プロローグ・やおいの法則
〜世界は全て受けと攻めでまわってる〜


 小生がはじめて【やおい本】を買ったのは、中3か高1ぐらいの頃だったかと思う。その頃からどうしてもオトコノコが好きで、特にアニメや漫画の二次元の世界に登場する清廉で健気な主人公の少年たちに、幾度も胸をときめかせていた。'80年代半ば過ぎの頃のことだ。

 雑誌ぱふの記事を見て、“えみくり”というやおいサークルのC翼本(キャプテン翼の同人誌のこと)を通販購入し、驚いた。別に既存キャラクターの少年同士が愛し合っていたからじゃない。そんなことは買う前から承知済みだ。
 脅威だったのは、
 翼:「岬くん、キミを幸せにしたい」
 若林:「貴様には無理じゃボケ!」

 ……と、勝手に配役した攻めキャラ同士の嫉妬深い罵倒合戦・ののしりあいを、うっとり悦に浸るかのように延々漫画と小説で描き続けていたことである。
 捏造した男同士のカップル2人の他、その恋路の邪魔となる三角関係的別のキャラを悪役に据え、散々泥をかけて屈辱の失恋の憂き目に遭わせ、誌上でみじめな程に踏みにじる。それがやおい少女の性的欲求を満たすファクターのひとつだとは、しみったれたショタコン男子高校生には理解できるはずもない。
 作品のファンがその作品の主人公に罵声を浴びさせて喜ぶという理不尽さに愕然とし、サークル宛てに抗議の手紙を送った記憶がある。勿論今ではやおいサークルに非難の手記を寄せるようなことはしないが、彼女らに対する軽蔑の気持ちは、今も変わりはない。

 このサイトでは、愛しているが嫌悪を抱き、焦がれながらも軽蔑やまぬまま20年間、筆者が読み続けた【やおい本】について、その要素と本質を徹底分析、未だ正確なボーダー引きや解析が進まぬ内面の原理にメスをいれ、その真の姿を、その同人ヲトメたちの嗜好回路を、白日の元に晒したいと思う。

 『やおいとは、ホモまんがのことです!』
 『少年愛まんがのことを、ヤマなしオチなしイミなしで「や・お・い」と呼びます!』
 ……そんな誤った解釈の喧伝が叫ばれ続ける昨今。

 ならば、冒頭で恋愛相関系図の受け攻め説明をウキウキと標榜、受けッコキャラを巡った嫉妬深い争奪戦を延々描いて喜んでいるような構成、男性作家による男性向けゲイ本で見たことはあるだろうか。やおいはホモとは別モノなのに。
 '80年代のぱふを読むと、かつてやおいは『夜追』と、漢字2文字で書かれていたことは、知っているだろうか?『やまなしおちなし〜』という語源の定説は決してウソではないが、創作同人誌黎明期のパイオニア的女性向け同人漫画のタイトルである「夜追」が、重要な役割を果たしている話は聞いたことはないだろうか。

 【オタク】に殊更注目が集まりだし、世間にとっての第3次オタクブームを迎えている反面、その真の本質や同人用語の誤った認識も広められつつある中、やおいの本当のアイデンティティーと本質を、もっと多くの人々に見定めてもらいたい。
 やおいという、日本の漫画界において殊更異様な文化を、虚実も皮膜もなく真に理解する手助けとして、このホームページをご利用頂きたい。