2008年8月31日更新
[ HOME ]


2008年7月 2008年6月 2008年5月 2008年4月 2008年3月 2008年2月
2008年1月 2007年12月分2007年11月分2007年10月分


ー 日刊アジアのエネルギー最前線 2008年8月31日分 ーインドの天然ガス生産

「インドの天然ガス生産」,インドのエネルギー資源では石炭ばかりが目立つ。しかし,経済発展をすると必ず周辺の低地や沖合から天然ガス田が発見される。タイ,ベトナム,カンボジア,フィリッピン,中国の東シナ海,すべて経済成長の途上の発見である。だから,天然ガスは地球上何処でもあるのではないか,ただ浅いか深いかの違いと,生産コストの違いだけだろう,天然ガス無機説に私ものめり込んでいる。浅ければ掘りやすい,と考えると,どうしても地球の低地か海底で,ヒマラヤの山の上からボーリングする人はいない。

地球の自転の影響で,地球上の大陸の殆どは,西岸が急峻で東岸が緩やかになっている,と私が言うと,皆,本気か冗談かを確認するために私の顔をじっと見ながら,そして黙り込む,誰も反論しない。皆,多分そうだろうと思っているのではないか。非常に騙しやすくて愉快な題材で,よく誰かをからかいたくなったときに使う。インド亜大陸も例外ではなく,西岸のマハラシュトラ州ではデカン高原から激しく崖が聳えて海面まで500m,揚水発電に適切な地形が存在する。

一方で西岸を見ると,ゴドバリ川とクリシュナ川の二つが,デカン高原から緩やかにインド洋に流れ込み,大きな流域平野を合成して大平野となっている。これをインドでは,KG流域と称している。つい7年前,このKG流域で世界級の発見があった。これはインド財閥の一つリライアンスによるもので,その内容は,文献を引用すると,次のようになる。

「2002年にリライアンスは,インド東海岸沖合のクリシュナ・ゴバダリ(KG)盆地で推定埋蔵量14兆立方フィート (2002年度における世界最大の天然ガス発見)の天然ガスを保有することとなった。」。

インドではこの発見に遡ること1年前に,新探査免許政策NELP(New Exploration Licensing Policy)が制定されて,それに基づいて大陸周辺をブロック化して探査事業の入札を開始した。このNELPの下で活発に動いているのは,国家石油ガス公社ONGCである。このONGCが今回のブロック入札で,KG流域に繋がる5つのブロックで探査権を取得した。

今後インドでは,リライアンスとONGCを中心とした天然ガス生産競争が始まるが,これがインドの今後のエネルギー事情にどの様な影響を与えるであろうか。一昨日も見たように,LNGを中心に天然ガスも高騰しており,発電単価に直してKWh当たり17セントまで上がってきている。未だ石炭の優位性は変わらないが,米印原子力協力なども影響して,ようやくインドのエネルギー多様化が進もうとしている。


本文

●インド,国有ガスONGC,西ベンガルで陸上ガス田開発へ

インド大陸も地球の自転の影響で,西はデカン高原から峻険な崖になっているが,大陸の東は,南米大陸のようになだらかな斜面になっており,クリシュナ川とゴドバリ川が流れ,この二つの流域の河口部分を,KG流域,と称して,2000年頃に,リライアンスが大規模な天然ガスを確認してから,石炭ばかりで発電してきたインドにも,やや転機の兆しが見えて来た。私も注目はしていたが,余り詳しくは勉強していなかった。

今日の記事で,国家石油ガス公社ONGC (Oil and Natural Gas Corporation)が,1999年に決定した NELP VII (New Exploration Licensing Policy (NELP)-VI)の元で,西ベンガル州の5つのブロック,総面積16,000平方kmの試掘権を,9月30日までに確定するという。3ブロックは西ベンガル州,2ブロックは Bihar 州の Purnia である。ONGCはこの他,Andaman 海の Jharai ブロックで探査中で,ここではCBM(Coal Bed Methane)を,2008年11月までに日5万立方mのガス生産が可能になると言う。

●パキスタンのエネルギー危機,根本的な対策が必要

市民の怒りを表現した記事か。とにかく,政治情勢の混乱とは別に,パキスタンでは連日,電気を寄こせ,のデモが続き,その広がりは地方の小都市にまで及んでいる。原因を追及してみると,IPPを含めた発電企業が,発電量をどんどん減らしていると言うのである。原因は,官庁関係の電気料が殆ど払われていないことと,燃料費の高騰で,発電会社は発電を止めているというのである。タルベラの水力発電所まで,モンスーンで一杯になった池から洪水吐を通じて水を捨てているという。パキスタンの無法ぶりは変わっていない。

●インドネシア,PLNとショッピングモール,節電計画で合意

そういえば思い出した,JICAは数年前に,ジャワバリ系統内に存在する大量の自家発電所を,この電力危機に際して,何とか動員できないか,と調査を行ったことがあった。あの当時は,それらの自家発電機を動員して系統に呼び込み,ピーク時の電力需要に当てるという案だった。確か中部電力が調査に当たったはずだが,契約の難しさや系統への繋ぎ込みの技術的な問題で,十分な効果が発揮できなかったのかな。

当時は,大きな工業の持つ発電機に目を付けていたが,ショッピングモールの話はなかったような気がする。背に腹は代えられないPLNは,難しい交渉の末に,1週間に3時間は自家発電機を運転するという合意に達したようだ。ウイークデーの夕方6時から夜9時までと言う。PLNは10%ピーク節減の効果がある,と言っているが,どうかな。モール側は,燃料費の安いディーゼルを回すよう,政府に要請している。


参考資料

2008年8月31日分

パキスタン

●080831A Pakistan The Post
パキスタンのエネルギー危機,根本的な対策が必要
Substantive measures needed to cope with energy crisis
http://thepost.com.pk/IsbNewsT.aspx?dtlid=180545&catid=17

インド

●080831B India, Economic Times
国有ガスONGC,西ベンガルで陸上ガス田開発へ
ONGC to get five new onshore blocks in WB
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/ONGC_to_get_five_new_onshore_blocks_in_WB/articleshow/3426312.cms

インドネシア

●080831C Indonesia, The Jakarta Post
PLNとショッピングモール,節電計画で合意
Malls and PLN agree on power saving
http://www.thejakartapost.com/news/2008/08/29/malls-and-pln-agree-power-saving.html


ー 日刊アジアのエネルギー最前線 2008年8月30日分 ー山河荒れても両国の関係は永遠

「山河荒れても両国の関係は永遠」,と言ったのは,ラオスの前大統領 Kaysone Phomvihan 氏で,相手はベトナムである。1989年,私がはじめてラオスに入った頃,ビエンチャンの町は夜間外出禁止であった。街の要衝には,土嚢が積まれて,その中では兵士が銃を構えていた。今日の記事にもあるように,ラオス領内には,4万人から5万人のベトナム軍が駐留していた。

現在のラオス政権の幹部11人のうち,10人はベトナム語が流暢に話せるという。多くのこの時代の若者は,ベトナムのハノイで勉強していたのだ。例外は,2006年の Eighth Party Congress で首相に選任された現在の Bouasone Bouphavanh 氏で,彼はモスクワで教育を受けた。1980年代の中国は,殆どラオスなどメコン下流に出てくることはなかった。

しかし,1990年代末より,その経済成長に伴って,中国は怒濤のごとくラオスに入ってきた。今日の Asia Times の記事は,このベトナムとラオスの関係,中国の進出,それに対するベトナムの感情,などが長文で記事にされている。

先日は,中国がカンボジアの水力開発に関して大きな支援をし始めたことがニュースになっていた。今中国は,ミャンマーのエネルギー資源を考えながら,ミャンマーへの投資を増やしている。中国のカンボジアへの進出とミャンマーへの進出には,何か繋がりがあるのであろうか。中国のミャンマーへの進出は理解出来るが,中国のカンボジアへの進出は,理解することが困難である。

中国がラオスに進出している。しかし,ベトナムは既にラオス南部に一定の基礎を築いており,更に,ベトナム,カンボジア,ラオスの三角地点には三国による開発体制が整っている。1970年代より,ホーチミンルートの建設を通じて,ラオス南部に於けるラオスとベトナムの協力には歴史がある。私は大きな関心があるのは,中国がラオス北部の開発に力を入れ,ラオスの南部をひとまずスキップしてカンボジアに入って来る手順についてである。

今,インド洋は,米国とインドの海軍によってコントロールされているという。アフリカへの支援を増やしている中国は,このインド洋を越えるために,セーシルなどの余り支援の理由のない国に,積極的に援助の手を伸ばしているという。そういう意味から考えると,カンボジアの港,特にシハヌークビルの整備は,余り進んでいない。中国は,カンボジアをどの様な位置づけで考えているのであろうか。

タイの政治情勢が緊迫してきた。サマック首相が,国王と会ってから一言も発していない。陸軍司令官は,サマック首相に退陣を迫った,というニュースが流れている。


本文

●三峡発電企業,国内メーカーに2プロジェクトで28機の発電機発注

1998年,三峡発電所の機器発注に際して,欧米のグループと日本企業のグループが激しく対立した。当時の李鵬首相を中心に,中国政府は慎重な審査の結果,欧州グループへの発注を決定した。その時,中国政府がコメントしたが,技術移転提案に於いて欧州グループに軍配は上がった,と言うことであった。1機700MWの大容量機器は,その後,円滑に中国企業への技術移転を全うしたのであろうか。

今日の記事は非常に短いが,三峡ダムを完成した三峡発電会社が,次の地点の機器を中国企業に発注したことを伝えている。発注された機器の規模は分からないが,二つのプロジェクトの26機の発電機器と書かれているので,規模は大きいと推定される。

中国の重電メーカーがどの様に育っていっているのか興味があり,調べてみたが,言葉の壁で十分に調べることが出来なかった。しかし,世界各地の水力発電所を手がけ,更にインドの機器製作にも中国企業が進出している事実は,中国の重電メーカーが順調に育っていっていることを意味しているのではなかろうか。

●ラオスの資源獲得に中国参入,ベトナム身構える

1990年,我々が比較的初期にラオスに入った頃,ビエンチャンの街角には土盛りが各所にあってその中で兵士が銃を構え,夜間は外出を禁じられていた。その頃は,ベトナム軍が4万から5万人,ラオスに駐留していたと聞いている。ベトナム戦争以来,ラオスのとベトナムの政治的経済的繋がりは深い。今日のこのアジアタイムスの長い記事は,その様なラオスとベトナムの関係に,深く楔を打ち込んできた中国の影響について,ベトナムが身構えている姿が,長文で書かれている。

ラオス政権の政治局員11人のうち10人は,ベトナム語を自由に操るという。殆どの局員がベトナムで教育を受けたからである。だから今でも,政治エリートの間の両国の結びつきは,硬いという。現在のラオスの Bouasone Bouphavan 首相は,2006年の第8回党大会で選ばれた。彼は政治局員の中で唯一,旧ソ連の教育を受けている。1954年生まれで,1975年の革命の時は,彼は21歳の学生であった。

今でもベトナムは,ラオスに対する投資に於いて,タイに次ぐ2番目の位置にある。両国は,通商に於いて,2010年に10億ドル,2015年に20億ドルに達する目標を持っている。今年,2008年8月12日にビエンチャンで開かれたベトナム - ラオスの投資会議では,177プロジェクトに12.8億ドルのベトナム投資が期待されている。PetroVietnam と Electricity Vietnam が,ラオスの水力開発に大きく関わっている。

中国は,今年にもメコン架橋で開通する南北回廊の建設に大きな役割を果たした。今年のメコン地域フォーラムでは,湖錦濤首席がラオスを訪問し,多くの協定が締結された。今や,水力建設に於いても中国が大きな役割を果たしている。特に中国は,鉱物資源や農産物に関心を示している。ベトナムとの間で投資合戦の様相を示してきた。

この記事の最後は,ラオスの前大統領 Kaysone Phomvihan の次の文章で結ばれている。「山は裸になるだろう,川は干上がるだろう,それでもベトナムとラオスの関係は永遠である。」。記事は続く。それは事実だろう。しかし,中国の影響は日増しに増している。ラオスは,今のところ,ベトナムと中国のせめぎ合いの中で,調和のとれた便益を謳歌している。

●フィリッピン,ERC,如何にして電気料金を下げるか,行動へ

何だか,的はずれな議論である,と言う気がする。セブとマニラで,電気料金に関する公聴会が開催された。そこで問題になったのは,電力の系統損失分を電気料金に上乗せしている件であった。その上乗せした料金の上に更に付加価値税がついている,と不満を述べている。損失に対する電気料金上乗せ分は95%で,これに更に税金が上乗せされて0.22%が増えている。これを免除しろ,と言っているが,少し道理が通らない。

●人民日報が伝える,WWF,気候変動問題への議論から実行へ

中国の人民日報が,先週,ストックフォルムで開かれたWWFの World Water Week symposium の模様を詳しく伝えている。WWFの新鮮水の供給の研究者である Jamie Pittock 氏は,バイオ燃料と水力開発について,次のように述べている。バイオ燃料の開発目標設定は,そのバイオを育てる水源の考慮をなくしては,ますます水源の危機を深めるだけである。また,水力発電のためのダム建設は,川の荒廃をもたらし,気候変動に影響を与える。


参考資料

2008年8月30日分

フィリッピン

●080830B Philippines, Manila Bulletin
ERC,如何にして電気料金を下げるか,行動へ
Energy body seeks ways to cut electricity rates
http://www.inquirer.net/specialfeatures/power/view.php?db=1&article=20080828-157326

ラオス

●080830C Laos, Asia Times
ラオスの資源に,中国とベトナムがにらみ合い
China and Vietnam square off in Laos
http://www.atimes.com/atimes/Southeast_Asia/JH30Ae01.html

中国

●080830A China English.people.com
WWF,気候変動問題への議論から実行へ
Better management of rivers and lessons for climate change adaptation
http://english.people.com.cn/90001/90781/90879/6489714.html
●080830D China, interfax
三峡発電企業,国内メーカーに2プロジェクトで28機の発電機発注
Three Gorges Project Corp. to use Chinese-made generators for two major projects


ー 日刊アジアのエネルギー最前線 2008年8月29日分 ータイとカンボジアのガス

「タイとカンボジアのガス」,昨年,2007年11月7日の私のメモを見ると,「タイ,10年間途絶えていたカンボジアとのガス共同探査,来年にも復活」,と書かれている。タクシン首相がカンボジアを訪問した頃だろうか。タイとカンボジアは,沖合の天然ガス田で,一部に領海問題があって,まだ解決していない。両国政府からそれぞれ企業に探査が発注されて,手が付けられない出光などの企業が困っている。

沖合天然ガス田で紛争が起こっているのは,今のところ,東シナ海の日本と中国であるが,タイとマレーシアは1990年に共同開発合意JDAに合意している。タイ湾の天然ガス包蔵は約15兆立方フィートで,タイは既に4兆立方フィートを使い切っている。今問題になっているオーバーラッピングエリアOCAの包蔵は5.4兆立方フィートと見られている。両国の政治情勢が,交渉の進展を遅らせている。

2007年11月7日の時点のメモ。タイの発電は70%がミャンマーも含めた近海の天然ガスである。タイは余りに天然ガスの頼りすぎることを警戒している,タイ人独特の危険への匂いを感じ取っているのだろう。タイの天然ガスの原価は今手元にないが,日本のLNGが100万Btu当たり7.1ドル,欧州の天然ガスが8.77ドルとして,平均値8ドルとすると,発電効率40%でKWh当たり燃料費単価は7.2セントぐらいになる。バレル100ドルまで値上がりした状態の場合石油は14.6セントにもなる。これに対して石炭は,トン100ドルとしてもわずかに2.8セントである。だから,タイは何とかして石炭火力を造りたいのだが,住民の反対で,開発が思うに任せない。

僅か9ヶ月間の状況であるが,大きく情勢が変わっていることに驚く。先日のインドネシアのタングーLNG基地の話で,LNGの価格が100万Btu当たり20ドル,発電単価に直すとKWh当たり17セントと出て,とてもガスは発電に使えない,と心配した。パイプによる天然ガスとLNGでは比較が難しいが,それでも天然ガスとLNGはかなり連動している。シンガポールにいる私の友人は,LNG価格について,次のように解説してくれた。

LNGには原油のように取引されている市場がないので,生産国と受入国との相対契約で決まります。(天然ガスにはアメリカに Henry Hub という市場がありますが,アメリカだけの取引で WTI のように影響力はありません)。同じカタールのLNGでもインドやパキスタン向けと日本,韓国向けでは全く価格が違います。お金持ちには沢山払ってもらうという所でしょうか?」。

タイの政治状況,首相府占拠5日目に,上下両院31日に緊急議会,とタイトルして,サマック政権の連立与党は29日夜,代表者会議を開き,31日に上下両院が緊急議会を開いて対応を協議することを決めた。連立与党内からもサマック首相に事態収拾を求める圧力が強まっている。としている。


本文

●タイ湾のガス田問題,カンボジアの交渉行き詰まり

タイの天然ガス包蔵量は33.3兆立方フィートと推定され,4兆立方フィート超が発電事業に使われてきた,と私のノートの書かれている,2007年11月のメモである。このときにカンボジアとの問題にも触れている。曰く,「100年以上とぎれていたカンボジアの境界線上の9ブロックについて,カンボジア政府との間で,開発協力の協議を開始したわけである。」,と。しかしその後進展がなかった。このカンボジアとの国境付近のブロック図は,私のHP上のグーグルマップに落とされているので見て頂きたい。

さて今日の記事であるが,政治的混乱の中で,タイの鉱業燃料局長のクライリット氏が,なかなか進まない交渉について述べている。経緯を見ると,1995年にこの境界付近のガス埋蔵が確認され,2001年に両国の首相が交渉開始の文書に署名している。この地域のブロック5と6について,オーバーラッピングエリアOCAと称して協議の対象となってきた。26,000平方kmである。

問題は,1968年にタイ政府が,出光,シェブロン,英国ガス,三井石油に探査を命じているが,これに1997年になってカンボジア政府が同じ場所にコノコフィリップス,シェル,出光に探査を発注したことである。このため発注された企業は未だに探査に入れないでいる。このOCAの包蔵は5.4兆立方フィートと推定されている。

今回会見したタイのクライリット局長とカンボジア駐在のビラファンド大使は,この解決のためには,1997年に領海の条約が成立したタイとベトナム,1990年に合意したタイとマレーシアの共同開発合意JDAなどの方式が参考になる,と考えている。

●フィリッピン,マニラ配電,500百万ペソの配当を実施

エドワルドグラスと言う人は,セブ選出の国会議員なのか,痛烈な口調でマニラ配電の経営陣を非難している。この8月26日に,マニラ配電経営陣11人に総計560百万ドル,約15億円相当の配当配分の決定がなされた,それも5月13日に配分された557百万ペソに更に上積みされたものである。この配分の前に,まずマニラ配電は,28億ペソに上る需要家への払い戻しを行うべきではないか,としている。

●フィリッピン,専門家筋,ネグロスは水力発電の宝庫と

ネグロス島は,フィリピン中部のヴィサヤ諸島にある島で,フィリピン4番目の大きさの島である。特に,フィリピン一の砂糖生産で有名。面積は12,706平方km,とウイキペディアに書かれている。送電系統図を見ると,ビサヤ系統に繋がれている感じである。主要都市はパナイ島との海峡に面したネグロス・オクシデンタル州の州都バコロド,人口42万9千人,とセブ島,シキホル島に面するネグロス・オリエンタル州の州都ドゥマゲテ,人口10万3千人である。

何か突然に現れたオーストラリアのエンジニアー,シャープ氏が,オリエンタル州のイシドロ知事に会って,水力開発を提案したと言う記事である。古くからの友人がそこにいて調査を行ったが,非常に大きなポテンシャルを持っているので,民間投資を招いて開発しよう,とけしかけている。我々もなかなかこのような島に関心を持つことは少ないので,いろいろ資料を見てみるのも面白い。

島の東部は低い山々が海岸まで迫る地形になっている。一方、島の北部と西部は広い平野になっており、サトウキビ畑が広がっている。島北部のカンラオン火山(Canlaon Volcano、標高2465m)はバコロドの街の近くにそびえ、時おり活動する。島南端にはクエルノス・デ・ネグロス山(Cuernos de Negros、「ネグロスの角」、標高1864m)という成層火山がある。

●インドネシア,PLN,プルタミナへの未払い金,2006年から,35兆ルピア

何かひどい話ですね,昨日はタングーのLNGの契約が問題になっていたが,今日は国会に呼び出されたプルタミナのフレデリック財務部長が,委員達の質問に答えて,「イエス,PLNは2006年からの燃料費40兆ルピアのうち5兆ルピアを払っただけで,後は信任状を出しているだけだ」,と暴露している。


参考資料

2008年8月29日分

タイ

●080829A Thailand, Bangkok Post
タイ湾のガス田問題,カンボジアの交渉行き詰まり
Thai-Cambodian oil talks stall
http://www.bangkokpost.net/290808_Business/29Aug2008_biz30.php

フィリッピン

●080829B Philippines, Manila Bulletin
マニラ配電,500百万ペソの配当を実施
Meralco to pay P560-M cash dividends
http://www.mb.com.ph/BSNS20080829133699.html
●080829C Philippines, newsinfo.inquirer
専門家筋,ネグロスは水力発電の宝庫と
Expert says Negros ideal for hydropower
http://newsinfo.inquirer.net/inquirerheadlines/regions/view/20080828-157431/Expert-says-Negros-ideal-for-hydropower

インドネシア

●080829C Indonesia, The Jakarta Post
PLN,プルタミナへの未払い金,2006年から,35兆ルピア
Power firm PLN owes Pertamina Rp 35 trillion
http://www.thejakartapost.com/news/2008/08/28/power-firm-pln-owes-pertamina-rp-35-trillion.html-0


ー 日刊アジアのエネルギー最前線 2008年8月28日分 ー戦争の方が簡単

「戦争の方が簡単」,と皮肉られているのは,ネパール共和国最初の首相に就任した,我らが,「アジア開発4人男」,の一人,毛派のプラチャンダーである。これからはプラチャンダーと呼んではいけないのかな。これは彼自身が自分に付けた渾名で,ネパールのならず者,と言う意味である。正式の名前は,プシュパ・カマール・ダハール首相である。彼は従来の慣習を無視して最初の訪問国に中国を選んだ。

毛派は選挙に当たってのマニフェストで,年20%の経済成長と45万人の新規雇用を約束し,今回の中国訪問でも,ネパール全土東西の鉄道敷設とハイウエーの建設,それと平行しての水力開発,を主張しているが,彼のこの空想するユートピアの実現は大変で,完全な外国資本の自由な参入を保証しても,なお難しい課題で,このユートピア実現よりは,彼にとっては戦争の方が簡単だろう,と記事は皮肉っている。

今日の記事にあるように,シノハイドロなどのダム建設グループが,雪崩を打ってカンボジアに流れ込んでいる。楊外交部長が10億ドルの現金を携えて企業をうち連れ,フンセン首相を喜ばせている。フンセンも,中国は内政干渉しないから有り難い,と漏らしているが,そういえばJICAのカンボジア国別援助方針の最初の章は,相手政府のガバナンスで始まっている。

ネパールの場合は,どうしてもインドと中国の関係が微妙である。ネパールで造る電力は,ネパールで消費するよりも,目的はインドの電力需要に対応することだから,インドがその電力を買わなければどうしようもない。インド企業が,その開発では優位に立つだろうが,今回,インドよりも先に中国を訪問したプラチャンダーが今後インドとの外交をどの様に展開し,中国とのバランスをどの様に取るか,関心を持つべきである。

タイ,バンコクの情勢だが,首相府占拠,タイ首相,「強制排除,当面せず」,とされており,サマック首相が隠忍自重している姿が目に浮かぶ。どうもサマック首相は軍部と密接に連絡を取りながら,事に当たろうとしているようだ。彼は,1876年の軍部のクーデターで,大尉として仕掛け人ではないか,と言われていることや,1992年の軍の介入が内閣崩壊をもたらしたことをよく知っているので,慎重なのであろう。

原油価格に及ぼす二つの重要なニュースがある。低気圧グスタフは28日,ハリケーンに近い勢力でジャマイカを直撃。カリブ諸国で少なくとも59人の死者が出ている。今後、強力なハリケーンとなってニューオーリンズやメキシコ湾岸の石油施設へ向かうと予想されている。それと,グルジア問題で先鋭化するロシアの動きである。冷戦の再開も躊躇わず,と言うからすごい。グルジアは,東西のエネルギーの要衝である。


本文

●ネパール,プラチャンダ,北京訪問,ネパール東西を鉄道連結構想

ネパール共和国初の首相に選ばれた毛派のプラチャンダー,従来は新首相の最初の訪問国はインドと決まっていたが,この我らが,「アジア開発4人男」,の一人,プラチャンダー,「ネパールのならず者」,正式な名前はプシュパ・カマール・ダハール,は,北京を最初の外国訪問先に選んだ。世界にはびこった毛沢東派のグループ,遂に平和的に政権を取って,湖錦濤の前に現れたわけである。

北京訪問については,おそらく政治的な意味というか,毛派として政権を取りましたよ,と言う挨拶だろうが,そこにネパールの開発問題が横たわっていることは間違いない。インドによる開発以外には手だてがなかったネパールだが,ここに競争相手としての中国の動きがクローズアップされてくるだろう。同じ毛派の知識派,財務大臣に就任したバッタライ氏を伴っているが,開発については,ネパール全土東西間の鉄道敷設,ハイウエー建設,水力開発,新空港の建設,などをひっさげて北京に来ている。

毛派が選挙に勝った公約の主題は,年20%を越す経済成長の達成と,当面45万人の雇用実現,と途方もない民衆への約束である。これから,プラチャンダーは,これらの公約に取り組む必要があるが,外国資本の受け入れ以外には方法がない。それをすんなりとプラチャンダーが受け入れられるかどうか,である。この記事は厳しいことを書いている。「プラチャンダーは,約束したユートピアの実現よりは,戦争を仕掛ける方がどれだけ簡単か,そのうち思い知るだろう。」,と。

●メコン河委員会,最近の洪水について,討議の場

メコン河委員会MRC,その28次年次総会が,加盟国の他,協力国や機関を集めて,ビエンチャンで始まっている。今回の委員会の主宰は,タイ政府,天然資源環境省次官のサクシット博士である,メコン河委員会のタイ国内委員会の委員長でもある。今回の主題は,地域関係者の広範な議論を,流域内の水資源環境の持続的開発と渇水対策,と銘打っている。

しかし,議論は,最近起こった急激なメコン河の水位上昇によって洪水被害が出たラオスとタイの沿岸の問題であろう。一部の環境団体は,上流,中国領内で進むダム開発の影響が大きい,と主張しているが,MRCや関係政府は,ラオス北部を通過したモンスーンの影響で,直ちに中国のダムと結びつくことは否定している。しかし,中国領内ダムの情報の透明化については,いずれの公的機関も必要と思っている。

●カンボジア,カルダマン山地,ダム建設不透明,多くの立ち退きが必要

再びカンボジアの西南,カルダマン山地に繰り広げられる中国企業による荒っぽい水力プロジェクトの開発が取り上げられている。記事は主として,国際的な環境NGOであるコンサベーションインタナショナルのカンボジア代表センブンラ氏の語るところを中心に書かれている。中国のダム支援は年間6億ドルに上って,他の日本を含めた欧米支援国のそれと同額まで来ている。先日も中国の楊外交部長が,10億ドルで,スタンタタイとスタンタラッセイチュルムコルムの二つの水力開発を約束している。

このセンブラ氏が問題にしているのは,フンセン首相を初め,関係先の環境省や工業鉱山エネルギー省が,全く情報を公開せずに受け入れを決定していることである。フンセン首相に至っては,中国の支援は内政に全く干渉しない優秀な支援だ,とまで言っている。そう言われれば日本などは,まず相手政府のガバナンスから問題にして行くから,とてもやりにくいのだろう。

センブラ氏の言うダムプロジェクトの名前と水没する森林などの数字を上げると,アレン川開発で2万ヘクタールの森林と1,500人の原住民,もっとも原住民は水没する前に移住する,シノハイドロによるカムチャイの280百万ドルのダムは2,000ヘクタール,アタイダムの5,193ヘクタール,などである。センブラ氏も具体的な被害は指摘していないが,ただ情報公開を要求している分けである。

一気に中国勢がダム開発に入ってきて,カンボジアの開発前線は一挙に変わった様相になってきたが,日本などが遠慮して手を付けることが出来なかったプロジェクトに中国企業が入ってくることは,寧ろ開発が進むと言うことで歓迎すべきだが,中国も今のうちで,そのうちに環境問題がクローズアップされると,世界の批判を浴びることになる。

それともう一つ言及が必要なことは,我々はあのカルダマン山地は,日本大使館などが極度に地雷の危険性を警戒したわけで,全土のエネルギー調査は実際問題出来なかった。中国は,あの危ないイラクにも入っていって今や有利な原油の契約を取り付けている。これは何なのだろうか。

●パキスタン,計画委員会,ムンダ多目的とタルベラ嵩上げを取り上げる

政治の混乱の中,計画委員会の開催が遅れ,2ヶ月半ずれ込んで,9月18日に,開発作業部会CDWPが開かれる。ここで決定されるプロジェクトは,JICAも関係のあるムンダ多目的ダム74万KWの詳細設計,PCIIと,既設タルベラダムの増設96万KWで,タルベラはこれで合計3,478MWになる。コンサルタントは国際入札だ。

●インド,キナウル水力の土地取得問題,閣議決定を覆すか

またまたインドのダムの訴訟である。場所がさっぱり分からないですね。シムラのニュースだからサトルジ川,バクラダムの上流であることは確か。もう少し調べて地図に載せます。100万KW,キナウルの近く,カルチャム - ワントー水力プロジェクトの話である。この辺りはトライブ地区で,特別に保護されている住民の村落がプロジェクト領域にあるらしい。中央政府が取り上げて,開発する民間企業に土地を渡した。

これに対してトライバルの関係機関から,法律に則り最高裁に向けて州知事の許可が必要なことを再確認したい,としている。その法律がまたなかなかのもので,全くインドらしい展開である。これではインドの水力開発もたまらんですね。

V schedule provision, “Acts of Parliament or of the appropriate legislature apply to the scheduled areas of their force, but the Governor has the power to exclude their operation by a notification.”


その他

●ベトナム,ハノイの市内,まだ電気の届かない場所がある


参考資料

2008年8月28日分

ベトナム

●080828A Vietnam, thanhniennews
ハノイの市内,まだ電気の届かない場所がある
Electricity out of reach for some in Hanoi
http://www.thanhniennews.com/features/?catid=10&newsid=41530

パキスタン

●080828B Pakistan, Daily Times
計画委員会,ムンダ多目的とタルベラ嵩上げを取り上げる
CDWP to take up revised Munda, Tarbela extension projects
http://www.dailytimes.com.pk/default.asp?page=2008%5C08%5C28%5Cstory_28-8-2008_pg5_13

ネパール

●080828C Nepal, Washington Street Journal
プラチャンダ,北京訪問,ネパール東西を鉄道連結構想
The Prachanda Path
http://online.wsj.com/article/SB121985913495976891.html?mod=googlenews_wsj

ラオス

●080828D Mekong, enews.mcot.net
メコン河委員会,最近の洪水について,討議の場
Mekong River Commission discusses recent flooding Meeting
http://enews.mcot.net/view.php?id=5964

インド

●080828E India, himachal.us
キナウル水力の土地取得問題,閣議決定を覆すか
Kinnaur Manch Petitions Himachal Governor To Overturn Cabinet Decision Usurping
http://himachal.us/2008/08/26/kinnaur-manch-petitions-himachal-governor-to-overturn-cabinet-decision-usurping-tribal-lands/6180/general/ravinder

カンボジア

●080828F Cambodia, irinnews
カルダマン山地,ダム建設不透明,多くの立ち退きが必要
Hydropower projects lack transparency, could displace thousands
http://www.irinnews.org/Report.aspx?ReportId=80010


ー 日刊アジアのエネルギー最前線 2008年8月27日分 ーLNGは20ドルに

「LNGは20ドルに」,になっているのか,と今日のインドネシアの記事を見て驚いた,百万Btu当たりの話である。数ヶ月前に日本を訪問したインドネシアのエネルギー大臣プルノモは,日本へのLNGの減量方針を告げたわけであるが,その時,後の記者会見で口ごもりながら,LNG価格としては16ドルを考えている,と話し,我々に衝撃を与えたものである。

2002年のメガワティ大統領の時代に,新しい天然ガス開発を目指していたパプアのタングーLNG基地で,中国の福建省との間で,百万Btu当たり2.4ドルと言う当時でも極端に安い価格で25年間のLNG供給契約が行われた。当時でも,アチェなどからの日本向けは6ドルぐらいではなかったか。今になって,「アジア開発4人男」,の一人,カラ副大統領が,あの契約は怪しい,と問題を提起して大混乱になっている。ゴルカルとPDIの政党間の政争だとは見られているが。

このLNGの百万Btu当たりの電力生産価格を計算してみると大体KWh17セントになる。先日,原油や鉄鋼がやっと下がり始めた,原油はバレル145ドルが115ドルに下げている,とこの欄でも書いたが,115ドルの原油を電力生産価格に換算するとこれも大体17セントである。17セントの燃料費に耐えられる電気料金を持った国はアジアで三国,日本,フィリッピン,カンボジアだけである。

こう考えると,アジアのこれからの電源開発は,石油や天然ガスではもう駄目だ,と言うことで,完全に,石炭,水力,原子力の三つしか選択肢がないと言うことになる。天然ガスが70%を占めてきたタイの懸念が現実のものになってきた。東南アジアの原子力開発にはまだ10年はかかる。当面,この10年を考えると,どうすればよいのか,自ずと国によってエネルギー政策が決まって来る,と言うことだ。

フィリッピンでは,プール取引市場の高騰,それも桁違いのKWh70セント近い瞬間値を示して,この後始末に追われている。変電所の事故が原因の一つだが,比較的石油発電所の多いフィリッピンも,これからは石炭の輸入による発電を目指す必要があり,このような不安定な取引の中で配電会社が泳いで行くためには,自分で揚水発電所を持って価格変動に対応することが現実問題として浮かび上がってくる。

タイの政治の混乱,日経は,「タイ民主化,再び正念場,反政府指導者らに逮捕状」,とタイトルを付けて,いよいよ警察の介入が始まったことを報じている。軍が,介入の可能性を問われて,我々軍は動かない,警察の問題だ,と発言したが,これが一つの契機となって警察が介入し,有力者の逮捕に繋がって行くようだ。それで収まるようなタイの人々とは思えないが。

インド,今日の朝日新聞は,米印原子力協定に於ける供給国グループの中で,日本は条件付きながら,協定に同意することを決議したようだ,と報じている。もっとも大きな要因は地球温暖化,と言っているが,米中露仏などの原子力の,「旦那様型が賛成なら反対しても仕方がない」,と漏らしている。私は,インドは原子力開発を積極的に進めるべきだと言う意見である。


本文

●中国政府,石炭価格の抑制阻止を考慮中

夏,それもオリンピックを乗り切った中国の電力需給は,いよいよ次の冬の陣を迎える。強力に国のエネルギー政策をリードする発展改革委員会NDRCは,発電用石炭価格の強力な規制に乗り出すことを示唆した。具体的にどの様な措置を執るのか,詳細は述べていないが,続いて2度も上げざるを得なかった電気料金への対応と呼応して,石炭価格への強い介入を示唆したものだ。

中国の石炭は,世界の可採埋蔵量98,457億トンのうち11.6%の11,421億トンを有して,米国,ロシアに続いて第3位の石炭国。2006年の石炭使用量は23.8億トン,2007年には24億トンを超え,エネルギー使用の70%近くを石炭に頼っている。2008年になって,弱小炭坑の閉鎖や豪雪の影響,価格高騰による売り惜しみなどで,未曾有の電力危機を招いた。

中国政府は,価格高騰による人為的な要因が石炭不足を招いたと見て,電気料金を2度にわたって上げてきたが,この記事によると,電力河の不満が多い。備蓄量がどうしても増えないことと,送られてくる石炭の質の悪化に悩ませられているという。まだ政府の具体的な政策は打ち出されていないが,石炭の価格を強制的に抑制することが,果たして石炭供給の改善に結びつくのかどうか,私には読めない。

●フィリッピン,エネルギー省,昨年9月のWESM急騰で,料金適正処理を要請される

フィリッピンが先鋭的に取り入れている電力卸売市場WESM,何が起こるか分からない電力プール市場取引は,既に我々もカリフォルニアで見てきたことだが,フィリッピンでも先月に起こった急激な市場での値上がりに対して,いよいよマニラ配電が9月の需要家への請求書にそれを上乗せしなければならない日が迫ってきたわけである。KWh1.0ペソ,約2.17セント相当,になるという。

これは,50万ボルト開閉所であるサンホセの変電所で200MVA変圧器の事故によって送電が混乱し起こったもので,確か先日の記事では,最高ではKWh当たり瞬間的に70セント近くまで取引値段が上がったとされている。この状態はまだしばらく続くもので,サンホセ変電所の修復のために送電公社は,パンガシナンの変電所から変圧器を移送しようとしている。

この取引市場の異変に対して,大口需要家からなる産業界からは,エネルギー省自体が何らかの判断を行わなければならない,と迫っているのが今日の記事である。既に異常時の対応については,WESMの規則にあるわけであるが,電気料金を監督する立場のCERMは,このようなケースでCERMが介入すれば,取引市場の自由化の原則が犯されると介入を拒否,そこでエネルギー省の出番とならざるを得ないと言うのである。電力自由化の基本的問題を浮き彫りにしている。

●パキスタン,電気料金を30%値上げの様相

政治的混乱が続くパキスタン,ムシャラフ去って開発気運が去り,政府の財政運用が大きな問題として浮上してきている。原油の高騰で圧迫されている電力会社の運営のための,30%と言う大がかりな電気料金の値上げが必要だ,と観測気球を上げてきた,30%とは大きい。

カテゴリーによるが,KWh当たり1.4ルピー,約1.85セント相当,から4ルピー,1.85セント相当,の幅になる。今大統領選挙が迫り,政党間の駆け引きにも影響してくるだろう。政府はこの他にも多くのエネルギー補助金を抱えており,舵取りが大変である。

●インドネシア,メガワティ時代のLNG不正問題,プルノモ大臣が苦境

大きな政治問題化している。2002年のメガワティ大統領時代に,パプアのタングーLNG基地から中国の福建向けのLNGの契約に於いて,百万Btu当たり2.4ドルというとんでもない安い25年間供給契約をした責任は誰にあるのか,と我らが,「アジア開発4人男」,の一人,カラ副大統領が問題を提起して,メガワティを攻撃している。困っているのは,プルノモ大臣で,彼はメガワティ時代にもエネルギー大臣であった。

このタングーLNG基地は14.4兆立方フィートと言う莫大な包蔵を持っているとされ,英国のBPが生産に当たり,2008年末か2009年初めにも生産開始の見込みで,中国との間では再交渉の話し合いが行われているものである。記事によると,最近のLNGの国際市場では百万Btu当たり20ドルという値が書かれており,先日プルノモが日本に来て,言いにくそうに16ドルを提示したところであるが,もう20ドルの声がかかっているのか。

ところで,この問題は完全に政治問題である,と記事は解説している。カラ副大統領は最大勢力を持つ政党ゴルカルの党首であり,一方メガワティは第2の勢力PDIーPの党首,どちらも来年の大統領選挙に向けて,ここで政治的党争の材料として,タングーのLNGが使われていると見る。


参考資料

2008年8月27日分

パキスタン

●080827A Pakistan, Daily Times
パキスタン,電気料金を30%値上げの様相
Electricity prices likely to be increased by 30 percent
http://www.dailytimes.com.pk/default.asp?page=2008%5C08%5C26%5Cstory_26-8-2008_pg1_10

フィリッピン

●080827B Philippines, Manila Bulletin
エネルギー省,昨年9月のWESM急騰で,料金適正処理を要請される
DoE asked to act on WESM dilemmas
http://www.mb.com.ph/BSNS20080827133542.html

インドネシア

●080827C Indonesia, The Jakarta Post
メガワティ時代のLNG不正問題,プルノモ大臣が苦境
Purnomo blames LNG debate on politicking
http://www.thejakartapost.com/news/2008/08/27/purnomo-blames-lng-debate-politicking.html

中国

●080827D China, Reuters
中国政府,石炭価格の抑制阻止を考慮中
China to bolster coal price cap enforcement -paper
http://uk.reuters.com/article/oilRpt/idUKSHA3972920080827


ー 日刊アジアのエネルギー最前線 2008年8月26日分 ークーデターはあり得ない

「クーデターはあり得ない」,とタイの陸軍司令官は言っている。タイは我々にとっても関心の深い国である。ラオスやカンボジア,更にはミャンマーからの電力やエネルギーを安定的に買ってくれるクライアントでもある。本当に最近のタイの政治情勢は情けなくなってくる,これがあの1990年初めに,タケノコの生えるようにビルが毎日林立して成長していたバンコクかと思う。

サマック首相が我慢に我慢を重ねている。強硬手段に出るとどの様なことになるか,最近はよく分かってきたようだ。タイの民主主義は複雑である。一般民衆の政治活動が自由であり,何処でも反対運動が巻き起こる。国民が我慢できないなあ,と思うタイミングを見定めたかのように軍隊が出てくる,対立が余りにひどくもう国民が望んでいる,と思われるタイミングで国王が出てくる。

このような国民性の中で,数年前には結局政府は石炭火力を諦めた。今のところは電力需給は落ちついているが,割合が増えて行く天然ガスへの依存度で,国内での石炭火力が困難な場合は海外に頼るしかない,と思い定めて,ラオスの水力,ミャンマーの水力,カンボジアの石炭火力,と手を伸ばしている。しかし,「アジア開発4人男」,の一人サマック首相は,カンボジアの国境問題や,ミャンマー軍事政権への批判に悩まされている。

この状態の中で,原子力政策を進めることに踏み切ったわけである。我々仕事仲間の中でも,東南アジアの中で原子力発電を最初に成功させるのはベトナムかタイか,で議論を呼んでいる。私はベトナムが先だろう,と言っているが,多くの人はタイではないかと言っている。タイのこのような民衆のエネルギーを見ていると,原子力発電どころか石炭火力も危うい現状ではある。

パキスタンも混乱している。最近は大規模ダム建設の記事が減ってきた。懸命に進めて電力不足への国民の不満を和らげようとしたムシャラフが去って,今,連立を組もうとした主要政党が再び対立に向かい,安定政権を望むことは難しい情勢だ。指導者の一人シャリフは,テロとの対決に踏み切ったようだが,国内の政治混乱で,とても大ダム事業への外国資本の進出が困難になりそうだ。

一気に下落に向かったニューヨーク原油が持ち直している。140ドル台から100ドルまで一気に下がるであろう,と見たインドネシアなど,じっとこの情勢を見守っているのだろう。昨日は,116ドル台まで戻ってきたと報じられている。ハリケーンのメキシコ湾の石油関連施設への影響への懸念とか,グルジア情勢が,この原油価格踏みとどまりの原因と書かれている。バレル116ドルは燃料の発電単価で17セントに相当する。


本文

●インド,NTPC,5,000万KW企業への準備,250億ドル起債要請

インド有数の国営発電企業NTPC,国の第11次五カ年計画,2012年までに新規70,000MWの設備拡充計画に呼応すべく,現在約30,000MWの設備を,2012年までに50,000MWへ,更に次の5年,2017年までには75,000MW企業まで成長させる計画である。現在進行中の大規模石炭火力UMPPの重要な一端を担うべく,準備を進めている。

NTPCによるECB,即ち,外部民間資金借り入れには上限が付されている。それは年間5億ドルでシーリングされているのである。これを取っ払わねば,NTPCの考えている設備投資は不可能である。NTPCは電力省に対して,2012年までの設備投資に対して250億ドルの借り入れ申請を行ったものである。NTPCは本来火力発電の企業であるが,最近は水力や原子力への進出も視野に入れている。

●フィリッピン,エネルギー省,ココナツメチール計画,加速を要請される

フィリッピンのバイオ燃料については,東南アジア諸国がその成り行きをじっと息を詰めながら見守っている。原油の高騰で最初に影響を受けたのは資源に恵まれないフィリッピンで,早速に,ココナツからとれるメチル油を自動車のガソリンの中に2%以上混入させることを法律で決めてしまった,それも2009年,来年の2月までに完全実施である。果たして現実になるのか,他の国が見守るのも無理はない。

この法律を受けてフィリッピンの農民は,ココナツ栽培に拍車をかけている。ココナッツの栽培の加速で価格が落ちてきており,フィリッピン産業連盟FPIは,農民への影響を考えて,来年2月の実施予定を前倒しするよう,エネルギー省へ要請したものである。

今日の記事の中に出てくるジャトロファ,ナンヨウアブラギリ,桐の木の一種と思われるが,この種子がバイオ燃料として国際的な注目を浴びている。この記事では,その油質についてまだ十分に研究が完成していない,と書かれているが,栽培が容易なうえ,食料価格に悪影響を与えない利点があり,日本企業や欧州のメジャー(国際石油資本)が相次いで大規模な栽培・精製事業に乗り出す模様。インドネシアでは大統領令でこのジャトロファの商業化を目指すことになっている。

バイオ燃料は,ココナツも含めて,その燃焼にはどこかの過程で温暖化ガスを排出するので,バイオ燃料を温暖化ガス抑制のための再生可能エネルギーと位置づけるのは間違っている。それよりも,農業への影響が大きくて,どこかに必ずしわ寄せが来ると思う。フィリッピンでも農民が今までの農業を捨ててココナツ生産に切り替えることが始まっていて,これも東南アジア諸国が,疑念を持って見守っている点である。

●フィリッピン,第2四半期,マニラ配電のNPCからの買電による供給が6.7%増大

フィリッピンのルソン系統で不思議な現象が起きている。マニラ配電MERALCOが発表した財務報告であるが,マニラ配電が調達した,2008年4月〜6月までの電力量は,昨年同期よりも30.5%増大した,昨年同期の率は23.8%であった。マニラ電力の電力購入先は,直接契約のIPPとNPC,それに卸売市場のWESMからであるが,IPPから46.1%,NPCから14.7%である。

ただ問題は,NPCからのKWh当たり買電単価が,2007年の5.73ペソ,約12.47セント相当,から2008年は4.44ペソ,約9.67セント相当,と22.5%も安くなったことである。この理由は,為替レートでの自動調整で0.71ペソの影響が出たことである。またWESMでも,昨年8.47ペソ,約18.44セント相当,であったものが,今年は5.37ペソ,約11.69セントまで下がっている。この理由は,発電所の稼働率が上がったことと,需要が5月の低温のために少なかったことが原因としている。

アロヨ大統領の焦っている電気料金,この四半期はかなり大きな変動があったが,いずれも一時的な要素に支配されており,これからどの様に動いて行くか,フィリッピンの電力セクター改革の正否がかかっている。

●インドネシア,PLN,電力節減で,ショッピングモールと再交渉へ

相変わらず需給の危ない橋わたりを演じているジャワバリ系統であるが,ラマダンが迫ってきた状態で,PLNとしては何としてでも600MW程度の需要カットを行いたいとしている。製造業などにはシフトを変更するなどの規制をかけるべく立法中であるが,これによっては180MW程度しか期待できない。今,PLNが規制を考えているのは,ショッピングセンター,ホテル,事務所などである。

PLNはこれらの施設が,夕方5時から夜10時までの5時間,自家発電機を使用することを規制化しようとして,企業連合体の猛反対を受けている。自家発にすることによる経費増に耐えられないと言うわけである。PLNはこの処置によって200MW節電できると考えていて,何としてでも,25%ぐらい需要が増えると見られているラマダンが始まるまでに決着したいとしている。


参考資料

2008年8月26日分

フィリッピン

●080826A Philippines, Manila Bulletin
第2四半期,マニラ配電のNPCからの買電による供給が6.7%増大
Meralco supply purchases from NPC jump by 6.7% in 2nd quarter
http://www.mb.com.ph/BSNS20080826133442.html
●080826B Philippines, Manila Bulletin
エネルギー省,ココナツメチール計画,加速を要請される
DoE asked to accelerate sale of higher CME biodiesel blend
http://www.mb.com.ph/BSNS20080826133436.html

インド

●080826C India, Economic Times
NTPC,5000万KW企業への準備,250億ドル起債要請
NTPC approaches govt to raise ECBs worth $25 bn
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Power/NTPC_approaches_govt_to_raise_ECBs_worth_25_bn/articleshow/3403824.cms

インドネシア

●080826D Indonesia, The Jakarta Post
PLN,電力節減で,ショッピングモールと再交渉へ
PLN to renegotiate power use with malls
http://www.thejakartapost.com/news/2008/08/26/pln-renegotiate-power-use-with-malls.html


ー 日刊アジアのエネルギー最前線 2008年8月25日分 ー白煙もうもうのトルーマン車

「白煙もうもうのトルーマン車」,先日深夜,東京裁判,東条さん達が絞首刑になる番組で申し訳ないが,テレビを見ていて笑ってしまったのは,1943年頃,ルーズベルト大統領の死去で大統領となったトルーマンが再選を果たして今からパレードに移るシーン,トルーマンが足をかけて乗ろうとするそのキャデラックのオープンカーは,白煙をもうもうと吐き出している。今度の北京のオリンピックでオリンピック委員会が事前調査で,この大気汚染の元では屋外競技は不可能である,と断じようときに,北京政府は,大気汚染対策として122億ドル,約1兆円相当を投入することで,委員会を納得させたという。

中国のエネルギーの一番の問題は石炭主導であることだ。世界の石炭埋蔵量のうちその13%を国内に持ち,2006年の石炭消費量は24億トン,国内のエネルギー消費の69%が石炭で,そのうち75%が火力発電に使われている。第11次五カ年計画では,2010年時点で,GDP当たりのエネルギー消費を20%削減することと,2020年までに全体のエネルギー消費の20%を再生可能エネルギーで代替する,そのために1,800億ドル,約18兆円相当を準備する,としている。まさに,オリンピックが大気汚染対策の初年度というわけである。

中国の再生エネルギーは多岐に亘るが,バイオ燃料にも国土が広いことから相当の力が入っている。しかし,最近はバイオ燃料が食糧高騰の元凶と見られて,批判の対象になっている。私は,このような面的なエネルギー源は有効ではないと思うし,バイオの場合は明らかに炭酸ガスを発生する。元々植物が取り入れた酸素だ,と言われても,それは誰も納得できないだろう。一旦閉じこめたなら閉じこめておかないと駄目だろう。また人類に継ぐ将来の地球上の生物が,数千万年後に燃料に使ってくれる,と考えるべきで,我々がすぐに使うのは違反ではないか。

中国の計算を見ると,明らかに中国の再生可能エネルギーの中には水力も含まれている。今日の記事では,水力も貯水池がメタンガスを発生するので問題だ,と書かれているが,これはまだよく分からない。資源エネルギー庁の資料を見ると,ラオスのナムニエップ水力のCDM評価でこのガスが問題になったと書いてある。これは実際に測定すればよいことなのだが,誰も,分からない分からない,と言うばかりである。

私は,揚水発電を始めた頃に,貯水池の富栄養化を研究したことがあったが,メタンが出るかどうかは,おそらく貯水池によるだろうと思う。それと,メタンガスを出すポテンシャルがあると言うことと実際に出ると言うこととは別問題のような気がする。おそらくこの方面の研究者は,貯水池の中に含まれる植物や木材の量を計算しているのだと思う,実際にはメタンガスを測定していないだろう。多くの大規模貯水池や小規模の揚水発電用の貯水池を持つ電力会社は,この辺りで実測して欲しい。インドの水力開発には,この問題が出てきている。

中国石油化工シノペック,今やアジア石油精製最大手だが,2008年6月中期決算で原油価格の高騰から,石油精製事業の赤字が響き,純利益が77%減少したという。最近,中国経済の問題が,インフレ懸念から成長鈍化の問題に移ってきたようだ。オリンピック注に手が打たれると言われた景気浮揚策については,まだ何の発表もない。難しい舵取りを迫られているのであろう。


本文

●中国のオリンピック以降,大気汚染抑止に大きな機会

オリンピック委員会が,北京を2008年の開催地に決定する直前,北京など中国の都市部では大気汚染のために屋外競技は困難である,とのコメントを出した。これに対して北京政府は,オリンピックの大気改善のために122億ドル,約1兆円を投ずる,と確約してオリンピック委員会の同意を得た。その結果,一時的には大気汚染改善に大きな効果が出たが,このもティべーションが,どの様に持続されるか,この記事は論じている。長文で,中国が第11次五カ年計画で実施しようとしている再生可能エネルギーについて,総括的に論じている。

中国のエネルギーの一番の問題は石炭主導であることだ。世界の石炭埋蔵量のうちその13%を国内に持ち,2006年の石炭消費量は24億トン,国内のエネルギー消費の69%が石炭で,そのうち75%が火力発電に使われている。第11次五カ年計画では,2010年時点で,GDP当たりのエネルギー消費を20%削減することと,2020年までに全体のエネルギー消費の20%を再生可能エネルギーで代替する,そのために1,800億ドル,約18兆円相当を準備する,としている。まさに,オリンピックが大気汚染対策の初年度というわけである。

再生可能エネルギーについて,この記事は一般論としていろいろ述べているが,中国が再生可能エネルギーの中に水力発電を入れていることは確かで,20%と言う数字は,水力を入れるならば,それほど難しい問題ではなかろう。ただ中国の場合は,太陽光,風力の他に,バイオ燃料が大きく取り上げられている。食糧問題と絡んで議論があるが,食糧廃棄物が対象であれば問題ないとしている。

バイオ燃料については,広範囲な中国の領土で耕作が行われ,肥料が使われ,収穫物を運搬し,と大きなエネルギーを使うことを頭に入れているのか,と問いたくなるし,バイオ燃料も炭酸ガスを出すではないか,世界がバイオ燃料委に走ることの悪影響を考えると,とても有効な手段とは,私は思っていない。水力については,貯水池が発生するメタンガスの影響を論ずる機会が増えた。これについては誰も何も分かっていない。でも私は,ガスを出す貯水池と出さない貯水池があると言うことと,メタンを出すポテンシャルと実際に出す可能性とは,別の話だと思う。

●インド,最高裁が電力改革に一撃,オリッサの電気料金で

インド人は随分難しいことを考える,これを長い時間を費やして最高裁判所まで持ち込んで,2年経ってやっと結論が出る,結論はどうであろうと,その間に待たされた需要家達はどうなるのか,また新しい電源はどうなるのか,心配になってくる。これは,インド東岸のオリッサ州,州都ブンバネシュバール近傍の話であるが,電気料金問題である。

オリッサには,州全体を掌握する送電公社GRIDCOがある。この送電公社は,フィリッピンなどと違い電力のオフテーカーで,買って送った電力を配電会社に売るが,2年前に,KWh1.1ルピー,約2.29セント相当,で買った電気を,4.61〜4.81ルピー,約10.57〜11.02セント相当,で全国的に展開するPTCに売ったわけである。

これに対して中央のCERCが,買った値段に4パエス程度の利益を付加して得るべきである,と指示したのである。当時既に州都のブンバネシュバールでも4.5ルピー,約10.30セント相当,していたわけで,このCERCの指示を不当としたGRIDCOは最高裁に訴えた。その結論が,GRIDCOの言い分を認めた格好で,今後の電力改革に有利,との記事である。この記事の下から3節目の最高裁の文章,難しいですね。これを大学の入試問題に出したらよいような文章だ。曰く,

The ruling adds that “knowledge that the goods purchased are intended to be exported does not make the sale and export parts of the same transaction , nor does the sale of the quota with the sale of the goods lead to that result.”

翻訳,トライしてみますか。「商品を買ってくることは他州に売るためだ,と言うことを知っていたことは,同じ取引の中での売却や輸出の一部をなすものではないし,商品の売却数量の・・・・」,分からない?!ただ,この記事は,電力の原価主義か市場価格か,の大きな問題を含んでいるのではないか,と言う気がする。

●インド,電力セクターへの投資魅力拡大,6ヶ月で1.95兆ルピー

インド中央商工会議所Assochamが発表した今年前半6ヶ月間の投資の実績である。全体の投資量6.33兆ルピア,約1,437億ドル相当,の中で電力投資が最大となり,全体の30.9%,1.95兆ルピー,約443億ドル相当を占めている,2位以下は順番に,不動産,鉄鋼,小売,通信,などとなっている。443億ドルは,100万KWを10億ドルとすると,4,400万KW分に相当する。UMPP10個分である。

●インド,中央政府,ヒマラヤの国々からの電力輸入政策強化へ

「ヒマラヤの国々」,と言うのは三国で,ブータン,ネパール,その上にミャンマーも入ってきた。インドが一時諦めた120万KWタマンティ多目的ダムは,我らが,「アジアの開発4人男」,ラメッシュ副大臣の直々のミャンマー訪問で復活し,インドはこの電力を長躯領内まで送電することでプロジェクトを進めている,勿論これは採算抜きで,ミャンマーの沖合天然ガスが狙いである。

現在政府は,この三国からの電力輸入を基幹とした基本方針を策定中で,まもなく発表されると言う。それは,国内水力の振興策に対応したもので,民間企業の力を借りることを第一に,地元への影響を考えてある一定限度の地元への無料の電力を還元すること,この2本の柱となる予定である。

ネパールは,包蔵水力8,300万KW,開発可能4,500万KWと言われている大きなポテンシャルを持った国であるが,今度のネパールの政治改革を発端にして,既にインドの民間企業が入っており,30万KWアッパーカルナリ水力をGMRが,また402MWアルン3水力をSJVNが,またオーストラリアのSMTが開発する75万KWウエストセティ水力とドイツ企業による30万KWラワーアルンを,それぞれインドのPTCが買電する計画で進めている。

ブータンについては既に多くの実績があり,送電線も整っている。基本的には,2020年までに500万KWを買電することで合意が出来ており,最近完成した102万KWタラ水力に続いて,JICAと密接に関係のあるプナチャンチュウ河で,第一水力100万KW,第二水力108万KW,80万KWマンデチュー水力の開発を予定している。

いずれも,地球の人類にとっては,インドの石炭火力の開発を抑制して行くポスト京都の重要な役割を担った,インド周辺の水力開発で,実績を誇る日本企業も,インドが力を注ぐなら,迷うことなく参戦すべきだろう。


参考資料

2008年8月25日分

インド

●080825A India, Economic Times
最高裁が電力改革に一撃,オリッサの電気料金で
SC ruling on Gridco- A beneficial blow for electricity reform
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/SC_ruling_on_Gridco-_A_beneficial_blow_for_electricity_reform/articleshow/3400963.cms
●080825B India, Economic Times
電力セクターへの投資魅力拡大,6ヶ月で1.95兆ルピー
Power sector investments shoot to Rs 1.95 tn in six months
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Power/Power_sector_investments_shoot_to_Rs_195_tn_in_six_months/articleshow/3399719.cms
●080825C India, sify.com
中央政府,ヒマラヤの国々からの電力輸入政策強化へ
Power import policy on cards to boost hydel inflows
http://sify.com/finance/fullstory.php?id=14745707

中国

●080825D China, quamnet
中国のオリンピック以降,大気汚染抑止に大きな機会
China Seizes Opportunities for Cleaner Air at the Olympics and Beyond
http://www.quamnet.com/newscolumnistcontent.action?request_locale=zh_TW&articleId=930690&authorCode=COL_AEI&ppId=13281


ー 日刊アジアのエネルギー最前線 2008年8月24日分 ープレスクリプティブな条件拒否

「プレスクリプティブな条件拒否」,と,原子力供給国グループNSGの米印原子力協定委への合意が得られなかった日の翌日,インドのムケルジー外務大臣の声明発表の中の強い言葉である。NSGは,再びウイーンで9月初旬にも臨時総会を開いて協議することで一致しているが,ここで強い表現でインド側からコメントが出されると言うことは,果たしてどの様な方向に会議を動かすであろうか。

プレスクリプティブ コンディショナリティーズ,これを拒否するというムケルジーの声明であるが,外交上の表現として相当に強い意味を持っているのか。外交上よく使われる言葉かも知れないが,禁止命令とか制裁とかに近い言葉で,そういう高飛車な条件であれば応じられない,と9月上旬に行われるNSG会議に釘を刺したわけである。

私は,米国主導で進められる米印原子力協定は,基本的には反対されないと思っているが,被爆国である日本とか,オーストラリアの新首相のように,例え米国の要求でも核不拡散条約に加盟していないインドに対しては,ウラン燃料の供給は出来ない,と一旦声明した状態では,そう簡単に全会一致でと言うことは,国際世論を睨んで,出来ないと言うことだったのだろう。

インドと中国が,しばらく石炭火力に頼って経済発展を続けなければならない状態であるが,出来るだけ早く,石炭火力の開発のペースを落として行くことは,ポスト京都を視野に入れている人類全体の希求であろう。そのためには,原子力と水力の開発を早く進めることだが,特にインドの場合は,核燃料不足のための既設の400万KWさへ満足に動いていない状況である。

国際政治を睨む人は睨んでよい,核武装廃止を訴える人は訴えるべきである。しかし,このままインドと中国が石炭を燃やし続けることは,石炭のクリーン化や効率の向上だけでは,防ぎきれないであろう。日本の提唱するセクトラルアプローチとも密接に関係してくる。


本文

●インド,米印原子力協力で,一切の条件付きを拒否

インドは,核不拡散条約に入っていないために,核燃料の確保に苦労している。400万KWある原子力発電所の稼働率が落ちて,電力不足に拍車をかけている。一方,電力の大きな部分を占める石炭火力は,地球温暖化の問題と共に,出来るだけ原子力や水力で代替すべきだ,と言うのが我々の主張である。中国に対抗する勢力として,米国は,米印原子力協定によってこの問題を解決すべく,米議会の協定批准の手続きを進めている。更に,実際に必要なのは,原子力供給国グループNSGの合意である。

元々この原子力供給国グループは,1974年の,IAEA保障措置下にあるカナダ製研究用原子炉から得た使用済み燃料を再処理して得たプルトニウムを使用したインドの核実験を契機に設立された。45カ国が加盟し,厳重な輸出規制をその目的にしている。我が国の在ウィーン国際機関日本政府代表部がNSGの事務局機能としてのポイント・オブ・コンタクト役割,各議長への実務的な支援など,を担っている。

先週,このNSGが臨時総会を開いて米印協定に対する姿勢を協議したが,合意に至らなかった。再度,9月初旬にもウイーンに集まり協議することになっている。日本政府は特に被爆国として国民の微妙な意識に注意を集中している。高村外相も,インド訪問でこの件について一言も発言しなかった。しかし協議の席上では,米国代表が強く加盟国代表に合意を迫った。代表達は,何らかの条件が必要との姿勢である。

こういう状況の中で出たのが,今日のインドのムケルジー外務大臣の声明発表である。この声明は,NSGが2日間の日程で合意が得られなかった翌日に発せられた。外務大臣は,プレスクリプティブな条件設定は一切受け入れられない,即ち,NSG側が何らかのインドに対する指示的な条件を付けるなら拒否する,と言う,短文ながら強硬な声明と受け取れる。

外交的な取引やその中に盛り込まれている英単語の解釈など,少し私には難しいが,これによってNSG側がどの様に反応するのか。NSG総会は全会一致と決められているので,なかなかインドにとって大変だなあ,と言う気がする。しかし,米国の主導する協定で,強く米国が承認を迫っているので,メンバー国としても何らかのメンツが必要なのだろう。私が気になるのは,オーストラリアである。

●フィリッピン,PSALM,NPC負債分219百万ドル,支払い終了

なぜフィリッピンの電力改革が始まったのか。それはまさに積み重なってきた国家電力公社NPCの負債問題で,70億ドル相当となり,このままの状態では,国際金融機関から新たな支援は得られない,と言うせっぱ詰まった状態である。PSALMを設立してNPCの発電資産の売却に乗り出したわけで,その重要な発電資産の一つが,ルソン島中部西岸,1998年に完成したマシンロック石炭火力600MWであった。

調べてみると,この発電所は2007年に売却のための入札がなされ,シンガポール企業を主体としたグループが落札したが,その代金支払いが出来ず問題になっていたところのようだ。今回,この売却の結果,PSALMから219百万ドル相当の借款返却が行われたが,その内訳は,ADB分が126百万ドル,JBIC分が102億円である。

この,資産売却によるNPC負債の返還,と言う問題は,電力改革の一つの目的であり,包括電気事業改革法EPIRAの根幹に関わるところで,その結果がはじめて出たというわけで,PSALMがこの219百万ドル相当の返還を,大々的に発表したのだろう。記事によると,70億ドルのNPC負債は,今回も含め,これで60億ドルに減った,と書かれている。


参考資料

2008年8月24日分

フィリッピン

●080824A Philippines, Manila Bulletin
PSALM,NPC負債分219百万ドル,支払い終了
PSALM prepays $ 219-million worth of NPC debts
http://www.mb.com.ph/BSNS20080824133321.html

インド

●080824B India, radioaustralia
インド,米印原子力協力で,一切の条件付きを拒否
India rejects any conditions on its nuclear deal with US
http://www.radioaustralia.net.au/news/stories/200808/s2344832.htm?tab=latest


ー 日刊アジアのエネルギー最前線 2008年8月23日分 ーメコン上流のダム開発

「メコン上流のダム開発」,この2008年8月8日から10日,オリンピックが北京で開会された頃に,タイ北部からラオス,中国南西部と,モンスーン台風カムリが通り抜けた。この結果,メコン川上流からの洪水が雨期と重なってメコン川の水位(ビエンチャン地点の基準水だと思うが)が,8月14日,今から一週間前に13.7mに達し,1966年に記録した12.4mを42年ぶりに更新し,タイやラオスの南部に洪水被害をもたらした。

これがきっかけとなって,タイ北部で洪水被害にあった人や,タイの環境グループから,中国上流で進むダム開発の影響だ,という声が高まり,下流部の水資源管理の立場にあるメコン河委員会MRCに非難が殺到した。MRCは,この洪水の半分はラオス北部のナムウーやナムタの流域から出たもので,中国のダムとは関係ないと説明し,タイのサマック首相もラオス政府も,これを追随した。

理論的にはMRCの説明にあるとおりなのであるが,問題は中国側の情報統制にある。我々も経験してきたが,自然の情報は国家機密である,と言う観念が根強く中国政府の考え方に残っている。地形,水文,気候,それら領域内の自然現象の情報は国家機密である。日本だって昔は,5万分の一の地形図は戦争のためのもので,随所に公開されない部分があった。タイは今でも5万は一般に販売されていない。

中国の内部を推測するのだが,おそらく政府中枢は今ではそうは考えていないのではないかと思う。昔,アフリカ西端のギニアの首都コナクリに行ったときに,既に政権が変わって首都周辺では外国人による写真撮影などは問題なかったが,少し郊外に出ると警官達はまだ昔の慣習で厳しく私たちの撮影を制限した。時代の代わりが十分に末端まで届いていないのである。中国でも,しつこく地形図の提出を求めたら,もうあなたがたの技術は衛星から幾らでも地形図が出来る状態でしょう,と皮肉られた。

私は,どうも中国が川の情報を明らかにしないのは,昔の習慣が雲南省の官僚達の間に残っていて,その慣習がランサン河の情報を流さないのではないかと思っている。MRCももう少し突っ込んで北京政府の中枢と対話をしてみたらどうかと思う。この80万平方kmの上流に150億トンの貯水池が実現する,この運用の情報を公開して下流国と連携すれば,想像を超えるエネルギーや水資源の便益が,東南アジアにもたらされる。

インドと米国の原子力協定に関するニュースだが,先日,この協定の行くへに大きな影響を持つNSG,原子力供給国グループのウイーンでの会合で,意見が合わず結論先送り,と言う報道がなされていた。今日の報道によると,NSGは再度9月上旬にも臨時総会を開き調整にはいるという。「建設的な意見交換ができた」,「近い将来,再び協議を継続することで各国が合意した」,とやや肯定的とも読める表現がある。


本文

●メコン川上流,中国のダム開発,下流国の懸念増大

久しぶりに長文の詳細なメコン河問題へのアジアタイムスの記事である。メコン河委員会MRCの動きも交えながら,流域の問題点を洗っている。まず状況だが,メコン上流中国領内で既に3つのダムが完成し,一つが工事中,全部で15カ所のダム計画が進んでいる。1993年に完成した漫湾ダム,9.2億トン,2002年に完成した大朝山ダム,8.9億トン,2008年,今年の6月に完成した景洪ダム,12億トンがある。現在合計約30億トンの貯水池容量が存在する。

更に問題は,既設漫湾ダムの上流で建設中の小湾ダム計画で,世界最高の292mの高さのコンクリート型アーチダムで2013年に完成の予定である。発電所の容量は400万KWで貯水池の面積が190平方km,貯水容量は,この記事には出てないが,150億トンで,現在は流域最高である。私も再三言ってきたが,この記事にあるように,この貯水池は,理論的には,洪水を17%カットし,渇水量を40%増やす能力を持っている。

問題は,今年,一週間ほど前,2008年8月14日に起きた洪水で,水位は13.7mに達したと報告されている。この水位というのはおそらくビエンチャン地点の水位を言っていると思うが,過去最大は1966年の12.4mであるから,下流住民や環境団体は,中国領内のダムが水位上昇を引き起こした,と非難している。タイは220百万バーツの洪水被害を受けた,としている。

これに対して,メコン下流の4カ国で組織するメコン河委員会MRCは,ダムの影響ではない,その時通過したモンスーンの影響で,事実洪水は下流のラオス領内のナムウーやナムカンから半分以上が流出している,と説明し,タイのサマック首相やラオス政府も,中国の影響ではない,と声明している。これは理論的にそういうことはない,と言う立場から出ているのだが,問題は中国政府の情報の不透明を非難している。

●アクラの気候変動会議,重要な議題で進捗あり

アフリカ,ガーナの首都アクラで開かれている気候変動準備会議,日本では余り報道されていないので,ジャカルタポストの記事を借りてみた。やはり日本政府の提案したセクトラルアプローチが話題になっている。しかしこの記事では,日本の提案は,複雑で議論の本流からはずれた裏口手法であり,インドや中国など途上国が警戒態勢にある,と評している。

「議論は静かである,しかし何かが起ころうとしている」,と事務局側は述べているが,方向は決まりつつあると。それは,先進国には従来通りの規制をかけるもので,これにはインドや中国など途上国も参加するが,これは規制でなく,努力目標を課すものだろう,と言っている。

もう一つ重要な問題が浮上しているのは,地球温暖化によって犠牲になる人々への人道的な支援だと言っている。それは,明らかに温暖化が洪水を増やし渇水を強めていると認めた上での流れだが,特のアフリカの砂漠やアフガニスタンからパキスタンから繋がる東南アジアが対象になる,として,最後にインドネシアもその対象の一つだ,と言っている。

●カンボジア,クウエート,546百万ドルソフトローン,コンポントムのダムなどへ

クウエートとカンボジアの関係,よく分からないが,この546百万ドルの支援額は,中国の601百万ドルに継ぐ第2位の支援額である。ODAの世界もずいぶんと様変わりした。殆どと言っていいほど借款を与えなかった日本は,今でも人道支援や無償に拘っているのであろうが,遙かに遠く霞んできたという感じである。フンセンから,日本も投資に頑張ったらどうだ,と言われるようでは,全く往事のことを忘れ去られたと言う感じ。

カンボジア側によると,このローンの大半,486百万ドルは,コンポントムのスタンセル川の水資源開発に使われるという。随分大きなお金だが,誰が大規模ダムを建設するのか,主題は農業開発である,と言われているので,ダム建設によるコンポントムの灌漑整備が主題だろう。中国が入っている南西部の山岳地帯とは,また違う地域である。この辺りの詳しい経緯を知りたいものだ。

●フィリッピン,発電企業アボイテス,ダバオの水力発電所建設を断念

元々日本工営と日本上下水道が関わっていた地域らしいが,地元当局が,水力発電所の計画は,完全に水供給問題と対立する,と言って許可を与えていない。34.5MWのタムガン水力プロジェクトだが,「ノーパーミット,ノープロジェクト」,と吐き捨ててアボイテスは去って行くのか。


参考資料

2008年8月23日分

フィリッピン

●080823A Philippines, newsinfo.inquirer.net
発電企業アボイテス,ダバオの水力発電所建設を断念
Power company stops building hydroelectric plant in Davao
http://newsinfo.inquirer.net/inquirerheadlines/regions/view/20080823-156328/Power-company-stops-building-hydroelectric-plant-in-Davao

インドネシア

●080823B Indonesia, The Jakarta Post
アクラの気候変動会議,重要な議題で進捗あり
Climate conference makes progress on key dispute
http://www.thejakartapost.com/news/2008/08/23/climate-conference-makes-progress-key-dispute.html

中国

●080823C China, Asia Times
メコン川上流,中国のダム開発,下流国の懸念増大
China damned over floods
http://www.atimes.com/atimes/Southeast_Asia/JH23Ae02.html

カンボジア

●080823D Cambodia, phnompenhpost
クウエート,546百万ドルソフトローン,コンポントムのダムなどへ
Kuwait to loan $546m for infrastructure
http://www.phnompenhpost.com/index.php/2008082321321/National-news/Kuwait-to-loan-$546m-for-infrastructure.html


ー 日刊アジアのエネルギー最前線 2008年8月22日分 ー供給国グループの結論

「供給国グループの結論」, は先送りされた,という小さい記事を今朝見た。米印原子力協定によるインドの原子力開発への協力に関する重要な会議である。米国は強くこのグループ会議がこの協定を承認することを要請したが,各国から条件付きの提案があって結論が出なかったという。日本の場合は国民感情もあるだろうが,インドの原子力が進まない,と言うことは世界のエネルギー問題に大きな影を落とす。

OPECを代表するカタールのアティーヤ・エネルギー産業相の発言が世界の注目を引いている。原油が下がっている,供給過剰ならばOPECもそれに対応する動きをするよ,と言うスペキュレーション,投機への警告が含まれていると思われるが,私は実はOPECも大変なのだと思う。昨年7月バレル70ドルが,今年6月,140ドルに上がり,多くの国際企業が中東の開発プロジェクトへ集中し始めたところに値下がりでは,実際にどう動いたらよいのか,産油国もそれに群がる国際企業,日本のジェネコンも含め,戸惑っていることだろう。

インドネシアのユドヨノ大統領は,既にバレル100ドルで来年度予算には対応する,と議会に通告している。100ドルを切ると思うか,と言うアルジャジーラの記者の質問に,カタールのアティーヤ・エネルギー産業相,「今の原油市場では何が起こるか分からない」,と応えていたが,日本の新聞などが報道していない点で,インドが書いているのは,彼が,「インドと中国,この二国の電力不足はいつまで経っても解決できない。」,と同じ記者会見の中で言っている点である。

産油国側は投機は迷惑だ,と思っていることは事実だが,今115ドルの原油がこのまま一直線に下がって,ユドヨノ大統領が先走ったように100ドルまで行くとすれば,産油国としては何らかの手を打つ,と言うことだが,幾ら先進国が原油節約に努めても,インドと中国の需要は停まらない,彼等は石炭主体だが,中国などは必死になって石油備蓄に走っている,アティーヤは100ドルまでは下がらない,という代わりに,このインドと中国の電力不足を持ち出したのだろう。

ところで,今日の記事で,インドネシアの燃料補助金汚職が,とんでもない規模で発展しそうな様子であるが,先週,ユドヨノ大統領が,原油バレル100ドルだから補助金は60%カットする,と国会に言ったのは,これはこの補助金の汚職を睨んでのことだったのか。この段階で,2009年度は原油はバレル100ドルだ,と言ったときは,何か異様な雰囲気を感じたのではある。


本文

●カタールの大臣,インドと中国はエネルギーで困難に遭遇する

最近急激に原油価格が落ちて,ニューヨークではバレル115ドルとなったことを受け,OPECを代表してカタールのエネルギー相アティーヤ氏が8月20日にアルジャジーラに語った言葉が,世界を駆けめぐっている。とにかく,2007年の8月に70ドルであったものが,2008年6月には140ドルに高騰し,それがこの1ヶ月の間に115ドルまで下がった,余りに急激な動きに,アティーヤは,投機的な動き,としているが,もし供給が過剰ならば,OPECは生産調整に踏み切る,と不気味な言葉を残した。

日本語記事なども参照したが,ここに取り上げているインドの英文ニュースでは,少し違った観点からの報道となっている。アティーヤは,OPECが例え適正に原油生産を行ったとしても,インドと中国の電力危機は収まらない,と付け加えている点で,何を意味するのか分からないが,おそらく,需要が減ってきて価格が下がるという状況ではない,スペキュレーション,投機,憶測のせいだ,と言っているのだろう。

100ドルを切るかどうか,世界のビジネスが見守っているわけだが,アティーヤの言いたいことは,本当に需要が落ちるならば減産に踏み切るぞ,下手な投機で原油価格を操るのは止めてくれ,と行っているように思う。中東は今開発に沸き返っている,それも原油高騰が逆に中東のスペキュレーションを刺激しているわけで,日本のジェネコンも上げて中東に押しかけている。ここで原油価格急落は,OPECにとっても一大事なのであろう。

●インドネシアの原油ガスの密輸出問題,国会の場に

政府の燃料補助金で国際価格より安く入手した燃料を,密かに輸出して国際市場で捌き巨利を得る,ここまで来ると国家規模での犯罪でなければ出来ないであろう。8月17日に本欄でも取り上げたが,インドネシア政府は燃料補助金として2008年国家予算から180兆ルピア,約194億ドル相当を支出している。この問題を暴露したのは,BPK,国家最高監査庁であり,相当に具体的なメモを作成している。

今のところ,275億ルピア,約百万ドル相当などであるが,具体的にどの港からどの船で何処まで運んだか,6項目に亘ってメモされているが,行き着いた先がクリスマス諸島である,など国際的な議論を呼びそうな内容である。BPKは既に警察へ告発しており,煮え切らない警察の態度に国会が乗り出す,特別委員会も設置されたという。

疑われているのは勿論,これらの補助金燃料を一手に動かす国家石油プルタミナであるが,プルタミナの報道官は完全否定している。BPKはこれは明らかに氷山の一角であって,国家的にどの様な規模で行われているのか想像もつかない,と言っている。国会の特別委員会のメンバーになったプルタマ議員が微妙な言葉を残している,「BPKのメモは極めて概略のもので,警察は単に公社レベルだけではなく政治レベルでの追求を行うべきだ。」,と。インドネシアのエネルギー供給そのものを動かす大事件のような気がする。

●インド,水資源問題,大きな手が貧困への更なる負担を強いている

最初何を言っているのかさっぱり分からなかったが,世界の開発によって相当の資金が賄賂として流れている,と言う話を極めてマクロに論じたもので,このような記事は今まで見たことがなかった,何もインドを名指ししているのではなく,世界で,水資源,電力,エネルギーを開発するときの政府の搾取を問題にしている,まさにインドネシアの補助金レベルの話になってきて,世界で次の10年に260億ドルが失われるだろう,と。

主張しているのは,ナショナルジオグラフィックニュースの中で,水資源公正ネットワークWINと汚職糾弾グループTIである。いろいろ書かれているが,インドなどで進む水力開発ダム建設で,不正のために失われる金額の膨大さ,中国が進める燃料備蓄の影に隠れる汚職,また最近2度も値上げした電気料金の裏金,など。彼等が何を言おうとしているのか,大規模開発に反対の意思なのか,少し記事の意図が見えない。

●インド,NTPC,今年の末までに,3,000万KWへ

先日,NTPCが石炭省に,石炭供給が不十分,と文書で抗議したときに,石炭省の副大臣が,もう石炭の時代ではない,NTPCも原子力や水力の時代であることを認識しろ,と挑戦状をたたきつけられたが,今日の記事もこの問題に触れている。NTPCは今年末にビハール州の500MW火力が完成して,設備出力が30,000MWを越すことになる。

NTPCは水力にも着手しているが,軌道に乗るのは来年で,第11次五カ年計画では,火力22,000MW,水力7,000MWの新規開発を目指している。石炭不足は深刻で,NTPCは現在年間125百万トンの石炭を必要としているが,そのうち8百万トンを海外に求めている。実際には,10〜123百万トンの年間の石炭不足となっている。輸入石炭を増やさざるを得ないが,価格が需要家に転化されることになろう,と警告している。

効率を上げて地球温暖化にもしするために,超臨界ボイラーの採用を進めている。2009年3月には600MWクラスの超臨界ボイラーが運転開始し,2017年には800MWクラスが,と書かれている。ずいぶんと時間がかかるのだなあ,と思うが,この辺りは,タタと組む東芝の技術とはどの様に協力しているのであろうか,BHELと東芝の間には協力関係があるのであろうか。東芝とBHELはプリラヤの揚水で協力関係にあると聞いた。


参考資料

2008年8月22日分

インド

●080822A India, newstrackindia
水資源問題,大きな手が貧困への更なる負担を強いている
"Water mafias" force poor to pay more for public water supply
http://www.newstrackindia.com/newsdetails/12905
●080822B India, Economic Times
NTPC,今年の末までに,3,000万KWへ
NTPC to become 30,000 MW company by year-end
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Power/NTPC_to_become_30000_MW_company_by_year-end_/articleshow/3390320.cms
●080822C India, Economic Times
カタールの大臣,インドと中国はエネルギーで困難に遭遇する
India, China will face problems in power production Qatar minister
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Power/India_China_will_face_problems_in_power_production_Qatar_minister_/articleshow/3386140.cms

インドネシア

●080822D Indonesia, The Jakarta Post
インドネシアの原油ガスの問題,国会の場に
Inquiry starts on irregularities in oil, gas proceeds
http://www.thejakartapost.com/news/2008/08/22/inquiry-starts-irregularities-oil-gas-proceeds.html


ー 日刊アジアのエネルギー最前線 2008年8月21日分 ー上海市場暴落はなぜ

「上海市場暴落はなぜ」,なのか,昨日落ちたのは,出るべき景気浮揚策が出なかったからだ,と言われている。この直前に現地紙の報道として,減税を含め6兆円規模の景気浮揚策が出る,と発表され心待ちにされたが,昨日はそれが出なかったから落ちた,と言うわけである。全く株式市場は紙一重,景気浮揚策が逆に株式市場を押し下げる。日本の輸出額が,ここに対米を超えて対中が一位になったと書いてあったが,中国の経済政策が直接日本への影響を増してきた。

オリンピックが終わりに近づいて,中国の経済政策が微妙に揺れている。次は2年後の上海万博を睨んでの駆け引きになるが,ほんの2,3日前はインフレ懸念で一生懸命抑制しようとしてきた中国政府だが,やはりブレーキの踏みすぎを考えて,次の手を打とうとしている。しかしそこに新聞に言わせておいてからその実施時期を見極めるという,微妙なアクセル裁きである。

この経済調整と重要な関係にあるのが電気料金である。何とかオリンピックを無事に乗り切ったが,明日から問題になるのは,2年後の上海万博までのエネルギー問題になってくる。夏も問題だが,冬を2度も克服して行かなくてはならない。しかももっともエネルギーの核心である石炭供給の問題が,単なる輸送問題ではなく,上昇する石炭価格と安い電気料金の板挟みであった。

この電気料金の問題についても,そのブレーキとアクセルの使い分けが誠に微妙である。先月に一度上げたが,更にこの2ヶ月間に2度目の調整である。計算した上での話か,はたまた政権内でいろいろな意見の調整があるのか,少しずつ触っている感じである。今日の発表では,0.02元で5%上げ,と書いてあるから,これから計算すると,電気料金は卸でKWh当たり0.4元,5.85セント,と言うことになる。これでもまだ石炭の値段との戦いは続くし,政府はインフレとの微妙な調整を迫られる。

中国の石炭不足に比べれば,インドは寧ろ設備の問題だ,と書いたばかりだが,今日のインドの記事では,国家火力発電公社NTPCが,石炭供給が不足だ,と文書で不満を述べると,石炭省が思わぬ方向から反論,もう石炭の時代ではない,これからは水力と原子力だ,いつまでも石炭に頼るな,と思わぬ方向から石炭火力抑制論が出てきた。これにはNTPCも驚いただろう。

私も,インドも中国も含め,人類は今しばらく石炭を使わねばならない,と言ってきたし,世界銀行もこの方向で言い訳をしながらインドの石炭火力を後押ししている。ガーナで始まった地球温暖化会議,日本はセクトラルアプローチをこれ喧伝しているが,やはりインドと中国の石炭火力の建設を少しでも代替手段で抑制をかける,これが今人類に課せられた重要な課題の一つだろう。


本文

●インドは,石炭の次を睨むべき,石炭副大臣

石炭省からこのような発言が出ると思わなかっただろう,NTPCが,石炭の供給が十分でない,それが発電を阻害している,と文書で抗議したら,石炭省副大臣バグロディア氏が,このような言葉が飛び出した。「石炭火力の時代ではない,もう石炭火力は制限されるべき時代だ。今や原子力と推力の時代である,と言うことに反対する人はいないだろう。」。NTPCも面食らっただろう。

このバグロディア副大臣の発言に勢いは,石炭の埋蔵量まで及び,今政府が精力的に進めている大規模石炭火力計画UMPPをも批判の対象になっている。随分思い切った発言で,何処にその意図があるのか,大臣の発言でなく副大臣であるところも面白い。電力省の副大臣もそうだが,彼等は政治ポジションであり,時に思い切った,また時間を先取りした発言が続く。

インドの石炭の総量問題だが,世界で現時点,可採埋蔵量は98,457億トンと言われていて,石油が41年で枯渇するのに,石炭は192年,約200年といわれている。インドはこのうち,米国(25.4%),ロシア(15.9%),中国(11.6%)に続いて世界第4位の包蔵量を有し,推定で2,480億トン,確認埋蔵量は930億トンと言われている。これに対して,昨年度,2006年〜2007年の総使用量は11.1億トン,このうち243百万トンを輸入している。インドが輸入先としているのは,インドネシア,オーストラリア,南アメリカである。

ここしばらくは人類は石炭を使わざるを得ない,と言うのが現在の偽らざる議論であり,電力不足に悩むインド政府は,積極的に大規模石炭火力を進めているが,いつかはこのようなブレーキがかかる必要があるのだろう。水力開発にも大きな号令がかかっているが,原子力開発も米印協定など,難しい問題が絡んでいる。いろいろな意見の中,揺れ動きながら進むのが,インドの民主主義だろう。

この記事の中に出てくるNTPCの石炭不足の不満に対して,石炭省は,2007年4月から2008年1月までの石炭供給量は255百万トンで,目標であった249.97百万トンを超えていると反論している。NTPCが石炭不足で困っている発電所は,ビンディアシャル,リハンド,カールガオン,タルチャーなどである,とされている。

記事の中の数字を拾っておく。1990年代に50%のシェアーを持っていた水力は今や26%に落ちている。石炭及びガスの火力は66%,風力が5%,原子力は3%。2007/2008年度の電力不足量は73,050百万KW,需要は726,222百万KW,供給は653,172百万KWであった。NTPCの火力保有は29,000MW。インドは2012年までに200,000MWを保有する計画,現在130,000MWなので,60%を新設の必要。2009年までに234百万世帯の貧困層を含む国内全家族,115,000村落に電力供給の計画,

●インド,ヒマチャルプラデッシュ州政府,世界銀行支援を,水系一貫運用に

ヒマチャルプラデシュ州,ニューデリーの北部,山岳地帯一帯をその州域とし,既設大規模貯水池バカラダムなどを有するインド有数の水力包蔵を持つ山岳州,その州都はシムラーである。そのシムラーで,昨日,世界銀行エネルギー開発部長サヒール氏と州政府首相クマールドマール氏が会談,今後の世界銀行の支援方針について協議が行われた際の記事である。

今までインドでは余り聞いたことのなかった,「水系一貫運用」,と言う言葉が世界銀行から出てきて,それが記事の主題となっている。インダス川の支流の一つがパキスタンのパンジャブ州から上流に伸び,バカラダムがある。この上流には多くのダム計画があって,それを束ねての水系一貫計画を,世界銀行は提唱している。アジアの川の開発では,余り言われて来なかったが,私たちは重要な考え方だと思っている。

●中国,2ヶ月間に2度目の電気料金値上げ

オリンピックが終わりに近づいて,中国政府の経済への舵取りが難しくなってきた。次は2年後に上海万博が一つの目安であるが,インフレとここに来ての景気浮揚策,また矛盾に満ちた電気料金の値上げが,再び行われて,2ヶ月間に2度の値上げであり,その微妙な舵取りが大変であることがよく分かる。今回は卸売り料金が5%上げ,0.02元と書かれているから,そのまま計算すると,0.4元になった,これは5.85セントである。


参考資料

2008年8月21日分

インド

●080821A India, economictimes.indiatimes
インドは,石炭の次を睨むべき,石炭相
India needs to look beyond coal-based power, says coal minister
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/India_needs_to_look_beyond_coal-based_power_says_coal_minister/articleshow/3383582.cms
●080821B India, himachal
ヒマチャル州政府,世界銀行支援を,水系一貫運用に
Himachal Seeks World Bank Assistance For Scaling Up Power Generation Operations
http://himachal.us/2008/08/21/himachal-seeks-world-bank-assistance-for-scaling-up-power-generation-operations/6122/general/ravinder

中国

●080821C China, online.wsj.com
中国,2ヶ月間に2度目の電気料金値上げ
China Increases Electricity Prices For Second Straight Month
http://online.wsj.com/article/SB121915118353053007.html?mod=googlenews_wsj


ー 日刊アジアのエネルギー最前線 2008年8月20日分 ー発電などは必ずしもハイテクでなく

「発電などは必ずしもハイテクでなく」,と書いているのは,2007年11月に書かれた,「みずほレポート」,の中の一節である。最近,インドの国営重電メーカーBHELの機器製作遅れの問題がインドで再三取り上げられ,発電所不足の元凶はBHELだと言わんばかりのインド電力大臣の言葉が連なる。一方で,鋼材の値上がりなど,日本メーカーの発電などへの対応が非常に困難となっている状況,一度このレポートに目を通しておこうと思って走り読みしてみた。

BOTなどで発電コストへの圧力で,発電などの一般機器,重電は,インドでは日本製を求める必要はなく,中国製,韓国製,でインドでは十分だと書かれている。私の意見も,日本の重電は,やはり原子力などの分野に重点が移ってくる,と思うが,それでは日本企業を含めての発電企業は何処を頼りにしたらよいのか,それは,インド,中国の機器メーカーが頼りにならざるを得ない。それらが,十分に育っていってくれているのか,日本の重電はどの様な動きをしているのか,大いに知りたいところである。

「レポート」,によると,2007年8月のタタ電力によるムンダ火力プロジェクト,これに単機800MW5機の東芝への発注が注目を浴びている。効率の問題で日本のメーカーが注目を浴びている,と言うことは一つのポイントであるが,おそらく技術移転を求められることになるのだろう。ポスト京都のセクトラルアプローチと関連づけるのは,思い過ごしか。その他,三菱重工のポンプ関係技術ライセンスのBHELへの供与,日立プラントのムンバイ事務所開設,などが挙げられている。

東芝の話は,結構インパクトのあるものだが,全部を洗い出してこれだけか,と言う印象で,特に三菱重工などはもう少し,インド重電との提携を進めるべきだと思う。もっとも,これは日本側の責任ではなく,一般重電業界から消えて行く日本のメーカーの技術を少しでも多く獲得すべきインド側の責任だと思う。個々の企業の損得で動くのは当然としても,その辺に働くもう少し見えざる大きな手が欲しい。


本文

●インド政府,2600万KWは,再生可能エネルギーで確保

インドには,新エネルギー・再生可能エネルギー大臣と言う省が置かれているのか,その大臣,ビラス氏が,ラビガンジーの誕生お祝いの会で演説したものが記事になっている。2008年からの第11次五カ年計画では,再生可能エネルギーによる新規開発分として1,400万KWを計画している,第10次計画では1,200万KWであり,合計して2,600万KWとなる,としている。

第10次五カ年計画で1,200万KW開発したのか計画であったのか,よく分からないし,第11次計画の新規電源開発7,000万KWの中か外かもよく分からない。彼等の言う再生可能エネルギーは,太陽光と風力で,勿論水力は含まれていないようだ。中国は再生可能エネルギーと言うときに,水力開発も含めて言っている。

いずれにしても,大言壮語と言っては失礼ながら,火力や水力の開発に大きな遅れが出ている現状で,次の五年間に1,400万KWの太陽光,風力発電を開発する,と言うのは技術的にも財政的にも非常に難しい見積もりと思われる。ビラスしによると,風力発電の実績は,ドイツ,スペイン,米国に次いで,インドが世界で第4番目に位置するという。

●インド電力省,BHELを批判,プロジェクト遅延の主因と

国有重電メーカーBHEL,先日も設備拡充のための大規模な計画を発表していたが,インド中央電力省が文書まで出してBHELの仕事の遅れを糾弾している。今年度第2四半期,その完成目標が3,295MWであるところ,僅かに710MWが完成しただけで,果たして残り1ヶ月半で完成できるのか,甚だ疑問である,と言っている。この第2四半期の政府の目標は4,652MWで,そのうち3,295MWがBHELの担当である。

BHELはこの批判に対して,プロジェクトサイトのインフラストラクチャーが悪くて,据え付けに遅れがでている,と理由を挙げている。この言い分では,工場の製作能力には余り触れていないのであるが,工場製作に問題がないとは言えないと思う。何か政府との間の水掛け論で,これで第11次五カ年計画の78,577MW新規電源が果たして可能なのか,大きな疑問が出てくる。

既に上海の重電メーカーが,タタ財閥などと協力してインドに入ってくる準備がなされていると聞く。先日も書いたように,日本などの重電メーカーは,もう国内の電源開発がないので,一般的な水力機器や火力機器からは撤退して原子力に集中して行くものと考えられる。だから今後は,アジアの電源開発など,このインドのメーカーや中国のメーカーに頼らなければならない。日本などからの貴重な技術移転が可能なのかどうか。

●インドネシアンパワー,25の小水力建設へ

インドネシアパワーは,電力公社PLNの分割民営化の途上で設立された会社で,サグリン水力などをPLNから譲られて運営している。設立早々に訪ねたことがあるが,さてこれからは民間会社だ,全員が張り切っていた,儲ければ儲けただけ自分たちのものだ,みたいな雰囲気であった。インドネシアのエネルギー省の完了が言っていたように,我々は民営化はしない,あくまで競争の市場を創り出すのだと。民営化しない競争市場,彼等も言いながら随分困っていたようだ。憲法裁判所が,PLN民営化に違反の判断を行ったのだ。

その後この分離した企業は元気にやっているのか,と心配していたが,ここに来て記事になっている。中部ジャワのバンジャルネガラで,まとめての小水力,25プロジェクトを開発する計画という。1カ所1,000KWである。地域社会との共同経営で運転する,と書いてあるが,どうだろう,このような小水力が,果たして経済ベースに乗るのかどうか。

●フィリッピン,PSALMが確認,イリガン発電所売却は,予定通り次の四半期

フィリッピンの資産売却は,ミンダナオも例外ではないのだ。114MWのイリガンのディーゼル発電所,10月にも売却との方針で走っている。このミンダナオの北部の町イリガンにも,モロ戦線の危険が迫っているようだ。それでも,今月初めのPSALMの現場説明には,3グループが参加し,PSALMはあくまで予定通り売却の日程をこなす姿勢である。


参考資料

2008年8月20日分

フィリッピン

●080820A Philippines, Manila Bulletin
PSALMが確認,イリガン発電所売却は,予定通り次の四半期
All-systems go for Iligan diesel plant bidding
http://www.mb.com.ph/BSNS20080820132945.html

インド

●080820B India, Economic Times
インド電力省,BHELを批判,プロジェクト遅延の主因と
Power min blames Bhel for delays in projects
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Power_min_blames_Bhel_for_delays_in_projects/articleshow/3382637.cms
●080820C India, Economic Times
インド政府,2600万KWは,再生可能エネルギーで確保
Government targets 26,000 MW power from renewable sources
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Power/Government_targets_26000_MW_power_from_renewable_sources/articleshow/3381986.cms

インドネシア

●080820D Indonesia, The Jakarta Post
インドネシアンパワー,25の小水力建設へ
Power firm to build 25 micro hydropower plants
http://www.thejakartapost.com/news/2008/08/19/power-firm-build-25-micro-hydropower-plants.html


ー 日刊アジアのエネルギー最前線 2008年8月19日分 ー米印核協定は不拡散に逆行

「米印核協定は不拡散に逆行」,と異を唱え,日本政府に鋭く迫るのは広島の中国新聞である。明日から問題の日本を加えた原子力供給国グループNSGの臨時総会が予定されており,日本政府が米印原子力協定にどの様な態度で臨むか,注目されている。報道では,日本政府は既に方針を決定していて,米印協定を容認する方向だ。広島の地元新聞として,言うべきことは言っておくべき,と言う姿勢である。

米印原子力協定は,先日,インド国会でシン首相の信任投票が行われて,一歩前進した。後は米国議会の批准とこの日本を加えた原子力供給国グループの全会一致による同意である。インドは,ポスト京都で主要な温暖化ガス排出国として大きな役割を果たす。しかるにNPTに入っていないために,核燃料の供給が思うようにいかず,原子力の稼働率が極端に落ちている。それをこの協定が救うことになるわけである。

広島の中国新聞がもっとも強調しているのは,米国の二重基準である。インドやイスラエルの核保有は認めるのに、イランには核兵器開発疑惑の段階で経済制裁を科している,として鋭く批判している。それと,インドの核武装をこのまま放擲しておくことは,混乱の極致にある同じく核保有国のパキスタンとの関係が問題である,と懸念している。

元々この原子力供給国グループは,1974年の,IAEA保障措置下にあるカナダ製研究用原子炉から得た使用済み燃料を再処理して得たプルトニウムを使用したインドの核実験を契機に設立された。45カ国が加盟し,厳重な輸出規制をその目的にしている。我が国の在ウィーン国際機関日本政府代表部がNSGの事務局機能としてのポイント・オブ・コンタクト役割,各議長への実務的な支援など,を担っている。

この記事の中で懸念された一方のパキスタンは,ムシャラフ大統領の辞任で混乱が広がっている。パキスタンは,未曾有の電力危機に見舞われているが,政治家達はそれどころではないようである。前政府が進める大規模ダム開発や,中央アジアからの電力輸入,イランからの送電線問題,などエネルギーでも問題山積である。

毎日新聞は,ニューデリーでムシャラフの辞任演説を見たインド与党,国民会議派の安全保障担当幹部が,「これでまた,パキスタンが見えにくくなる」,と呟いた,と報じているように,ムシャラフはインドにとっては話の出来る相手であったわけである。後を継ぐと思われるシャリフ氏は,インドとの紛争を煽った,と言うよりは軍部を抑える力に欠如していたわけで,また昔のパキスタンに戻るのか,と私も懸念している。


本文

●インド,電力省,電力不足に対応,リライアンスなどの自家発優遇策へ

昨日の記事の発電設備の比較で,中国は7億KW,インドは2.4億KW,と書きましたが,今日の記事で間違いに気がついた。インドは僅かに1.4億KWですね,どうしてこのように中国と大きな差がついてしまったのだろうか,インドの民主主義が邪魔をしているわけで,プロジェクトに紛争が絶えない訳ですね,別に民主主義が悪いと言っているわけではないのですが。

ただ,インドネシアもそうだが,国の電力設備として登録されていない自家用発電,所謂,キャプティブ,がインドも多い。現時点で4,500万KWの自家発がある。2007年から2012年までの第11次五カ年計画では,国として78,577MWの開発が計画されているが,専門家によると,機器製作能力などから,60%しか目標は達成できないだろう,と言われている。事実過去の五年間では,目標41,100MWに対して実際に開発されたのは,20,950MWなのである。

2012年までの開発目標78,577MWの他,自家発として10,000MWが開発される予定になっている。インドでは,火力で1,000MW以上,水力では500MW以上を大規模開発として,税制上の優遇措置を執っているが,自家発にはこれまでこの優遇策は適用されていなかった。電力不足に少しでも対応するために,電力省はこのルールを自家発にも広げることを提案したのである。

事実,リライアンス関連の企業では,大体,経済特区を対象に,ハリアナ州とマハラシュトラ州にそれぞれ1,000MWの自家発,合計2,000MWの計画を進めており,アンニールは,4,000MW規模の自家発計画を進めている。この電力省の優遇政策案について,政府内で各所から反対の声が挙がっている,大企業のみが優遇される,と言うのである。またまたインド特有の長い長い議論が続くだろう。

●中央高原は,今やベトナム最大の水力発電の中核へ

ベトナムの中央高原,セントラルハイランド,まだ国際社会からはベールに包まれたベトナムの中を最初に歩いたのはこの中央高原であった。まだ外国人を見ると異様な雰囲気であったベトナムの中で,この,セントラルハイランド,と言う言葉がハイカラに聞こえて,その標高500mを越す地域の気候と景観が,ベトナム新人の私に強い印象を与えた。コーヒーの有名な産地である。

制裁解除前の中央高原であったが,彼等はこつこつと小規模の水力を造っており,小さい規模の水車は自分たちの鉄工所で造っていた。ヤリ水力60万KWは有名であるが,日本工営が可能性調査を自費で行って,制裁解除今や遅しと待ちかまえていた。最初の外務大臣訪問で,ベトナム側は勢い込んでヤリへの円借款をその第一号として申し出たが,回答なし,ベトナムはウクライナに支援を頼んだ。

主なものでは,ダックラックのドレイリン水力,ギアライのヤリ水力とセサン3水力が既に完成しており,スレポック川,これは先日下流のカンボジア領内で中国が二つのダムを開発する報が流れたが,この川で6プロジェクト,総計750MWが準備中という。中央高原開発委員会の話では,2010年までに5,000MWの大発電地帯となり,これらが中央送電網へ流れるという。

●フィリッピン,PSALM,NAPOCORの料金調整の自動化を望む

フィリッピンの料金紛争問題には,もうつきあっていられない,と言う感じである。いずれの問題も紛争が長引くから,どんどん借金が貯まってくる,と言うか,未処理金が大きくなってきて,いずれは消費者に行くとしても,このような積み重ねは消費者としても受け入れられない,と言い出すだろう。今回の問題はカラカの石炭火力で,PSALMが売却手続きをスエズエナージに取るわけだが,この料金調整で揉めている。

●ネパール政府,農村電化企業の設立を計画

カトマンズーで国家電力庁NEAの創立23周年を祝う式典が行われ,カーク総裁が講演を行ったが,その中で総裁は,NEAは独立精算を要求されており,今後はそれに邁進するが,農村電化については政府の別組織を造って欲しい,と訴えた。これは,今度首相につく毛派のプラチャンダーの政策意向も踏まえたものであろう。

この演説の中に出てくる数字であるが,2007/8年度の需要家数は,1,524,610,前年より9.07%増加,このうち95.66%が一般家庭需要で,売電量は全体の40.52%,収入は全体の40.66%である。産業用の需要家は数では1.67%であるが,売電量では38.81%,収入では3593%を占めている。この1年間の電力需要の伸びは11.31%,電力量の伸びは10.76%である。2007年12月31日に於ける最大電力は721.73MWであった。


参考資料

2008年8月19日分

ベトナム

●080819A Vietnam, redorbit
中央高原は,今やベトナム最大の水力発電の中核へ
Central Highlands to Become Vietnam's Largest Hydropower Centre
http://www.redorbit.com/news/business/1524485/central_highlands_to_become_vietnams_largest_hydropower_centre/

フィリッピン

●080819B Philippines, Manila Bulletin
PSALM,NAPOCORの料金調整の自動化を望む
PSALM wants automatic adjustment of Napocor’s generation charges
http://www.mb.com.ph/BSNS20080819132860.html

ネパール

●080819C Nepal, The Rising Nepal
ネパール政府,農村電化企業の設立を計画
Govt planning Rural Electrification Company
http://www.gorkhapatra.org.np/detail.php?article_id=5192&cat_id=4

インド

●080819D India, Economic Times
電力省,電力不足に対応,リライアンスなどの自家発へ
RIL, Sterlite will gain from?proposed changes in mega power policy
http://www.livemint.com/2008/08/19000718/RIL-Sterlite-will-gain-fromp.html


ー 日刊アジアの開発問題 2008年8月18日分 ー景気退潮商品価格軒並み低下

「景気退潮商品価格軒並み低下」,先日は,インドネシアのユドヨノ大統領が議会に対して,悪名高き燃料補助金を60%もカットする,それは来年度の原油価格がバレル100ドルと想定した結果である,と申し出て,大丈夫かな,選挙を控えたパフォーマンスか,と思ってみていた。しかし,今日突然,ロンドン発としてパキスタンのデイリータイムスが伝えたところでは,ロンドンの商品市場に急激な変化が起こっているという。

2008年,今年初めから荒れ狂った原油や原材料の高騰が,今後どの様に変化して行くのか,私も読者と共に大いに関心を持っていたところである。2007年末から2008年6月の半年間の時点で,私の試算では,プロジェクトレベルで25%の急激なコストの値上がりがあった,と分析している。この値上がりが余りにも急激であったために,衝撃が大きかったが,私自身は,それが余りにもヒステリックなために,極めて一時的な現象である,と自分自身にも言い聞かせていた。

原油価格は,バレル147ドルをピークにして急激に下がってきており,先週時点で110ドル水準まで来ている。IEAもOPECも,いずれも原油需要の伸びは急激に下がる,今年は日平均8,690万バレルのところ,2009年も余り伸びず,8,780万バレルと予想している。これは,ユドヨノ大統領ばかりでなく,100ドル近辺まで下がってくることが容易に予想される。

プロジェクト開発にとってインフレは怖くない,と言ってきたのは私であるが,半年で25%と言うスピードになると,それに対応する環境が整ってこない。まず一つは,我々の世界では電気料金であり,これが政治的に抑えられると,インフレとのギャップが大きくなりすぎて,プロジェクト評価に影響を与えてくる。また,対比すべきプロジェクトの間にもタイムラグが生ずる。これらを見守る冷静な判断が要求されることになる。

このロンドンの状況を報じたデイリータイムスのパキスタンであるが,遂にムシャラフ大統領が辞任した。議会の弾劾で死刑の危険性もあったことを考慮したという。腐敗しきった前政権を軍事クーデターで倒したムシャラフには,当時私もパキスタンの仕事と関係があり,拍手を送ったものである。その腐敗しきった前政権とは,今政治的な主導権を持って走っているシャリフである。再び軍事クーデターの危険を秘めているが,大きなダム建設事業を控え,また核を持ったパキスタンの軍部,少し落ちついてくれなければ,南アジアの開発にも悪影響が出る。


本文

●今週,物価に低下の傾向,原材料への需要減の兆しか

先日は,インドネシアの報道の中で,ユドヨノ大統領が議会に対して,来年度の発電などへの燃料補助金を大幅にカットする,それは来年以降の原油価格に下落の傾向が見えるためで,今回の補助金の大幅カットは,原油価格がバレル100ドルになるものと想定した,と言う記事が出たときに,あれっ,それでいいのかね,と首をかしげた。若干,予想を先取りした下落傾向によって,議会の機嫌を取ったものと考えた。

今日のこの報道は,ロンドン発で,パキスタンのデーリータイムが載せたものだが,商品価格の市場の中心であるロンドンは,世界景気の急激なスローダウンの影響が,商品価格にもたらす影響を,早々と将来予想したものである。我々も,最近の物価値上がり,特に燃料や鋼材の値上がりによるプロジェクトへの影響の近い将来の動向に強い関心を寄せ,余りにも急激で,ヒステリックな一時現象,との印象が拭えなかった。

今日の記事ではまず,原油価格が取り上げられている。米国の夏期休暇による自動車ガソリンの備蓄が200万トンまで減ってきて,これが原油価格に若干プラスの要素とはなっているが,全体的には,世界経済の下降傾向を敏感に読みとって,IEAが先週の火曜日に,需要減の予想を明らかにし,OPECも,2009年の需要増は僅か1.03%に収まるとの予想をした。これは2002年以来の最低数字である。2008年の需要予想は日平均8,690万バレルのところ,2009年も余り伸びず,8,780万バレルと予想している。

英国石油BPによると,グルジアを通過している南コーカサスのガスパイプラインは復旧したが,バクー - スプサ間のパイプラインはまだ閉じたままであるが,1ヶ月前にバレル147ドルの最高値に達した原油価格も,過去に100ドル越えをして以来,ピークを超し,10%の値上がりを残したまま下落傾向に入る。金曜日のブレント北海原油は,111.12〜114.06ドルであり,ニューヨークの9月先物は112.35〜116.28ドルと収束してきており,一時150ドルを超える勢いは,もう来ないだろうとの予想である。

原油に続いて,主要な原材料の商品価格,希少金属の金も原油とドルの影響で下がり,オンス800ドルを割った時点で,他の金属商品,非金属も含めて急激に低下の傾向を示し始めた。この傾向は食糧の穀物にも現れてきている。私は,2007年末から2008年7月までの,プロジェクトレベルの価格上昇は25%と推定していたが,ここを頂点に,一つの落ち着きを取り戻した,との感を持っている。

●中国,広東省電力企業,力強い成長を,発表

広東省のザオヘン水力発電会社の,力強い成長が報じられている。


参考資料

2008年8月18日分

電力一般

●080818A Power, dailytimes.com.pk
今週,物価に低下の傾向,原材料への需要減の兆しか
Commodity markets slide on mounting demand worries
http://www.dailytimes.com.pk/default.asp?page=2008%5C08%5C17%5Cstory_17-8-2008_pg5_21

中国

●080818B China, prweb.com
広東省電力企業,力強い成長を,発表
Zhaoheng Hydropower Reports Second Quarter 2008 Results
http://www.prweb.com/releases/2008/8/prweb1218104.htm


ー 日刊アジアの開発問題 2008年8月17日分 ー空想の産物が第11次五カ年計画

「空想の産物が第11次五カ年計画」,パイプドリームでしかあり得ない,と厳しく批判しインド経済の行く末を心配しているのは,インドの主要経済ニュースサイト,エコノミックタイムスの昨日版である。その主要な原因は電力にあるという。

記事によると,中国は一週間に100万KW増えている,にも関わらず,インドは一週間に僅かに20万KWしか増えていない,とその電力セクターを批判している。年間50週だから,中国は一年で5000万KWの発電設備が増えたのに,インドは一年間で僅かに1000万KWと言うことになる,まあその様な数字であろう。同じような人口規模で,中国の発電設備は7億KW,インドは2.5億KWだから。

今日のエコノミックタイムスの記事を見ると,インド経済は曲がり角に来たのか,それもその主要な原因が発電所設備の不足にあるという。電力の不足は生産を阻害し,物不足が生じ,インフレに移行する,成長を阻害しインフレに移行する,と言う最悪のサイクルに突っ込みそうだ,と言うのである。2007年からの第11次五カ年計画の9%成長は,パイプドリーム,空想の産物でしかあり得ない,と嘆いている。

中国も事情は同じで,インフレを懸念しているが,中国の場合は発電設備はそこそこあるのに,燃料の石炭が足りない,石炭の生産及び供給体制が円滑に行っていない,だから電力不足なのであるが,インドは,どちらかと言えば燃料供給は表だって大きな問題にはなっていない。しかし,電源開発が,かけ声ばかりで全然進まないのである。第11次五カ年計画で7000万KWは空想だというのである。

この電源開発の遅れを修正するために,政府はいろいろな手を打ってきた。それは,一カ所400万KWの超大規模火力開発構想UMPPであり,北辺の水力開発に民間資金を呼び込むための水力政策の推進である。この火力のUMPPは10カ所以上のプロジェクトの立ち上げを行ったが,現時点で資金調達が終わったのは,僅かに一カ所である。

民主主義か社会主義か,なんて言う議論は今更通じないが,インド人の間のプロジェクト進行に於ける紛争の多さにはあきれるものがある。第一に,電源開発で主導権を取るべき州政府が中央政府の言うことを聞かない,一旦決まった契約をまた蒸し返す,8月14日付の本誌でも書いたが,とにかく,「サンクティティ オブ コントラクト」,契約の神聖さがすぐに壊されてしまう。インド人特有の個人主義が,このような電源開発の場面では大きなマイナスに働いている。

今日もう一つ,どうしても触れておかなければならないのは,私が,「アジア開発4人男」,の一人に指名したネパールのプラチャンダーについてである。彼が,毛派が大統領選に敗れたにもかかわらず,大人しく首相の座に立候補して当選,これを受け入れて,ネパールの今後の開発と外国資本の保護を約束したことは,既に報じられている。

日本の新聞も,昨日にかけて,盛んにこのプラチャンダーの横顔,プロフィールを載せている。彼は最初,若いときにUSAIDの専門家として農業開発を手がけ,そこで共産主義に目覚めたという。それから,富と権力を握る王室の廃止を公言したことから,「反逆者」,として国王政権の手配を受け,80年代後半には地下活動に入った,と書かれている。

今でもマオイストの軍隊の解散は行われておらず,何かというと武力闘争への回帰をちらつかせる,「ならず者」,の片鱗があるが,農村一帯を把握している彼には,無限の強みがある。本名はプスパ・カマル・ダハルで,プラチャンダーというのは自分で付けて渾名で,,「ならず者」,を意味する。いずれにしても彼は,ポスト京都でネパール水力でインドの石炭を代替する事業の,キーパーソンであることは間違いない。我々は彼から目を離さない。


本文

●インド,電力不足が招くインフレ,経済成長を阻害

非常に深刻化するインドの経済状態,それも原因は電力不足である,と甚だ悲観的な記事を書かせた直接の出来事は,2008年,今年の4月から6月までの3ヶ月間の発電量の伸びが僅かに2%で,昨年同期の8.3%を遙かに下回ったことで,昨年はのGDP成長は9%であったことを考えると,今年の経済成長はかなり下回るのではないか,しかも電力不足が招く産業活動の不足,その結果としてのインフレが,既に政府の政策ではどうしようもないところまで来ている,悲観的である。

発電量が少ないことは,モンスーンの異常による水力発電の減少もあるが,絶対的に発電設備の不足によるものと考えられる。2007年と2008年の電力不足分はそれぞれ14.8%,8.4%と推定される。鳴り物入りで始まった超大規模火力開発UMPPではあるが,資金調達完了までこぎ着けたのは僅かに一つだけである。今年の9月には,大陸東岸KG流域でリライアンスのガス生産が始まることが明るいニュースであるが,これが発電所の容量を増やすことを保証するものではない,中国は1週間に100万KW増えているのに,インドは僅かに20万KW,と嘆いている。

昨年までは,火力の稼働率を上げることによって何とか経済を支えてきた。稼働率が64.7%から77%に増大したからである。しかし,77%ではもうこれ以上同じ方法を期待することは無理である。第11次五カ年計画では,発電力を9.5%増大する計画であるが,今の状態から見ると,経済成長9%,インフレは低く抑える,と言う第11次五カ年計画は,空想でしかない。

インド経済の先行きに対する厳しい記事であるが,確かに中国と比べるときに,発電所建設への道のりが余りにも遠すぎる。中国はすごいスピードで発電所を建設してきたが,石炭供給が追いつかず電力不足に陥っている,設備は十分にあるのである。ところが,インドは発電所建設が出来ない,何かというと契約で揉めている,民主主義の悪いところが出ている,と言うよりは電力事業法の欠陥かも知れない。同じ10億の民に対して,中国は7億KW,インドは2.5億KWである。

●インドネシア,政府,2009年度の燃料補助金,44%カットへ

今でもインドネシアは,燃料に関して大きな政府補助金を支出して,国際社会で問題になっているが,この政策は容易に変えられず,特に来年に大統領選挙を控えたユドヨノ大統領にとっては,重要政策の一つである。大統領は,金曜日,議会に対して,2009年の燃料補助金は,今年の180兆ルピア,約194億ドル相当,を43.76%カットして101兆ルピア,約108億ドル相当,に減らす意向を表明したが,その前提条件は,今現在やや下降傾向にある原油国際価格が100ドルになると想定した上での提案である。

この中で,発電燃料の補助金は60兆ルピア,約65億ドルにシーリングし,残りの32兆ルピア,約35億ドル相当は食糧や肥料などに向けられる,としている。ここで問題となるのは原油価格で,インドネシアは,インドネシア原油価格ICPを基準にしているが,これが160ドルに近づくと,問題が発生してくる。大統領は危ない賭けに出ている。

国際社会からの批判に晒されているインドネシアの燃料補助金であるが,国内価格と国際価格の格差を一定に抑える努力が,今のところインドネシアに出来る唯一の方法なのである。そのためにも,原油価格がバレル160ドルというような価格に進めば,ユドヨノ大統領は,大きな爆弾を抱えることになる。


●HEDCOR,ダバオの水力に遅れ,工事費増

前から少し気にしていたのが,このダバオの小さい水力プロジェクトである。アンブクラオなどで活躍中のアボリスの子会社HEDCORが,ミンダナオのダバオに三つの水力発電所,スワル,タムガン,タニガン,合計出力34.5MWを推進して,本来ならば昨年の7月にも着工の予定であった。ミンダナオの東南の深い湾,サマル島の西対岸にあるダバオ市の需要25万KWに対応しようとしているものだ。

HEDCORのロンキオ社長が会見し,工事費,特に鋼材の値上がりで,三つのうちのスワル水力7MWを放棄した,と宣言し,後の二つについても,70億ペソであったものを55億ペソにして,続行するが,ダバオ国家水資源区の理事会が,これ以上反対するならば,この残りについても放棄する可能性がある,と脅かしている。


参考資料

2008年8月17日分

フィリッピン

●080817A Philippines, Manila Bulletin
HEDCOR,ダバオの水力に遅れ,工事費増
HEDCOR may scrap Davao hydro project due to delays, cost increase
http://www.mb.com.ph/BSNS20080817132719.html

インド

●080817B India, Economic Times
電力不足が招くインフレ,経済成長を阻害
Electricity-led inflation threatens growth
http://economictimes.indiatimes.com/Editorials/Electricity-led_inflation_/articleshow/3369734.cms

インドネシア

●080817C Indonesia, The Jakarta Post
政府,2009年度の燃料補助金,44%カットへ
Govt proposes to reduced fuel subsidy
http://www.thejakartapost.com/news/2008/08/16/govt-proposes-reduced-fuel-subsidy.html


ー 日刊アジアの開発問題 2008年8月16日分 ーベトナムよ,何処へ行く

「ベトナムよ,何処へ行く」,ベトナムの支援者の中には,ベトナム戦争以前のサイゴンからのファンと,我々世代のように,丁度カンボジア侵攻の制裁が融けて国際社会へ帰ってからのファンと,年代的に2層がある。私たちは,まさしく日本が国際社会に先駆けて制裁解除に踏み切った1991年から,まだなかなか入れなかった奥地まで入って,制裁解除途上のベトナムを具に見てきた。中央高原のバンメトート付近の素晴らしい景観と豊かさに目を見張ったものである。

私たちは,メコン委員会の中でも,ベトナム人の優秀さは分かっていたし,もう既にその頃から自国の鉄工所で水力のタービンを,図面を引きながら造っていた技術者を見て,ベトナムの無限の将来を予測したものである。制裁解除後のベトナム政府は大いに揺れたが,漸次その揺れも収束していって,国家電力EVNを組織した頃から,東京電力のフーミーのIPPを入れた頃までは,順調だったように思う。

それからしばらく私自身はベトナムから遠ざかったが,毎年繰り返される洪水被害と渇水期の電力不足の報道を見ながら,恒例行事だな,ぐらいの感覚しかなかったが,今年の電力不足の報道を追いかけながら,少し今までと違うな,と首を傾け始めた。それは,中核となってきたEVNの言い回しがおかしくなってきたと感じたからである,何か投げやりになってきた,政府の要請にも拒否反応を示したり,どうもしっくり行っていない。

元EVNの総裁だったハイさんが,今や副首相に上り詰め,近い将来首相の座を目指す勢いにあるが,彼とEVNの間にも,議論がある。基本には中国と同じ電力料金の規制があるからだろうか,EVNはIPPの電気を無理矢理に買わされて不満一杯である,結局,電力不足の責任はEVNは取ろうとせず,高く売りつけてくるIPPの責任,みたいなことを行っている。

どうですかね,私自身最近はベトナムに行っていないし,具体的なプロジェクトも扱わず,遠くから報道などによる感覚的な推測なのですが,工業団地が,北部,中部,南部で盛んに開発されている現状の中,電力セクターは大丈夫なのですかね。


本文

●ベトナムへの電力投資,独占企業EVNの存在が問題に

ベトナムの国家電力公社EVNが設立されたのは1990年代後半か,形としては強力な組織であったが,電力の実務は,それまでにあった北部,中部,南部の各電力公社が行っていた。その後,EVNは強力な組織になったが,独占状態が進み,今日の悪評判になってきた。それもこれも,電力不足と電気料金の問題に集約されている。

フォルモッサは台湾企業と思われるが,ベトナム中部のハティンに,工業団地を対象に80万KWの発電所の建設を提案し,イタコグループが,同じく中部ベトナムのやや南部に440万KWの大プロジェクトを提案しており,電力への民間投資の意欲は,相変わらず盛んである。しかし,そこに立ちはだかるのがEVNの独占的オフテーカー,引き取り方式で,それは電気料金と密接に関係している。

約10年前に,米国企業が首相や副首相の支援で,大々的な発電投資を進めようとしたが,EVNがどうしてもKWh当たり4セントでしか買わなかったために,そのプロジェクトは潰え去ったと言うことだ。今でもEVNの電気料金は低く抑えられており,4.5セントレベルにあるという。EVNにしてみれば,電気料金を上げて貰わねば,IPPとの売買協定に対応できない。しかし政府は,電力の40%は古い水力であり,60%が4.5セント原価の新しい発電所であるから,コストは4セント以上ではあり得ない,と頑張っている。

●インド,タタ電力,30億ドル,原子力参入を視野に

タタ財閥,総資本625億ドル,全世界の従業員数35万人,進出分野は電力の他,製鉄,自動車など,27社に及ぶ一大コングロマリットである。このタタのボーラ顧問が,米印協力協定後のタタの原子力産業への参入を高らかに謳い上げた。2020年までに170万KWユニットで総計2000万KWの原子力開発を目指すインドにとって,各国の売り込み競争が激しくなって行くだろう。

日本の立場は,原子力供給国グループの中でも微妙で,先日訪印した高村外務大臣も,一言も言質を与えなかったようだが,三菱を中核とした原子力グループは,スタート台についているだろう。ボーラ顧問は,GEの単純P型,150万KWユニット2台で27.5億〜32.5億ドル,また三菱もP型で同様規模の技術を,フランスのアレバは欧州独特の技術で,また米国のWEもP型110万KWユニット2台35億〜40億ドル,と述べている。

彼の算定によると,これらの原子力は,220万〜340万KWの発電所で,KWh当たり2.5〜3.0ルピー,即ち5.58〜7.00セントで,これは輸入石炭の火力発電所と十分に競争できるし,また発電の一定量については自由に売ることが出来るので,その分は8ルピー,即ち18.6セントまで期待できる,と抱負を語っている。

●フィリッピン,電力企業ファーストGEN,純益が落ち込む,79.5%

ファーストGENはロペス財閥が有する発電企業である。今年全般の収益は14.7百万ドルで昨年同期の108.9百万ドルに比べて79.5%の落ち込みとなっている。国有地熱のEDCの買収が大きく影響しているが,ファーストGENが有して全量マニラ配電に供給しているサンタリタ天然ガス火力の租税特別措置が切れたことも原因である。


その他

●インド,チャティスガール州,1.7兆ルピーの電力投資


参考資料

2008年8月16日分

ベトナム

●080816A Vietnam, english.vietnamnet
ベトナムへの電力投資,独占企業EVNの存在が問題に
Want to invest in power? Talk to EVN!
http://english.vietnamnet.vn/reports/2008/08/798976/

フィリッピン

●080816B Philippines, business.inquirer
電力企業ファーストGEN,純益が落ち込む,79.5%
First Gen profit plummets 79.5%
http://business.inquirer.net/money/breakingnews/view/20080816-155000/First-Gen-profit-plummets-795

インド

●080816C India, Economic Times
タタ電力,30億ドル,原子力参入を視野に
Tata Power eyeing $3 bn nuclear power foray
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Tata_Power_eyeing_3_bn_nuclear_power_foray/articleshow/3369299.cms
●080816D India, Economic Times
チャティスガール州,1.7兆ルピーの電力投資
Chhattisgarh to get Rs.1.7 trillion investment in power
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Power/Chhattisgarh_to_get_Rs17_trillion_investment_in_power/articleshow/3368636.cms


ー 日刊アジアの開発問題 2008年8月15日分 ー米国はついにムシャラフを操れず

「米国はついにムシャラフを操れず」,逆に振り回された,とパキスタンのムシャラフ大統領の辞任近しの報道が世界を駆けめぐっている。盛者必衰の理,の言葉通りだが,9年前のムシャラフの軍事クーデターは,パキスタンの腐敗を目の前にしてきただけに,我々も大いに彼に注目したわけであるが,彼も人の子,政権に執着しすぎた。それにしてもアフガン攻撃への米国への協力は,我々にも強い印象を与えた。彼は辞めれば,憲法違反で死刑の可能性もあるという。途上国の政権交代は,いつも悲惨な結末を迎える。

心配していたネパールの首相選び,今日の朝日新聞紙上では,我らがアジア開発4人男の一人,毛派のプラチャンダーを内閣首班に選んだ,と報じている。大統領職をとれなかった毛派が,政権離脱かと心配されたが,プラチャンダーが最大多数政党として,首相に選ばれたことは,今後のネパール開発にとってプラスだろうと思われる。今後,インドとの水力開発協力に,どこまでコミットするか,関心を持っている。

我々も関心深いグルジア,そこで起こっているロシアと西側の対立は深刻である。東西両側のエネルギー問題が絡んでの複雑な事件であることは理解できるが,私は,あれほど経済的に疲弊して日本や米国も含め西側に徹底的に頭を下げて経済復興に向かったロシアが,どうしてこんなに早く立ち直って,しかも経済の恩人達に牙をむいてくるのか,そのスピードが納得できない。一旦エネルギーの立ち上がりを成功させれば,世界はこのように早く変わって行くことが,この20年の振り返りで感慨深い。

今日は,インドの国営重電メーカーBHELの莫大な設備投資計画に,大きく目を向けさせられた。アジアの重電業界は変わって行くだろう。先日も,アゼルバイジャンで中国企業の複合ガスタービンの入札で日本の三井と中国企業が争った記事があったが,私の友人がメールをくれて,中国で三菱重工が複合機器を受注し,半分は技術移転を要請されて,中国は今や,この分野でも海外進出を狙ってきたのだ,と解説していた。

我々は早めに頭を切り換えた方がよい。アジア近傍を中心に民間電力開発,IPPを志す日本企業は,水力であれ火力であれ原子力であれ,出来る電気は全く一緒であるが,そこにコントラクターとして入ってくる企業には大きな様変わりが起こっている,と言うことである。水力機器や石炭火力機のコンベンショナルなものは,今や日本企業の手を離れつつある。おそらく1,2年の間に,インドと中国のメーカーが主流を占めるだろう。

日本の企業はどこに行くのか,もう天然ガス複合火力機器や超臨界ボイラーまで,インドや中国の手の中にある現状を見ると,おそらく日本の重電メーカーは電力分野では原子力に特化されて行くのだろう。火力の大気汚染などではまだまだ日本に求められるものは多いいが,今日の記事にあるように,インドの企業は国際的なコンサルタントを求めている,否応なく日本のメーカーは,ポスト京都の問題でも出てきたセクトラルアプローチで,そのすべてのノウハウを,無償で提供せざるを得ない状況に追い込まれている。

ジェネコンも似たような立場にある。ダムや火力の敷地造成,発電所ビルディング,などは,もう明らかに日本のジェネコンにはその熱意が失せている,価格的にも中国のコントラクターとは競争の意欲はない。日本のジェネコンの次の仕事,それはおそらくEPCを包含できるだけの技術力を蓄えた上での,中東などの原油収入などを基礎とした総合的な開発事業なのであろう。世界は変わる,私がこのメルマガを書き始めてからでも,どれほど技術世界は変わってきたか,思い知らされる。次の10年間が楽しみである。


本文

●インドのBHEL,1000億ルピーの能力拡張へ

重電メーカーも世界の分業が進む。水力発電機器や一般石炭火力機器などのコンベンショナルな機器は,もう日本などの企業は価格的にもマンパワー的にも扱えなくなってきている。欧米のメーカーがどうなって行くか分からないが,アジアの水力開発や石炭開発の重電機器は,早晩,インドや中国のメーカーがこれを肩代わりしつつあり,近い将来全面的に彼等の役割になるだろう。その中の有力候補の一つがBHELであろう。

ただBHELは,国内の水力や石炭火力開発に,容量的についていけるかどうか,問題があるようだ。インドの電力省などは,電源開発の遅れの責任はBHELの責任だ,と言っているし,一方,この記事の中でBHELのラビ総裁は,契約してからたびたび企業主側が設計変更をしてくる,これが機器製作の遅れの原因だ,やや泥試合に入りかけている。

今回の設備増強計画は,二つで,まず2009年12月までに500億ルピー,約12億ドルを投入して,1500万KWの製作能力に高め,更に次の4年間,即ち2012年,第11次五カ年計画の終了までには1000億ルピー,約25億ドルを注ぎ込んで2000万KWの製作能力に上げるという。今年の売り上げの伸びは33%に達している。ただ,ナビ総裁は,設備の増強と共に国際的なコンサルタントの支援が必要だ,と言っており,この辺りはこれから原子力機器に特化して行くと思われる日本メーカーの協力が必要になる。

BHELは,国内で多忙にもかかわらず海外志向も強く,今後,アジアの水力や石炭火力機器の重要な供給者に育って行くだろう。現在の受注総額は9500億ルピーに達しているが,記事によると,この中には多くの海外プロジェクトが含まれているが,当面はシリアの400MW火力発電機器,208億ルピーがあり,最近,遂にベトナムに切り込み,20億ルピーではあるが,ナムチエン水力の受注を果たしている。

●メコン河の水位上昇,沿岸住民に脅威

8月,メコンは洪水期である,洪水期のメコンを見ると,身を引き込まれて行くような恐怖を感ずる,流速が早く一旦この中に身を任せると2度と上がって来れないような急流の中で,岸辺で子供達が嬌声を上げながら岸辺の木からメコンに飛び込んでいるのには驚かされる。今日の記事はタイのナコンパノムとムクダハンなどやや下流からの記事である。

メコンの堤防にはいろいろ問題がある。主としてタイとラオスの国境を流れているので,お金のあるタイ側が堤防を上げると,ラオス側に洪水が流れ込む,お互いに30センチほどの高さの争いになるわけである。少し前まではビエンチャン下流が格好の遊水池なっていて,下流の洪水を減退させる自然の役割があったが,ビエンチャンでも堤防建設が進み,洪水の影響は下流へ降りてきている。

●フィリッピンのODA額,上昇,約974億ドルへ

NEDAが2007年のODAをまとめたものである。ODA総額では昨年の948億ドルから僅かに伸びて974億ドルである。130のローン,119のプロジェクトローン,11のプログラムローンとなっている。57%がインフラで,運輸交通が38億ドル,エネルギー電力が8.5億ドル,約7億ドルが水資源となっている。最大のドナーはJBICで全体の37%,額で36億ドルを占め,無償協力ではJICAが229百万ドルで最大である。


参考資料

2008年8月15日分

インド

●080815A Vietnam, business-standard
インドのBHEL,1000億ルピーの能力拡張へ
Bhel earmarks Rs 10k-cr for capacity expansion
http://www.business-standard.com/india/storypage.php?autono=331447

フィリッピン

●080815B Philippines, Manila Bulletin
フィリッピンのODA額,上昇,約974億ドルへ
ODA loans rise slightly to $ 9.747 B
http://www.mb.com.ph/BSNS20080815132560.html

ラオス

●080815C Mekong, Bangkok Post
メコン河の水位上昇,沿岸住民に脅威
Mekong floods, riverside communities threatened
http://www.bangkokpost.com/breaking_news/breakingnews.php?id=129635


ー 日刊アジアの開発問題 2008年8月14日分 ー契約とは交渉の終結で始まりではない

「契約とは交渉の終結で始まりではない」,「契約の尊厳」,「サンクティティオブ コントラクト」,この辺りの論点が,民間投資にとってはキーワードになる。今日のインドの州政府の,契約に対する観念と現実のギャップが,インドに限らず,民間投資を興すかどうかの分岐点になるのだろう。インドは金メダルがなぜとれないか,それはインド人が世界最大の民主主義に耽溺して,中国のように国威発揚をする必要がないから,と説いた人がいる。まさにインドは民主主義とハイテクの資本主義で,世界にインドを改まって主張する必要がないのであろう。

昔,世界銀行の担当官と仕事をしていた頃,「ロックフィルダムは工事を実施しながら設計を進めて行く」,というような日本流の考え方を述べたことがあったが,そのインド人の担当官は,「おい,あなたは今大変なことを言ったなあ,設計と契約の区別も分からないのか」,と非難されたことがあったが,これも契約の尊厳が分からなかった日本流の,コントラクターと企業主が協力して相談しながら進めていた,過去の日本流が批判された。

まあ私は今でも,どちらが正しいのか疑問があるが,私は人類が大自然と闘いながら世紀の構造物を築造して行く,と考えていたので,大自然との闘いは人間同士の契約を超越する,と思っていた。今は,大自然と戦う,と言うよりは大自然との調和を図りながら構造物を造っていくわけだが,やはり相手は大自然であって,契約を超越しなければならないことは,数多とあるに違いない。

アゼルバイジャンの現地紙の今日の報道は,JBIC,東電設計,三井など日本が関わる重大な記事ではあるが,日本から遠く離れたアゼルバイジャンの話である。そこに凝縮された二つの問題,中国企業と日本企業の葛藤,それに2008年初頭より問題になり始めた工事費の高騰の問題である。昨日も,ダムと石炭は中国,と割り切ろう,と提案したが,ここの天然ガス複合火力の技術の評価について,考えさせられるところがある。

ダムと石炭火力は,技術的にも工事費の面でももう中国の世界だ,というのは誰でも分かっている。だから日本のジェネコンは中東へ飛び,日本の重電メーカーは原子力へと走る。ところが,天然ガスの複合火力の世界まで中国と技術的な争いをしなければならない段階に立ち至っているのか,まさに世界は日単位で変化を遂げて行く。日本企業は,今後目標をどこに置くのか,遠くを見つめて考えておく必要がある。トヨタ自動車のエンジニアーが,もう車は駄目だ,と次のものを探して世界を歩いている,と言う話を最近先輩から聞いた。


本文

●中国企業,カンボジアのダムの可能性調査を実施へ

カンボジアのスイセン大臣,未だ健在か。大臣の談話として発表されたもので,カンボジア東北部,メコン河のスタントレンから東へ分かれているスレポック川に二つのダムを建設する,との内容で,これの可能性調査を中国の広西省の企業が実施するという。内容について詳細は発表されていない。この近辺にはJICAも手を付けた小水力があるが,どうも今回の発表は,もう少し大規模のような感じがする。

地図で見て貰えば分かるように,スレポック河の上流,ベトナム領内には中規模のダム計画もあり開発も進んでいるが,カンボジア領内は川幅は広く勾配も緩やかで,大河川である。スレポック本流にダムを造るとすれば,貯水池は相当な規模となり,住民への影響も大きいだろう。或いは支流かも知れないが,これから鳴り物入りで調査を行うと言うことは,スレポック本流かも知れない。

これで中国企業は,カンボジアの西も東もダムを造ることになり,カンボジア内の殆どは中国企業の手でダム建設が行われる。まさにダムは中国の時代である。需要とか送電線の計画は後回し,と言うところが中国らしい。まず飛び上がってからどこに降りるか考える,方式である。次はカンボジアのメコン本流,サンボールか,それともスタントレンか。

スレポック川の位置図,スタントレン付近
http://my.reset.jp/~adachihayao/08081401.jpg

●フィリッピン,PSALMとNPCのトレーディングティーム,WESMルールに不法介入

内容が難しくてよく分からない。現在,フィリッピンのルソングリッドの電力供給の10%は,電力改革に基づいたプール市場取引の中で行われているが,今年の2月から6月にかけて,主としてPSALMとNPCのティームによる不正,または規則の隙をついたオッファーが行われていることが,WESMを運用するPEMCによって記録されている,と言うことだ。

スワル石炭火力について,PSALMが違法と思われるオッファーなどを行い,NPCもマラヤ,スービック,カラカなどの発電所の運用で不正と考えられる行為を行った,と報告され,このような不法行為は,この2月から6月までに10回に及んでいるという。PEMCのホロパイネン社長は,まだ市場は新しく,これらは産みの苦しみと考えざるを得ない,としている。

フィリッピンのプール市場WESMは,まだルソン系統の10%しか扱っておらず,現在のところ電気料金などに大きな影響を与えていないが,今後NPCの発電所の売却が終わり,系統が大きくなってくると,WESMの割合が増え,影響も大きくなってくる。その時の市場の取引は,時に大きな取引上の事故となって現れる可能性を含んでいる。

●インドの各州,電源開発企業,州政府の方針変更を恐れ,懸念

インドで,契約の尊厳が破られるケースが,州政府の電源開発の場で多発し,投資企業に一定の衝撃を与えている,と言うもので,特にダボール発電所問題以降,これがインドの民間資本による開発に影響を与えている。州政府が変われば,過去の契約を破棄したり大幅に修正するケースが目立っていると言うのである。「契約とは,交渉結果の結論であり,それが交渉の始まりであってはならない。」,と記事は警告している。

確かに,インドに於けるIPPの難しさは,時に曲げられる契約条項であり,日本企業もこの困難に直面して二の足を踏んでいるケースがあるとは聞いていた。今回問題となっているのは,アルンチャルプラデッシュの水力,オリッサの13にも上るIPP契約の変更,メガラヤの問題などである。「サンクティティオブ コントラクト」,これからこの英語を時々使わせて貰おう。

●アゼルバイジャン政府とJBIC,発電所建設借款で,中止を検討

40万KWの複合ガス火力の問題らしい。2004年に東電設計が310百万ドルと見積もり,その後JBICがこの3億ドルの275百万ドルを40年償還で借款供与を決定した。アゼルバイジャン政府は入札をして,日本企業が448百万ドルを提示,中国企業が403百万ドルを見積もったが,政府は中国企業を技術的に不適事項があり,落とした。これが予算的にも困難状態に陥って,この入札をキャンセルし,JBIC側が車間の継続に難色を示している,と言うような感じの記事ですかね。

これには二つの重要な最近の要素が含まれている。一つは,複合ガス火力まで進出してきた中国企業の能力の問題と,今年に入ってからの建設費の高騰問題だ。ダムと石炭は中国企業に任せるべきだが,ガス複合火力となると,まだ日本の技術が優先する場面が多い。そこに食い込もうとする中国企業とのせめぎ合いか。また,3億ドルを想定してスタートしたプロジェクトが,4億ドル台の争いになったことも,JBICを戸惑わせている。


参考資料

2008年8月14日分

フィリッピン

●080814A Philippines, Manila Bulletin
PSALMとNPCのトレーディングティーム,WESMルールに介入
PSALM, NPC trading teams log other breaches of WESM rules
http://www.mb.com.ph/BSNS20080814132486.html

インド

●080814B India, Economic Times
電源開発企業,州政府の方針変更を恐れ,懸念
Power developers worried as States go back on contracts
http://www.thehindubusinessline.com/2008/08/14/stories/2008081452570100.htm

カンボジア

●080814C China, xinhuanet
中国企業,カンボジアのダムの可能性調査を実施へ
Chinese company to conduct feasibility study on dams in Cambodia
http://news.xinhuanet.com/english/2008-08/14/content_9289139.htm

アゼルバイジャン

●080814D Azerbaijan, abc.az
アゼルバイジャン政府とJBIC,発電所建設借款で,中止を検討
Azerbaijan and JBIC seek a way to halt payments on frozen loan for Severnaya 2 station construction
http://abc.az/eng/news_13_08_2008_26723.html


ー 日刊アジアの開発問題 2008年8月13日分 ーダムと石炭火力は中国へ

「ダムと石炭火力は中国へ」,という流れはアジアどころかアフリカまで及んでいるが,もう今の時代,少なくともダム建設の従来のジェネコンの国際的な役割は中国企業が果たして行く,と考えねばならないだろう。国内に於ける電源開発がもう行われない,と考えている日本のジェネコンはダム建設には関心がなく,もう全く別の方向を向いているようだ,それは中東であり,欧米で,しかもビルディングやエネルギー資源がその標的であろう。日本のジェネコンにとって,ダムなどはもう落ち穂拾いの感覚である。

だから,アジアで電力開発を志す企業は,どうしても中国の企業の助けを借りてダム開発などを行わざるを得ない実情である。日本の資金が中国のコントラクターに持って行かれるのは残念ではあるが,それによってIPPの運用益が増し,日本経済への還元が行われると考えざるを得ないであろう。もう既に,殆どのアジアのダムプロジェクトが中国企業によって抑えられている現実は,否応なく我々に中国企業との連携を要求してくる。インドネシアの看護士と一緒で,世代交代みたいなもので,少し慣れれば,中国企業との連携はそれほど難しい作業ではないだろう。

今日はインドの国営重電メーカーBHELのインド北東地域での活動に触れたが,最近私はBHELの動きを注視している。国内では,第11次五カ年計画の遅れはBHELの生産能力に問題があるからだ,と悪者にされながら,それでもベトナムやアフリカなど海外進出の指向も持っている。タタなどは,BHELだけでは生産能力に限界あり,として,上海重電との連携を具体化させようとしている。

ジェネコンの世界と一緒で,日本の重電メーカーも,三菱重工などの高効率火力機器への特化などは別にして,日本の重電メーカーがアジアの一般電源で戦えるフィールドはどんどん狭くなっているのではないか。日本の電力会社が,電源投資ゼロの現状では,日本の重電メーカーが日本企業のIPP進出を後押ししてくれるとは考えにくい。特に2008年に入ってからの鋼材の値上がりに押しつぶされそうになっている。日本の重電メーカーは,今後はおそらく原子力などの海外プロジェクトが主要なターゲットになるのであろう。

そういう意味でも,一般電源プロジェクトに対応する重電メーカーとして,私はインド国営のBHELと上海重電の今後に注目している。もう彼等の機器でないと,日本のIPP企業は戦えない状況に移りつつある。日本の重電メーカーではこの関連物価の値上がりを吸収できる将来への見通しを失っている。ただ,技術的にBHELや上海重電に問題はないのか,と言う疑問もあるが,BHELなどは日本の東芝と協力して,インドのプルリア揚水などを手がけているし,次の目標に移行して行く日本のメーカーの自然な技術移転が行われるのだろう,インドネシアの看護士問題と同じ。


本文

●インドネシア,重要な供給計画,地熱発電所の売電単価設定に議論

インドネシアは火山国である。インドネシアに於ける地熱発電の包蔵は2700万KWと言われており,世界全部の40%をインドネシアが持っている。現在開発されて稼働中の地熱発電所は18カ所,出力にして105万KWである。現在実施中のクラッシュプログラム,1000万KW開発計画の中に占める地熱発電の割合は30%だ。

今日の記事は,民間開発側,インドネシア地熱協会のスリャダルマ会長とPLNのバンバン計画技術部長の間で,開発された地熱発電のPLNによる買い取り価格について,白熱した議論が行われている。両者の論点がもう一つ理解できないが,基本にPLN基準単価というものがあるようだ,BPPと言っている。BPPとは,PLNの石油,ガス石炭火力と水力の平均生産単価のことで,これを基準にして地熱の売電単価が決められている。

地熱発電所の規模によって,10MW〜55MWはBPPの85%,55MW以上の規模ではBPPの80%となっているが,ここで問題となっているのは,この基準単価BPPに全国平均と地域平均があって,現在は全国平均価格が採用されて,KWh当たり7セントから9セントの買い取り値段が設定されていて,スリャダルマ会長によると,この単価による内部収益率が限界の14%で,これ以下に下がると,銀行預金の方がよい,という。なお,現在の地熱電力の生産単価は4.52セントと見られている。

PLNのバンバン会長は,全国8地域に分けられた地域別のBPP適用にすることが合理的,としてスリャダルマ会長の反発を買っている。この地域別BPPによることになると,高い地域,最高は西カリマンタンの21.36セントであるが,他の地域,例えば,西スマトラ,リアウ,南スマトラ,ジャンビ,ベンクル,ランプンでは4.91セントになってしまう。ここが争点のようだが,記事の内容として,補助金抜きの電力生産単価が述べられていて,大いに参考になる。

●インド,国営重電メーカーBHEL,北東トリプーラで発電計画

先日インド北東地域8州のエネルギー大臣がトリプーラに集合して,基幹送電線や域内送電線の増強を議論したばかりで,大いに議論があったことと,最近のBHELの動きに若干興味があることで拾い上げてみた。ONGCが主導するトリプーラ電力会社OTPCが,トリプーラ南部のパラターナに,363.2MW機2機,合計726.6MWの天然ガス複合火力を建設するもので,この機器をBHELが220億ルピーで機器供給契約を行った。

この記事でまず一つは,この北東地域に天然ガスが出る,と言うことで国家ガス公社ONGCが,電力会社経営に積極的に乗り出していることと,約900億ルピーをかけて地域の天然ガス開発プロジェクトを進めていることに注目しよう。先日の8州電力相会議では,水力に依存しすぎて季節による電力信頼性に差が出てきており,ある一定割合で火力開発が必要,と言うことで意見が一致している。

もう一つ,BHELの動きであるが,国内ではBHELの機器生産能力に問題ありとし,第11次五カ年計画の正否がBHELにかかっているような報道が行われているが,一方でBHELはベトナムへの進出など海外志向もある。国内では,タタなどが上海重電との合弁を考えるなど,重電業界に大きな動きが出てきており,今後のBHELの動きに注目したい。今回の機器は,KW当たり694ドルに相当する。


参考資料

2008年8月13日分

インド

●080813A India, Economic Times
国営重電メーカーBHEL,北東トリプーラで発電計画
Bharat Heavy Electricals to set up power plant in Tripura
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Power/Bharat_Heavy_Electricals_to_set_up_power_plant_in_Tripura/articleshow/3357984.cms

インドネシア

●080813B Indonesia, The Jakarta Post
重要な供給計画,地熱発電所の工事費値上がりに衝撃
Geothermal energy hangs on pricing plan
http://www.thejakartapost.com/news/2008/08/11/geothermal-energy-hangs-pricing-plan.html


ー 日刊アジアの開発問題 2008年8月12日分 ー山の中にもワニがいる

「山の中にもワニがいる」,と言う今日のカンボジアの記事を見て,少し怖くなった。カンボジアの南西の山岳地帯をカルダモン山地と呼ぶが,ここに中国企業を中心に,かなり大規模のダム計画が2,3,進んでいる。我々も知ってはいたけれど,何しろ森林保護で残された数少ないジャングルだから手をこまぬいていたわけだが,中国企業はもう飛び上がっている,どこに降りるかはこれから考えるようだ。

標高500m以上のジャングルの中の湖沼や渓谷にこのワニは住んでいて,希少種として保護の対象になっているという。ダムが出来ると静かに移住して貰う必要があるわけだが,その様なジャングルの中にワニが住んでいると,怖くて踏査も行けないではないですか。この前も,マニラ近郊のジャングルを歩いたが,あそこは蚊一匹おらず,全く人間にとっては快適な環境であった。あれで,沢を這い蹲って上っているときに,顔の前にワニが現れたら食べられる前にこちらが心臓麻痺で死んでしまうのではないか。

それにしても,この蚊も魚も蛇もサソリも蛭もいない快適なジャングルと,カンボジアのカルダモンのようにワニが生息しているジャングルと,どうしてそうも違うのだろうか。ワニがいると言うことは周辺にも大蛇がいるのではないか,食糧が必要だから。それで,マニラの蚊もいないジャングルはこれからどうなって行くのだろうか。果たして我々は,希少種のワニを避けてエネルギー開発をやらねばならないのか。ヤフーの何でも質問に,どうしてマニラは何もいないのか,と質問したが,誰も応えてくれない。

昭和40年頃に,はじめてイヌワシや希少種の調査をやったが,大学の昆虫の先生と子供のような網の昆虫捕獲用のタモを持って山の中を歩いたときは本当に情けなかった。どこの先生とは言わないが,足立君,僕の研究室の蝶を一匹ここに放せば,それで君のダムは終わりだよ,と言われたときは,先生の腰を蹴飛ばしそうになった。最近は地質やさんから,石灰岩が出たら終わりですよ,と脅迫されているが,まあそのような話なのである。

ぐたぐたと書いたが,やはり環境と開発,この年になってからまた考えるのは面倒くさいが,とにかく人間の環境についてはわかりやすい。しかし,ワニが280匹お住みになられているからダムは造れない,と言われると,またまた考えてしまう。何かの希少種が途絶えることは人類が途絶えることに繋がる,と言う説明なのか,それならそれも人類にとって身勝手な考え方だし,そうかといって,ワニの人権,ではないワニ権,また人類愛,ではないワニへの生物同志の愛からダムを造ってはいけないと言うのか,そこのところをはっきりさせたいものだ。


本文

●フィリッピン,WESMの料金高騰問題,NPCの時間別料金で解決か

フィリッピンの電力自由化,根本が揺れている。先日もここで解説したように,WESM,電力取引市場,変電所の故障の影響で,「天文学的な値上がり」,を見せた電力の売買価格,それはKWh70セント近くまで上がったわけであるが,これをどう始末するかで議論を積み重ねてきた。ERCとしては一定の結論に到達したようであるが,このような処理方法が,法律に則しているのかどうか,また議論が沸き上がっている。

ERCは,一応,現在市場の外にあってIPPのオフテーカーであり,直接マニラ配電に電力を売っているNPCが,TOUと言って時間別,1時間毎に設定された電気料金表を持っており,これを適用するというのである。この料金表は私も見たことがあるが,オフピークで大体1.5ペソ程度,ピーク時で6ペソ程度に配分されている,一応合理的と思われるシステムであるが,数字そのものがどうなのか,と言われると分からない。

マニラ配電は,WESMから現在は6%のオフテーカーを指定されており,ある一定の割合でこのプール市場から買電する義務を負っているが,実際には10%近くを買っており,また将来は必要電力の殆どをこのプール市場から調達するものと想定されている。先月はマニラ電力は巧妙に買って出て,KWh310ペソ,大体7セントで納めているが,普通は9〜18ペソ,即ち20セントから41セントという高い電気を買わされている。

ここで非常に大きな議論が持ち上がっているのは,WESMで市場価格として出た電力価格を,その様に人力で曲げてしまってもよいのか,と言う議論である。法律に基づけば,フォースメジャー,即ち法律的に不可抗力な状態,または国家の緊急事態,その二つのケースのみ,取引価格を操作してよいことのなっている。今度の場合がそれに相当するのか,と言うことである。

私のシンガポール在住の友人は,実際に電力を引き取ってくれる約束のテークオアペイよりも,今のプール市場は,価格的にしっかりと守られていて,かえって安全な場合がある,とごく一般的な話として伝えてくれているが,フィリッピンのWESMがここまで人為的に価格に介入すると,それが友人の言っている意味から納得できるが,これはあくまで制度のトランジション,遷移状態にあるからではなかろうか,と言うよりも,物理的にもソフト的にも健全な電力市場になるまでは,人為操作が必要だ,と言うことになるのかも知れない。

●パキスタン,イランから100万KW電力輸入にサイン

ちょっと驚きましたね,と言うよりは私が勝手に推測したのは正しくなかったのか。先日は,2013年を目指してパキスタンは,100万KWをタジキスタンから輸入する,それも1000数百kmのテロ地帯に送電線を通してと。これは米国が,パキスタンがイランからのパイプラインを嫌がり,中央アジアからの電力輸入を保証したのだろう,と書いたが,その裏を返すように,今日は,イランからの電力直接輸入に合意したとの報道である。

今日の報道は,パキスタンとイランの合同経済協力会議JECが6月末にテヘランで開かれて,そこでこの10万KW,南西端のゴダワール港まで,100万KWを中央部のケッタまで,送電するための可能性調査に着手したというのである。調査完了の暁には,イランがそのインフラ構築のための資金を用意する,と言うことである。この南西端のゴダワール港までは,イランの国境から僅かに70kmである。地図参照のこと。

パキスタン,ゴダワール港の位置とイラン国境
http://my.reset.jp/~adachihayao/08081201.jpg

現在のパキスタンの不足電力は400万KWとと言われており,連日厳しい強制停電が続いている,600万KWの緊急電源が必要とされているが,タジキスタンからの100万KW,イランからの100万KWはいずれも短中期の計画として,10年かかると言われるバシャダムなどの計画の昼間を引き継ぐものだ。燃料値上がりで,現在パキスタンはIPPからKWh16〜20セントで買っているが,イランの電力は7セントという。

●カンボジアのダム開発,ワニの生息に打撃

カンボジアのカルダモン山脈の標高500m以上の高地の湖や峡谷には,260〜280頭のワニが住んでいるという。これが貴重種で,今話題になっている中国企業の水力開発によって大きな打撃を受ける,とカンボジア政府のワニ保存計画の専門家が心配している。その様なところにワニがいるのは怖い話ですね。この前,ルソン島のジャングルを歩いたときは,蚊一匹いなかったから快適だった。ワニはいない方がよい,と思うのは私たちだけか,生態系が壊れると人間も困る,と言う話は,桶屋の話のようで少し分かりにくい。

それにしても,中国企業の開発計画はすごい,あの地域にはその様な大規模な計画はなかった,おそらくすごいダムを計画しているのだろう,人もあまりいないし思い切ったダム計画を進めているのだろう。具体的なダムサイトはまだよく分からないが,その当たりの地図を見ておこう。

カンボジア,カルダモン山脈付近
http://my.reset.jp/~adachihayao/08081201.jpg

既に決定した計画は,中国大唐電力によるアタイ川ダム計画,12万KW,313百万ドル,2012年運転開始である。今年の6月に中国企業と合意したが一時中断中のタタイ川ダム計画,246MW,540百万ドル,2013年運転開始。また3番目のラッセイチュルムクロム計画は,ミッチェルコーポレーションと書いてある,どこの企業か,338MW,496百万ドル,2015年運転開始となっている。


参考資料

2008年8月12日分

パキスタン

●080812A Pakistan, Daily Times
パキスタン,イランから100万KW電力輸入にサイン
Pakistan inks pact with Iran to import 1000MW electricity
http://www.dailytimes.com.pk/default.asp?page=2008%5C08%5C11%5Cstory_11-8-2008_pg7_69

フィリッピン

●080812B Philippines, Manila Bulletin
WESMの料金高騰問題,NPCの時間別料金で解決か
TOU rate may ease WESM price spikes
http://www.mb.com.ph/BSNS20080812132281.html

カンボジア

●080812C Cambodia, phnompenhpost
カンボジアのダム開発,ワニの生息に打撃
Dams threaten Siamese crocs
http://www.phnompenhpost.com/index.php/2008081121121/National-news/Dams-threaten-Siamese-crocs.html


ー 日刊アジアの開発問題 2008年8月11日分 ーインパールが落ちれば車が一軒一台

「インパールが落ちれば車が一軒一台」,と父親に言われてインパール陥落の報を待ち続けていたのは,当時8歳の私であった。「守るも攻めるも黒鉄の」,と軍艦マーチがラジオから漏れてくると,日本軍が大勝利を上げた大本営発表がある。最初は私と一緒に軍艦マーチで喜んでいた父親であったが,私が何度も,インパールはまだ落ちないのか,と聞くものだから,父親の声がだんだん小さくなっていった。あのころから,あのビルマの西の山の上には,近づけないが,すごい楽園があるような気分にさせられていた。

それから次の機会,私がインド北東部に接近したのは,50歳頃,あの軍艦マーチでインパールを望んでいた時から40年を経て,私は,ブータンの山の中からこのインド北東部のアッサムを眺めることになる。ブータンの峡谷から一挙に開けてアッサムへ吹き出す洪水の水は,バルブから噴き出すようにアッサム平野を広大な石ころで一杯の河原にしていた。ここでも,ブータンとインドの国境があって,私は足を一歩踏み出した形で写真を撮ったが,このときもインド北東部の土を踏むことが出来なかった。

それから次の機会,つい数年前に,海外電力調査会の仕事で,インド各地を調査して歩いた。このときも,この北東部の水力電源地帯に足を踏み入れるべく,準備をし,メガラヤ州の州都シーロンを訪ねるべく,楽しみにしていたが,治安問題があり,果たせなかった。ビルマの仕事をしていたときに,このインパール付近の水をビルマに落とせば,面白いことが起こりそうだ,と当時世銀にいたインド人に話したら,インドもそれは考えているよ,但し洪水の水をどんとビルマに付け替えてやろうと思っている,と言って二人で大笑いしたことがある。

今日の新聞記事はこのインドの北東部に集中したが,改めてこの山岳地帯の中のアルンチャルプラデッシュの地図を見ると,すごいなあと思う。国境は中国との間で未確定,と書いてある。インドの政治家が,中国のブルドーザーが中国国旗を押し立てて好み確定国境の近くでダムを造る悪夢を見るという。今回JBICは,Jパワーと協力して,この地域のプロジェクト形成に当たったと聞く。ポスト京都の一つのテーマーが,このAP州の水力開発である。まだ見ていないこの北東地域に,一度は足を踏み入れてみたいものだ,でも,インパールは落ちなかったけれども,今や日本人は車一軒に一台,どころか二台以上ある家も珍しくない。

インド北東地域の地図
http://my.reset.jp/~adachihayao/08081101.jpg


本文

●インド,北東地域8州,電力開発で協力へ

今日の記事を読むには,インド東北部の地図を見なければよく分からない。この辺りは,戦中派にとってはインパール作戦が頭の中にあって,何か今でも行き着きたいが,行き着くのに大変だ,と言う印象である。後ろに地図を添付しておいたので見ながら読んで欲しい。最初の記事のトリプーラと言うのは,インド北東地域八州の中でも最南端西に位置する,州都はアガルターラである。ここからバングラデシュの首都ダッカは目の先である。要するに,八州の電力州政府担当大臣がこのアガールタールに集合,地域の電力開発について意見を交わしたもので,最初の記事は,主宰したトリプーラ州政府マニック電力担当大臣が話した内容。

トリプーラ州もご多分に漏れず電力不足,現在,740MWパラタナ,104MWモナルチャック,いずれも火力発電所と思われるが,これらが存在するが,この北東地域で考えると,北のアルンチャルプラデッシュには包蔵水力多く,200万KWスバンシリ下流水力,600MWカメン水力,など計画中で,トリプーラを含めた北東全域でこれらの水力の恩恵を受けるためには,送電網の拡充が絶対条件である,と主張している。

この件に関して北東地域の代表は,中央政府のシン首相と会談する予定であり,論点は域内の送電線と,シッキムの領土的狭窄部の回廊送電網計画である。ここに大きな送電線を安全に建設するのは,結構大変みたいである。アルンチャルプラデッシュを中心に,包蔵水力6,000万KWの開発を考えると,この送電線は重要である。

またこの北東地域全般では,水力のみでなく,原油ガスなどの包蔵もあり,これからの域内の開発には,中央政府の十分な後押しが必要である。このような資源が豊富な地域であるにもかかわらず,地域経済が遅れているのは,人を寄せ付けない気候条件,隔離地域,地形的なアクセス困難,などが影響している。このように,トリプーラの大臣は述べている。

●インド,CEA,要請に応じ,アッサム下流,アルンチャルプラデッシュの水力調査

この記事は,同じ会議,即ち,トリプーラに集まった北東地域八州の電力大臣の会議の結果,丁度中心部に横たわる平野部を中心としたアッサムの大臣が語った内容が中心となっている。彼は,そのすぐ北の山岳地帯,アルンチャルプラデッシュの水力開発の積み重ねの歪みの影響をアッサム州は受けており,中央の機関であるCEAに,このAP州の開発方針について調査を要請している。会議に出席していたCEAは要請を諒解した。

このアッサムの大臣の他の論点は二つあり,一つはトリプールの大臣と同じく,域内,及び中央との連携の送電網の整備をなぜやらないのか,道路の開発はどんどん進めているのに,送電線が遅れるのは遺憾,との点であり,二つは,余りに電力を水力に頼り過ぎたために,季節によって電力供給の信頼度に差がありすぎる,もう少し中央政府は,火力との組み合わせを重視して欲しい,と言うのである。


参考資料

2008年8月11日分

インド

●080811A India, sindhtoday.net
インド,北東地域8州,電力開発で協力へ
Northeastern states join hands on power front
http://www.sindhtoday.net/south-asia/10647.htm
●080811B India, ssamtribune
CEA,要請に応じ,アッサム下流,アルンチャルプラデッシュの水力調査
CEA to conduct study on cumulative effects
http://www.assamtribune.com/scripts/details.asp?id=aug1108/at07tm


ー 日刊アジアの開発問題 2008年8月10日分 ープール市場は投資を呼ぶか

「プール市場は投資を呼ぶか」,最近,私の田舎で,先祖伝来の大きなケヤキの大木が枯れ始めている,と通報があった。その地域,と言うか谷筋でも有名な銘木で,私が大学生の時に父親と見に行って回りの寸法を計ったら一丈に少し足りなくて,父親が,もう100年待つか,と呟いた代物,あれから50年経ったから,後50年という見込みだったが,近くを林道が開発されたせいか,地元の知り合いから,売りなはれ,と言ってきた。

その人によると,売るには二つの方法があるという。一つは木が立ったまま買い手と契約する方法で,もう一つはお金を出して切り出し製材して市場でセリに出す方法だという。一つ目は確実だが得るべき利益を逃している可能性がある,もう一つは,非常に高く売れる可能性がある一方で大損をする可能性がある,と言うのである。

ラオスが水力を民間資本で開発しようと決心した頃,タイの電力市場は活発で,電力改革の話と共に,近い将来はプール市場の創設が計画されており,ラオスの高官が,危ないなあ,その様な話に乗ってこの水力を開発してくれる民間資本があるだろうか,と心配し始めた。事実あのころのタイは活況で先進的であり,すべての電源はプール市場で取引されることになるであろう,と嘯いていた。実際には今日まで,EGATがすべて単一の引き取り手となって,長期買電契約の元,安定的なラオスの水力開発が進んでいる。

実際に電力改革,分割民営化を進めたのはフィリッピンだが,当初は,民間投資による電源はすべてNPCが買い取る,即ち,単一の引き取り手が長期契約に基づいて電力を引き取るもので,特にラモス大統領の頃はそれが保証され,サンロケ水力などの電源開発が進んだ。今のフィリッピンは,電源資産の売却に忙しく,またプール市場の先行き不透明で,民間投資が二の足を踏んでいる状態である。

電力設備が不足しているところでプール市場を創設するとどういうことになるか,それはカリフォルニアもそうだが,現実に昨日のフィリッピンの記事で,サンホセ変電所の故障で,一時取引市場の取引単価がKWh70セント台まで高騰するという混乱が生じている。売る人は儲けるかも知れないが,これは行政的にすぐ手を打たなければ大混乱となってしまう。

インドでは,今日の記事で,なかなかプール市場創設に動かない政府を見て,証券取引所が,国家火力発電公社NTPCに働きかけ,NHPCやタタを募って,その市場のプラットフォーム,基盤の創設のための法人設立の約束に踏み切った。事実,インドでは,電力引き取り手が多様で,州政府がその引き取り手となるほか,政府系のPTCがどんどんその引取量を増やしている。プール市場については,もう少し電源設備が整備されてからでなくては,おそらく大混乱が起こるだろう。


本文

●インド,NTPC,電力取引企業設立で,NHPCなどと協定へ

インドの電力の引き取り手は錯綜している。基本的には州政府の下にある電力会社または配電会社であり,時によっては送電公社でもあり得るわけであるが,非常に特徴的なのは,5年ぐらい前に設立された政府系の電力取引会社PTCがあり,当初は小規模であったが,これがだんだん営業範囲を広げて,今ではブータンやネパールの電力の引き取り手になろうとしている。まだ会社の小さい頃に総裁のタコールさんに会っているが,非常に温厚な人柄で,とてもインド人とは思えなかった。彼の名前は今でもニュースを賑わせており,健在どころか今やインド電力業界の大きな存在となっている。

そういうわけで,オフテーカー,所謂電力の引き取り手が,電源開発においては非常に重要な役割を果たす。しかし,今インドの電力業界で問題となっているのは電力取引市場,所謂スポットマーケットの問題だ。話題に上りながら,その不安定さ故に,各国ともその本格的活用に二の足を踏んでいる。昨日も,フィリッピンのWESM,スポット市場で,KWh当たり76.8セントと言うとんでもない値が出て,その後始末に苦慮しているが,いずれは必要になる制度であると,皆が認識している。

インドでは,去年の7月ぐらいに,規制委員会CERCが中心となってスポット市場を創設すべきだ,と言う声が挙がったが,複雑なシステム故に,未だに実現していない。国家送電公社が,地域間の取引で若干類似したシステムを持つが,今度本格的にプラットホーム,基盤を造ろうという動きとなり,NTPCが中心となって,NHPCとタタのコンサルタント部門を巻き込んで,取り組み始めたものである。私は,電力不足のシステムの下では,スポットマーケットは大変混乱を巻き起こす,と見ており,インドでは,今後の需給の安定を見て,ゆっくり進めるべきだろう。

●フィリッピン,アボリス,買収水力補修を2010年までに,マーケットへ

アボリスは張り切っている。水力と地熱,主として再生可能エネルギーを中心に据えて,フィリッピンの発電資産を買いまくっている。昨年,買収が決定したアンブクラオ - ビンガ水力に関して,その補修を2010年には完了して,本格的な市場参入,WESMへの参入を目指している。もう引き取り手はNPCではなく,WESMへ打って出る覚悟である。

アンブクラオ75MW,ビンガ100MWを故障したまま325百万ドルで買い取ったわけであるが,これを2010年までに,ビンガを140MWに,アンブクラオを100MW,合計240MWにして,運転を開始しようとしている。アボリスによると,これはCDMの対象プロジェクトとしては最適であり,地元の環境対策と相まって,一つのグリーンエネルギーのコンプレックスに仕立て上げたい大きな望みを持っている。

●フィリッピン,国家経済開発庁NEDA,26億ドルペソのエネルギーなど開発承認

USAIDを中心とした米国の公的支援の次の6年間,即ち2008年10月〜2013年9月まで,総額26億ドルの総合的なODA支援計画である。エネルギー関係では,エネルギーとクリーン大気計画,ミンダナオの独立系統再生エネルギー開発,などが含まれている。詳しく読んで分析すると,米国のフィリッピンに対するODAの全貌が理解できる。


参考資料

2008年8月10日分

フィリッピン

●080810A Philippines, inquirer
アボリス,買収水力補修を2010年までに,マーケットへ
With power comes great social responsibility
http://www.inquirer.net/specialfeatures/power/view.php?db=1&article=20080809-153662
●080810B Philippines, Manila Bulletin
国家経済開発庁NEDA,26億ドルペソのエネルギーなど開発承認
NEDA approves P2.6-B worth of energy, environment projects
http://www.mb.com.ph/BSNS20080810132097.html

インド

●080810C India, thehindubusinessline
NTPC,電力取引企業設立で,NHPCなどと協定へ
NTPC in pact with NHPC, PFC, TCS for power exchange
http://www.thehindubusinessline.com/2008/08/10/stories/2008081051010300.htm


ー 日刊アジアの開発問題 2008年8月9日分 ープーチンは五輪の席で汗を拭っていた


「プーチンは五輪の席で汗を拭っていた」,冗長な五輪開会式を最後まで見ていた人は,我々の国際協力の仲間にも結構いたのではないか,私も,あれ,まだタイが出てきてないなあ,そういえばベトナムもカンボジアもまだだ,と思っていると,私の好きなモロッコやペルーもなかなか出ない,まあ後モロッコが出れば寝るとするか,と思っていたら,とうとうモロッコは中国の手前で,最後尾,そうなったら聖火も,と思うとまたその前のオリンピック大会旗の進行が,馬鹿ほどのろい,その上,聖火が入ってきてから灯るまでに,多くの手を経て大変な時間がかかった。

まあ私は寝るだけだからいいけれども,あの場に冷房もなく4時間以上釘付けにされた福田,ブッシュを初め,各国の首脳と家族は大変だっただろう,福田さんなどは翌日の長崎の原爆投下があったから,焦っていたのではないか。その前に撮られた各国首脳の湖錦濤との接見も,ずらっと並ばさせられて,順番を待つ首脳達も気の毒だった,まるで中国への朝貢のような,でも湖錦濤さんにすれば,国民に見せたい最大の見せ場だったのであろう。

五輪会場でパンするカメラに,汗まみれになって上着を脱いで赤い顔をして汗を拭っているプーチンさんが写っていた。あれ,大統領と違うににね,と思っていると,ロシア選手団の入場に,上着を着て大統領のように手を振り,選手団も大きく騒いで応えていた。今朝の新聞で見ると,ロシア訪中団は全員北京郊外のリゾートホテルを借り切って厳重な警戒網の中にいるといい,選手村にいたロシア選手団も,全員がそのコンプレックスに移動したという。

あの開会式で手を振っていたにこやかなプーチンは,グルジア空爆を既に心に決めていたわけで,前もって北京郊外にロシアの城壁を築いて戦闘準備に入っていたわけだ。グルジアの五輪ボイコットも話題になっている。我々とグルジアは比較的近い。私自身は行っていないが,トルコの東辺の水力でグルジア国境を川のこちらから眺めているし,私の友人達も,水力発電所の問題で,何人かグルジアを訪ねている。

今日の新聞記事を見ていると,何か第一次世界大戦前夜を見るようなシーンで,あそこまで西側に頼って経済を立て直したロシアが,既に米国と軍事的に対立してきた現実にショックを受ける。ロシアの経済立ち直りは,やはりエネルギーであり,特に中東の原油と対照的に,ロシアは自国や中央アジアの天然ガスを,経済や政治の武器にしている。

今日の宮崎正之氏のメルマガには,プーチンのエネルギー戦略を次のように描き出している,曰く,「基本的なプーチンの資源戦略は石油高騰を維持し,ガスのカルテルを策定し,さらにウランのカルテルを組織化し,そのためには中央アジアの資源を,ロシアを経由しないルートの建設を徹底的に妨害することにある。」,としており,今回の局地戦闘を手をこまぬいて見ざるを得ないブッシュ政権の外交的無能を批判している。

西側の中央アジアからのガスパイプラインは,グルジアを通過してトルコに抜けている。プーチンはこれに対抗するブルーラインを建設しているが,グルジア内のガスパイプラインを,まさか軍事力で妨害することは考えていないとしても,考えてみれば,エネルギーを中心課題に据えての,列強の思いが爆発点jに達したグルジアの騒乱である。やはり,いつまで経ってもこの辺りは火種になるのか。


本文

●タイ,ラチャブリ,ラオスなどの水力開発に遅れが

昨日の一連のラオスの水力工事費高騰の記事との繋がりである。海外で大活躍の,タイ最大の民間電力企業,ラチャブリにも問題が襲いかかってきている。現在進めている海外プロジェクトを,軒並み運転開始予定1年延期である。ラオス政府もEGATに対して16.6%の買電単価の上乗せを要請している。主たる理由は,重電メーカーによる鋼材不足を理由とした請負費の嵩上げである。

ラチャブリ関連で問題になっている地点は,ラオスについて,44万KWナムグム3水力(ラチャと丸紅25%,MDX27%),14万KWナムバック水力(ラチャ25%,タイのCK50%,ラオス政府25%)でいずれも2014年運転開始予定であった,1年延期か。また2013年予定のホンサのリグナイト石炭火力165万KW(ラチャ40%,バンプー40%,ラオス政府20%)も1年延期である。615MWのナムグム2水力(ラチャ25%,CK25%,ラオス政府50%)は,2013年の運転開始に間に合うはずである。

問題はカンボジアの366万KWココン石炭火力(ラチャ35%,エグコ35%,イタルタイ30%)は,2016年運転開始予定も,この工事費値上がりの影響を受けるものと考えられている。またこのプロジェクトは,今北西の国境でタイとカンボジアの間で起こっている紛争の影響も受けるだろうと見られている。

昨日も私の考えを述べたが,インフレはインフレでプロジェクトの推進にとって障害となるものではないが,そのインフレが対象によって時間的なずれが起こることに問題がある。特に今度の場合は,EGATが,水力のラオスが国内電力生産価格を超えてきたことを問題にしており,またタイの電気料金がそう敏感にはインフレに反応してくれない,という問題がある。プロジェクトの相対的価値は変わらないから,プロジェクトにとっては時間の問題だろう。便乗値上げと日本企業の一斉退場は怖い。鋼材の値上がりがどのぐらい影響するものか,製品全体には10%も影響ないだろう。

●フィリッピン,WESM取引価格,ショック緩和のためERC介入が視野に

東南アジアで先駆けて運用を開始した電力取引市場,スポット市場,WESMに問題が起こっている。政府は,このWESMを拡大することによって電気料金が安くなると信じてきたのだが,異常事態発生である,カリフォルニアを見ている我々にとっては,当然起こりえる事態である。今,7月分の電気料金が需要家に課されようとしているが,WESMの調整料金が実にKWh当たり18ペソ,40.7セント相当に達しているのだ。

このWESM市場から全体需要の10%を買うよう義務づけられているマニラ配電MERALCOはの買値はその瞬間においてKWh当たり34ペソ,実に76.8セント,1ドルに迫ろうとする高値である。マニラ配電はNPCから時間別に買う単価,平均3.1ペソ,7セント相当で,7月26日から8月25日分の料金請求書を造ろうとしているが,このWESMのサージを入れると,全重要家平均でKWh当たり1ペソの上乗せが必要である。

WESMを運営するPEMCホロパイネン総裁は,原因は多々あるも,7月11日に起きたサンホセ50万ボルト変電所の変圧器の故障で,所謂従来の燃料の需給関係の問題ではない,としているが,この影響は9月,10月まで影響すると考えられている。現在,この問題にERCの介入を行うかどうか,関係者で協議中だという。

アロヨ大統領は,以前に,マニラ配電はWESMから電気を買うな,と暴言を吐いたが,このような電力自由化のもたらすところが,このような結果になると言うことは,電源開発の特質を孕む電気事業では当然起こりえることある。マニラの海外資本企業は,電気事業法を改正せずこのまま走れ,とアロヨ大統領を激励しているが,今でこそ10%のWESMの影響は,今後どんどん大きくなってくると言うシナリオである。このような状態が続けば,主たる配電会社は自分で揚水発電所を持って,WESMが安いときに買う,という防衛手段を打つ必要がある。


●インドのPTC,ネパール水力のオフテーカーとして準備中

ネパール西辺,インドとの国境に近い,75万KW,ウエストセティ水力,新たな買電協定を結ぶために,オフテーカー,引き取り手となるインドの電力取引企業PTCが待機中である。2003年に,KWh4.95セントで覚書MOUが買わされたものの,ネパールの政治的混乱や地元民の反対のために着工がずれ込み,12億ドルであった工事費が16億ドルに値上がりしている。新たな買い取り価格は,今のところ明らかにされていない。

●フィリッピン,アボリス,375百万ドル調達,アンブクラオなど

アボリスグループは,ノルウエーのSNパワーを母体としたグループで,フィリッピンの資産売却で顕著な動きをしている。2006年にはフィリッピン最大36万KWマガット水力を530百万ドルで落札,今年に入って,アンボクラウービンガの壊れた175MW水力を325百万ドルで落札,更に先月の458MW地熱発電所の入札で447百万ドルの最高値を入れている。


参考資料

2008年8月9日分

タイ

●080809A Thailand, Bangkok Post
ラチャブリ,ラオスの水力開発に遅れが
RATCH may delay overseas ventures
http://www.bangkokpost.com/090808_Business/09Aug2008_biz24.php

フィリッピン

●080809B Philippines, Reuters
アボリス,375百万ドル調達,アンブクラオなど
Manila's Aboitiz power arm borrows $375 mln
http://www.reuters.com/article/rbssIndustryMaterialsUtilitiesNews/idUSMAN4080920080808
●080809C Philippines, Manila Bulletin
WESM取引価格,ショック緩和のためERC介入が視野に
Intervention by ERC sought to temper spikes in WESM prices
http://www.mb.com.ph/BSNS20080809132004.html

インド

●080809D India, sify.com
インドのPTC,ネパール水力のオフテーカーとして準備中
PTC stands by Nepal's giant power projectSudeshna Sarkar
http://sify.com/finance/fullstory.php?id=14736618


ー 日刊アジアの開発問題 2008年8月8日分 ー五輪真弓の心の友は第二の国歌


「五輪真弓の心の友は第二の国歌」,インドネシアの看護士候補送別会で日本大使が歌った心の友なんて歌は知らない,と書いたら友人が調べてくれて,要するに日本人はあまり知らないが,スマトラ沖地震を契機に歌われた曲で,インドネシア人はこれを日本語で歌っているという。インドネシア人にとっては第二の国家とも言える曲だという,知らなかった。

この問題で,将来は1000万人ぐらいの外国からの人々と日本人は生活するようになるだろう,と書いたら,長い間インドネシアで共に戦った戦友から,心配するな,そんなことは当たり前のことだ,とメールが来た。日本人は単一民族だと思っている人がいるが,紀元ゼロ年頃から500年間,おおくの外来文化が入ってきているし,その後唐の時代は中国文化の移入,平安後期から日本文化が芽生え,足利のころから明と明を通じて西洋文化が入ってきました。徳川鎖国でも西洋文化は入り続けた。

この友人は,2010年頃から新しい移民が問題となるが,受け入れのインフラ(ハードとソフト)が必要になる,その前に,日本文化はこれですよというものを移民に示す必要があり,彼の考えるのは,その柱は,「自然」,と,「和の精神」,だ,と言っている。彼は最近,お寺のプロジェクトを主導して見事の完成させたが,それから言うことが難しくなって,突っ込むと,今勉強中だからちょっと待て,と言う。インドネシアに絡むが,JICAが,インドネシア国電力エネルギー推進企画調査員の公募を行っている。

さて,今日は友人のせいで話が混乱したが,ラオスの水力で工事費が高騰しタイの買い取り価格を上げるべく,関係者が努力している,と言う記事に関心を持った。確かに私も試算してみたが,2007年12月からのこの半年間で,土木工事や重電機器などを中心としたプロジェクトの工事費が急騰している。私は30%と見ているが,この記事でも,25〜30%と言う数字が出ている。

一般的な話だが,インフレというのはプロジェクトの経済性に基本的には影響を与えないものだ。プロジェクトの評価は,大体においてにインフレを無視して計算される。水力の工事費が上がれば火力の工事費も上がる,それに応じて電気料金も上がる,インフレというのは単なる下駄みたいなもので,プロジェクトそのものの身長を変えるわけではなく,大体において,皆が同じぐらいの高さの下駄を履くわけである。

そういいながら,自分たちのプロジェクトに関してインフレによって自信を失わないように勇気付けているわけだが,実際にはプロジェクトによって下駄を履く時期に遅れが出てきて,困難を生むわけだ。当面プロジェクトを推進している人々には,まさしく災難であるが,EGATも必ず下駄を履かなくてはならない,電気料金修正の遅れが問題を呼んでいる,中国の石炭と電気料金の関係も同じだ。


本文

●ASEANの閣僚会議,燃料備蓄問題とラオスの水力高騰を論ずる

ASEANのスリン事務局長が,バンコクで開かれたエネルギーフォーラムで話した内容で,地域燃料備蓄の問題が主題であるが,ラオスの水力開発に関するラオスの申し出も大きく取り上げられている。燃料備蓄の問題は,誰が何をするかであり,ラオスの問題は,工事費の高騰をどの様に吸収するか,と言う問題である。

燃料備蓄の問題については三つのポイントがあり,一つは,域内でもっとも高度なエネルギー使用効率の技術を持つ日本の役割,二つは,南部沿岸地区とマレーシアへの陸続きであるタイの位置が最適である,三つは,言い出しっぺいであるフィリッピンがまず今年の11月にマニラでこの問題に関する会議を招集する,と言うことである。また,インドネシアとマレーシアの燃料に対する補助金を早く始末して市場化に備えよ,と言っている。

ラオス政府のセイパスート局長が問題提起。ラオスの水力のタイへの輸出について,タイ側EGATの売電単価の引き上げを要請,少なくとも現在の案よりも16.6%引き上げるよう具体的に要請している。現在は5.34〜6.14セントで交渉中であるが,少なくとも7セントの線での引き取りを要請している。それは,対象4地点の工事費値上がりが25〜30%と考えられているからである。

問題になっている地点は,エグコとマレーシア企業による2011年買電開始の523MWナムテン1,EGATと関西電力による2014年の261MWナムニエップ,丸紅とラッチャブリなどによる2013年の440MWナムグム3,EGATと中国企業による2015年の1,100MWナムウー,の4地点である。いずれも,当初予定を1.2年ずらして交渉中である。

●ネパール,日本政府,72億ルピーの借款,支払い猶予へ

1975年と1978年にクリカニ水力に供与されたものと1981年と1983年にクリカニ第2水力に供与された円借款,107.83百万ドルについて,日本政府がネパールの今後の政治的安定と経済成長委のために,借款をキャンセルしたもので,ネパールの財務大臣と日本の水野大使の間で,署名式が行われた。記事の殆どは,大使の,この日本の処置をうまく生かして欲しい,と言う演説に占められている。

●パキスタン,イスラマバード高裁,ムンダ多目的ダムの紛争について,評決を留保

パキスタンは,ムシャラフ大統領の弾劾問題で,北京オリンピックへの大統領の出席をキャンセルするなど,政治混乱から抜け出していないが,インドと同じ民族なのか,何かというとプロジェクトで紛争が起こり,なかなか着工できない。プロジェクトは完成しておいて問題は後で処理しようとする我々日本人とは大違いである。一度,民間開発に手渡したものを,WAPDAが取り上げたと言うことが問題になっているようだ。我々がJICAで手がけたプロジェクトだけに,我々の関心は深い。

●インド,国家送電公社PGCIL,955億ルピーの投資計画

2009年度会計年度の全予算を言っているが,通常の地域間連携の補強の他,特にシッキムの120万KWティースタ第3水力に関連した送電線強化を含んでいる。現地企業との合弁で,BOOスキームであることが特徴である。シッキム北部の他の水力開発の送電にも威力を発揮することになる。最近のインドは,このような特定送電線プロジェクトの民営化が進められている。


参考資料

2008年8月8日分

パキスタン

●080808A Pakistan, thefrontierpost
高裁,ムンダ多目的ダムの紛争について,訴えを留保
IHC reserves verdict in Munda hydropower project case
http://www.thefrontierpost.com/News.aspx?ncat=hn&nid=1630

ネパール

●080808B Nepal, eKantipur
日本政府,72億ルピーの借款,支払い猶予へ
Japan extends debt relief of Rs 7.22b to Nepal
http://www.kantipuronline.com/kolnews.php?nid=156228

ラオス

●080808C Laos, Bangkok Post
ASEANの閣僚会議,燃料備蓄問題とラオスの水力高騰を論ずる
Surin Region should build oil stockpiles
http://www.bangkokpost.com/080808_Business/08Aug2008_biz31.php

インド

●080808D India, Economic Times
国家送電公社PGCIL,955億ルピーの投資計画
Power Grid approves investment worth Rs 9436.28 cr in FY'09
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Power/Power_Grid_approves_investment_worth_Rs_943628_cr_in_FY09/articleshow/3338838.cms


ー 日刊アジアの開発問題 2008年8月7日分 ー懐メロとバティックの送別会


「懐メロとバティックの送別会」,日本のODAの目的は,少子高齢化する日本人次世代の生き残りが目的であり,そのためには特に日本を取り巻くアジア諸国との関係を出来るだけ近づける必要がある,そのために東南アジアにダムを造り発電所を造ってきたのだ,と言うのが我々の仕事の一つの根拠である。アジア人口の日本への流れ,大きな流れの中の小さな一団,インドネシアの看護士候補達が成田に着いたことは,日本のテレビでも報じられ,これから起こるであろう困難な問題もテレビなどで議論されていた。

それでは一体,インドネシア側ではどう見られていたのか,知りたくてジャカルタポストを追ってみた。若い彼等を送り出す送別会の模様が報じられているが,日本大使は,懐メロの,「心の友」,よく知らないが,これを持ち出して,ボッサムフレンド,と言う言葉を使い,日本でどうか心の友を見つけて欲しい,と励ました。必ず日本で友達が見つかるはずだ,と言うのである。

送る側のインドネシア政府は,やはり寂しさが伴うのか,何となく労働者を派遣すると言う感情が伴うのか,担当のプルノモ大臣はジョークに紛らせてその贈る言葉にしている,インドネシア人らしいが,「あなたがたは,バティックの宣伝も出来るのだよ,日本に行ってもインドネシアの文化を忘れるなよ,インドネシア人の労働者としての質の高さを魅せてきて欲しい」,と言って送り出している。

これに対して送り出される若者の一人は,「日本政府は我々に月1500万から2000万ルピアという高給を申し出てくれた。この高給に報いるために一生懸命働いて来たい。」,と応えている。この月給は18万円から23万円で,インドネシアのおそらく20倍ぐらいの額ではないかと思う。出稼ぎの意識であるが,それを批判している日本のメディアもあるが,まあそれはそれでいいのではないの。

また,インドネシア政府の将来の見通しとして,この先7年間で60万人という膨大な数の看護士や介護士を日本は必要としている。この流れが本当に実現するかどうか,それがこの第一陣の活躍にかかっている,としている。おそらく次世代の時代は,1000万人オーダーの外国労働者と,日本人は生活を共にすることになるのだろう,まさしく大きな流れの小さな一団の到着である。


本文

●中国,原子力開発の目標を上方修正,2020年5%へ

中国は現在,11地点の運転中の原子力発電所があり,設備出力は908万KWである。昨年2007年の原子力による総発電量は626億KWhでその前年より14.1%の伸びを示している。現在設備で全発電容量の2.3%である。従来の原子力開発計画は,2020年で全設備の4%であったが,これを1%上方修正して,5%,出力にして既設も含め7,000万KWとすることとした,と言う報道である。

発改委の説明は,あくまで燃料不足に陥っている石炭火力を原子力によって置き換える計画で,環境も考えた上である,と説明している。また,従来は沿岸部のみに原子力の立地を頼ってきたが,今後は内陸立地も目指すとしている。数日前に,四川省の原子力計画が報道されていたが,それもこの一貫なのであろう。

インドが米印原子力協定で大きく弾みを付けようとし,東南アジアでも,タイ,インドネシア,ベトナムなどで真剣に原子力開発が論じられている。また昨日は,ゴア元副大統領に,原子力へ傾く発言が続いていることが話題になった。核燃料処理の問題が,原子力抑制を考えている人たちの大きな原因とは言え,世界は,大きく原子力に頼る方向へ流れ出している。

●インド政府,電源開発の遅れに,BHELの手綱引き締めへ

ラメッシュ,我らがアジアの開発男,インド電力省の副大臣は,昨日はバカラダムの企業の活性化を一言で片づけてきたが,返す刀で,今度は国営重電メーカーBHELの仕事の遅れを鋭くついてきた。インエキュスキューサブルだという,許し難い,現在のインド全土での電力不足の状態の一つの原因はBHELの仕事の遅れだ,と叱咤している。今日のところは具体的な方策は示していないが,彼のことだから何らかの政治的な手を打つ積もりなのであろう。

直接のプロジェクトは,BHELがEPCコントラクターとなっている,25万KW2機,パンジャブ州のレハラモハバット計画で,商業運転開始が2008年10月になったが,これは当初計画より実に15ヶ月遅れとなっている。その他にも多くのBHEL関連プロジェクトが遅れている。国営企業BHELに大きく依存している体質も問題で,先日は,リライアンスが上海重電との提携を打ちだし,衝撃を与えている。ラオスの水力が重電の見積もり高騰で,大きな影響を受けているが,今後の重電メーカー,特に中国とインドの動き,それに対する日本メーカーの協力の動きに関心がある。

●インド,ダボール発電所,燃料不足で,発電カットへ

長い間話題にならなかったダボール発電所,円滑に動いているのかと思ったら,LNGガス供給不足で,出力制限に追い込まれている。ダボールは現在,ラッタナギリガス電力の所有となっているが,結局燃料は,ペトロネットによって運営されているダヘジのLNGから供給を受けているようだ。契約は日当たり5.4百万立方m,mmscmd,であるが,実際は2.2mmscmdで,215万KWのうち30万KWしか動いていない。

始まったばかりのインドのLNGであるが,そのガス化施設に技術的な問題があるようだ。発電所は幾らでも造れるが,燃料はそうは行かない,燃料をしっかりしていなければ火力発電所は円滑に目的を果たせない。215万KWが30万KW,まさに今日のインドの電力不足を象徴している出来事だ。

●インドネシア,日本への看護士候補派遣,第1陣出発

日本のODAの眞の目的は,日本人次世代の生き残り戦略であり,今度のインドネシア人の日本派遣は,大きな流れの小さな始まり,と言ってきたわけであるが,それでは一体,インドネシアから見て,今回のこの動きはどう捉えられているのか,それがこの記事である。興味深いが,派遣される若い彼等の口からついて出た言葉,本音かな,それを拾ってみたい。

日本大使は,懐メロ「心の友」を話題に上げて,日本でよい友達を見つけて欲しい,と送り出した。スパルノ担当大臣は,日本でのバティックの宣伝を,とジョークで彼等を笑わせた,そうして労働者としてのインドネシア人の優秀さを魅せてきて欲しい,と激励した。これに対して,アル一人の若者が応えた言葉は,日本政府は我々に月1,500万〜2,000万ルピアの高給を提示してくれた,これに応えるのが我々の仕事だ,という。これは,日本円で18万円から23万円に匹敵する。


参考資料

2008年8月7日分

インド

●080807A India, Economic Times
インド政府,電源開発の遅れに,BHELの手綱引き締めへ
Govt pulls up BHEL for delaying power projects
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Power/Govt_pulls_up_BHEL_for_delaying_power_projects/articleshow/3334206.cms
●080807B India, Economic Times
ダボール発電所,燃料不足で,発電カットへ
Dabhol cuts electricity generation following fuel crisis
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Dabhol_cuts_electricity_generation_following_fuel_crisis/articleshow/3334248.cms

インドネシア

●080807C Indonesia, The Jakarta Post
日本への看護し候補派遣,第1陣出発
First batch of nurses leaves for Japan
http://www.thejakartapost.com/news/2008/08/07/first-batch-nurses-leaves-japan.html

中国

●080807D China, news.xinhuanet
中国,原子力開発の目標を上方修正,2020年5%へ
China ups targeted nuclear power share from 4% to 5% for 2020
http://news.xinhuanet.com/english/2008-08/05/content_8967806.htm


ー 日刊アジアの開発問題 2008年8月6日分 ー10年後100%再生可能で


「10年後100%再生可能で」,ゴア元副大統領がこの7月17日ワシントンでの演説で訴えた地球温暖化対策が問題となっている。この問題で,大統領候補の二人が激論を戦わせている。10年後に米国の電力を100%再生可能エネルギーで,と言うこの提案に,全く不可能なことをぶち上げているゴア氏に対する反論と,地球温暖化問題には,必ずしも反対できない立場と,この二人の対応を難しくしている。

2030年に60%削減とか,とにかく大言壮語を打ち上げ合いになってきた地球温暖化問題は,末期的症状ではないか。今週の週刊朝日は,原子力開発反対の立場だったゴア氏が,その余りにも大きな原子力の利権を前に,方向転換しつつある,との記事を載せて話題となっている。

地球温暖化とは言わないけれども,昨日は梅田に出ていて阪急茨木に帰った途端,雷雲の襲撃にあって駅で2時間近く足止めを食った。携帯で雷雲レーダーを見ていると,大阪府と京都府の接点,丁度茨木の上空で5つも6つも赤丸の激しい雷雲が連続して襲い,その辺をうろうろしていてなかなか去らない,雷の衝撃で子供が泣き始めるし,駅は水が入ってくるし,大変だった。今朝の新聞では枚方で時間雨量強度が70mmを越したと書いてある。小流域のダムはおそらく再検討の必要があるのではないか。茨木上流の安威川ダム,一度チェックしてみるか。

今日の記事にあるインドのラメッシュ,アジア開発4人男の一人の,激しい動きを見て下さい。バクラダムは,1948年,独立インドはじめての首相ネールが,インド復興の旗印に着工した高さ225mのコンクリートダム,フーバーダムを超えるもので,当時の日本の佐久間ダムの衝撃のスタートを思い起こさせるものだが,ここに眠る獅子,従業員12000人の大規模企業のBBMBの尻を蹴り上げた,動けと,インド国内ならずネパールなどの海外に羽ばたけと。必要な法的措置は執ると。ラメッシュ,すごい勢いである。バクラダムの写真をウイキペディアから借ります。

http://my.reset.jp/~adachihayao/08080701.jpg


本文

●フィリッピン,アロヨ大統領,燃料,電力で,価格の厳正なチェックを要請

一昨日のニューヨーク,マーカンタイル市場で,原油価格が一晩でバレル当たり3.69ドル降下,バレル121.41ドルとなった。エネルギー価格の高騰で大統領批判を強めるフィリッピンの国民に対して,素早く反応したのは,このところ人気が落ちっぱなしのフィリッピン,アロヨ大統領だった。閣議の席上で,レイエス・エネルギー長官に厳しく言い渡した,早急に石油電力企業の監査を厳しく実施せよと。

原油価格が落ちたなら落ちたで,それに素早く反応する体制をとれ,それは値上がりしたときにとるのと同じ敏捷さで,と言うことだろう。日々の変動で対応を迫られるエネルギー企業も大変だが,それはそういう声が出てくるだろう,日本だって決して例外ではない。値上がりの30%は投機だと見られている原油価格の先行き動向は,どう見たらよいのだろうか。

●インド,ラメッシュ副大臣,280万KW水力プロジェクトで,全面委任が必要と

バクラダム,我々も忘れるぐらい古いダムで,1948年,戦後インドの独立後,時の首相ネールの復興への熱意から始まり,15年かけて1963年に完成した高さ225mの重力式コンクリートダム,多目的である。我らが,アジア開発4人男の一人,インド電力省副大臣,ラメッシュは熱い,彼はこのダムを訪問して,過去の政治家の熱い開発への情熱に触れたに違いない。日本戦後の佐久間ダムを思い出す。

このダムは,パンジャブとヒマチャルプラデシュの州界を流れるステルジ-ビーズ-ラビ川を制御するために造られたダムで,このダムを含めて河川一貫で286万KWの水力発電所を運営するバクラビーズ運営庁BBMBの幹部を前に,ラメッシュがぶったわけである。この組織は12000人の従業員を有する大組織であるが,この組織が眠っている,これを活性化することが,ラメッシュの目的であった。

彼は,もっと大きな開発権限をこのBBMBに与えようと言う。まずこのバクラダムが45年経っても殆ど堆砂の影響を受けていないことを取り上げ,左岸に発電所を15万KW増設せよ,更にこの川だけでなく他の河川の開発にも進出しろ,更には海外,特にこれから始まろうとしているネパールの開発に駆けつけろ,と鼓舞した。まさに眠れる獅子の尻を蹴り上げたわけである。ラメッシュの面目躍如だ。

●フィリッピン,ERC,配電損失軽減のためのガイドラインを発効

配電システムの損失の上限が法律で決められている,と言うことは知らなかった。日本でも決められているのですかね。これは技術的な限界とは別の話で,これをもとに電力料金を計算するとか,そういう会計上の話なのですかね。既に9年前に損失は9.5%以下と決められていて,これは古くなったから8%にすると言う,実際そこまで技術的に来ているのか,よく分からない,何かフィリッピンらしい話ですね。


その他

●フィリッピン,NAPOCOR,249MW,暫定供給協定を付加
●パキスタン,NEPRA,民間水力開発の買電価格でヒアリング


参考資料

パキスタン

●080806A Pakistan, app.com
パキスタン,NEPRA,民間水力開発の買電価格でヒアリング
NEPRA conduct tariff hearing for private sector hydropower project
http://www.app.com.pk/en_/index.php?option=com_content&task=view&id=47623&Itemid=2

フィリッピン

●080806B Philippines, Manila Bulletin
アロヨ大統領,燃料,電力で,価格の厳正なチェックを要請
Strict audit of oil prices ordered
http://www.mb.com.ph/MAIN20080806131776.html
●080806C Philippines, Manila Bulletin
NAPOCOR,249MW,暫定供給協定を付加
Napocor attaches supply deals to plants
http://www.inquirer.net/specialfeatures/power/view.php?db=1&article=20080806-152928
●080806D Philippines, Manila Bulletin
ERC,配電損失軽減のためのガイドラインを発効
ERC issues draft guidelines on lower systems loss caps
http://www.mb.com.ph/BSNS20080806131729.html

インド

●080806E India, webnewswire
ラメッシュ副大臣,280万KW水力プロジェクトで,全面委任が必要と
Indian's largest Hydropower Projects needs a new mandate Jairam Ramesh
http://www.webnewswire.com/node/445386


ー 日刊アジアの開発問題 2008年8月5日分 ー世界最テロ地帯に送電線建設


「世界最テロ地帯に送電線建設」,1976年のビルマのラングーン,一週間続く停電に耐えかねて,遠く離れた製氷工場に氷を買いに行った,電気がないのにどうして氷が出来るのか,と一人で自問自答しながら。日本から特別待遇で持ってきた最新式の電気冷蔵庫も停電で動かず,この氷を入れて使った。そういえばその昔,日本に氷を入れた冷蔵庫があったなあ,と思いながら。

とにかく,何度も何度も,ビルマの東のはて,バルーチャンからの送電線が何度もゲリラに爆破されて,そのたびに当時のネウイン大統領が北京に行って頼み込み,ゲリラ活動が収まる,またしばらく経つと爆破される,これの繰り返しである。送電線ほどゲリラに弱い構造物はない,ひ弱で長く,軍隊でも守りきれないのである。

電気が悲惨なぐらい足りないパキスタン,遂に中央アジアのタジキスタンなどから130万KWの電力輸入に踏み切った。送電線延長は1,100km,テロの最前線カブールを通過する。なぜこのようなプロジェクトが前に進むのか,と思っていたが,今日の記事で,米国が全面的な支援を行ったことを聡る。米軍が,この送電網の安全確保を保証したのであろう,記事ではアフガニスタン政府が全面的な治安の責任を持つ,と書いてある。

インドが望んでいたイランからパキスタンを経由してのガスパイプライン,これにノーを突きつけたのが米国政府なのであろう。パキスタンに電気が届くのは2013年と言うから,当面のパキスタンの電力不足には間に合わない,いずれにしても米国にとっては,イランからのガスパイプラインを中止させる口実となったわけである。

とばっちりを食ったのはインド,インドはイランからパキスタンを経てニューデリーまでのガスパイプラインに大いに期待していた。これも米国の原子力供給協定で黙らせられたのだろう。南アジアのエネルギーが国際政治に揺られている。高村外務大臣は,インドで,米印原子力協定で一言も発しなかったようだ。インドとしては次の原子力供給国との対話が待っている。


本文

●タイ,EGAT,電気製品のスタンバイのルールを変更へ

私は余り知らなかった,あらゆる電気製品のスタンバイの時の使用電力に,法的な制限がかかっていた,と言うことを。日本にもそういう規則があるのですかね。記事によると,この規則は日本などの先進国では既に実施されているもので,東南アジアで採用に踏み切るのはタイがはじめてだ,と書いてある。従来の電気製品では4,5ワットであったものを,2011年からは1ワットにするという。

需要家保護法と言う法律で規制しようというもので,立法期間とメーカーの対応,輸入業者の対応を考えると,2年間は必要で,完全実施は2011年になると言う。実施されれば,年間30億KWh,もしくは50万KW節約となり,ブミポン水力発電所分に相当するという。日本などもおそらく輸出用は基準を緩めているとか,影響を受けるのですかね。ボードをちょっと変えるだけで大したことではない,とEGATは言っているようだが。

●インド,中央政府,更に3地点の大規模開発を準備

インドネシアのクラッシュプログラムとインドのUMPPとの違い,インドネシアは政府が一生懸命資金調達のために走り回っているが,インドは民間開発を主導する企業を探し回っている。UMPPは,政府が懸命にプロジェクトを形成することに奔走しているが,なかなか引き受け手の決定が円滑に行かず,政府の意図が空回りしている感じもある。

昨日は,シンディ電力大臣の下,チャティスガール,カルナタカ,マハラシュトラ,オリッサ,タミルナドの各州のUMPP,大規模開発計画が検討された席上で,新たに3プロジェクト,それぞれタミルナド,マハラシュトラ,オリッサの各州にプロジェクトを始動することが指示された。既に10カ所のプロジェクトが決定しているが,何とか動いているのは4カ所だけである。

何とか前に進んでいるのは,グジャラート州のムンダ,マディアプラデッシュ州のササン,アンデラプラデッシュのクリシュナパットナムの3カ所で,ジャーカンドのティライヤは,2008年末までに企業が決定すればよい,と言う状況で,2012年までの第11次五カ年計画では,300万KW発電貸しがやっとという状況,折角のUMPP,もう少し何とかならないものか。おそらく,土地の手当てもさることながら,石炭供給で問題があるのではないか。

●パキスタン,中央アジアからの電力輸入に合意

そうか,アメリカが仲介したのか。従来から検討されてきたイランからのガスパイプラインについて米国はイランとの関係でこれにノーを突きつけてきた。その代わりに,タジキスタンとキルギスタンから,パキスタンが100万KW,アフガニスタンが30万KW,合計130万KWを送電するという。誰でも最初に引っかかるのは治安であり,これについては全面的にアフガニスタンが責任を持つという,と言うことはアメリカが保証したわけだ。と言うことはこれでインドが期待したイランからのガスパイプラインは,一時お預けというわけだ。

送電ルートとしては,カブール - ジャララバード案で,キルギスからタジキスタンまでの477kmは50万ボルト交流,タジキスタンからカブールを経てパキスタンまでの750kmは50万ボルト直流送電線とする,費用は全部で935百万ドル,これをパキスタンが700百万ドル,アフガニスタンが235百万ドル分担するという。130万KW送るのに9億ドルとは,随分政治的なプロジェクトではある。売電単価など詳細はこれからだ。

●フィリッピン,アボリス,更に電力資産買収を視野,パナイのディーゼルなど

フィリッピンの資産売却過程の中で,アボリスは大活躍である。今や190万KW以上を保有する勢いだ。最近では,アンブクラビンガの325百万ドルの買収が目立ったが,289MWのティウイ及び458MWのマキリンバナホそれぞれ地熱発電所を447百万ドルで買収している。今回は,146.5MWのパナイ,22MWのボホールのディーゼル発電所に関心を示している。

今年の売り上げ633百万ペソの源泉は,232MWSTEAG石炭火力,360MWのマガット水力発電所から来ている,と言っている。それにしても,新規電源の開発は一体どうなっているのだ。


参考資料

2008年8月5日分

タイ

●080805A Thailand, Bangkok Post
EGAT,予備力スタンバイのルールを変更へ
Egat sets new standby rule
http://www.bangkokpost.com/050808_Business/05Aug2008_biz011.php

パキスタン

●080805B Pakistan, Dawn
パキスタン,中央アジアからの電力輸入に合意
Agreement signed for import of electricity
http://www.dawn.com/2008/08/05/top6.htm

フィリッピン

●080805C Philippines, Manila Bulletin
アボリス,更に電力資産買収を視野,パナイのディーゼルなど
Aboitiz Power eyes other Napocor plants
http://www.manilastandardtoday.com/?page=business3_aug4_2008

インド

●080805D India, Economic Times
中央政府,更に3地点の大規模開発を準備
Govt to set up three more ultra mega power projects
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Power/Govt_to_set_up_three_more_ultra_mega_power_projects/articleshow/3325911.cms


ー 日刊アジアの開発問題 2008年8月4日分 ー日本のODAは世界5位

「日本のODAは世界5位」,という新聞の見出しを見て,落ちかけると急激に落ちるものだな,と実感した。私も最近言わなくなってきたが,以前は,ODAは日本の次世代生き残りのためにあるのだ,と言い続けてきた。我々の老後には年金はない,と言い切る息子達を見ていて,そうではないと,おそらく人口の年齢分布は,更に広い範囲で考えられてくる,当面はアジアの一体感だ,そのために今のODAは必須だ,と言ってきた。

「東南アジアの子供達に老後を養ってもらえと言うのか」,と言って息子達は不満そうな顔をしていたが,それはおそらく時の流れだろうと思っている。それは気がつかない間にじわじわとやって来る。地球温暖化もじわじわとやって来る。人類が温暖化によって滅びる前兆は,去年は日射病で倒れた人が4,000人だったのに今年はそれを上回る勢いで救急車が走っている,と言うような,通常は全く気がつかないスピードでやってくる。例えば数百年後に生き延びた人類は,ああ,あの2008年の夏がそうだったのか,と言う歴史を読まされるだろう。

インドネシア人の看護士候補が200人,明日,ジャカルタ空港を発って日本に向かうという。たった200人か,と言う感じであるが,これは大きな流れの小さな始まりだろう。直接的には経済連携協定(EPA)に基づくものだが,長い間のインドネシアへのODAや民間企業の投資を通じて培った日本とインドネシアの関係に基づいている。そうでしょう,例えば日本の遙か彼方の南米の奥地から看護士が200人,と聞けば,少しビビルだろう。

フィリッピンは国会批准がまだ出来ていない,フィリッピン側に不平等協定への迷いがあるようだ。タイはEPAは完結しているが,看護士の協定は含まれていないと言う。タイ人はそういうところがある。バンコクに靴磨きがいないことに気がついていますか。インドネシアなどは,ドライブインに入ると多くの少年が寄ってきて靴磨きをしてくれるのに,タイにはない。看護士の問題と言うよりは,何となく不平等感の問題には,はっきり言わないが,タイ人は極めて敏感である。

明日の夜行でジャカルタを出て,明後日,7日早朝,成田に着くインドネシアの若者達の緊張と不安を考えると,何とか成功して欲しいと思う。3年間で資格がとらなければ帰国しなければならないと言う。この制度は,おそらくこれから何度も揺り戻しがあるだろう,今度の若者の中にも何人かは落ちこぼれる人が出てくるかも知れない。それでも,流れはもう止まらない,日本の少子化問題に向かって,彼等の活躍を暖かく見守りたい。


本文

●インド電力省,3州へ大規模水力開発を要請へ

インドは,この恒常的な電力不足を解決するためには,大規模電源の開発でなければ追いつけない,と思っている。事実,小水力や再生可能エネルギーなどに拘っていてはどうしようもないほど,追いつめれれている。そこで出てきた発想は,UMPP,即ち,400万KWクラス,超大規模石炭火力の立案推進である。全国で10カ所の地点が指定されて準備を急いでいるが,進捗は思わしくない。

これは,インドネシアのクラッシュプログラムに似ているようだが,似て非なるものである。昨日も出たが,民営化を否定されたインドネシアのPLNは,1000万KW石炭火力発電所を,全国で開発するが,すべてPLNの直轄であり,民間資本に頼っていない。これに対してインドは,地点の準備は政府または州政府がやるが,実際に投資するのは民間資本である。

今日の記事では,電力省高官の話として,このUMPP方式を水力開発に適用しようとするもので,既に,大きな水力包蔵を有する3州,即ち,アルンチャルプラデッシュ州(包蔵50,328MW),ヒマッチャルプラデッシュ州(包蔵20,378MW),ウッタラカンド州(包蔵16,500MW)の3州に指示して,500MWクラスの大規模水力をそれぞれ選定し,UMPP方式で進める方策を練るよう指示したものである。

これは,そのプロジェクトを進めるための機動部隊を,中央政府と州政府が協力して組織し,設計や環境,移住問題,土地取得などを先行した後,入札によって民間資本を決めようというものだが,火力でもなかなか円滑に進んでいないこの方式を,地点の特性によって全く違う水力を,火力と同じ方式で進めようとしているところに問題がある,と専門家筋は見ている。

インドはなかなか議論が多い。中国ならばもう既に多くの省政府体や企業が現場に入って,具体的に争いながらプロジェクトを片っ端から片づけていっているところだろう。インドは,北辺の水力開発が重要だという認識がありながら,その方法論でそれよりなかなか先に出ない。おそらく,第11次五カ年計画の2012年までの7,800万KW新規電源開発は,とても困難な目標であろう。

●中国の発電設備,遂に7億KWを超える

そうでしょう,やはり中国人の方が発電所の建設には明らかにインド人より長けている。政治形態の違いもあるかも知れないが,中国の電源開発は,官製と言うよりは相当に企業間の競争によって加速されている部分がある。中国は7億KWに達したのに,同じ10億の人口を有するインドは,僅かに20%の1.4億KWですよ,一体この違いはどこから出てくるのか。

もっとも中国の場合は,お金があると発電所建設に走り,燃料を確保する準備を十分にしていない,飛び上がってからどの石に降りるか考えているのである。しかし,天安門事件,1989年ですか,あの時日本の電力設備は1.8億KWぐらいに対して,中国は僅かに0.8億KWだった。20年で10倍,このスピードは考えられないスピードだ。矛盾点もいろいろあるだろう。


その他

●フランスのアレバ,インドの原子力を大きく期待
●フィリッピン,カラカ火力の資産売却,270日期限の今日,決定か


参考資料

2008年8月4日分

フィリッピン

●080804A Philippines, Manila Bulletin
カラカ火力の資産売却,270日期限の今日,決定か
Closing due on $ 787-M Calaca deal
http://www.mb.com.ph/BSNS20080804131510.html

インド

●080804B India, livemint
インド電力省,3州へ大規模水力開発を要請へ
Power ministry asks three states for big hydropower project sites
http://www.livemint.com/2008/08/03232122/Power-ministry-asks-three-stat.html
●080804C India, Economic Times
フランスのアレバ,インドの原子力を大きく期待
Areva plans big play in India's nuclear power sector
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Power/Areva_plans_big_play_in_Indias_nuclear_power_sector/articleshow/3320652.cms

中国

●080804D China, english.people.com
中国の発電設備,遂に7億KWを超える
Total power generation capacity exceeds 700 million kilowatts
http://english.people.com.cn/90001/90776/90882/6464821.html


ー 日刊アジアの開発問題 2008年8月3日分 ーインドネシアの電力違憲判決

「インドネシアの電力違憲判決」,JICA専門家として長い間ジャカルタに駐在した永井さんが交代に際して送ってくれたメールの中に,「新電力法の違憲判決,アチェ大津波に始まり,インフラサミット,石油燃料の大幅値上げ,クラッシュプログラム,エネルギー法制定等々と電力エネルギーの大きな動きがあった。この間,インドネシアのエネルギー需給を巡る状況が180度転換した。」,と述べている。

この中でも,私は,新電力法の違憲判決は衝撃的だった。この判決がインドネシアの電力需給を大きく曲げたことは間違いない。このインドネシアに続いてタイでも,株式上場の直前にあったEGATが憲法裁判所の違憲判断で,急遽上場を取りやめている。一気にアジアでのエネルギー・ナショナリズムが頭をもたげてきた時期であるが,考えてみれば,Jパワーの株式の海外資本による売買制限も,同じような線上にあるような気がする。フィリッピンやインドで民営化が進む中,インドネシアは大きく国営電力の方向に舵を切っていったわけである。

永井さんによると,インドネシアは2012年以降の電源開発についても,政府主導のクラッシュプログラムに匹敵する計画策定が進んでいるという。今回のクラッシュプログラムでも,PLNはその資金調達に随分苦労しているようだが,これだけ政府資金で電源開発を進めてくると,PLN,或いは政府の財政問題にも大きく影響してきそうだ。しかし,電力は国の基幹,と判断したからには,その方向で突き進むしかないだろう。

エネルギー省へのJICA専門家の派遣は,非常に東南アジアでも特異な存在であり,長かった永井さんのご苦労を思い諮るが,後任として赴任した斉藤さんの活躍にも大いに期待する。彼とは,「私が一生懸命横で国士無双をやっているのに,すぐクイタンで上がってしまう。」,と評したほど足の速い技術者で,JICAで実施中のマスタープラントとの強調のもと,大きな成果を期待している。


本文

●ネパールのマオイスト,基本政策策定方針案,提示

ネパールのマオイストが大統領選挙に敗れて,これからの首相も含めた内閣の構成について,離脱するのではないか,と我々も恐れている。マオイストが再び政治から退場するようなことになると,共和制移行には成功したけれども,地方に割拠するマオイストの兵士達の動向や,主として地方で建設されようとしている大規模水力の行く末が危ぶまれる。

今日発表されたCPM,基本政策方針案は,共産党CPN毛派の提案したものと書かれており,これを他の党に諮って最終案としたいとの,最大与党としての責任感が溢れるもので,一様に安堵の色が内外に流れているのではないか。

特に重要な2点,マオイスト軍部の処置と水力開発,特に海外へ輸出する大規模水力の行くへについて,CPMは明確にその方向を記している。マオイスト軍隊の再調整やリハビリについては,3〜6ヶ月以内に完了すること,としており,これがネパール国軍への編入となるのか,解体となるのか明確でないが,とにかくマオイスト側から,その処置について期限を切ってきたことは,見通しが明らかになって来つつあることを意味する。

一方,水力開発については,優先政策として,国家安全保障,外交政策,水資源開発,と3本の優先事項として取り上げており,更に詳細に,中小の水力については国内資本投下による開発を,また大規模で輸出を目指した水力については外国資本による開発を,それぞれ目指すことと明記しており,現在問題となっているインド企業への開発権付与は,一応認めたこととなっている。

●インドの原子力産業,IAEA決定で勢いづく

既にインドの原子力に関するIAEAの査察決定は報じられてきたが,原子力開発公社のジェイン総裁は,祝賀ムードでこれを歓迎している。彼も,このIAEAに続く,日本を含む,原子力供給グループの支援決定に大きな期待を寄せている。

総裁が上げた具体的な地点だが,いずれも既設についての燃料確保が現時点では最大の課題であり,重水炉であるラジャスタンの5,6号機は,既に完成しているが,燃料の見込みが確保される見通しが得られた,としており,更に,ラジャスタンの3,4号機,ナロラ,カクラパールの各ユニットも同様の楽観的な見通しを述べている。しかし,カイガの2機,カルパカムの2機,タラプールの3,4号機については,核兵器との関連から,IAEAの査察からは除かれている,としている。

●フィリッピン,バタンガス工業地区,企業が天然ガス市場に関心

フィリッピンの天然ガスについて,エネルギー省が調査団を組織した。今問題となっているのは,バタンガスの88万KWスキャット火力発電所の燃料を,重油から天然ガスに転換するために,パイプラインを敷設したいわけであるが,最近の鋼材の急騰で,敷設費が高騰して困難に直面している。バタンガスは天然ガスの最終ポイントと想定して,マニラへの供給も視野に入れているが,資産関連の問題もあって容易に進んでいない。調査団は,LNG基地建設の問題も含めて調査に当たるようだ。

●フィリッピンの水資源,解説

何のための記事か,すごく広範に荒っぽく,フィリッピン全土に亘る水資源について論じている。世界の中でも,また東南アジアの中でも,フィリッピンは水資源に恵まれていない,と言うこと言っている。1996年のJICAの報告書も引用されており,それによると,水需要は,1996年が年間299億トンの需要に対し,2025年には865億トンに伸びる,としている。


参考資料

2008年8月3日分

フィリッピン

●080803A Philippines, manilatimes.net
フィリッピンの水資源,案内
Philippines’ water resources explained
http://www.manilatimes.net/national/2008/aug/03/yehey/top_stories/20080803top4.html
●080803B Philippines, Manila Bulletin
バタンガス工業地区,企業が天然ガス市場に関心
Industries eyed as natural gas market
http://www.mb.com.ph/BSNS20080803131466.html

ネパール

●080803C Nepal, the himalayan times
ネパールのマオイスト,共通最低保障計画,提示
Maoists draft CMP for new govt
http://www.thehimalayantimes.com/fullstory.asp?filename=aFanata0sgqzpca8a8a4pa.axamal&folder=aHaoamW&Name=Home&dtSiteDate=20080803

インド

●080803D India, Economic Times
インドの原子力産業,IAEA決定で勢いづく
Nuclear industry upbeat with IAEA nod
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Power/Nuclear_industry_upbeat_with_IAEA_nod/articleshow/3316487.cms


ー 日刊アジアの開発問題 2008年8月2日分 ーインドの原子力に更に関門

「インドの原子力に更に関門」,が待ちかまえている。原子力供給国グループ(NSG)と米議会の承認の手続きだ。いろいろな論評は,殆どが国際政治のバランスに関する問題で議論しているが,インドの原子力がインドの石炭火力を大いに代替して,気候変動抑制に貢献する立場からは書かれていない。地球問題から見て,個々の小規模な再生可能エネルギー問題よりも桁違いに大きいことは,我々がよく知っているところである。

原子力供給国グループ(NSG)の重要な一員である日本の立場が極めて微妙,と書かれている,NSGは全会一致を原則としているので,日本はWTOに於けるような曖昧な態度は通用しない,とされている。インドの原子力開発が日本の気候変動に大きく影響してくる,などという実感を持つ人は少なく,インドの核戦力ばかりが前面に出てくる。インドの核実験に反対してニューデリーに乗り込んだ日本の女子学生が,君のところは米国の核の傘にいる,これはどうなのだ,と言われて立ち往生した記事があった。

インドを初めアジア各地で動いている原子力発電開発の広がりの気運は大きい。昨日は,学校の同窓会があり,88歳で元気な先輩の話に耳を傾けさせられたが,私も88歳ぐらいで再び同窓会に出て,あのような話が出来ればよいなあ,と思った。もっとも先輩は,先輩の言うように,昭和20年卒業だから希少価値だ,文化系の同級生は殆どが戦死したという。卒業式で総長が,「君らが送り出される社会は悲惨な社会である」,心せよと言って送り出されたという。

私の卒業はそれから14年経った昭和34年であるが,卒業するときに同級生の一人と交わした言葉は,10年後に人類が月に立つだろうか,という問題だった。私は立つと言ったが,一人の同級生が立たないと言った。二人は学校の隅の壁に落書きして互いに署名し,勝った方が自動車1台を贈られる,と言う約束をした。あのころ,自動車も殆どなかったのに,よく自動車と言う言葉が出てきたものだ。美智子さんが結婚した頃だから,美智子さんが乗った自動車は確かにあった。

昭和42年,人類が月に立ち,私は,大阪市役所にいた友人のところに赴いた。友人は既に車を準備していてくれた,しかも1台の約束が2台になっていた。私は大いに喜んだ,何となれば丁度私は二人の息子が生まれたところだったから,息子達の喜ぶ顔を想像して,約束した車と違うミニチュアカーだったが,大いに嬉しかった。

昨日の同窓会では,結構,国際問題に関心のある友人が多く,盛り上がった。原子力開発の先陣を切る東南アジアの国はどこだろうか,となって私はベトナムだろう,と言った。二回り近く違う後輩が,それは手堅く進めるタイでしょう,と言った。そこで,今日の大先輩のように88歳の同窓会に出てくるからそこで勝負をかけよう,と言うことになった。その後輩はその時66歳とか言っていた。審判の役を買って出てくれたのは,私が卒業したときに生まれたという後輩の一人だった。よし,88歳の同窓会に出て花束を貰って賭けの勝ちを祝おう,ベトナム,頑張れ!


本文

●米政府,IAEAのインド査察協定承認に,「歓迎」

インドのエネルギーセクターは,IAEAの決定に沸き立っている。日本の新聞も大きなスペースを割いて,2007年米印協定成立以来の経緯を解説しながら,この協定の先行きを占っている。我々は,単純に,インドの原子力開発が石炭火力開発を抑制するものとして,今世紀最大のイベントと思っている。22施設のうち14施設を平和利用施設としてIAEAの査察を請けることになった。

残りの施設は軍事用で査察の対象としないが,14施設を査察の対象としただけでも前進だ,と言う言い方で,IAEAはインドの核保有を横目に見ながら承認の決断を行った。これからまだ,原子力供給国グループ(NSG)と米議会の承認の手続きが残っており,前者に於ける日本の立場が極めて微妙だという。また,米議会の承認は次期政権に流れ込む可能性が強く,例えばオバマ候補の考え方に問題を残しているという。

記事はすべて国際政治の立場から書かれたもので,石炭火力を減らしてこれを原子力で代替する地球の立場からは書かれていない。今インドは核燃料不足で,400万KWの原子力発電所の稼働率が非常に落ちているという。風力発電や太陽光など小規模の再生可能エネルギーで地球を救う王としている人類にとって,インドの石炭を原子力に代替させることは,桁違いの大事業だ。

●ブッシュ大統領,石炭技術推進,任期最後の課題と

何か矛盾に満ちたニュースが続くが,これはブッシュ大統領が西バージニア石炭協会総会に出席しての演説である。石炭協会へのリップサービスがあるとはいえ,ある程度,中期のエネルギーを展望しての演説内容であろう。いろいろと言葉が続く,曰く,「石炭以外に信頼の置ける電力資源は石炭以外にない。」,「250年以上は包蔵がある米国の石炭は,国を安泰の位置に置いている。」。彼の決意は,これらの石炭を使うために,クリーン石炭技術の推進に自分の「ゴール直前のラストスパート」に使い切る,と言っている。

●タイのMEA,バンコク管内の需要予想を,下方修正

大バンコク圏内の270万世帯の需要を賄うMEA,年初の3.3%需要増を1.85%に下方修正,とMEA総裁ポーンテップ女史が発表した。バンコクの伸び率も落ちたものだと思う。総裁は,これは燃料の高騰の影響が大きいが,需要家の節電意識の向上も大きいと言っている。なぜか女史は,地方配電のPEAの補助金問題まで言及しているが,今のところ100億バーツの政府補助を受けているようだ。タイの電気料金問題を解く鍵でもある。


その他

●フィリッピン,マニラ配電,28億ペソ,回収に向けた措置に入る


参考資料

2008年8月2日分

タイ

●080802A Thailand, Bangkok Post
タイのMEA,バンコク管内の需要予想を,下方修正
MEA cuts electricity use growth forecast in capital
http://www.bangkokpost.com/020808_Business/02Aug2008_biz30.php

電力一般

●080802B Power, ap.google.com
ブッシュ大統領,石炭技術推進,任期最後の課題と
Bush says coal part of his "sprint to the finish"
http://ap.google.com/article/ALeqM5hp2rJzOFl9KgAE2bhvSSbaY1ieuAD928UD4O1

フィリッピン

●080802C Philippines, Manila Bulletin
マニラ配電,28億ペソ,回収に向けた措置に入る
Totalling P2.8-B deposits Meralco starts meter refund process
http://www.mb.com.ph/BSNS20080802131371.html

インド

●080802D インド,日本経済新聞
米政府、IAEAのインド査察協定承認に「歓迎」
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20080802AT2M0200U02082008.html


ー 日刊アジアの開発問題 2008年8月1日分 ーブッシュも石炭問題に集中

「ブッシュも石炭問題に集中」,今日のニュースの中にはまだ入っていないが,世界の石炭問題の中に,敢然とブッシュ大統領が介入してきた。このHPの読者の皆さんは既に,地球温暖化の問題があるとはいえ,私達が,今しばらく人類に石炭は欠かせない,と言い続けてきたし,先日も世界銀行がインドの石炭火力への融資を決める際に,同じ言葉を使って,石炭のやむを得ない使用を説明してきた。

今度はブッシュ大統領までもが,残りの任期半年の間に,彼が集中するのは石炭のクリーン化技術だ,と大きく宣言した。石炭のクリーン化や二酸化酸素閉じこめ技術がどこまで進み,経済性はどうなっているのか,一度勉強する必要があるが,地球全体から見て,これから中国とインドが猛烈な勢いで石炭を焚くわけであるから,まさしく世の中のエネルギー問題は,石炭に収斂されてきている。

しかしここに来て,各所で石炭の価格問題から来る供給惜しみと言うか,なぜか石炭不足で停まる火力発電所が続出している。中国は既に危機的状況であるが,インドでも南部は石炭がない,東部でさへも石炭不足で問題が起こっている。インドネシアでも何かというと石炭の輸送問題である。インドのベンガル州が急遽海外のスポット市場で調達する石炭の値段は,トン189ドルという,これは発電単価に換算すると,実にKWh当たり6.6セントになってしまう。

原油は40年しかないが石炭は200年ある,だから価格も安定している,と言うのが常識であったが,石炭には原油よりももっと輸送問題がつきまとう。これを理由に,輸送が困難,として供給を遅らせ,原油のような価格狂乱を画策している人々がいるに違いない。ただ石炭の場合は,国際問題と言うよりは,インド国内,中国国内の問題で解決できる部分が少なくない。石炭の問題は,即ちインド,中国の経済成長の問題に集約されるのである。

その中国,湖錦濤首席の演説が話題を呼んだ。「2016年,オリンピック,東京の幸運を祈る。」,と言う言葉が馬鹿にクローズアップされているが,実は湖錦濤演説のメインテーマーは,「高成長の主力だった輸出の鈍化と経済の減速」,を認めた部分で,彼はオリンピックもさることながら,オリンピック後に残されたインフレとそれによる経済原則を,実はもっとも恐れているのである。石炭供給困難がこれに拍車をかける。


本文

●インド,タマンティなどミャンマーの2水力開発へ

簡単な記事である,しかしこれが政治の成果というものか。先日報道の中にあったが,アジア開発4人男の一人,インドの電力副大臣ラメッシュが,NHPCのエンジニアーを叱咤激励してミャンマーの新首都に乗り込み,インド側が殆ど諦めていた120万KWタマンティ水力と60万KWシュザウエ水力について,インドの買電を含めて,ミャンマー政府に約束した,それが具体的に協定締結の運びとなったものである。

これは,地図で見ても分かるが,この電力をインドに持って来るというのはまさに至難の業で,NHPCの技術的結論が可能性なし,であったことも頷けるところだ。しかし我らがラメッシュは別のところを見ている。ミャンマーの沖合天然ガスの膨大な包蔵について,中国やタイに交渉を進められて,インドは置いてけぼりにされそうだ。この水力に無駄金を使っても,ミャンマーとの突破口としては十分に価値があると見たのである。

●インド,バンガロールではローソクの灯で夕食

中国もインドも電力不足に泣いている。特に今夏の渇水は,南西部インドを襲って,連日の電力使用制限で,人々はもう諦めている,生活とはこういうものだ,と。彼等に言わせれば,何年も続いていることなので,これが現実だと受け止めざるを得ないわけである。特に農業が泣いている。渇水に加え,南部の諸州の農業用のポンプが動かないのである。州によっては,需要の40%が農業用のところもあり,電気料金の優遇政策で,州の電力の経営を悩ませているあの悪名高き農業用ポンプである。

南部諸州は,石炭産地から遠く離れていることが問題なのだ。そのため,マハラシュトラやカルナタカなど,旧来水力発電に頼ってきたところが渇水に見舞われて出力が出ていない。原子力発電所は,これらの南部の海岸地帯に多く建設されているのも,石炭供給との関係があるわけだが,その原子力発電所が,核燃料不足で稼働率が極端に下がっている。

●インド,ベンガル州の発電所,輸入石炭使用へ

西のベンガル州でも石炭不足が起こっている。石炭供給を一手に握るインド石炭が,ベンガル州の石炭火力への供給責任を果たさないのだ。この7月までに33,474トンの石炭供給の約束が,60%の20,436トンしか供給されていないと言う。怒った州政府は,海外のスポット市場から急遽石炭買い付けを行うことを宣言したが,その価格は何とトン8000ルピー,実に189ドルなのである。

このベンガル州は石炭の生産地からそう遠くないから,中国のような輸送上の問題とは考えにくい。石炭火力用の石炭供給が滞っているのは,中国,インドを初めインドネシア然りである。どうも国際的な急激な石炭価格の値上がりを見て,各所で石炭の売り惜しみが出てきているのではないか。中国を見た西欧のメディアの中には,この点をはっきり突いている報道も多い。


参考資料

2008年8月1日分

ミャンマー

●080801A Myanmar, steelguru
インド,タマンティなどミャンマーの2水力開発へ
India to develop two hydel power projects in Myanmar
http://steelguru.com/news/index/2008/08/01/NTY5MDg%3D/India_to_develop_two_hydel_power_projects_in_Myanmar.html

インド

●080801B India, Economic Times
バンガロールではローソクの灯で夕食
South India reeling under perpetual power shortage
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Power/South_India_reeling_under_perpetual_power_shortage/articleshow/3311951.cms
●080801C India, Economic Times
ベンガル州の発電所,輸入石炭使用へ
Bengal to import costly coal for power plants
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Power/Bengal_to_import_costly_coal_for_power_plants/articleshow/3311859.cm


トップページ