後

エネルギー省が、NAPOCORの石炭調達長期契約を認めるに至った。本来政府は、石炭資源の多様化を図るために、インドネシア、オーストラリア、南アフリカなどに分散し、しかも、スポット市場または短期市場での取引を指示していた、更に政府は、一つの発電所で依存する石炭資源の国の最大割合を50%にするという限定を設けていた、しかしこれに従うと、どうしても高価な石炭を買わざるを得ないことや、将来石炭市場から閉め出される恐れも出てきたため、今回の長期契約を認める措置を執ったのである。これは、インドネシア石炭鉱山連盟 ICMA の圧力が大きかった。040207B

(3)電源への投資意欲盛り上がらず電力危機も

エネルギー省は電源への民間からの投資ムードが低調なことに、懸念を抱いている。エネルギー省は、新しい法律の下では、「フィリッピン・エネルギー計画」を策定して、その中で「電力開発計画(PDP)」、そして当面の発電プロジェクトを明確にすることになっているが、これが遅れている間に、2006年にもルソンの需給が危なくなってきている。投資意欲が盛り上がらない原因の一つは電気料金制度の非理論性と人為的なところにあると見られている。これに対してエネルギー省は、合理的で決して人為的に安くはなっていない、と弁解に必死である。NPCの一部の民営化も送電公社の売却も思わしくないが、もう既に「入札せよ、すぐに彼らは来る」と言う状態にはない。他に行きようのない国内エネルギー企業でさえ意欲を燃やさない状況で、市場化のシグナルは皆無である。海外企業は、ERCが扱う規制上の矛盾と予測不可能性に問題があるといっている。040126H

(4)ルソン2008年の電源準備時間切れ近し

エネルギー省は,確実に民間投資を呼び込む政策を実施する必要に迫られている。ルソン島の計画停電を防ぐためには,2005年に確実に電源に着工できる体制が必要で,少なくとも1,000MW,投資額にして約10億ドルのプロジェクトを動かし,2008年には運転開始させる必要がある。環境遵守適格(ECC)を取得する時間も考えると,直ちに投資できる企業を決定する必要に迫られているものである。しかし,外国企業の投資は極めて困難な情勢である。これは産業規制の方向と政治舞台の不確定性が懸念となっている。今や国内企業の出番であり,First Gas や Aboitiz などが期待されている。031229C

(5)日本政府公的資金による支援

日本政府は,総額435百万ドル相当の電力セクターへの借款に同意し,署名された。これは三つの電力関連プロジェクトとミンダナオ・モスレム特別自治区ARMMへの社会経済支援である。電力支援は,卸売市場WESM創設支援,ミンダナオ石炭火力および Cebu ? Leyte 送電網補強の三つである。WESM創設支援は40百万ドルで,2005年6月より時間単位の完全運用が予定されているWESMのソフトとコンピューター設備の購入に当てられる。ミンダナオ石炭火力支援は,総額307百万ドルで,San Martin の Phivic 工業団地に,州電力開発公社SPDCによって開発される200MWの石炭火力建設に当てられる。送電線補強は,Talisay ? Cebu ? Tabangao 間33kmの海底ケーブル敷設で,地熱電力をセブに運び,Cebu, Negros, Panay の三島の電力安定に寄与する。ARMMへの支援は,総額19.8百万ドルで,ARMM内の社会経済インフラの小規模プロジェクトに当てられるが,2010年まで継続的に支出される世界銀行の33.6百万ドルと強調する。031212F

5 送電公社問題

送電部門は完全に切り離されて,全国をカバーする送電公社 Transco となっているが,これは25年間のコンセッションで民間に売り出されている。いろいろな経緯があったが,現在のところはシンガポール電力がこれに対する唯一の入札企業となる情勢である。多くの島々を繋ぐ連携線が課題であり,これが円滑に処理できるかどうか,改革の試金石である。

ルソン・ビサヤス・ミンダナオ連携計画(Transcoサイト)
ルソン系統送電網図

(1) シンガポール電力の動き

シンガポール電力は、今月中(2004年3月)にも調査団を現地に送り、送電公社 Transco の25年間権益設定の入札に望む体制を造る予定である。これは今回の精査結果によるが、政府公社評価委員会OGCCは、電力財務評価公社PSALMに交渉を許可している。

(2) 日本政府の送電網整備

日本政府は,総額435百万ドル相当の電力セクターへの借款に同意し,署名された。この中には,送電線補強として,Talisay ? Cebu ? Tabangao 間33kmの海底ケーブル敷設で,地熱電力をセブに運び,Cebu, Negros, Panay の三島の電力安定に寄与する。031212F

6 ミンダナオ問題

人口が1,800万人余の島に僅か132万KWの電源設備,しかも殆どが水力に頼って乾期の供給能力に不安がある。最近では,州の公社を相手にJBICなど公的資金で石炭火力を支援する動きがあるが,電気料金の問題もあって,民間資金をどのように導入してゆくか,課題が多い,治安の問題もある。

ミンダナオ送電系統図
ミンダナオ系統需要想定
ミンダナオ系統電源開発計画


(1)石炭火力と地熱の開発

ミンダナオの,至近年の需要に対応する水力開発には,多くの民間企業が関心を示している。しかし問題は,地域の治安と現行の電気料金構造である。電気料金については今後,ただ安価なだけではなくて合理的な構造でなければならない。開発側から見ると,大きく圧縮された売電単価に不満がある。今回の計画の中では小水力から大規模水力まで含まれているが,現在,Agus の水力から大部分供給されている現状で,渇水などの問題があり,今後は地熱や石炭への燃料多様化が求められている。これに対応するのが,200MWのミンダナオ石炭火力プロジェクトと Mt.Apo の地熱発電所増設プロジェクトである。ミンダナオの経済成長は比較的緩やかであるが,昨年の4.8%成長に対して,今年は5.4%が期待されている。いずれにしても政府は,農業と工業のバランスが取れた発展を期待している。040229E

(2)水力発電所の補修計画

電力公社NAPOCORは,ミンダナオの Pulangi 水力発電所の補修工事を入札にかけることになった。この発電所は,ミンダナオ島中部の Bukidnon 付近,本来は255MWの規模であるが,現在60MWしか発電できていない。ミンダナオの系統最大電力需要は,900MW〜1,000MWであるが,Agus 川の水力コンプレックスに727.1MWの発電力があり,Pulangi の補修中の電力はまかなえる。そのほかに,ディーゼル発電所の合計は450MW,Kidapawan 地熱発電所は108MWである。電気事業改革法に基づいて,Agus と Pulangi の各水力発電所はNAPOCORに残されることになっており(将来的には清算事業団PSALMへ移管予定),NAPOCORに年間1億ドル相当の売り上げをもたらすことになっている。040227

(3) 当面の送電網補強計画

送電公社 Transco は,ミンダナオ島の送電線増強プロジェクトを発表,総額24億ペソ、2006年の完成を目指して、今年の前半にも発注を終えたいとしている。一つは,ミンダナオ南西部の General Santos と Tacurong を経て Nuling に達する138kmで、資金は「宮沢基金」が使われる、としている。他に、Zamboanga 市内の138Kv ラインの補強で、 Apo 山地熱発電との連携である。040222C

(4) ミンダナオ石炭火力計画

ミンダナオ石炭火力は、ミンダナオ北部 Cagayan de Oro 市の北東、Villanueva に、出力20万KW、工事費約3億ドルのBOTプロジェクトで、電力開発公社SPDCが起業するが、日本からは日商岩井、川崎重工が参画して、資金はドイツ復興金融公庫KfW、JBIC、NXI が支援している。2003年12月に融資が決定し、2004年1月30日起工式、36ヶ月後、2006年に運転開始とされている。(詳細は後述)

(5)今後の送電網補強計画

送電公社 Transco は,ミンダナオの送電網強化のために,6つのプロジェクトの投入を進めている。一つは Abaga-Kirahon 23万ボルト送電線,二つはミンダナオ開閉所プロジェクト,三つは General Santos ? Tacurong ? Nuling 138KV送電線,四つは Kirahon ? Bunawan 23万ボルト送電線,五つは Aurora ? Dipolog 138KV送電線,東ミンダナオ送電網強化,の6プロジェクトである。これらは,2004年2月末に開催される「ミンダナオ電力フォーラム」へ向けて準備されたものであるが,将来構想としては当然 Leyte ? ミンダナオ 連携が議論になるもので,この案の推進をアロヨ大統領も協力に押している。現在,JBICによってこの可能性が調査されている。電力供給強化の対象市は,General Santos, Davao, Zamboanga,Cagayan de Oro, Iligan であるが,この Agus 川の水力に依存している島の電力危機は2006年にも現実のものになるとされている。040218F

(6)ミンダナオの需給の現状

ミンダナオの常時可能出力は現在,1,423MW,ピーク電力需要は1,048MW,現在のところは余裕が375MWとなっている。問題は,発電所設備出力の74%が北に集中し,これに対して南は47%である。更に,全体で水力が63%,石油火力が30%,地熱が7%,とアンバランスであるうえ,現在の送電容量は一杯である。島の経済は年4.8%伸び,電力需要は5.9%伸びている。2006年には200MW発電プロジェクトが北に運転開始の予定である。また,ミンダナオには治安の問題があり,鉄塔が一つ破壊されると2百万ペソ,今年の9ヶ月で5百万ペソも支出を余儀なくされた。ミンダナオ送電網整備計画 Project Minta は,138KV送電網の補強,周辺の離島の連携,更に Leyte ? Mindanao 送電連携プロジェクトがある。この連携は,2005年の送電線建設計画の中に含まれる予定で,運用開始は2008年である。031104F

6 ビサヤス問題

ビサヤスは,多くの島に分かれて連携されており,運用が複雑であるが,電力危機が目の前に迫っている。NAPOCORは,ルソンの発電所の移設まで計画して,準備しているが,その緊急プロジェクトでさえ,入札の不備から紛糾している。

ビサヤス送電系統図

セブ島需要想定
ネグロス島需要想定
パナイ島需要想定
ビサヤス電源開発計画

(1) Panay 島の水力発電プロジェクト

Panay 島で二つの水力開発が浮上してきている。一つは,Panay 島西部 Timbaban の Aklan で,日本の Westjec 推進による29MW水力,他の一つは,同地域やや南の Villa Saga で,韓国の Fusian 推進による32MWである。いずれも再生可能エネルギー開発の一環と考えられているが,初期投資が大きいことから,その開発に何らかの政府の優遇政策が必要と考えられている。040221I

Aboitiz グループは,Panay 島の電力開発に関して、二つの水力発電所の建設を実施する意図はあるが、初期投資が大きいことを考えると、政府の絶対的な支援を必要とする。特に、最初の10年間はその買電単価に配慮して欲しい、と表明した。水力の規模は二つで6万KW。Panay には、先に韓国企業が10万KWの石炭火力を提案しており、政府としても再生可能エネルギーを抱き合わせて開発したいところ。040225G

(2)ビサヤス系統全体の電源開発見通し

Visayas 系統については、中期的に約1,150MWが準備されており、2004年から5年にかけて、Cebu ? Negros ? Panay 系で250MWが準備されている。今年着手すべきものは、Ilolo に送られる予定の110MW Pinamucan プロジェクトと Mirant による40MWディーゼル発電プロジェクトの二つである。2005年に着手すべきものは、北ネグロスの40MW地熱発電、Palinpinon の地熱発電リハビリ20MW、Victorias Bioenergy によって提案されている50MW、の3つである。今後5年間は確実とされているが、2004年から5年にかけて、送電線プロジェクト、Leyte - Cebu, Cebu - Mactan, Negros ? Panay、Cebu ? Negros の完成が必要である。他に準備されているものは、Antique の32MW Villa Siga 水力、Aklan の29MW Timbayan 水力、Leyte 南部の100MW Mt. Cabalian 地熱プロジェクト、の3つである。いずれにしても民間資金頼みであり、規制監理の高いリスクが障害となりそうだ。040124H

(3) 韓国電力提案の石炭火力

エネルギー省は,Visayas の Panay 島,Iloilo に,韓国電力KEPCOによって建設が予定されている100MW石炭火力プロジェクトに対して,政府保証を行うことを決定した。このプロジェクトは,住民の強い反対を受けていて,最新式の流動床技術CFBCを使い,石炭と石灰を混合して850〜950度Cの低温で燃焼させて,硫黄分を捉え,NOX,SOXとも排出を制限するものである。石炭は,Antique,Caluya の Semirara 炭を使用し,建設費は2億ドルを予定している。Visayas, 特に Panay は電力不足が目前に迫っているが,民営化途上のNAPOCORは何も出来ず,民間資金に頼らざるを得ない状況である。Panay には,Aklan, Antique, Capiz, Iloilo,Guimaras などの都市がある。031127I

(4)バターンガスからの発電所移設計画

NAPOCORは,110MWの Pinamucan 発電所を Bataangas から Visayas の Iloilo への移設プロジェクトに関し,更に2週間をおくことにした。それは,入札企業から,解明すべき点が指摘されたからである。即ち,535百万ペソの予算は少なすぎて,契約に何が含まれるかを明らかにする必要がある,と言うのである。移設には10ヶ月かかるとされている。NAPOCORによると,既に大規模なコンソーシアムが関心を示しているという。この発電所は,4台の12.94MW機と4台の14.63MW機,計8台で,解体,運送,設置,試運転まで含まれている。移設後が Dingle ディーゼル発電所と解明される。031124G

以上


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