アジアのエネルギー最前線
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ー 日刊アジアのエネルギー最前線 2008年11月23日分 ー ベトナムの開発に何か変化が ー

●最近のベトナムのダム批判は,どうしたことか

2008年9月5日付本欄(注1)に,第13回メコン河委員会総会の状況を報告しているが,その時私も,ハッとしてベトナム代表の発言に目が停まっていた。ベトナム代表は,メコン上流でのダム開発が,下流ベトナムの漁業や農業に,マイナスの影響をもたらしている,と発言したのである。ベトナムもメコン河のダム開発の重要な一員ではないか,それもNGOならともかく,政府代表の発言だから,私の記事を読む眼が一瞬そこで揺らいだのである。そのままにしていたけれども,今日の記事で,再び思い出すことになった。

メコン河の本流支流でのダム開発に伴う議論が続く中,最近時々,ベトナムの政府系のメディアもこの議論に出てき来ている。ベトナム政府官僚そのものがこの数ヶ月,非常に開放的な発言を繰り返している。2008年9月末,タンニエン紙(注2)は,メコン河委員会ベトナム国内委員会次長ダオチョントウ氏(注3)の談話を載せている。「メコン河及びその支流での水力発電用のダム開発が,例えばベトナムのような国に,予測できないマイナスの結果をもたらす可能性がある。」。

また,第13回メコン河委員会総会(注1)の席上で,ベトナム政府の農業研究所グエンバンチョン次長(注4)は,「ダム建設によって,メコンデルタ(注5)の2,000万人の,漁業と灌漑に依存しているベトナム人が,マイナスの影響を受けている。」,と発言している。このような言葉が,メコン河とその支流でダム建設に重要な役割を持っているベトナムから出てきている。事実ベトナム企業は,多くのダム建設や計画に参画している。

ベトナム南部のカントー(注6)の45歳の漁業に従事するグエントウベさん(注7)は,「ベトナムのお役人が,水力ダムが漁業を駄目にしている,と言うことを声高に発言するのは初めてで,それを聞いて私は大変嬉しい。」,と語っている。グエントウベさん(注7)は若いときからメコン河支流のハウ川(注8)で漁業に従事しているが,この2,3年,目立って漁獲高が減少しているとして,「人々は,上流のダムが,魚たちのベトナムへの旅を阻害しているのだ,と言っている。」,と。

数年前までは,容易に数トンのナマズ類(注9)を捕獲できたが,それは乾期にベトナムの支流に逃げ込んできていたからだ。かって漁業者は,籠の中でナマズを産卵させ育てて輸出する養殖業者に,最良の母親ナマズを売って生活してきた。このような健康な母親ナマズは,今ではベトナム領内の川では捕獲困難で,カンボジアのトンレサップ(注10)まで追いやられたナマズを追っかけている。しかし,トンレサップ(注10)も最近は状況が良くない。カンボジアについては,単に漁獲高が減っている,と言うだけではなくて,漁業の方法そのものにまで変化が起きてきて,網でとるので魚は小さく高値の魚はなくなった。

カントー(注6)市当局農業部門専門家のグエンタン氏(注11)は,「多くの人が,この2,3年,カンボジア,ラオス,ベトナムで洪水期に多くの土地が浸水したのは,メコン川上流の中国のダムの影響だ,と信じている。」,と前提して,「私の関心は,メコンの流砂だ。」,と言っている。「本来は肥沃な土壌を伴って洪水時に下流に栄養を供給していたが,それが今はダムにため込まれている。その結果,農民は汚染の可能性のある化学肥料を使わなければならなくなる。」,と懸念している。

沿岸におよそ6,000万人が生活する4,800km長さのメコン河(注12)は,チベット(注13)に水源を発して,ミャンマー,タイ,カンボジア,ベトナムを経て,南シナ海(注14)に注ぐが,その間,人々は,舟運,食糧,穀物への水,などの恩恵に依存してきた。特に大きな論争は本流沿いのダム開発で,中国のランサン川(注15)を初め,ラオス,カンボジア,タイでの本流ダム計画が,その論争の対象である。

1955年に下流4カ国,カンボジア,ラオス,タイ,ベトナムで,「環境的に持続的な開発(注16)」を目指して,メコン委員会MRC(注17)を発足させ,本流上のダム開発計画は周辺国への通知が必要,との合意書を交わしている。特にメコン流域外への乾期の分流は,全メンバーの同意を必要としている。中国とミャンマーは,メコン委員会MRC(注17)はオブザーバーとして参加しているが,中国は上流ダムはメコンデルタ(注5)の雨期の洪水を軽減して下流に貢献している,と主張している。

最近のエネルギー高騰で,各国はメコン流域内の水力開発に努力している。いろいろな調査があるが,80のプロジェクトが下流域内で動いている,と言われている。そのうち8地点は,本流上の計画で,ラオス内5地点,タイが2地点,カンボジアが1地点である。もっとも論争が激しいのは,コーンの滝(注18)のドンサホンダム(注18)である。このコーンの滝(注18)は,狭い流路の複合体をなして,そのまま国境を越えてカンボジアに流れ込む。ドンサホンダム(注18)はもっとも深い流路を塞ぐが,乾期の4月から5月には,一種類の魚類だけが,この滝を通過する。このため,ドンサホンダム(注18)は,繁殖区域であるトンレサップ(注10)と上流のラオスやタイ領域を,完全に遮断してしまう。

プノンペン(注19)政府も,本流にダム計画を進めようとしている。カンボジア中央のクラティエ(注20)地点で,中国企業が調査を行っている。環境グループは,メコン委員会MRC(注17)自体が,水力開発推進派で占められている,と非難してきた。2007年,175の環境及び市民運動グループが共同で,メコン委員会MRC(注17)に手紙を書き,「メコン下流域でのダム開発が深刻な環境及び経済的な影響を与えているのに,メコン委員会MRC(注17)は沈黙しているだけだ。」,と攻撃している。3月には,事務局に押しかけている。

ベトナムであるが,確実な経済成長で電力需要が増大している。中国とラオスから電力を輸入しているが,国内でも多くの水力を開発しており,ラオスやカンボジアのプロジェクトにも参入している。メコン支流のセカマン川(注21)でセカマン第1ダム(注22),セカマン第3ダム(注23)を建設中である。また,2007年10月中に覚書(注25)が交わされたルワンプラバン(注24)近傍の1410MW規模の発電ダムには,ペトロベトナム(注26)が参加している。

メコン河委員会ベトナム国内委員会次長ダオチョントウ氏(注3)は,「中国がメコン委員会MRC(注17)に加盟していないので,今のところ我々は,中国の発電ダムとの戦いには成功していない。しかし,メコン川本流で多くのダム計画が動いているが,VNMC(注27)は大規模ダムのもたらす悪影響に警報を鳴らす権利を確保している。上下流の大規模ダムが多すぎると,ベトナムの漁業や農業が打撃を受けることは明白である。」,と明確に述べている。

2008年9月のVNMC(注27)創立30周年式典で,ファムコイグエン水資源環境大臣(注28)は,次のように演説している。「VNMC(注27)の役割とは,ベトナムの権利と受けるべき便益を確保し,メコン上流で実施さっる開発事業のマイナス影響を減ずる努力にある。」。

誠に複雑極まるベトナムの立場であるが,私は最近,ベトナムに何か変化が起こっているという予感はある。副首相が,余り外国の関係のないダムプロジェクトに手を出すな,とはやるEVNなどにブレーキをかけているし,つい先日は,ベトナムのダム開発は殆ど終わった,と宣言しているし,また今日の記事にもあるとおり,はっきりとメコン下流国の立場から,上流のダム開発に警告を鳴らしている。私は中国が,前後の見境なく,ミャンマー,ラオス,更にはカンボジアまでダム造りに出かけてくることに,反発をするための下準備ではないか,と感じている。

(注) (1) http://my.reset.jp/~adachihayao/index3news0809.htm,080905A,(2) ‘Thanh Nien’ newspaper,(3) deputy secretary general of the Vietnam National Mekong Committee (VNMC), Dao Trong Tu,(4) Nguyen Van Trong, deputy director of the state-run Research Institute for Agriculture,(5) Mekong Delta,(6) Can Tho,(7) Nguyen Tu Be,(8) Hau River,(9) Shutchi and pagasius catfish,(10) Tonle Sap,(11) Nguyen Tan, an agriculture expert at Can Tho’s Department of Agriculture and Rural Development.,(12) Mekong River, (13) Tibet,(14) South China Sea,(15) Lancang river, (16) "environmentally sustainable development",(17) Mekong River Commission,(18) Don Sahong dam,(19) Phnom Penh,(20) Kratie province,(21) Xekamen River,(22) Xekamen 1 dam, (23) Xekamen 3 dam,(24) Luang Prabang,(25) A memorandum of understanding,(26) PetroVietnam Power Co,(27) Vietnam National Mekong Committee,(28) Pham Khoi Nguyen, Minister of Natural Resources and Environment,(29)

Reference

Vietnam

●081122A Vietnam, psnews
最近のベトナムのダム批判は,どうしたことか
Rare Criticism of Dams Surface
http://www.ipsnews.net/news.asp?idnews=44797

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