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(本更新直前483,288 ,メルマガ配信数 1.037)
ー 日刊アジアのエネルギー最前線 2008年11月4日分ータイ首相ナムグムの水を東北タイへ ー
CNNテレビは,オバマ候補が207人を制して優勢,と報じている。黒人大統領の誕生の歴史的場面に,我々もいたことになるのか。このメールが皆の手元に届く頃は,もう実現しているだろう。
我々として非常に関心があるのは,ブッシュ大統領が,世論を抑えながら進めてきた,イラク攻撃,アフガニスタン攻撃,北朝鮮との妥協,温暖化反対,インドの原子力,などに,どの様な変化の手を打つのか,と言うことだろう。全部そのまま引き継ぎます,では世論が許さないような気がする。原油が急反発している,バレル69ドル。次期大統領への期待の強さを反映した米株高を受けて景気懸念が後退,が原因と報じている。
完成当時のナムグムだの貴重な写真
さて今日の記事であるが,新任のタイのソムチャイ首相(注1)が日帰りでビエンチャンを訪問,記事のタイトルを見て,多くのダム計画の促進を要請しに行ったのかと思ったら,とんでもない,ラオスのナムグム川(注5)の水をタイには運びたい,と言うのである。辞めたサマック氏(注4)がこの案を残していったという。勿論,ソムチャイ首相(注1)はそのためだけにビエンチャンに行ったのではないけれど,ナムグム川(注5)の水を第一にあげている。
提案されたのは,ナムグム川(注5)の水をメコン河の下にトンネルを掘って運ぶ案だという。年間20億トンの水をサイホンで持ち込み,360万ライ(注7)の灌漑を行う。ナムグム川(注5)が標高が高いので重力で可能という。この水は,ウドンタニ(注8)のファイルアン貯水池(注9)に入り,それから開水路でカラシン(注10)のランポン貯水池(注11)に導かれ,配水される,と言う計画である。
私は,1990年代初めにメコン委員会にいて,この東北タイの水問題を扱った経験があるが,下流のカンボジアの生活やメコンデルタのことを考えると,現況の水で東北タイを潤すことは不可能で,新しい水が必要だ,と言うことは分かっていた。私は,中国の小湾ダムで洪水から新しい水を生み出すと,理論上毎秒700トンはとれる,と考えていた。
しかし時間がかかるので,ラオスの既設ナムグムダムを買い取ったらどうか,と提案したことがある。洪水調節を中心に運用すれば,理論上少なくとも,私の記憶が正しければ,毎秒120トンの水が生まれる,当面この水で東北タイを潤す。どうしても分かりにくければ,ナムグムの水をサイホンで直接取水してはどうか,とも言ったことがある。
東北タイとナムグム河付近
今度のタイの提案は,当時の我々の案に極めて近いが,「水を生み出す」,と言う概念は,少なくとも記事には出ていない。ナムグムの水は,下流にとっては既に既得権である。新たな水を生み出す,と言う概念を持ち込まないと,下流を説得できないだろう。しかし,今後タイの資本が,ナムグム3,ナムグム2,ナムニエップ,ナムテン1,などに入って行く。ここで水を生むと言う概念を取り込めば,何とかなるかも知れない。
地域の地図を見れば分かるが,南から来るモンスーンは,東北タイの平野を通り過ぎて,ラオスまで進み,そこでラオスの山岳地帯に衝突して雨となる。ナムテン川の流域では,年に5,000mmもの降雨がある。タイとしては,頭の上を通り過ぎていった雨が,ラオスで落ちたのだから返してくれ,と言いたいところだろう。また,東北タイの経済構造は変わってきている,と言われている。工業化である。水需要も変わるか。
(注)(1) Prime Minister Somchai Wongsawat,(2) Lao Prime Minister Bouasone Bouphavanh,(3)
Lao President Choummaly Sayasone,(4) Samak
Sundaravej,(5) the Ngum river,(6) a Public
Relations Department,(7) rai, 400mx400m,(8)
Udon Thani,(9) Huay Luang reservoir,(10)
Kalasin,(11) Lampound dam,(12) Montri Chantawong
of the Foundation for Ecological Recovery,(13)
Nakhon Phanom province,(14) Khammouan province,(15)
本文
●タイのソムチャイ首相,ラオスの水力促進へビエンチャンへ
東北タイの灌漑用水については,20年前ぐらいから活発な論争が繰り広げられてきた。500万ヘクタールに毎秒500トンの水が欲しい,と言うのがタイの言い分で,タイ側は受け皿として,コンチムン計画と称して,東北タイの中の灌漑用システムの計画を持っていた。問題は水で,メコン本流の渇水量はビエンチャン手前で毎秒800トンしかないから,ベトナムデルタのこともあるし,どこかで水を生み出さない限り,とれない。
何処で生み出すか,ビエンチャン直上流のローパモンダム計画でも,随分議論が行われた。私は,中国と話をして小湾ダム計画で生み出される毎秒700トンをとれるようにしたらどうか,という基本的な考え方をしていたが,時間がかかるので,ビエンチャンの近傍の既設ナムグムダムをタイが買い取って運用し,洪水を調節して生み出した水を,わかりやすく,サイホンでメコンを越えて運んだらどうか,など議論していた。
今日の記事。2008年11月3日の月曜日,新任のタイのソムチャイ首相(注1)が日帰りでビエンチャンを訪問,ラオス側のブアソン首相(注2),セイソン大統領(注3)などと会談した。タイのソムチャイ首相(注1)が要請したのは,環境グループが反対しているナムグム川(注5)から東北タイへの分流の問題について,結論を急いで欲しい,と言うものであった。ラオスの広報部門(注6)が対話を明らかにした。
ソムチャイ首相(注1)によると,ナムグム川(注5)の水をメコン河の下にトンネルを掘って運ぶ案だという。この案は,前首相のサマック氏(注4)の発案で,年間20億トンの水をサイホンで持ち込み,360万ライ(注7)の灌漑を行う。ナムグム川(注5)が標高が高いので可能という。この水は,ウドンタニ(注8)のファイルアン貯水池(注9)に入り,それから開水路でカラシン(注10)のランポン貯水池(注11)に導かれ,配水される。
反対論を主導しているのは,環境回復機構のモントリ氏(注12)で,まだラオス政府側は何ともコメントしていないと言う。モントリ氏(注12)は,住民などへの影響を調査するための環境調査が必要と言っている。他のタイとラオスの話し合いの中で出てきたのは,タイのナコンパノム(注13)とラオスのカムーン(注14)を結ぶメコン河架橋で,費用の18.8億バーツは,すべてタイが負担すると言っている。
このナムグム川(注5)の水をメコン河の下にトンネルを掘って運ぶ案は,おそらく1992年に私がメコン委員会の中で提案したのが最初だと思うが,私にはポイントがある。それは,タイ側が既設ナムグムダムを買い取って,洪水調節によって生み出された新しい水だけをタイに運ぶ,と言うことでなければ,下流のカンボジアやベトナムが納得しない。記事は,年間20億トン分流と言っているから,毎秒70トン程度で,昔の500トンオーダーの話とは違う。東北タイも,工業化して,昔と事情が違うのかも知れない。1990年当時の私は,120トン程度の話だったと記憶している。
(注)(1) Prime Minister Somchai Wongsawat,(2)
Lao Prime Minister Bouasone Bouphavanh,(3)
Lao President Choummaly Sayasone,(4) Samak
Sundaravej,(5) the Ngum river,(6) a Public
Relations Department,(7) rai, 400mx400m,(8)
Udon Thani,(9) Huay Luang reservoir,(10)
Kalasin,(11) Lampound dam,(12) Montri Chantawong
of the Foundation for Ecological Recovery,(13)
Nakhon Phanom province,(14) Khammouan province,(15)
●インドのムケルジ外相,イランガスで,米印原子力協定は障害ではない
2008年11月2日の本HP(注15)では,イランのノザリ石油相(注16)が,イラン-パキスタン-インドガスパイプライン計画IPI(注17)に関して,ガス供給の安全についての方法論はもう議論を尽くした,インドのコミットが欲しい,と述べている。専門家は,インドはこの76億ドルプロジェクトに関して,パキスタンとの緊張が高まったときを考えて,慎重な姿勢を崩していない,としている。
インドのムケルジー外務大臣(注18)は,テヘラン訪問から帰国したようだ。しかし今日の記事は,テヘランを離れるときの話のようだ。ムケルジー外務大臣(注18)は,イランのホセイニ経済財務相(注19)と記者会見に臨んで,インドの米国との原子力協定は,イランのガスを輸入することに,何の障害もない,と語った。インドはエネルギー資源は重要と考えて,原子力平和利用についても,米国だけでなくフランス,ロシアや他の国とも話をしている,その中でも重要なのはイラン-パキスタン-インドガスパイプライン計画IPI(注17)であると。
専門家によると,インドはこの76億ドルプロジェクトについて,特にパキスタンとの緊張状態の時のガス遮断を考えて,慎重な立場にある,としている。イラン側は,インドのムケルジー外務大臣(注18)がテヘランに来るまでは,インド抜くでもこのパイプラインプロジェクトをパキスタンとやる,と言っていた。米国は,イランとの協力を行う国に,厳しい態度をとってきた。
私は,この記事から,今度のインドのムケルジー外務大臣(注18)のイラン訪問は,イラン-パキスタン-インドガスパイプライン計画IPI(注17)からインドは離脱しない,というメッセージをイランに送ったのではないか,と思っている。実際に着手するかどうかは別問題である。しかし,インド抜きではやらせないよ,とも受け取れる姿勢で,パキスタンと中国の関係など,今後この問題を巡って,更に複雑な動きになるだろう。
(注) (15) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081102A.htm,(16) Oil Minister Gholamhossein Nozari,(17)
Iran-Pakistan-India (IPI) gas pipeline project,(18)
Indian Foreign Minister Pranab Mukherjee,(19)
Iranian Minister of Economy and Finance Shamsuddin
Hoseyni,(20)
●インド,ヒマチャルプラデシュ,トーパン水力で,意志決定遅れる
またインド特有の訴訟問題に発展しそうな勢い。先日から話題になっているヒマチャルプラデシュ州(注20)の話である。プロジェクトは,8.69億ドルのキナウル地区(注21)に位置するトーパン-パワリ-ジャンギ水力(注22)である。2006年に,当時の会議派の州政府が,このトーパン-パワリ-ジャンギ水力(注22)プロジェクトを,オランダのブラケル社(注23)に割り当てたことに始まる。
これに対して,インド企業リライアンス(注24)が,州政府がブラケル社(注23)に対して特別な好意で仕事を与えた,と高等裁判所に訴えた。州政府は,結局,このブラケル社(注23)の財務的技術的適格性への疑問から抜け出せず,この月曜日,結論を延期することに決めたのである。
ブラケル社(注23)の幹部は,先月,州政府のミッタル電力次官(注25)にあって,ブラケル社(注23)は,トーパン-パワリ-ジャンギ水力(注22)を工期内に仕上げる能力を持っている,と説明に来ている。大きなプロジェクトであるのに,やっかいなことですね。
(注) (20) Himachal Pradesh,(21) Kinnaur
district,(22) Thopan-Powari-Jangi hydropower
project,(23) Dutch company Brakel Corp,(24)
Reliance Energy,(25) Principal Power Secretary
Ajay Mittal,(26)
Reference
Laos
●081104A Laos, Bangoko Post
タイのソムチャイ首相,ラオスの水力促進へビエンチャンへ
Somchai visits Laos, presses for more dams
http://www.bangkokpost.com/breaking_news/breakingnews.php?id=131812
India
●081104B India, Economic Times
インドのムケルジ外相,イランガスで,米印原子力協定は障害ではない
Nuclear deal with US no hurdle for importing
Iranian gas: Pranab
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Nuclear_deal_with_US_no_hurdle_for_importing_Iranian_gas_Pranab_/articleshow/3667911.cms
●081104C India, thaindian
ヒマチャルプラデシュ,トーパン水力で,意志決定遅れる
Himachal Pradesh defers decision on controversial
power project
http://www.thaindian.com/newsportal/politics/himachal-pradesh-defers-decision-on-controversial-power-project_100114630.html
過去のニュース
●タイの原子力地点決定は2009年末 (081103)
●イランのパイプラインとインドの優柔不断
(081102)
●ミャンマーでの中国のプレゼンス (081101)
●ベトナム油田へのロシアの参入 (081031)
●マニラ配電の先行き見通し (081030)
●カンボジアなどへの中国の進出 (081029)
●中国の水力開発規模は世界一 (081028
●インドネシアの 電気料金上げ (081027)
●中国企業がアザドカシミールにダム投資 (081026)
●中国広西とベトナムを結ぶ線 (081025)
●丸紅のフィリッピンへの取り組み (081024)
●インドネシアと中国のLNG契約 (081023)
●ラオスの水力で住民補償が再燃 (081022)
●世界で50カ国以上が原子力発電を計画 (081021)
●世界金融情勢の変化の影響 (081020)
●インドとパキスタン対立の悪夢 (081019)
●パキスタン大統領の北京挑戦 (081018)
●インド北辺水力開発に反旗 (081017)
●米国がインドへ原子力通商使節団 (081016)
●フィリッピンの天然ガスと電気料金 (081015)
●フィリッピンの長期エネルギー計画 (081014)
●インドの大規模石炭火力計画 (081013)
●ミャンマーの水力への外国投資 (081012)
●ダム建設を巡るカシミール問題 (081011)
●フィリッピンの国産エネルギーへの拘り (081010)
●バングラデシュとミャンマーの関係 (081009)
●バングラデシュのエネルギー長期見通し (081008)
●中国政府のチベット開発政策 (081007)
●ADBが初めてベトナム水力支援 (081006)
●知的送電線ネットワークの発想へ (081005)
●中国とインドのエネルギー問題 (081004)
●インドの原子力開発加速へ (081003)
●アジア大陸の水源はチベット高原 (081002)
●インドの配電組織改革 (081001)
●フィリッピンの再生可能エネへの取組 (080930)
●インドの地球温暖化との戦い (080929)
● サルウイーン河のダム開発 (080927)
●メコン流域会議開催と中国 (080926)
●インド,25年までに6千万KW水力開発 (080925)

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