アジアのエネルギー最前線
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ー 日刊アジアのエネルギー最前線 2008年11月28日分 ー 世界銀行のダム報告書,批判への説得に失敗している ー

●世界銀行のダム報告書,批判への説得に失敗している

現在工事中でまもなく完成するラオスのナムテン2水力プロジェクト(注4),融資と保証を求められた世界銀行(注5)は随分悩んだ。私たちも,世界銀行(注5)は最終的には承認しないのではないか,と思ったりしていた。その間,2000年に,世界銀行の支援で,世界の有識者によって書かれたWCD報告書(注3)が作成され,世に問われた。世界銀行(注5)は,これを一つの突破口に,ラオスへの支援に踏み切った。

ナムテン2水力プロジェクト(注4)が出来なければ,ラオスは潰れ,と言う認識もあった。このWCD報告書(注3)は,我々も注目して読んだり,サマリーを造ったりしたものだが,基本は,住民参加,だったと思う。あれから8年,世界銀行は再び,「大規模ダム」(注1),(注2),として,世に問うた。これを,ブレトンウッズ(注6)が,批判した記事である。

最近刊行された世界銀行の単行本,「大規模ダム」(注2)は,彼等の言うダムの便益を強調し,深刻な社会的,自然環境の代価を不適切に評価している。これは,世界銀行(注5)が,大規模ダムに好意を持っている証拠である。この,ダムの間接的な経済的影響,と題するものは,インド,エジプト,ブラジルを取り上げ,その経済効果を論じたもので,4つの例をとり,直接効果と貧困削減を取り上げている。

「大規模ダム」(注2)は4つの例を取り上げているが,10の例を挙げ,125のダムについて100項目に亘る技術検討を行ったWCD報告書(注3)に比べると,余りに対象が少ない。この対象の不足は深さにも及んでいる。経済効果を単純に論じて,社会的環境的代価の評価に失敗している。更に,初歩的な要素でダムを賞賛し,肯定的な要素が含まれる事例ばかりを取り上げている。

例えば,インドのバクラダム(注7)では,農業生産の成長を,農業の産業化と結びつけているが,農業は,ダム建設による土壌沃土の低下と地下水の低下という逆効果に悩まされている。反論が世界的に起こっている。IRのボシャード(注8)は,短絡的で政治的な調査に属するとし,それは2005年のディートン報告書(注9)にも書かれたことで,世界銀行のブレスク(注10)のダム擁護論,大規模水インフラの力,を筋書きにしている。

また,NGOのタッカー(注11)は,「大規模ダム」(注2)は,短絡的で世界銀行のダムとのギャップを埋めるのに役立っていない,調査そのものも,不正確で誇張が多く,見落としも多数ある,と酷評している。教訓はまだ生かされていなくて,最近の動向を見ても,世界銀行は未だ大規模インフラにこだわっており,その投資が貧困削減という重要な任務への動機となり得る証拠は,見つけ出せない。

コンゴー(注12)の例では,ダムの便益を受け取るのは,投資企業だけのように見受けられる。グランドインガダム(注13)は,三峡ダム(注14)を凌ぐ規模で,工事費は800億ドルであるが,インガ第3水力(注15)はその一部をなす。ワシントンのBIC(注16)は,この出力は,鉱山運営の拡張と電力輸出が主目的であって,開発の便益は,甚だ不明確である,とコメントしている。

WCD報告書(注3)の目的であったナムテン2水力プロジェクト(注4)は,対象が貧困ではなかった。NGOのIR,ローレンス(注17)の2008年7月の報告書,「ラオスの教訓(注18)」,によれば,今では移住者が6,000人と考えられている問題で,現地住民をプロジェクトの過程の中に巻き込む,という試みは,失敗に終わっている,と批判している。2008年6月時点で,完成時期は守られるが,環境計画はつまずいていると。

世界銀行(注5)の大規模インフラへの偏りは,ダムまで及んでいる。2008年9月1日に,世界銀行(注5)はエジプト政府と,新規灌漑施設で145百万ドルの支援を約束した。従来までナイル川(注19)の灌漑は公共事業であったが,今回は,公共民間協力(注20)となっている。雇用増大が言われているが,新技術導入で限界があり,便益は投資者にある。2009年着工であるが,貧困者への配分は未だ不透明である。

世界銀行(注5)刊行の「大規模ダム」(注2)は,相当の批判を招いている。私は,ダムがよいか悪いか,を一般的に論じようとしている企業サイドも,また環境グループの側も,正しくないと思っている。地形も違うし自然も違うし社会も経済も違う。ダムはある時あるところでは必要であるし,場所によっては無用で逆効果が目立つ場合もある。ある時点,日本がダムを必要としたように,世界でダムが必要な場所は,あるはずだ。

(注)(1) World Bank commissioned book on large dams,(2) http://www.amazon.com/Future-Large-Dams-Environmental-Institutional/dp/1844071553,(3) World Commission on Dam's (WCD) 2000 report, (4) Nam Theun 2 hydropower project,(5) World Bank, (6) http://www.brettonwoodsproject.org/,(7) Bhakra dam,(8) Peter Bosshard of International Rivers,(9) 2005 Deaton report,(10) John Briscoe, the Bank´s senior water advisor,(11) Himanshu Thakkar, the coordinator of the South Asia Network on Dams, Rivers and People,(12) Democratic Republic of the Congo,(13) Grand Inga Dam,(14) Three Gorges Dam,(15) Inga 3,(16) Washington-based NGO Bank Information Center (BIC),(17) Shannon Lawrence of NGO International Rivers,(18) Damming for development: Lessons from Laos,(19) Nile river,(20) public-private partnership (PPP) project,(21)

Reference

Laos

●081128A Laos, brettonwoodsproject
世界銀行のダム報告書,批判への説得に失敗している
new World Bank book fails to convince critics of large dams
http://www.brettonwoodsproject.org/art-562990

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