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ー 日刊アジアのエネルギー最前線 2008年11月23日分 ー パキスタン,インダスの水問題,シェナブ川の実情を反映せよ ー
●パキスタン,インダスの水問題,シェナブ川の実情を反映せよ
インダス川の水争いについては,相当前から関心を持ってきた。1998年ぐらいに書いた私のメモも本HPに残っている(注46)。実際に,機会があって,パキスタンのインダス川の畔にも立って見たし,パキスタン側の重要な構造物であるタルベラダムも訪ねる機会があった。また,ペシャワールから北に入り込んで,英国植民地時代の実に立派な灌漑システムを見てきた。今日は,パキスタンが,インダスの水に関して,思いの丈を記事ぶっつけている。特に,ザルダニ大統領になってから,パキスタンの姿勢が強硬になってきた。
1947年に,インドとパキスタンの分割が行われた直後,水問題に関してインドとパキスタンは厳しい緊張状態に入った。インドは,パキスタンの主要な農地の広がるパンジャブ(注47)平野に対して,東の三つの支流,ラビ川(注48),ビース川(注49),ステルジュ川(注50)の水を止めると脅かした。この脅迫は,農業経済に依存するパキスタンを窒息させることを意味した。インドは事実それを実効することが可能であった。何となれば,インダス源流の五つの川,ジェルム川(注51),シェナブ川(注52),ラビ川(注48),ビース川(注49),ステルジュ川(注50)が,すべてインド占領カシミールIOK(注53)に入っていたからである。
数十年の論争の後,世界銀行が中に入って,チームを組み,インドとパキスタン両国に納得できる解決方法を探った。非常に困難な仕事であったが,その後,紛争の度に持ち出される有名なインダス水条約(注54)が,1960年に成立した。合意の基礎は,インドはラビ川(注48),ビース川(注49),ステルジュ川(注50)を自由にコントロールし,パキスタンは,インダス本流とジェルム川(注51),シェナブ川(注52)の権利を持つ,というものであった。
ところが,これにパキスタン側で火がついた。それは,パキスタン側に属する水は75%を占めるが,灌漑面積はパキスタン側が90%だと言うことだ。これが現在も尾を引いていて,バギリハールダム(注55),サラールダム(注56),ニールム-ジェルム水力(注57)の紛争の種となっているのである。もっとも深刻なのは,シェナブ川(注52)のバギリハールダム(注55)である。最初は,バギリハールダム(注55)は流れ込み式(注57)とインド側は言って,2008年10月10日に,インド占領カシミールIOK(注53)のジャム(注59)から150kmのシェナブ川(注52)に,バギリハール水力発電所(注60)が完成した。
バギリハール水力発電所(注60)は,設備出力900MW,工事費10億ドルであるが,パキスタン側の拒否の理由は,シェナブ川(注52)がパキスタンの権利であるにもかかわらず,インドが流れ込み式と称して,インダス水条約(注54)を無視したこと,設計がインドが水を自由に出来るようになって約束に手ぬるいこと,パキスタンとの間でことあるときはインドが自由に裁量できること,地滑りの頻発でダムが不安定なこと,ちっきが地震地帯であること,560万エーカーの水を取り上げたこと,の6点である。
今回の事態は,1960年以前にパキスタンが苦境に陥った時を思い出させる。インドはインダス水条約(注54)に違反して,シェナブ川(注52)の水をバギリハールダム(注55)によって自由にし,パキスタンを食糧不足に陥らせる可能性を秘めている。パキスタンの立場は,ピーク時に,シアルコット(注61)付近のマララ堰(注62)において,毎秒55,000トンの水を確保することだが,今年,2008年は,毎秒22,000トンしかなく,収穫に影響を与えた。
パキスタンのインダス委員会首席アリシャー氏(注62)の要求は簡単で,不足分の被害を補償してくれというものだが,インドのインダス委員会首席アランナタン氏(注63)は,このバギリハールダム(注55)湛水中の不足に対しての補償要求を拒否している。パキスタンは,収支を図るため海外資金を76億ドル借り入れする状況で,農民は水不足で困窮している。もうこれ以上,パキスタンは水で我慢は出来ない。2025年までには食糧カットが必要になってきている。パキスタンの水問題は,次の諸点だ。
世界でももっとも水不足が激しく,1960年には一人当たり年間5,650トンあったものが,2006年時点では1,200トンに激減している。パキスタンはインダス以外に水源はない,2100万エーカーが未灌漑である。インダスの水量,土砂,塩害に対して,防御の手がない。インダス水条約(注54)の結果,パキスタンは水インフラに莫大な投資を強いられた。毎年,1,500万トンもの塩が蓄積される。気候変動の影響,氷河融解,モンスーンなど,90%の水が影響を受ける。
多くの科学者が,水問題を示唆している。パキスタンは全力で戦っている。有名な科学者ピアス氏(注64)の,「川が干上がるとき」(注65)は,パキスタンの将来を暗示している。パキスタンは,将来,西の水源に依存する必要があるが,莫大なインフラ投資が必要である。またこのような分流は,パキスタンの文化を破壊することにも繋がる。インドとパキスタンの緊張は,日に日に高まっているが,数年前のCBM(注66)に希望を持っている。パキスタンが受けた被害への補償については,国連などの仲介が必要だろう。
インダス水条約(注54)の見直しに当たっては,条約後に建設されたダムなどの問題,ストレジ渓谷(注67)の洪水の問題,シェナブ川(注52)の渇水問題,インダスデルタ(注68)の渇水による荒廃の問題,などを考慮する必要がある。インドは,広域な環境を考慮して,インダスデルタ(注68)へ水を供給する必要がある。インドとパキスタンは,過去に,シルクリーク問題(注69)で希望を得たように,新しい条約の改定に,共同して前向きに対処できるだろう。
それにしても,激しい記事で,改めてインドとパキスタンの,インダス川の水争いの深刻さを実感する。パキスタンに新しい政権が誕生したことも,一つの緊迫の原因かと思う。インド側は,穏やかにことを運ぼうとしている,これはインドのシン首相の人柄とも思うが,私は,パキスタンの新任,ザルダニ大統領が,インドとの間のある程度の緊張を保持したい,と思っていると思う。それは,今難しい国内を統一して行かなければならないし,また今回は厳しい金融危機の煽りを受けている。
(注) (45) http://my.reset.jp/~adachihayao/power.htm#power06,(47) Punjab,(48) Ravi river,(49) Beas river, (50) Sutlej river, (51) Jhelum river, (52) Chenab river, (53) Indian Occupied Kashmir,(54) Indus Water Treaty-1960 (IWT),(55) Baglihar dam,(56) Salal dam,(57) Neelum-Jhelum Hydropower Project,(58) run-of-the-water,(59) Jammu,(60) Baglihar hydro electric power project,(61) Sialkot,(62) Marala headwork,(62) Pakistan Indus water commissioner Mr Jamaat
Ali Shah,(63) Indian water commissioner, Mr. G. Arangnathan,(64) Fred Pearce,(65) “When the Rivers Run Dry: Journeys into
the Heart of the World’s Water Crisis”,(66) Confidence Building Measures (CBMs),(67) Sutlej valley,(68) Indus delta,(69) Sir Creek issue,(70)
Reference
Pakistan
●081123A Pakistan, pakobserver
インダスの水問題,シェナブ川の実情を反映せよ
Reflecting Chenab water issue
http://pakobserver.net/200811/23/Articles02.asp
過去のニュース
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