百字書評
Vol.1: No.0001-0050
Vol.2: No.0051-0100
Vol.3: No.0101-0150
last modified on 01/08/31
萩原朔太郎の小説があるというのでこの「猫町」を読んでみた。あまりに感性が鋭敏であったために幻覚を見ることもあるのだろうかと思わせる。散文詩よりはちょっと長めの、しかしこれもまた詩である。(by copia:00/11/26)
◆岡本綺堂『半七捕物帳 冬の金魚』(PC, Palm)0052
冬に湯の中で生きるという金魚にまつわるお玉ヶ池に 出来した殺人事件。俳諧の宗匠が殺害されそこの女中も 遺体で発見された。どうも死んだ女中と冬の金魚が関係 あるらしい。半七老人の述懐は少し混み入っていた。(by Pal Mac:00/12/29)
深川八幡の祭礼から帰った加賀屋の嫁、お元の顔は何 故か腫れなかった。武州熊谷から嫁入りとともについて きた女中お鉄は何かを知っているらしい。上州太田から 将軍に献上される御松茸に関連があった。 (by Pal Mac:00/12/29)
八木重吉の第二詩集。彼の死後刊行された。 死をきつく見つめる男の信仰と幼い愛娘・桃子との語らい。 それが木漏れ日に琴がひとりでに鳴りだしたような詩句となった。 作為を排し素朴に徹した彼の詩だが、病床の『貧しき信徒』はこんな詩を 求めた。 それは・・・ (by 笹心太:01/03/12)
草木塔は自由律俳人山頭火を代表する句集。 彼の幼き日に自殺した母に捧げられた。 社会的には失敗者であった彼は、自嘲し自責し自戒する。 その放浪の中で彼は。
“うたふものの第一義はうたふことそのことでなければならない。
蜘蛛は網張る私は私を肯定する ”(by 笹心太:01/03/23)
漢の武帝時代、匈奴の捕囚となった悲劇の勇将李陵を、 史記を執念で著した司馬遷、やはり捕虜となりながら違 う道を選んだ蘇武と対比させて描いた雄渾の一作。早逝 の作家中島敦の最高傑作と評されている。(by Pal Mac:01/03/31)
◆梶井基次郎『のんきな患者』 (PC, Palm) 0057
病の床にある作者の身の回り日記といったところか。そこには死の影もなく、母親の世 話で暮らすのんきな患者がいるだけである。 何故にそのようにのんきでいられるのか。これが作者の達した最期の境地である。(by copia:01/04/13)
◆岡本綺堂『半七捕物帳 地蔵は踊る』 (PC, Palm) 0058
几董の一句に促されて半七老人に語られた不思議な縛られ地蔵。その地蔵が踊るのを見たものはコロリに罹らないとの風評。そのうちに殺人事件が出来する。繁盛目的の安仕掛けに見えたが、住職は極めて殊勝だった。 (by Pal Mac:01/04/13)
◆浜尾四郎『彼は誰を殺したか』 (PC, Palm) 0059
15歳も年下の美しい妻を持った直一は、結婚後も足繁く通ってくる美しい青年、妻の従弟、吉田豊に嫉妬する。 ある夏、豊は直一と共に出かけた海水浴場で崖から転落 死する。直一と彼を取り巻く状況にその後も波乱が…。 (by Pal Mac:01/04/13)
◆浜尾四郎『殺された天一坊』 (PC, Palm) 0060
吉宗の落胤として江戸中を騒がせた天一坊事件。大岡裁 きに当った「御奉行様」の心の葛藤をそれ以前の大岡忠相の行動、考えを絡ませながら綴った小品。人が人を裁かねばならない苦悩と不合理を深くえぐって心に残る。 (by Pal Mac:01/04/13)
◆芥川龍之介『きりしとほろ上人伝』 (PC, Palm) 0061
身の丈三丈(9m)の山男「れぷろぼす」。当今天下無双の強者に仕えんと「あんちおきあ」の帝、悪魔(じゃぼ)を経て、「えす・きりしと」を荷なって上人となる。独特の口調は声を出して読むに相応しい。 (by Pal Mac:01/05/28)
猫を可愛がる主人公。その合間に空想をめぐらせているが猫の手の化粧道具には驚いた。最後猫の手をまぶたにあてがって、猫の重みを感じているあたりは独特の感覚が伝わってくる。 (by copia:01/05/28)
◆梶井基次郎『ある心の風景』 (PC, Palm) 0063
主人公の心の風景が展開される。当時の京都の町の様子が印象的である。梶井の小説らしい雰囲気がここでも伝わってくる。どうしようもない生活の中にも主人公は、一点の燐光を感じていた。(by copia:01/05/28)
超短編。筧に惹かれる主人公の心。語られていくところはやはり梶井なのだと思われる感覚の澄まされた世界だ。その筧は、姿を変えて元の姿ではなくなるのだが、そこでの梶井の一言が印象的。(by copia:01/05/28)
実家から離れた主人公が、帰ってくる話。故郷を思う心が、感情的に伝わってくる。ほとんど涙であるようなこの小説は、同じような気持ちを持つ人の共感を得られるのかもしれない。(by copia:01/05/28)
音楽もたしなんだ梶井のちょっとした話である。読んでいるとこんな感性もあったのかと驚くかもしれない。音の感覚の世界なので、分かる人には分かる作品である。私も不眠症になりそうだ。(by copia:01/05/28)
K君が何故溺死したのかはよく分からない。Kというのは梶井のKなのであろうか。Kの人格はとても不思議でつかみどころが無いが、昇天の様子は、何とも澄み切った感じに見えるのが印象的だ。(by copia:01/05/28)
世間的には汚れたものとして見られるのが交尾であるが、梶井にはそれがとても美しいものと見えたようだ。そんな梶井の姿を見ていると生へのあこがれが感じられる。ある面、涙を誘うような作品。(by copia:01/05/28)
◆梶井基次郎『桜の樹の下には』 (PC, Palm) 0069
桜の樹の下には屍体が埋まっている!で始まる超短編。あの桜の美しさの原因がそこにあるかのように主人公が主張する。何か異常なものも感じる。梶井にしては珍しい強い主張が展開される。(by copia:01/05/28)
◆梶井基次郎『城のある町にて』 (PC, Palm) 0070
城のある町で日常の出来事や思い出が風景と共に展開される。そこには何か調和がとれた世界があるように思える。ぼんやりとしているが、単純に事実を述べただけではないものを感じることができる好作である。 (by copia:01/05/28)
雪の降った後の日常の風景。問題が起こるし、いろいろ話をしたりもする。ぼんやりと話が進んで行く何の変哲もない作品。ただこういった話の中でも、何か無視できないものがあるような気がする。(by copia:01/05/28)
蒼穹とは青空、大空のこと。空を見上げて主人公は、様々な思いをする。視点が移り変わり、空から山そして・・・となるところは、心の動きも一緒についてきているかのようだ。そして最後は闇である。(by copia:01/05/28)
何か泥濘のようなどろどろとしただるい感じが全体を覆っている短編。失敗して書くのをやめてしまった主人公が、様々な思いを抱く。誰にでも経験があるようなやりきれない思い。そんな感覚が味わえる。(by copia:01/05/28)
ある私信。手紙の中に小説が描かれているというものだ。梶井自身が思ったこととか、感じたこと、梶井の様子が書かれている。当時の梶井の生活が分かるのと同時に人柄も分かる、そんな作品に仕上がっている。(by copia:01/05/28)
弱々しい冬の蝿と作者。見つめる者と見つめられる蝿。対峙する姿は何とも寂しい感じがする。冬の寒気に当てられていなくなった蝿に作者は様々な思いをめぐらせる。最後は運命みたいなものを感じたようである。(by copia:01/05/28)
病気になって死を間近に感じたとき、人はどう思うのであろうか。ほとんど絶望した主人公が、その感じた様子を伝える。冬の日というのが本当に死を感じさせるかのようで、悲しい作品である。読んでいて、胸に迫るものがある。(by copia:01/05/28)
梶井の闇論。闇について語る。風景の描写等はさすがによく見ているなと思う。これは檸檬等の小説にも通じるところである。しかし、この闇は死を暗示しているような気もするが、気のせいなのだろうか。(by copia:01/05/28)
これも一種の檸檬のような作品なのであろうか。ちょっとした短編である。近道を見つけた主人公は、その近道をよく歩くようになるが・・・。どこにでもあることのようでも作者の感性が現れる。侮れない作品だ。(by copia:01/05/28)
会いたくも無い友人に会ってしまった時の微妙な気持ち。主人公雄吉も青木と再会したらそんな気持ちになったのだろう。青木とはいかなる人物なのか。苦い思いが作品全体を包んでいる。(by copia:01/06/10)
戯曲。国定忠次が自分の供を選ぶのに、のに「入れ札」をさせる話。札の多い方から順に供ができるのであるが、さて誰が供をするのか。言葉の掛け合いに注目して読むと面白い。
M侯爵と写真師の関係を描く。写真師は侯爵に好かれていると思っているが、侯爵はいやがっているようだ。当時のカメラマンの行動が今とあまり変わらないのを知って興味深く思った。(by copia:01/06/10)
大島が出来てくる過程での主人公の思いは、現実感がある。利己的な人間の姿をそこに見てしまうが、しかしこれが本当なのだと思わせる。ある意味ヒューマニズムにあふれている作品だ。(by copia:01/06/10)
戯曲。屋上に登って一日中喜んでいる人とその家族の人間模様。父親が何とかしようとするのであるが・・。どこかの家でもこういった光景が繰り返されているのかもしれない。(by copia:01/06/10)
主人を殺して逃げた男と仇討ちを狙う主人の息子の話。男は出家して人のために尽くすのであるが、ある日その息子に見つかってしまう。恩讐の彼方にあったものとは。菊池寛の作品の中でも屈指の名作だ。(by copia:01/06/10)
合戦の最中、危急を救われた主人公が、ずっとそれを気にかけて恩を返したがる話。感謝ではなくプライドから恩を返そうとするところは、人間の性を見せつけられているような感じがした。(by copia:01/06/10)
赤穂浪士の討入りを吉良上野の立場から見た話。吉良上野は特に悪人という訳でも無く、どこにでもいる自分勝手な人間の姿として描かれている。吉良のいろいろ考えているところに注目。(by copia:01/06/10)
勲章を貰うきっかけになった出来事があったという話。戦争中に、従軍していた主人公と上官が、歌手の女を取り合うのであるが・・。主人公が勲章をもらえたのも納得する話だ。(by copia:01/06/10)
主人公が、久しぶりに訪ねた図書館で出世をした下足番に会う話。昔、その下足番に嫌な思いをさせられた主人公が、思い出を胸に図書館へ向かう。出世を喜ぶ姿に人間味を感じる。(by copia:01/06/10)
勝負事で、家にあった財産を使い果たした主人公の祖父が、どういう人であったのかを伝え聞く話。勝負事を止めてしまったその祖父が、残したエピソードが心に残る作品である。(by copia:01/06/10)
自分の我を押し通すゼラール中尉と主人公ガスコアン大尉の確執を描く。このゼラール中尉の性格は、何かどこかで見たことのあるような人を連想させるような感じがして面白い。(by copia:01/06/10)
アメリカに渡ろうと、黒船に乗り込んだ日本人二人は、その意思をかなえるかに見えたが、船医の一言で返されてしまう。船医の立場とすれば、当然の判断であったが、果たして正しいことだったのだろうか。
(by copia:01/06/10)
戯曲。普段何気ない、家庭の生活の中に長年姿を見せなかった父が突然帰って来る。家族の反応は様々なのだが、最後はやっぱり父を大事にしているのだと気づかされる。ありきたりだがいい話。(by copia:01/06/10)
戯曲。坂田藤十郎の危険な恋とその結末を描く。藤十郎と昔想っていた人妻の言葉の掛け合いが見ものである。これを読むと、最近こういう恋の場面も見なくなったなと思う。(by copia:01/06/10)
◆菊池寛『三浦右衛門の最後』 (PC, Palm) 0094
今川氏元に仕えていた三浦右衛門が必死に命乞いをしながら殺されていく話。どこにでもいるような人間の姿がそこにあるように見えた。作者が最後に書いた一文が心に残る作品だ。(by copia:01/06/10)
身投げ救助をしていた老婆が、自分が身投げしてしまうことで、今まで助けてきた人が、どうして礼に来ないのか気づかされる話。立場が違うとここまで物の見え方が違うのかと感じさせられた。(by copia:01/06/10)
菊池寛が、無名作家の日記を借りて、自分の体験や考え方を語っているような感じがする作品。しかし、周りの作家達に引き離されて行く無名作家の様子は菊池寛自身の姿なのだろうか。(by copia:01/06/10)
前野良沢と杉田玄白が、ターヘルアナトミアを、翻訳していく姿を描く。良沢と玄白は蘭学を志す点では同じであったが、二人の間には微妙な立場の違いがあった。いかにも学者らしい話。(by copia:01/06/10)
大宰お得意の独白形式で、ある一人の男の狂気に向かうまでの過程が切々と描かれる。内容の重さに反して、心地よい押韻で不思議と読み進んでしまう。独白を挟む、「はしがき」の部分が秀逸。最後の一文を、どう捉えるか。(by DE:01/08/15)
博学才穎の李徴は自尊心が高く、俗悪な大官に侍するを潔しとせず。詩作で身を立てようとするが、いつしか発狂して虎になってしまう。鬼気迫る虎が旧友に語る真実とは?旧友が彼の詩に感じた微妙に欠けたものとは?(by Pal Mac:01/08/31)
◆スティーブンソン、katokt訳『ジキルとハイド』 (PC, Palm) 0100
会う者に何とも言われぬ不快な感じを与えるハイド氏のことを、ジキル博士は不思議なことに保護してくれと、友人のアターソン弁護士に依頼する。人間が誰しも持っている、抑圧された「悪」を鋭く抉って見せる名作。(by Pal Mac:01/08/31)