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『文献ガイド』アブストラクト(4370)
4370,特別講演 MEGおよびTMSで認知機能を探る,上野照剛,音声言語,43.04,2002,○,要 約:fMRI,PET,脳磁図,および近赤外光を用いた光計測などの非侵襲脳機能計測が実用化されている.fMRI,PET,光計測は,神経活動に伴う血液の変化を測定したものであり,脳磁図は神経の電気活動を計測したものである.このため,脳磁図は,fMRI等に比べて時間分解能が良く,脳内の機能部位の変化を時間を捉えることができる.これらの手法とは異なり,TMS(transcranial magnetic stimulation)では,頭外から非侵襲で脳神経が刺激可能であり,刺激による脳機能地図を描くことができる.また,数mmの分解能で脳神経を刺激したり,神経の伝導を遮断することができるので,神経ネットワークの研究に有効である.本稿では,MEG,TMSを用いた認知機能,特にメンタルローテーションと短期記憶に関する実験結果について報告する.
4371,特集 <声帯萎縮>座長記,久育男,音声言語,43.04,2002,○,声帯萎縮の診断と治療に関しては確立されたものがなく,日常診療においても判断に苦慮する症例が多い.このような状況下での本シンポジウムの目的は,まず声帯萎縮における診断と治療の現状を把握するとともに今後の問題点を明らかにすることにあると考えられた.実際にシンポジウムでは,4人のシンポジストたちの基礎的ならびに臨床的研究の結果を基に,これらの問題点が明らかにされるとともに,その解決へ向けての有意義な討論がなされた. 臨床的な声帯萎縮の診断は主として視診によるものであるが,組織学的にどの様な変化が声帯に生じているのかという研究は少ない.本シンポジウムにおいて,佐藤氏がまず声帯萎縮の定義について解説したことは意義深い.声帯萎縮とは,いったん正常の大きさまで発育した成人・小児声帯の容積,あるいは声帯の層構造を構成する各組織の容積が,単独あるいは重複して減少し,発声機能が低下するものとした.萎縮の定義はまさにそういうことだとは思うが,声帯萎縮として取り扱う場合の萎縮は真の萎縮のみと捉えてよいのだろうか.すなわち,この定義であると先天性や幼児の声帯萎縮症というものは存在しないことになる.もう少し議論が必要な気がする.続いて,佐藤氏は実際の声帯萎縮における組織学的変化を各種の組織学的研究手法によって得られた結果を用いて,系統的に紹介した.反回神経麻痺,声帯溝症,加齢的変化といった病態の相違によって,粘膜固有層各層や筋層での萎縮の程度に違いがあることがよく理解できた.また,声帯萎縮を治療する際に,声帯の組織学的構造と各疾患における萎縮部位の相違を理解することの大切さを認識させられた. 声帯萎縮の外科的治療は難しいが,その代表的な手法として声帯充填術がある.田山氏は,声帯充填術の適応と,現在我が国で行われているコラーゲン注入術,脂肪注入術,筋膜注入術の実際と問題点について紹介した.さらに,これらの方法のなかで彼らが行っているコラーゲン注入術の結果を報告し,反回神経麻痺では,声帯萎縮のみの場合や軽度の声門後部閉鎖不全と萎縮を伴う場合にはコラーゲン注入術は良き適応となるが,高度声門閉鎖不全の症例に対しては限界があるとした.また,声帯溝症の場合は萎縮だけではなく癒着があるため,volumeの増加により声門閉鎖不全が改善されても本質的な治療法にはなり難いとの結論であった.やはり,声帯溝症に対する確実なる治療法の開発が今後の問題であると痛感させられた. 田村氏は声帯充填術における各種充填材料の組織反応について主として動物実験の結果を紹介した.シリコンは,注入後の反応が軽微で,充填効果の持続という観点からも優れているが,ヒトアジュバント病の問題などから,臨床的にはもはや使用不能である.コラーゲンは充填後の吸収が大きな問題であり,市販されている架橋型コラーゲンは無架橋型に比し,宿主の組織反応を受けやすく,残存しにくいという難点がある.自家脂肪では,単なる注入より脂肪組織の移植の方が充填後の吸収が減少する可能性があることを明らかにした.自家筋膜は,注入初期には周囲組織からの影響を受けるが,長期的には一定の体積を保って残存することも明らかになった.またこれら材料の違いによる注入部位の選択についても考察がなされた.シリコン,コラーゲン,筋膜などは粘膜固有層中間層より深部に充填すべきであるが,脂肪組織は粘膜固有層に充填しても,声帯振動の障害の可能性が低いという結論であった.これらの結果から,脂肪組織や筋膜移植が今後移植材料として主に用いられるようになるだろうが,より有効的に臨床応用できるよう,研究のさらなる発展を期待したい. 最近,医学におけるあらゆる分野で脚光を浴びているのが,移植治療,遺伝子治療,そして再生医療である.塩谷氏らのグループは,いち早く喉頭麻痺に対する遺伝子治療の研究に取り組んできた.反回神経麻痺や老化に伴う声帯萎縮では甲状披裂筋自体の萎縮が主たる原因の一つであるため,彼らは筋細胞に対して強力な栄養作用を有するInsulin-like
Growth Factor T遺伝子をラットの甲状披裂筋に導入することを試みた.その結果,萎縮した筋線維を遺伝子治療により肥大させ,萎縮変性により少なくなった筋線維を増加させることが可能であることを明らかにした.また,筋萎縮の改善だけではなく,末梢神経の再生や脱神経後の疑核運動神経細胞減少を抑制する目的で,運動神経細胞に対する遺伝子導入も行っている.今後,これらの研究が発展し,喉頭麻痺に対する遺伝子治療が臨床可能になる可能性は大きいと思われる.ただ,これらの治療には倫理上の問題がある.喉頭麻痺という,その多くが致命的ではない疾患に対して,人間の根幹にかかわる遺伝子治療や再生医療が本当に必要かといわれれば,その回答はなかなか難しい.これらの問題を解決しつつ,この研究が発展し,臨床応用されることを期待する.
4372,特集 <声帯萎縮>声帯萎縮の病理組織学,佐藤公則,音声言語,43.04,2002,○,要 約:声帯萎縮の病理組織を解説した.1)
声帯萎縮とはいったん正常の大きさまで発育した成人・小児声帯の容積,あるいは声帯の層構造を構成する各組織の容積が単独にあるいは重複して減少し,発声機能が低下する変化と定義できる.2)
各疾患・病態における声帯組織の萎縮部位は異なっている.3) 反回神経麻痺では,声帯筋層の容積が単独に減少し,声帯に萎縮が起こる.4) 声帯溝症では,声帯粘膜固有層浅層の容積が単独に減少し,声帯に萎縮が起こる.5)
レーザーあるいは放射線照射後の声帯組織では,被照射声帯組織の容積が単独あるいは重複して減少し,声帯に萎縮が起こる.6) 加齢に伴う声帯の萎縮は,声帯の粘膜固有層と筋層の容積が重複して減少するが,特に粘膜固有層浅層の容積の減少が大きく関与している.7)
声帯の組織学的構造および萎縮声帯の病理組織像を理解することは,声帯萎縮をきたす各疾患あるいは病態に対する治療理念を理解するために必要である.
4373,特集 <声帯萎縮>声帯萎縮に対する遺伝子治療,塩谷彰浩,音声言語,43.04,2002,○,要 約:反回神経麻痺に伴うものや老化に伴う声帯萎縮では,甲状披裂筋の萎縮が主たる原因の一つである.この問題に対し,筋組織に対する強力な栄養因子で,筋肥大作用を持つIGF-I
(Insulin-like Growth Factor I)の応用が期待される.しかし,IGF-Iタンパクそのものを投与する場合は有効濃度の維持が必要で,局所注射や全身持続投与では応用が困難であり,遺伝子導入の手法(遺伝子治療)が有用となる.この方法では,1回の導入で数週間から1ヵ月にわたり,局所的持続的タンパク発現が実現できる.ラットを用いて反回神経切断後に甲状披裂筋に筋細胞,神経細胞の両者に対して強力な栄養作用をもつIGF-I
遺伝子を導入したところ,遺伝子導入後4週の時点で,有意な筋萎縮改善効果を認めた.これらの結果からIGF-I遺伝子治療は声帯内注入術や甲状軟骨形成術の代用かその増強手段として用い得ると考えられる.
4374,特集 <声帯萎縮>声帯充填術の実際,田山二朗,音声言語,43.04,2002,○,要
約:声帯充填術は,声帯萎縮に対する外科的治療法の一つで,注入術としてはコラーゲンおよび自家脂肪が主に用いられ,声帯溝症には筋膜も使用されている.コラーゲンは医療材料として供給されているため入手が簡単で,注入方法が簡便でかつ多様に選択できることから,臨床的には使いやすいが,吸収率が高いという難点や,異種蛋白(ウシコラーゲン)であるためアレルギー反応などが問題となる.自家脂肪や自家筋膜は安全であるものの,一方では採取の手間や侵襲,手術手技の煩雑さなどの難点がある.また生体材料であるためある程度の吸収はおこり,安定した手軽に利用できる材料であるとは言いがたい.実際の臨床においては,こういった各材料の特徴を考慮し,また病態に応じて選択利用しているのが現状であろう.現在の充填材料はまだ理想的なものとはいえず,今後も最適な材料の開発が課題とされる.今回はコラーゲンを中心に実際の注入方法を紹介する.
4375,特集 <声帯萎縮>組織所見から見た充填材料,田村悦代,音声言語,43.04,2002,○,要 約:本邦では,声帯萎縮に対する充填術に,シリコンやコラーゲンあるいは脂肪などの自家組織が用いられてきた.これらの材料について,充填後の組織反応を観察し,充填部位と粘膜波動の関係を考察した. シリコンの声帯内注入術によって長期に著明な異物反応が起こったという報告はないが,粘膜固有層に注入されると,粘膜波動が障害される.一方,コラーゲンは,注入後の吸収率が高いことと,異種タンパクを用いることによるアレルギー反応や,未知の感染症に対する危険性が無視できないという問題点がある.自家組織では,脂肪組織や筋膜が用いられているが,いずれも,著明な異物反応は認められないが,注入後の吸収が問題となる.しかし,脂肪組織の粘膜固有層への注入による粘膜波動への影響は少ないと考えられる.また,筋膜注入後の吸収については,現在のところ一定した結論は出ておらず,今後の検討が必要と考えられる.
4376,特集<これからの嚥下障害治療> まとめのことば
,湯本英二,音声言語,43.04,2002,○, 高齢化社会が到来しつつある現在,脳血管障害,慢性呼吸器疾患,神経あるいは神経・筋疾患などに罹患する患者はますます増加しており,それに伴って嚥下機構に破綻をきたす患者数も増加しつつある.嚥下障害をきたした患者の診断と治療は基礎疾患を扱う診療科,リハビリ科,耳鼻咽喉科,歯科,言語聴覚士,看護師,栄養士その他多くの職種が一体となって行う必要がある.本学会においても平成8年に「摂食・嚥下障害とその対策」というシンポジウムが行われている.今回,「これからの嚥下障害治療」と題して従来このような企画ではあまり注目されてこなかったテーマを中心に発表と討論が行われた. 嚥下機能の病態診断にはバリウムを用いたX線ビデオ透視検査が最も情報量が多い.しかし,嚥下障害患者の多くは通常の透視検査が不可能なことが少なくないし透視設備のない施設もある.肥後先生はベッドサイドで実施できる機能検査(パルスオキシメータによる食事中の酸素飽和度モニター,テスト食摂取時の内視鏡による咽喉頭の観察,バリウム嚥下前・嚥下中・嚥下終了後の頸部単純側面写真など)を紹介し,それぞれの検査で何がどこまで診断できるかを発表した.嚥下のリハビリテーションを進めるうえで参考になる所見が得られることが期待される. 本人が気づかないうちに唾液や食物を誤嚥する不顕性誤嚥は誤嚥性肺炎を起こして生命を脅かす.実際,誤嚥性肺炎は高齢者死因の第一位であり,重症心身障害児死因の半数以上を占めている.荒井先生は,大脳基底核の障害によるドーパミン・Substance
P (SP)の低下が上気道からの入力低下,さらに嚥下反射惹起遅延と咳反射の低下につながり,それらが高齢者に見られる脳血管障害後の不顕性誤嚥の増加と誤嚥性肺炎の原因であることを示した.このような不顕性誤嚥に対して,ACE阻害剤,塩酸アマンタジン,シロスタゾールを投与することによって誤嚥性肺炎の罹患が有意に低下したことから内科的治療の有効性を示した.これらの薬剤の本来の適応はそれぞれ高血圧症,A型インフルエンザ・パーキンソン病,動脈閉塞症(抗血小板作用)であるが,ドーパミン・SP系を賦活するいわば副次的作用を応用する使い方で興味深い. 嚥下障害の治療はリハビリテーションが基礎になり,必要に応じて手術治療が組み合わされる.いずれにせよ,患者の全身状態,意識レベル,意欲,原因疾患と嚥下障害の病態,さらに家族や介護者の支援状況によって治療目標を個々の患者で設定する必要がある.鮫島先生は手術治療を行うときも治療目標を明確にしたうえで術式を選択することがきわめて重要であることを実例を挙げながら報告した.上記の事項について十分に説明した上で,患者・家族の希望をどこまで達成可能か,誤嚥性肺炎を起こさないためにどこまで術後の機能障害を受容してもらう必要があるかを十分に説明して納得してもらうことが重要である. 重症心身障害とは原疾患に関わらず重度の精神薄弱および肢体不自由が重複している状態を指し法律で規定された概念である.患者は専門の施設に通園あるいは入所して療育を受けており,胃食道逆流や高度の誤嚥を伴っていることが多い.しかし,これらの施設には嚥下障害の診断と治療に必要な機器がなく,専門医もいないことが少なくない.川原先生は障害児(者)の療育の実際を紹介し,今後の取り組みを皆さんとともに考える機会としたいと結んだ.私自身も療育施設を見学し喉頭気管分離術などが障害児(者)の呼吸管理,食事管理に大いに役立つのではないかと考えている. 最初に書いたように,嚥下障害の治療は多職種がかかわるチーム医療である.チームとして医療に携わる者を組織し,一貫した医療を提供することが望まれる.しかし,どのようにチーム医療を行うかは病院ごとにあるいは地域ごとに対処するのが現実的である.津田先生は所属施設でのチーム医療,県内でのチーム医療に分けてそれぞれどのように取り組んできたかを報告し,これから嚥下障害の治療に携わろうとする会員諸氏に示唆を与えた. 加我会長の意図された「これからの」ということばにどれだけ迫れたかおぼつかないが,今後の課題をある程度明らかにできたのではないかと考えている.
4377,特集<これからの嚥下障害治療>これからの嚥下障害治療――新しい検査法――,肥後隆三郎他,音声言語,43.04,2002,○,要 約:現在のところビデオ嚥下X線透視検査(videofluorography:VF)が嚥下機能評価におけるゴールデンスタンダードだがX線被爆等の欠点も指摘されている.今回,「新しい検査法」というテーマのもと,現在までに論文等で報告されてきたVF以外の嚥下機能検査のなかから,まだ標準化されてはいないものの今後導入が予想される検査法や近年脚光を浴びている検査法を抽出し,これらの検査法を3つの大きな項目(1.
スクリーニング検査の導入について,2. VFに変わりうる新しい検査法,3. 知覚系の評価)に分類したうえで代表的なものについて解説した.また,遠くない将来に実用レベルに達してくると予想される新しい検査法を4つめの項目(4.
技術の進歩による新しいデバイスを用いての全く新しい検査法の開発)として加えた.これらの方法を実際の臨床の現場で使うためには検査の標準化が必須であり,また検査の信頼性を増すためには大規模な追試も必要であろう.
4378,特集<これからの嚥下障害治療>高齢者脳疾患と誤嚥性肺炎,荒井啓行他,音声言語,43.04,2002,○,要 約:誤嚥性肺炎を発症する高齢者では,高率に脳血管障害,特に大脳基底核領域に脳梗塞が見出される.この場合の脳梗塞は,新しいものであっても陳旧性のものであっても,また症候性であっても無症候性であっても構わない.このような患者では,嚥下反射と咳反射の両者の低下により,誤嚥特に夜間の不顕性誤嚥により肺炎の成立にいたると考えられる.嚥下反射と咳反射は,少なくとも2つの神経伝達物質,すなわちドーパミンとサブスタンス-Pによって支えられている.進行したアルツハイマー病患者も大脳基底核障害などにより誤嚥性肺炎を発症する.進行したアルツハイマー病患者において,major
tranquilizerの使用と無症候性脳梗塞の合併は誤嚥性肺炎を誘発する危険因子であるため問題行動に対するmajor tranquilizerの使用には細心の注意が要求される.塩酸アマンタジン,ACE阻害薬,抗血小板剤の使用また歯ブラシなどによる簡便な口腔ケアは肺炎の予防に役立つばかりでなく高齢者医療費削減にも貢献すると思われる.
4379,特集<これからの嚥下障害治療>患者および家族のニーズを考慮した嚥下障害の術式選択,鮫島靖浩,音声言語,43.04,2002,○,要 約:嚥下障害に対する手術には,喉頭機能を保存する手術と犠牲にする手術がある.喉頭の重要な働きである下気道の保護作用が機能せず,誤嚥性肺炎を防止できない場合には,発声機能や呼吸機能を犠牲にした手術が必要である.当科において喉頭機能を犠牲にした症例では,誤嚥性肺炎を反復し,痰の吸引のため気管切開が行われていた例が多かった.また,意識障害や発声障害,構音障害,進行性の疾患が多かった.一方,このような症例でも,気管切開とボタン型のカニューレの使用により,痰の吸引と発声を可能にして,胃瘻による栄養を行いながら,短期的ではあるが楽しみ程度の摂食ができた症例を報告し,患者および家族のニーズを考慮する必要性を強調した.