足立隼夫の主張 20

インドネシアの電力事情と最近の主たる論点
(2004/05/22)


本稿は、昨年の一連のJICA現地調査及び海外電力調査会自主調査に参加した際に書きためたもので、このまままでは私自身のメモに終わってしまうので,この構成をベースに、今後出来るだけ情報収集に努め、随時更新してゆきたいと思っている。重要な誤りや新しい情報があれば送って頂きたい。インドネシアのジャワバリは、現時点で非常に厳しい需給状態にあり、今後の民間開発に大きな関心が集まっている。インドネシアの国土面積は約189万平方km, 人口は約2億3490万人(2003年推計),全人口の5分の3近くがジャワ島とマドゥラ島に居住,スマトラ島には約4083万人(1995年推計),スラウェシ島には約1373万人(いずれも1995年推計)が住んでいる。GDP総額 1729億ドル(2002年)。電源設備は,2003年時点で,電気事業体所有が 23,638 MW(うちジャワバリ 18,608 MW,スマトラ 2,727 MW,スラウエシ 911 MW,カリマンタン 751 MW,その他 641 MW)であり,他に自家用発電が 12,441 MW (うちジャワバリ5,893 MW)で,両者併せて 36,079 MW である。発電事業体所有のジャワバリ系統については,IPP による 2,460 MW を含めて石炭火力が 6,660 MW (約 35.8%),ガス複合が 5,404 MW (29.0%),水力が 3,096 MW(約16.6%),重油火力が 1,800 MW (9.7%),ガスタービンが 1,207 MW (6.5%)。


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【要約】インドネシア・電力事情と最近の主たる論点

(1)迫るジャワ−バリ系統の電力危機

経済活動の主体であるジャワーバリ系統は,1997年の経済危機以降殆ど電源が増設されていない上,設備の維持管理体制に問題があって,2004年等この数年間の電力需給が危機的状況にある。設備としては約18000MWあるが,実質的に稼働するのは最大1400万KW余であり,2002年の最大電力13374MWを考えると,大規模な停電が起こる危険を秘めている。

(2)電力セクター改革と電気料金問題

分割,更には競争原理の導入などセクター改革の方向は,ジャワーバリ系を中心に進められているが,1997年の経済危機で実質的に破綻してきた財政問題は,その基本となるべき電気料金改訂が比較的円滑に進み,KWh当たり7セントを目標に段階的値上げの結果,ほぼその目標を達成している。今後の政治的な動きと為替市場の動向に注目したい。

(3)破綻したIPPプロジェクトと今後の動き

1997年以前に27件のIPPプロジェクト契約で大きな問題となったが,再交渉の末,14件について妥結,その総出力は,10,430MW,売電単価は5セント以下,この中には,パイトンIとパイトンIIの石炭火力合計2,450MW,タンジュンジャティB石炭火力1,320MWの三つのジャワバリ系統の主要電源が含まれている。7件については契約が破棄。

(4)ジャワ周り石炭火力分散開発計画の今後

石炭火力に注目,ジャワ島周りでの分散開発が計画,西から,スララヤ3400MW(既設),タンジュンジャティA 1,320MW(契約完了),B 1,320MW(契約破棄),C 1320MW(契約破棄),パイトンI 1,230MW(完成,再交渉完了),パイトンII 1,230MW(完成,再交渉完了),チラチャップ 450MW(契約破棄)の4カ所で,総出力10270MW。

(5)近海天然ガスの枯渇と国内LNG市場の議論

近海の天然ガスの不足,特に,ムアラタワール,ムアラカラン,タンジュンプリオクでは,天然ガスの代わりに高速ディーゼルHSDを使用せざるを得なく出力低下を招いている。一方で,LNGの国際市場にかげり,国内向けに振り向けるべく,西ジャワと東ジャワに2カ所のLNG基地を建設したい,とプルノモ大臣は発表している,火力開発が曲がり角にきていることは確実である。

(6)スマトラの全島連携問題と電力不足

2003年における全島の電力設備2,727MWに対して,予想最大電力は2,509MWであり,約8.7%の余裕があることになるが,全島が連携されていないために,特に南部では,設備容量663MWに対して予想最大電力は795MW,16.6%の不足,となっており,連日計画停電が続いて,民生にも大きな影響を与えている。アチェは,設備容量106MWに対して38.4%不足。

(7)地方分権とスマトラ電力セクターの関連

2002年9月4日決定の新電力事業法による分割民営化の方向と、2000年の地方分権化の方向とが大きな影響。地方の島嶼,スマトラ系統等,州の分割が比較的細分化,PLNの供給区域の分割が一致していない,PLNが従来担当していた区域の需給計画を、州政府が把握して行くか、問題が多い。いずれも電源不足の慢性化に悩んでいる地域である。

(8)日本政府,JBIC,JICAなどの対応

電力改革を支えるという立場から,JBICは問題のある発電所の出力増強と送電系統を支えるべく,グレシック,ムアラカラン,ジャワ南周り送電網,に融資している。JICAは,技術協力という立場から,至近年の自家発の動員による電力危機回避,発電設備の維持管理体制の強化,スマトラの全島連携マスタープラン,などを視野に協力を続けている。


詳細メモ

1.主要系統の需給の見通し

(1)ジャワバリの需給見通し

2003年における最大需要の想定は,14,397MW,これに対する設備出力は18,608MW(この4年間,設備出力は全く増えていない)で,予備力率は29%となっている。低成長を予想した2004年の最大需要予測は,料金対策等によって,年負荷率が70%から72%に改善される前提で,15,242MW(845MWの増,約5.9%の伸び)と想定していた。

これに対して現在までの経過は,2003年3月までは経済成長に応じて順調に推移し,2003年の年末近くでは少なくとも13,932MWまで達するものと予測されていたが,この4月より需要の伸びに急激なブレーキがかかってきた。4月最大は横ばいしたものの,5月に至って約250MWの減で,13,110MW,6月最大は6月4日に起きているが,これも前月僅かの120MWの伸びで13,232MWとなって,更に現時点2004年1月においても13,110MWと,いずれも一昨年2002年10月22日に起こった年間最大13,374MWをまだ超えていない。従来のトレンドから行けば,こ,6月時点で13,600MWと考えられていたので,予測より約50万KWの下げとなっている。このまま推移すると約100万KWの下げとなる可能性がある。この急激な需要の停滞の原因を,PLNでも分析中であるが,電力料金値上げの影響が強いものとの推測が有力であるが,なお,7月,8月の需要の動向を見て判断する必要がある。

これまでにPLN資金で600MWガスタービン(実際には143MW機6台計728MW,シーメンス請負,場所はムアラタワール)を増設して,総設備19,253MWとして,予備力率26%で2004年の危機を乗り越える想定であり,既にムワラタワール増設で,2002年10月入札,2003年2月27日運転開始で間に合う見込みがついている。2005年に対しては,ガスタービン840MW,一般火力750MW(燃料石炭,チカンペックを想定)の新設が必要で,インドネシア政府でこれを手当すべく,現在鋭意努力しているが,現時点でも見込みがたっていない。

従って,2004年,2005年の2年は,現有設備の18,608MWと2004年運転開始予定のムワラタワール・「クラッシュプロジェクト」(PLNはこう呼んでいる)728MW,合計19,336MWでしのぐほかなく,2005年の従来想定15,643MW(JBIC,2003年3月報告書)から,100万KW少なくなるとして約14,643MWの最大電力に対して,32%の予備力設備で対応することが可能となる。なお後述するが,全設備19,336MWに対して実際の有効出力がどの程度かが問題であり,エネルギー省もこの点に懸念を示している。

2006年以降は,2006年にタンジュンジャティBの1,320MWが入り(IPPで調整中、2003年1月末住友商事岡社長とメガワティ大統領の会談で合意されたと報じられている),このころには,東西南回り回線の完成によるパイトンなどの西への送電が可能になる,しかし,更に危機は続くので,ムアラカラン720MW,ムアラタワール225MWはJBICのODA資金で考慮中であるが、他に,タンジュンプリオク増設の720MWのめどが立っていない。しかし2007年以降は、電気料金値上げが順調に推移して、IPPによる順調な火力開発が続くものとして、2007年600MW、2008年1,800MW、2009年1,200MW、2010年1,800MW、従って未確定のIPP合計5,400MWが、2007年から2010年の4年間に開発されるものと想定しており、この過酷な電源開発を続けるためには、電気料金の計画通りの値上げが必須の条件である。また、この終末年になると調整力不足が顕著となるので、2009年以降は,現在準備中のチソカン揚水1,000MWで対応すると考えている。この結果,2010年のピークバランスは,需要が23,232MW,設備が29,923MW,予備力率が29%となる計画で,当面考えられている。

ここしばらく,需給上の問題点で注目の必要がある点は,2004年対応で準備が進んでいるPLNによるムワラタワール増設600MWの進捗状況,2005年のピーク対応の,まだ準備が出来ていないPLN独自の火力2カ所合計1,590MWの今後の対策,2006年に予定されているタンジュンジャティBのIPPの進捗、2007年以降に想定されている5,400MWのIPPプロジェクトの正否であろう。このIPPプロジェクトの正否は,電気料金値上げの進捗と密接に関連してくる。

(1)スマトラ系の電力設備概要と需給の見通し

行政上はアチェ特別地域と、リアウ、ジャンビ、ベンクル、ランポン、北スマトラ、南スマトラ、西スマトラ各州からなっている。主要都市にパレンバンとパダンがある。面積は約47万3,600km2。人口は4119万3100人(1995年推計、周辺の小島をふくむ、インドネシア全体の19%)。

RUKN2000(電力開発計画)では,2003年における全島の電力設備2,727MWに対して,予想最大電力は2,509MWであり,約8.7%の余裕があることになるが,全島が連携されていないために,アチェ特別区では,設備容量106MWに対して予想最大電力は172MWで38.4%不足,南部では,設備容量663MWに対して予想最大電力は795MW,16.6%の不足,となっている。

現有設備の中で主要なものは,北スマトラ州の Belawan 火力(汽力260MW,CC818MW,計1,078MW,南スマトラ州の BukitAsam 石炭火力(260MW),西スマトラ州の Ombilin 石炭火力 200MW,同じくSingkarak 水力(175MW),同じく Kotopanjan 水力(114MW),ジャンビ州の PayoSelincah ガスタービン並びにディーゼル(99.8MW)北スマトラ州の PayaPasir ガスタービン(90.5MW),南スマトラの Besai 水力(90MW),西スマトラの Maninjau 水力(68MW),南スマトラ,ランプン州の Tarahan ディーゼル(55.6MW),などがある。

現在準備中の電源開発で規模の大きなものは、南部における Tarahan 石炭火力(200MW、JBICの支援,2005/6年運開予定,現在コンサルタント入札中でやや遅れる見通し),同じく南部でADBの支援により工事中の Musi 水力(210MW,2005年運開予定),アチェ特別区における Perusangan 水力(86MW,JBIC/ADBの支援,中断,2006年運開予定),北部における Renun 水力(82MW(JBIC支援,2005年運開予定,工程遅れ),同じくSipansihaporas 水力(50MW,JBIC支援,2002年運開),などがある。そのほか,北部中部における火力発電所の建設計画を含めて,2007年時点では,全島の設備出力は,2,037MW増えて,約75%増の4,764MWになるものと期待している。

この結果,全島連携が達成されると期待されている2007年時点の全島の需給状況は,設備出力4,764MWに対して予想最大電力は3,259MWであり,46.2%の予備力を持つことが出来るとされている。これを地域別に見ると,アチェ特別区が設備出力286MWに対して予想最大電力207MW(予備力38.2%),メダンを中心とする北部が設備出力1,916MWに対して予想最大1,279MW(予備力49.8%),パダンを中心とする中部が設備909MWに対して予想最大741MW(22.7%),パレンバンを中心とした南部が設備1,653MWに対して予想最大1,032MW(60.2%)となっている。

2.現時点における主たる論点

(1) 電気料金の値上げと対ドルレートの関係

分割、更には民営化の方向については、ジャワバリ系を中心に進められているが、その基本となるべき電気料金改訂の動きに注目してきたが、政府が国会で説明して了解された、とされている段階的値上げについて、予定通り今のところ計画の通りに進められている。最近の報道内容をMEMRで確認したところでは,今年10月に予定されている段階的な電気料金の引き上げは中止の見通しであり,来年に予定されている選挙をにらんで,当分値上げを中断したいとの意向である,とプルノモ担当大臣が先週火曜の議会報告で説明している。それによると,対ドルのルピアは8,200から8,300の間で安定することを期待しているが,先週時点で8,465である,政府としては三つの選択肢があり,一つは10月も計画通りにあげること,二つは10月値上げを中止すること,三つはある種別毎に値上げを選択することであり,LulukSuminar 総局長によると,9月末にも決定を行いたい,としている。一方,PLNの EddieWidiono 総裁は,10月値上げは実施したい意向であるが,来年の値上げについては指示的情勢を考えて政府の決定に従いたい,としている。

値上げについては,2002年初頭,各四半期毎に6%値上げを大統領令で決定しているもので,これを2005年まで続け,電気料金7セントを達成したいとしていた。PLNによると,現時点の電気料金は585.17ルピアで,ドル換算では6.88セントまで来ている。10月の値上げを実施すると,610.62ルピアとなり,現時点のドル換算では7.18セントに達することとなる。政府は,7セントが適正な利益をにらんだ国際的な価格,としているが,一部には7セントは高すぎるとの議論もあり,やや波乱含みである。

(2) 地方分権とスマトラ電力セクターの関連

電力セクターに対して、2002年9月4日決定の新電力事業法による分割民営化の方向と、2000年の地方分権化の方向とが大きな影響を与え、今後の経済発展を支える重要なインフラである電力が、その曲がり角にさしかかっている。特に、ジャワバリ系を除く地方の島嶼,特にスマトラ系統においては、州の分割が比較的細分化されたために、PLNの供給区域の分割が必ずしも州の分割と一致していないことから、少なくとも、スマトラ各州においては,従来のPLNの供給計画を州政府が消化していない段階で、今後、どのように、PLNが従来担当していた区域の需給計画を、州政府が把握して行くか、問題が多い。

差詰め,当面の目標であるRUKN(国家電力開発計画)の改訂は,地方分権法に基づくRUKD(地方電力需給計画)を基本として作成する,との新電気事業法の趣旨に従って,MEMRがその作成マニュアルを作って州政府の指導に当たっているが,その効果は今後の課題である。各州政府には、従来はエネルギー鉱工業省の出先機関であったものが、そのまま州政府の電力部門(DINAS)に移行しており、この部門は、異口同音に、今後の州の電力需給計画の主体は我々である、との認識を持っており、今後PLNが、理論的には複数の電力会社の一つにすぎない、との考え方であることから、州政府の役割に関しては、十分の自覚を持っていると言える。しかし,我々の観察したところでは,スマトラ全8州(島を除く)の中で,形式的にもRUKDをまとめたところは南スマトラ州だけで,他の州については,ほとんど手がつけられていないものと推定される。しかしながら,地方分権法は,政治的に極めて重要な法律なので,今後,この開発調査を核として,州の担当部署の教育には,大きな比重を置くことが重要と思われる。

なお,新電気事業法を読みとると,確かに,各州のRUKDを策定するのは州の権限であり且つ義務であるが,電気事業そのものの推進は,グリッドに繋がって複数州間にまたがる電力設備事業は,すべて国有会社であるPLNの責任,と読みとれるので,州側に意欲が空回りして,例えばIPPのMOU発出なので,若干の混乱が生ずる可能性がある,即ち,この地域でのIPPとの電力購買契約PPAは,IPPとPLNの間でなされるべきことは,明確である。なお,公的資金調達との関連であるが,もしPLNの電力市場化が地方においても進むならば,果たして今後地方に於けるODAの受け皿としての役目を果たせるかどうか、若干議論のあるところである。これを見越して、州政府の中には、直接州政府が借款の受け皿となろうとする動きがあるが、中央、特にBAPENASは、現在のところこれを認めようとしていないし、援助側も、州政府への直接借款は受け入れる姿勢にない。現在進行中の公的借款のプロジェクトが比較的進んでいるスマトラは、当面、これを引き継いで、短期的視野での供給計画は進められるものと、少なくとも州政府側は理解している。

(3) 発電設備の維持管理と有効出力

現時点でのジャワバリ系統に繋がる設備容量は,自家発電所を除いて,約18,608MWであるが,これを有効出力としてどの程度見込むことが出来るか,については,かなり悲観的な見方がある。エネルギー省は,2003年6月初旬,至近年の電力危機を懸念して,PLNなどに発電所検査を実施するよう指示し,現在資料が集められている段階であるが,今年8月には集計を終えようとしている。これは,老朽火力の出力低下やガス不足による燃料変換での出力低下,などを懸念したものである。今回の調査団も,ジャワバリ系統の7発電所合計設備出力10,517MWの現地調査を実施したが,この時点で出力低下または修理中または定期検査中で停止している機械の総出力は2,359MWで,設備出力の77%弱の8,158MWが稼働しているにすぎない。これをそのまま全設備に当てはめると,14,328MWで,004年,2005年の電力需給は,きわめて逼迫しているといえる。今後に予定されている本件設備維持管理プロジェクトの調査と提言に,期待がかかるものである。

(4) 民間買電交渉の推移

1997年以前より契約完了または交渉中の27件のIPPプロジェクトについて,PLNは精力的に再交渉を続けてきた。今週の火曜日(7月7日),PLNは,26件のIPPとの再交渉が完了して,向こう20年から30年にわたって約59億ドルの削減に成功した,と発表している。対象案件の総出力は,10,430MWで,従来平均84セントであったものを,5セント以下にした,としている。再交渉が成立したものは14件で,この中には,パイトンIとパイトンIIの石炭火力合計2,450MW,タンジュンジャティB石炭火力1,320MWの三つのジャワバリ系統の主要電源が含まれている。7件については契約が破棄されたが,その中には,パスルアン天然ガス火力(500MW,東ジャワ),タンジュンジャティAおよびC石炭火力(合計2,640MW),セラン火力450MW,チラチャップ石炭火力450MW,チレゴン天然ガス火力450MWなど,将来の需給に大きな影響を及ぼすプロジェクトが含まれている。チラチャップについては,別のIPPでの交渉が進行中。

(5) ジャワ周り石炭火力の進捗と送電線

1995年頃の経済最盛期の構想で,無尽蔵と思われ且つ極めて低価格の電気が得られる石炭火力に注目して,ジャワ島周りでの分散開発が計画され実施に移されてきた。それは西から回って,スララヤ3400MW(既設),タンジュンジャティA 1,320MW(契約完了),B 1,320MW(契約破棄),C 1320MW(契約破棄),パイトンI 1,230MW(完成,再交渉完了),パイトンII 1,230MW(完成,再交渉完了),チラチャップ 450MW(契約破棄)の4カ所で,総出力10270MWのうち,約3,000MWが契約破棄されたが,最近になって中部ジャワのチラチャップ地点は,再び,インドネシアの国営企業,地元企業および中国企業の3社による600MWの計画が進行中である。なお,現在工事中の南回り50万ボルト送電線が,東に偏ったパイトンなどの電力を西部に送電するため,重要な焦点となってきている。200年に完成に予定である。

(6) 天然ガスの不足の問題とLNG

実情は明らかでないが,ジャカルタ周辺の天然ガス火力を調査した限りにおいては,近海の天然ガスの不足が認められる。特に,ムアラタワール,ムアラカラン,タンジュンプリオクでは,天然ガスの代わりに高速ディーゼルHSDを使用せざるを得ないために,出力低下を招いている。一方で,インドネシアの誇るLNG基地で台湾や日本の東北電力の契約破棄が続いて,LNGの国際市場にかげりが見えてきた。中国福建省との交渉と相まって,これを国内向けに振り向けるべく,西ジャワと東ジャワに2カ所のLNG基地を建設したい,とプルノモ大臣は発表している。インドネシア経済にとっては,このような大規模基地の建設は容易ではないが,石炭をのぞく火力開発が曲がり角にきていることは確実である。

(7) スマトラ南部系における需給の逼迫

南スマトラ系(ジャンビ,南スマトラ,ランプン,ブンクル各州を含む)のグリッドに繋がった設備出力の合計は713MWであるが,実際の可能出力は542MWである。これに対して,想定された最近の最大需要は594MWであり,常時約50MWの計画停電が行われている。計画停電は輪番制で,その予告は新聞紙上などでなされているが,この停電は,市民生活に大きな影響を与えている。西スマトラとの150KV連携が達成される2004年には,この問題は一時的に解消されるものと期待されているが,州境付近の55km区間において,住民の反対運動があり,送電線建設工事は中断されており,その成否が懸念されている。

最近のランプン州の電力逼迫状況は深刻で,この数ヶ月の停電が,市民の経済生活に大きな影響を及ぼしている。この9月13日より,二日おきに夕方6時から翌午前2時までの8時間の輪番停電で,これは,Besai 水力(90MW)とBatutegi 水力(28MW)の渇水による出力低下が原因と,説明している。ランプン州には71万の需要口があるが,このうち3万は,PLNの電力供給の劣悪化を理由に,電気料金の支払いを拒否しており,電力不足が社会問題化する危険性をはらんでいる。


3.主要電源開発地点の概況

ジャワバリ系で問題になるのは,パイトンTの1,2号機計1,230MWとパイトンUの1,2号機計1,220MW,合計2,450MWの稼働状況である。パイトンは,スラバヤの東,ジャワ島の東端近く,深い海港としての立地条件と過疎地域を利用して,巨大な石炭火力コンプレックスが完成に向かっているが,敷地としては8号機分がとられており,東から見て,敷地1および敷地2は既に1993年にPLN(現在ではPTPJBに移管)によって運開されたもので,単機400MW,合計800MWが順調に稼働している。敷地3と敷地4は,現在空地となっており,PLNによるかIPPによるか,未だ明確になっていない。敷地5および6がパイトンUと呼ばれるもので,2001年にJawaPower によってIPPとして, 単機600MW2機合計1,200MWが完成している。敷地7と敷地8はパイトンTと呼ばれるもので,2000年に PaitonEnergy(三井物産参画)によってIPPとして, 単機600MW2機合計1,200MWが完成している。石炭原料は東西のカリマンタンから運ばれているが,熱量は5200Kcal/ton で国内でしか使われないものである。

東ジャワ地区には,このほか電源として,パイトンやや西よりのグラティ石炭火力342MW,更にスラバヤ北近郊のグレシック火力2,200MW(Steam 2x100MW,1981年運開,Steam 2x200MW,1986年運開,C/C 3+3+1機計1,579MW,1992年運開,ディーゼル単機20MW計101MW,1978年運開)などがあり,ジャワ島全体から見た場合は,電源が需要に比べて東に偏っている。これに対して,東西を連携する50万ボルト超高圧送電線は,北部海岸沿いの2回線が完成しているが,南部海岸沿いの2回線は,中部ジャワのケルタン開閉所まで完成しているだけなので,IPPによるパイトンTおよびU,合計出力2,400MWの稼働は極度に制限されている,最近の常時の稼働率は60%と言われている。

スラバヤからジャカルタまでの送電可能容量は理論的には1800MWであるが,現実には1200MWであり,南回り回線が完成して中部のタンジュンジャティ火力が完成すれば,南回りで1,200MW,北回りで1,800MW,合計3,000MWが連携可能とされている。この南回り回線の完成は2006年と説明されている。これに関連した中部の北海岸タンジュンジャティB火力1,320MW(IPP,住友商事参加)は,2004年の運開と予定されているが,今のところ延期の見込みで,2005ないし6年と考えるべきであろう、最近住友商事が開発に踏み切る決断をしたと報じられている。なお,ジャワ島には,今後の大規模な水力開発はなく,まもなく揚水発電所が必要な時期に至るものと思われる。西部に計画中のチソカン揚水プロジェクトは,今のところJBICの支援が得られず,世界銀行への方向転換が画されている。

ジャワ島西部の電源としては,至近年度の予定されている大規模火力はないのが実情であるが,ジャカルタ北郊外にあるムアラカラン火力の改修による出力増420MWを2006年に,ムアラタワール火力の増設1,500MWを2008年,それぞれ融資についてはJBICとの交渉中であると説明されている。ムアラカランについては,現在総出力で1,200MW(1から3号機単機100MW計300MW,運開1979年,重油炊き,4から5号機単機200MW計400MW,1981/82年運開,天然ガスまたは重油炊き,6号機単機500MW,C/C,1992年運開)であるが,このうち1979年運開の1,2号機を増分で420MW(従って既設分300MWを入れて720MW,単機360MW)に改修したいとしている。これは現在重油炊きであるが,ガスの切り替えるためにはインドネシアでは初めての経験であるLNG炊きにしたいとのの意向を持っている,どうも沖合にある天然ガスの井戸の生産量に限界がある模様である。近傍にあるムアラタワール火力は,1997年に運開した700MW重油炊きで,これに1,500MW増設を2008年に計画している。ガス炊きとしたい意向であるが,燃料原資には苦慮の後が見受けられる。

スラウエシ島,PLNの地域分けで第8地域に入る南スラウエシおよび南東スラウエシ地区は,ほとんど電源拡充の見込みがたっていない,経済も停滞の状況である,自然増的な需要の伸びが見込まれるものの,需給バランスは全く考慮されていない,それどころか中央からは,「最低限界」の需要予想を立てるよう強要されている,これは地方分権とも関連がある問題で,今後資金調達も地方政府の手で行う必要があるとすれば,電源開発については絶望的である,しかし,電気料金が全国共通で順調に上がってゆくとすれば,IPPの入り込む余地は十分に考えられる。送電連携で問題となっているのは,現在ABBがサプライヤーズクレディットで準備中の,パレパレーパロポ間(西海岸より東海岸へ)であるが,将来的には,バカル水力などが集中する北部の水力電源地帯からマッカサルへの15万ボルト系増設が必要である。電源として現在問題となっているのは,スラウエシ島南端のビリビリ水力18MWと南スラウエシ中部のセンカンガス火力50MW(ここに天然ガスが出る模様)であるが,ビリビリについては,既に円借款で工事が進められており,2005年にも完成の予定である。センカンについては,中国によるIPPプロジェクトとなる可能性のほか,中国政府が鉄道の敷設と送電線の連携をパッケージとしたプロジェクトを提案しているなど,中国の進出が期待されている。

南スマトラ,PLNの地域分けで第4地域に入る南スマトラは,リアウ,西スマトラ,ジャンビ,ベンクル,南スマトラ,ランプンの6地方政府に分けられている。この中の南スマトラ州はパレンバンを首都として,9300平方kmに7百万人が住んでいる。この地域は,豊富なエネルギー資源に恵まれながら,厳しい電力危機の中にあって,パレンバン市内では,2日に一度の計画停電を強いられている。今もっとも関心を持って進められているプロジェクトは,ジャンビ経由の西スマトラからパレンバンまでの送電連携で,パダン地区の有する水力や地熱の電源を取り込もうとするものであるが,約100MWの融通が期待される。建設はADBの資金供与で行われているが,州境近傍南スマトラ側の65km分が住民との紛争で開通できないでいる。そのほか電源として,ムシ水力210MW(ADB),2003年運開予定,メランギ水力340MW(日本政府へ要請,2007年運開予定),ブサイ水力90MW(世界銀行支援,2001年運開予定),タラハン石炭火力120MW(JBIC支援で入札中,確認の要),などがある。そのほか,JICAが1984年に行ったブキットアサムの石炭を使う2,400MW石炭火力とジャワ島との送電連携に,今も望みをつないでいる。東パレンバンで中国による天然ガス火力の動きがある。


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