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早野透
本社コラムニスト
早野透
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辻元逮捕はいかがなものか

 辻元清美前衆院議員が逮捕されて10日間たった。あんなにいい仕事をしていたのに、政策秘書給与で詐欺などとは何やっていたんだとどやしつけたい思いがする。

 それにしても昨年3月に議員辞職し、8月19日に2331万円余の秘書給与全額を友だちから借金して返納していて、なぜ逮捕なのか。やはりいぶかしい思いがする。

 調べてみると、警視庁が初めて辻元前議員の公設秘書に呼び出しをかけたのは9月末である。議員辞職から半年もたっている。それまで警視庁は何をしていたのか。

 それからというもの、警視庁は特に公設秘書2人をひんぱんに呼び出し帳簿も提出させて、細かく資金の流れを聞いている。2人はともに失職しているうえ、朝から晩まで警視庁の調べがあるからまともな仕事につけない。電話受けやテープ起こしのアルバイト、コンビニ弁当のパックを詰める仕事などをして糊口(ここう)をしのいでいる。

 いや警察というのは、人の暮らしを守ってくれる半面、有無をいわさないものだなと思ったものである。

 2人は50回から70回もの取り調べに応じた。名義を貸したとみられた佐々木美枝、辺見真佐子両政策秘書の調べも続いた。土井たか子社民党党首の五島昌子前秘書の調べが始まったのは今年1月からである。

 五島前秘書は「私はおせっかいだから(秘書給与流用のことは)私から言ったかもしれない」と「指南」を当初から認めている。しかし当局は「だましとる意図があったのだろう」と犯行の悪意のあることを明確に認めよと迫って、逮捕までに29回もの取り調べがあったそうである。

 その間、辻元前議員は週刊誌のカメラに狙われ、右翼の街宣車に自宅前でスピーカーでがなりたてられ、身をひそめて暮らした。これも悪いことをした報いだと言い捨てていいのかどうか。本人に警視庁の呼び出しが来たのは6月半ばになってから。警視庁で2回、7月になって東京地検から2回の聴取を受けたとのことである。

 辻元前議員は、名義借りの政策秘書に5万から7万7000円しか支払わなかったこと、それが秘書制度の趣旨から外れているなあと気になっていたことなど基本的事実はすべて認めた。しかし警視庁も地検も「初めからだます意図があったことを認めよ」と迫ったらしい。辻元前議員は「自分の心に照らして、そのときだまそうとまで思ったわけではない」と答え続けたとのことである。あげくの果て18日に警視庁が3回目の呼び出しをして逮捕した。

 「私は特別だから取り調べは短くして」と辻元前議員が言ったとか伝えられている。仮にそんなことを口走ったとしても警視庁も地検もいくらでも呼び出せるのだし、実際に呼び出しにはすべて応じている。辻元前議員のこんな片言をリークして逮捕やむなしと印象づけるのだとしたら、それはいかがなものか。

 ここに至るまでに被疑者や関係者の供述も食い違ったであろう。もちろん防御権もあるのだから不利なことをなかなか言わなかったということもあるだろう。けれども「初めからだますつもりだった」という警察の見方をまるごと認めないから「捜査非協力」というのだとしたら、それもいかがなものか。

 悪いものは悪い、だから逮捕するというのも警察や地検の権限ではある。しかし秘書給与に関しては病身の老母だとか地元の診療所長をしている息子を秘書にしていたとか、様々な問題ケースが伝えられた。辻元事件のように最初から「自白」しているケースだけを大捜査陣で調べて1年4カ月たって逮捕してもアンバランスと思える。きっと強制捜査によって、口裏合わせしていたとか、もっとこんな悪いことをしていたということを見つけようというのかもしれないが。

 しかし進行形の事件だから予断を持たずに見ることとしよう。辻元前議員が保釈になったら、なぜこんなことになったのか、市民政治家の懊悩(おうのう)と反省を聞いてみることにしよう。まさか鈴木宗男衆院議員のように勾留(こうりゅう)し続けるということはないだろう。辻元前議員は辞職も自主返納もしているのだから。 (2003/07/29)








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