足立隼夫の主張 24

カンボディア電力事情と主たる論点
(2001/11/06時点)


本稿は、平成12年11月,JICAのカンボディア国別援助研究の原稿を書いたときに書きためたもので、このまままでは私自身のメモに終わってしまうので,この構成をベースに、今後出来るだけ情報収集に努め、随時更新してゆきたいと思っている。1992年当時有効な出力が2万KW台に落ちていた首都プノンペンの電力供給は,日本をはじめとする各ドナーの協力,マレーシアのIPP進出などで,9万KW台の戦前レベルまで回復している。今後の経済成長を支えるためには,これ以上,プノンペンの電源に依存することは難しく,唯一の海港であるシハヌークビルの中規模火力電源を主体にせざるを得ないが,首都までの距離200kmを考えると,クラバン山脈内に賦存する有力な水力との組み合わせを考えつつ,開発を図る必要がある。和平回復後の1992年には,設備出力約9万KWに対する有効な出力が2万KWと言う,最悪の状態にあったプノンペンの電力設備は,その後,日本,アジ銀,世銀などの協力で急速に回復し,更に最近ではIPPの進出で,設備の面では相当程度まで回復している。現時点におけるプノンペンの設備出力は,154.3MWに達している。内訳は,C2発電所が,現有の蒸気タービン5MWを修理して15MWに回復(修理の完成を確認のこと),この敷地内にIPPによってマレーシア企業が35MWを完成(97年)して合計で50MWを確保,C3発電所は,従来のGMディーゼル機による6.3MWの確保の他,世銀による10MW(97年)を追加して合計で16.3MWを確保,C4発電所は旧来の旧ソ連のディーゼル機を98年に廃止してこの敷地にIPP(BeaconHillAssociates)による複合火力機60MWを99年に投入(完了を確認の必要),隣接し合うC5及びC6発電所は,日本の無償によるヂーゼル機10MW,ADBによるディーゼル機18MW,合計28MWを確保,プノンペンの総合計で154.3MWであり,当局の説明によると,2000年時点で約30%程度の予備力が確保できているとの観測である。


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1992年当時有効な出力が2万KW台に落ちていた首都プノンペンの電力供給は,日本をはじめとする各ドナーの協力,マレーシアのIPP進出などで,9万KW台の戦前レベルまで回復している。今後の経済成長を支えるためには,これ以上,プノンペンの電源に依存することは難しく,唯一の海港であるシハヌークビルの中規模火力電源を主体にせざるを得ないが,首都までの距離200kmを考えると,クラバン山脈内に賦存する有力な水力との組み合わせを考えつつ,開発を図る必要がある。

1. 首都プノンペンを取り巻く現状

和平回復後の1992年には,設備出力約9万KWに対する有効な出力が2万KWと言う,最悪の状態にあったプノンペンの電力設備は,その後,日本,アジ銀,世銀などの協力で急速に回復し,更に最近ではIPPの進出で,設備の面では相当程度まで回復している。現時点におけるプノンペンの設備出力は,154.3MWに達している。内訳は,C2発電所が,現有の蒸気タービン5MWを修理して15MWに回復(修理の完成を確認のこと),この敷地内にIPPによってマレーシア企業が35MWを完成(97年)して合計で50MWを確保,C3発電所は,従来のGMディーゼル機による6.3MWの確保の他,世銀による10MW(97年)を追加して合計で16.3MWを確保,C4発電所は旧来の旧ソ連のディーゼル機を98年に廃止してこの敷地にIPP(BeaconHillAssociates)による複合火力機60MWを99年に投入(完了を確認の必要),隣接し合うC5及びC6発電所は,日本の無償によるヂーゼル機10MW,ADBによるディーゼル機18MW,合計28MWを確保,プノンペンの総合計で154.3MWであり,当局の説明によると,2000年時点で約30%程度の予備力が確保できているとの観測である。

2.世界銀行の開発戦略

世界銀行は,一般にアジアの電力セクターに対して,電源開発には民間資金を動員,世界銀行や各国のODAは送電線等の整備に向けられるべきとして,1998年2月に,「カンボディアの電力系統の整備計画」として,2020年までのカンボディアの電力網系統の整備を提案している。これによると,1998年に最大電力123MW,年間電力量554GWhであった電力需要が,2016年には820MW,2937GWhに達するものとの予想の下に,2002年までにプノンペンよりシハヌークビルまでの210MW容量230KVの送電線を敷設し,これと関連してシハヌークビルに140MW程度のガス複合火力を新設する,2006年までに南のタケオからベトナム国境までの115MW容量230KV送電線の連携を完成する(ベトナムのオモン火力よりの輸入を前提としたもの),2008年には,国道3及び4号線沿いの水力,プレクトノット,キリロム,カムチャイで合計76MWを開発してプノンペン−シハヌークビル連携線に乗せる,2012年までには,スタンアタイなどのクラバン山中の有力水力235MWを完成,更に2019年にはセサン川の350MW水力を投入する,との構想を描いている。

3.我が国の協力の進展

和平回復後,外交上の急速な対応に呼応して,まずプノンペンの電源の確保に動き,足の速い無償資金協力で1994年には,各ドナーに先駆けて,10MWのディーゼル電源を確保した。その後,プノンペン周辺の配電網整備に集中し,既に第3次のプノンペン郊外配電網の整備をほぼ完成させており,ADBのプロジェクトとの連携で,プノンペン周辺の電力供給能力の改善に大きく寄与してきた。しかし,マレーシアなどの民間企業の進出で,プノンペンの電源からは一歩引いた姿勢をとっており,電源の全国展開に対する先方の要請に対しては,全国マスタープランが先行すべきとして,地雷も含めた治安の確保の見通しを待っている状態であった。1998年にいたって,世界銀行が上述の送電連携全国展開に関する報告書をまとめ,このベースの上に立って,シハヌークビルの火力プロジェクトに関するFSを実施中であるが,燃料の確保等,今後議論を呼ぶことは必至である。

4.電力セクターにおける主たる論点

前節までに述べた我が国及び世界銀行他の協力の経緯を踏まえると,現状で考えられる電力セクターにおける主たる論点は,次のように考えられる。

(1) 中核となるべき中規模火力計画の不在

プノンペンの電力需給は回復してきているが,IPPも含めて殆どがディーゼル発電に頼っており,高価な燃料費と相まって,今後のカンボディア経済の発展の阻害となるであろうことは,容易に想像できる。今後主流をなすIPP発電所の発電端の買電単価は,KWh当たり15円(確認の要)と言われており,これにEDCの配電経費を加えると,KWh当たり30円近くになってくると考えられる。緊急に回復のためにはやむを得ない手段ではあったが,今後は,燃料の輸入に障害とならないシハヌークビルの中規模火力の建設や,経済性の高いクラバン山中の水力地点の開発を視野に入れて,電力の長期計画を確立する必要がある。この意味から,現在進行中言うのJICAのシハヌークビルにおける開発調査は重要で,ここにも短期的なディーゼルやガスタービンで対処することは,長期的視野から許されないだろう。

(2)プレクトノット開発の問題点

プノンペン西に計画されているプレクトノット貯水池プロジェクトは,18MWの発電が考えられるものとして,世界銀行の計画にも盛り込まれているが,今後の開発にとって「喉元に刺さった骨」の感がある。プノンペン周辺は,毎年この川の氾濫で大きな被害を受けていることと,下流に広がる6万ヘクタールの農耕地への灌漑で,戦前注目されて開発に着手したが中断され,カンボディア政府は,この工事の回復がすなわち平和の回復と,シンボル視して力点を置いている。しかし時代の変化を受けて,便益の主体である農業の相対的変化,広大な貯水池内の環境問題など,援助する側としては大きな課題があり,必要ならば代替案も含め,議論が必要だろう。

(3) キリロム水力の修復の可能性

戦前,一度はプノンペンに1万KWの電力を送電していた国道4号線近くのキリロム水力発電所は,経済性がよいことから,和平回復と同時に,各国から注目されたプロジェクトであるが,未だに修復の見通しが立っていない。ダムが残存していることが確認された時点で我が国無償となり得るかどうか議論されたことがあるが,荒廃したダムの回復が技術的に難しい問題を含んでおり避けざるを得なかった。その後,オーストリー政府が調査を行ったが,資金不足から諦め,現在では中国企業によるBOTの申し出が有力とされている。いずれにしても,ダム回復の技術的困難を克服する必要がある。

(4) カムチャイ水力の経済性

シハヌークビルの東,海岸に面している嘗ての観光都市カンポット,ここに注ぐカムチャイ川の水力開発は,その立地の良さで,早くから注目されていた。シハヌーク国王が直接旧ソ連のフルシチョフ書記長と協力を交渉したプロジェクトとして有名で,旧ソ連の手で相当の調査が行われたが,旧ソ連が現地より撤退して,その後,カナダのハイドロケベックが独自に調査を行って,買電のプロポーサルを提出したが,カンボディア側の納得する単価とならず,交渉は決裂した。今後,シハヌークビルの中規模火力が具体化して,この付近をプノンペンへの連携線が通過するので,火力と水力のコンビネーションを生かした運転を期待して,今後の開発のポイントとなることは間違いない。

(5) 周辺国との電力連携

ベトナムとは,メコンデルタのカントー市付近に建設予定のオモン重油火力から,メコン川沿い国境を越えて送電連携し,プノンペンがこれを買電する案が,比較的近い将来の計画として浮かび上がっている。世界銀行もこの可能性を考慮して,2006年までのタケオ−ベトナム間の送電線建設を提案している。オモン火力は,大規模の重油火力なので,理論的な生産単価は安価であるが,ベトナムとの間で買電単価の交渉を行う必要があり,他の政治的要素も絡んで,その経済性については予断を許さない。タイとの国境付近では,全線に亘ってカンボディア側の農村電化の考え方から,電力融通の可能性が十分にある。逆に,南の東端部の国境沿いでは,経済性の良い水力開発が,タイとの共同開発として考えれれている。

(6)シアムリアップの電力整備

アンコールワットを控えて,カンボディアの経済にとっては大きなインパクトを与えている。日本も,上下水道や遺跡保存の観点から手を貸してきたが,観光収入を目指した民営化の進展で,公的資金の動員にも限界が生じてきている。特に電力の面では,一時無償による協力が考えられたが,民営化の方向が判然としないので,協力を中断している。日本としては,地域開発の青写真を描いた実績があり,これを,民営化の進展とあわせ考えて,再検討することが必要である。

(7)バッタンバンの電力整備

この地域の農業開発については,日本も実績があり,今後の協力の一つのポイントになると思われる。水資源の面からは,カラバン山脈から流れ込む水量豊富な中級河川があり,農業開発のための灌漑施設の整備には好適な位置にある。将来,全国送電系統が整備される段階になると,これらの灌漑設備の開発と相まって,水力発電による首都への送電が期待されるところである。

(8)メコン本流沿いの開発は困難

インドシナ半島を包含する送電系統網の構想が述べられるに際して,カンボディア領内を流れるメコン本流沿いのダム開発が話題に上っている。コーンフォール,スタントレン,サンボール,セサンがそれであるが,日本もプノンペン上流のサンボールに関わってきた歴史がある。最近になって,メコン川委員会やカンボディア政府から,サンボールの見直し計画が正式に要請されてきたが,日本政府の応ずるところとなっていない。本流沿いの流況に与える大きさ,水没の広大さから考えて,本流開発について,今後とも国際社会が受け入れる見込みはゼロに等しい。

(9)地方電化の位置づけ

カンボディアの地方電化は,BHNの観点からも,いつでも対応できる状態と考えられる。その意味では,地方の拠点としについての調査は進んでいるが,農村については殆ど資料がない。従って,まず人口分布を把握してその優先度を考えると同時に,これに,太陽光,小水力等の太陽エネルギーの積極的利用を織り込める可能性がある。しかし,カンボディアのとっての当面の課題はプノンペンのインフラ整備であり,これが進めば,自ずと先方政府の目も農村に向いてくるだろう。電力需要の80%は,将来ともプノンペンで発生するとの予測であり,まず経済拠点の整備を急ぐべきだろう。

5.我が国協力の方向性

プノンペンの電源が落ち着いてきた段階では,問題となるのは電気料金の安定化である。そのためには,緊急電源で凌いできた電源開発の方向を,長期安定した電源へと方向を点ずる必要がある。世界銀行は,電源開発については民間資金で,との姿勢から,カンボディアにおいても電源開発は民間資金にそれを託す考えであるが,この点について我が国は,世界銀行と率直な議論をすることが望まれる。電力市場が十分に育っている東南アジアの中核都市,バンコク,ジャカルタ,マニラなどでは,公的資金が電源開発に果たす役割は終わったといえるが,カンボディアのような国では,十分な電力市場が育っているとは言い難く,実際にIPPプロジェクトを仕掛けたマレーシアの企業などからの,高い買電単価が,プノンペンにおける需要の開発を阻害している。この点を,知的な支援の分類の中で十分に明らかにした上,今後の電源開発の全国展開において果たす公的資金の役割を考える必要がある。


以上


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