Bally/1992クリーチャー・フロム・ザ・ブラック・ラグーン | ||
原題 | Creature from the Black Lagoon | |
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製作年度 | 1992年 | |
ブランド名 | バリー | |
メーカー | バリーミッドウェイ・アミューズメント・ゲームズ/ミッドウェイ・マニュファクチュアリング・カンパニー | |
スタッフ | デザイン:ドクター・フラッシュ(ジョン・トルデオー)/美術:ケヴィン・オコンナー/ドットアニメ:スコット・スロミアーニー/メカニクス:アーニー・ピザーロ/音楽:ポール・ヒッチ/ソフトウェア:ジェフ・ジョンソン/バックグラス画:ケヴィン・オコンナー | |
標準リプレイ点数 | 3億5千万点 | |
備考 | 製造台数:7,841台/ようつべに動画あるよ!⇒GO! |
▲激しくとどろき、うねり、逆巻くランプレーンが圧倒的なプレイフィールド上部。Jトルデオにとってゴットリーブ時代には出来なかったであろう贅沢なあつらえだ | ▲バックグラスのアートはクラシックなSF映画の世界観に統一。一方プレイフィールドではドライブinシアターで巻き起こる喜怒哀楽が随所に描かれている |
▲Jトルデオはフィールド下部によく窓を設けてアトラクションをしかけるのだが、今回は半漁人ホログラフが浮かび上がるという演出 | ▲完成必須のトップレーン。レーンチェンジOKなのでそれ程難しくはない。それよりトップL&バンパーでボールがしばらく滞留してくれるのでマルチ時に放り込むと大分助かる |
▲3本のランプレーンが複雑に入り組む左上の上空スペース。更に奥にはもう1本ワイヤーランプが走っている | ▲実は一番完成が難しいのがメガメニューターゲット。代用リットや一発完成の憂慮が無く、直接ボールヒットがマスト |
▲バックボックス。なるほどボトムのディスプレイがドライブシアターのスクリーンになぞらえてある | ▲CREATUREランプからワイヤーが引かれるラインをボールヴューで |
●1992年と言えば、「アダムスファミリー」や「フック」のメガヒットにより、ピンボール市場に映画ライセンスモデルが一挙に溢れかえった時節。 その年の末にバリーネームで発表されたWMS台「クリーチャー・フロム・ザ・ブラック・ラグーン」 は、一見ありきたりな映画コピライト台のようで、内実は大変に捻りの効いた怪作としてプレイヤーを唸らせた一台。 1954年公開のユニバーサル映画「大アマゾンの半漁人」が上映されているドライブinシアターを舞台に、当時のカルチャー、ヒットソングの数々、観客たちの悲喜こもごもを、笑いと郷愁とセンチメンタルいっぱいに描き出す、入れ子の洒落が効いた極上のコンセプト。 '90年代ピンボールの異色作でありながら、その時代のスタンダード台としても名を馳せ続けるという、独特の立ち位置に今もそびえる不思議なモデルです。 例えば、デートカップルのKISS有り、ホットドッグやハンバーガー等いかにもアメリカらしいスナックメニューの売店有り、血の気の多い運転手の怒号劇あり、はたまた覗き魔退治や半漁人のホログラフ照射も繰り広げた挙句のクライマックスは、映画本編の半漁人追跡と美女の救出劇をマルチボールとジャックポットに引っ掛けるという心憎さ。 そのオリジナリティと機知に富むフィーチャーの采配は、映画ライセンスネタに食傷していたマニアプレイヤーをも大いに感心させました。 因みに'92年当時、「大アマゾンの半漁人」はSFマニア以外では殆ど忘れ去られていた作品であり、本機種の創案や主体はデザインクルーたちのオリジナル。 このピンボールが何かのタイアップ製品としてマネージメントからのお仕着せで作られていたような証言は見当たりません。 しかし2015年に入り、同ユニバーサルが同映画を本腰でリメイクする企画を推し進めているそうで、もしかして近いうちに半漁人映画のブームが到来、再びこのマシンが脚光を浴びる時代が来るかも知れませんよ。 【スキルショット】プランジャースキルショット。力加減プランジでトップレーン1発完成(トップレーン点滅箇所)、またはフルプランジタイミングショットでKISS一発完成(ちゃかちゃか動くハート点灯数のタイムチェンジ)の二通り。 エキストラボール獲得にも有利となるKISS完成を狙う方がおすすめ。 【マルチボール/ボールロック】2ボールマルチ。左右ホールにかかる。“Start-Movie”のフラッシュが合図。F−I−L−M全レター点け揃えると点灯。 尚[F]はカップルのKISS(左ホール4回シュート)、[I]はスナックバーの開店(緑色4枚スタンダップ完成)、[L]は入場チケット購入(トップレーン完成)、[M]は映写機セッティング(右ホールシュート)で、それぞれ点灯。 【ジャックポット】中央ホールにかかる。額は二千万点から(常にバンパーヒットで上昇)。 マルチ中に半漁人にさらわれたヒロインをセンターホールで救出するとJP点灯。尚ヒロイン救出前に半漁人を確保しておかねばならないが、3つのホールのうちどこに隠れているかは、毎回ランダムという趣向。 【スーパージャックポット】同じく中央ホールにかかる。ヴァリューはジャックポットの倍額。 マルチ中JP獲得後、ディスプレイに残りの必要回数が表示されるので、これをバンパーヒットでカウントダウンさせ、0にするとスーパーJP点灯。 【エキストラボール】左上リエントリーレーンにかかる。 左ホールへのシュート1回ごとにK-I-S-Sレターが進む。キッス完成2回目でEx.点灯。尚6回目、10回目、14回目……のエヴリ回数で繰り返し再点灯可。 キッスをせがんでいちゃつくカップルのドットアニメデモが微笑ましい。 【売店スナック/ミステリーボーナス】中央ホールにかかるランダム役。2バンク×2組の4枚の緑色スタンダップの完成で点灯。 ポップコーン100万点、ホットドッグ200万点、プレッツェル300万点、サイダー400万点、ハンバーガー500万点。その他時間制ミニゲームスタートやEx.リット、Sp.リットも登場。 尚、ボースボタン操作で売店のお兄さんを扼殺にかかるというファニーな隠しフィーチャーも。 【トラックをどかせ!/Move,Your,Car!】800万点からのカウントダウンボーナス。リエントリレーンにかかる。同レーンへのシュート初回5回目でスタート。 ディスプレイのドットアニメではスクリーンを遮る邪魔な大型トラックに憤激した癇癪ドライバーがテロ襲撃を展開。同じくリエントリレーンへのシュート成功でカウントダウンボーナス獲得。 1回目ダイナマイト爆破、続けて2回目ミサイル弾(2X)、3回目火炎放射器(3X)、4回目戦闘機爆弾投下(4X)。時間制限が厳しく、4Xまでの到達は難易度高し。 尚トラックはびくともせず、劇場が壊滅してゆく。 【右ホール/ミニゲーム】時間制ミニゲームがあれこれ始まるVUKホール。 アンリミテッドミリオンやミリオンバンパーが始まる[プレイグラウンド]やメニューターゲットの時間制ボーナス点[メガメニューボーナス]、左右ランプレーンが高額になる[ビッグミリオンズ]などなど。狙い目に困った時に便利。 【カウントアップ】右ランプレーンにかかるカウントヴァリューもの。 シュートカウント数4で[スナックバーカウントダウンボーナス]開始、カウント数8で覗き魔を撃退する[ビデオモード]点灯、カウント数12でビッグポイント系ヴァリューが時間制で全部有効となる[スーパースコア]が点灯。 【ワールプールランプ/スロープ】円形ランプはスーパースコアモード中1回転毎に500万点となる。またはマルチ中は1回転Adv.のC-R-E-A-T-U-R-Eレター完成でフィールド倍率上昇(マックス4倍)。 デカい収穫のある円形ランプだが、通常ここへ入れる橋渡しのスロープは終始あがったままで、上述の役を完成させないと稼働しないので悪しからず。 このマシンはさほど大ヒットしたマシンという訳ではなく、セールスとしても製造ユニット数は八千台弱にとどまり、当時1万台超えも珍しくなかったピンボール市場の中では決して突出した存在ではありませんでした。 現に米ReplayMagazine誌ピンボールインカムランキングでも、不動のアダムス連続トップ1君臨の時期とはいえ同機種リリース月'93年3月号ですらトップ1を取り損ね、次月ではデコの不良台「ロッキー&ブルウィンクル」にも抜かされる体たらく。結局一度たりとも1位に輝いたことは無く、'94年4月号を最後に集計ランク外へ…… ……と思ったら、何とその後も返り咲きとランク外を幾度も繰り返し、最終的にはPIN不作期の'97年11月号までの4年半以上もの長期間にわたって総合23回ランクインを記録するという、停滞する緩〜い熱帯低気圧のようなパワーでロングセラー人気を博し続けました。 フィッシュテールズやホワイトウォーターにドラキュラ、インディジョーンズ、トワイライトゾーンにもこんな威力は無く、その生ぬるい空気感のゲーム性そのまんまの存在感は、ロケーションで永らくプレイヤーたちを魅了していたようです。 フィールドデザインやゲーム内容も、そんな評価や人気のとおり、生温かく緩んで捻じれた肌合いで打ち手を翻弄してくれます。 普通のデザイナーなら、スピード感のあるプレイフィールドにノリノリなロックビートのBGMを重ね、上げ上げに盛り上げることに腐心するはずなんです。 しかし本機種ではあえてスカッとしない難解なボールフローをこしらえた上、意図的にのどかな曲調でカヴァーした懐メロソングを静かに奏でさせ、'50年代のドライブinシアターで上映するクラシックSF映画という奇妙なテーマに、またとない独特のムードを醸させることに成功しています。 3箇所のホールとバンパーに重点を置くという屈折したマルチボールのルール。整合感無くバラバラに点綴された時間制ミニゲーム。突如炸裂する過激なブラックユーモア感の溢れるドットアニメの寸劇。 これらアンバランス同士で構成されるバランス性の妙味に、ダークな笑いと温もりのある郷愁が味わい深くデコレート。オマケに故障が少ないという優等さも、ロケーションで更に可愛がられる要因に。 「クリーチャー・フロム・ザ・ブラック・ラグーン」は今も尚プレイヤーの脳裏に深く刻まれる、印象深い一機種となりました。 デザイナーのジョン・トルデオーは、自身が手掛けたマシンの中で、本機種こそ最たるフェイヴァリット台であり、ゴットリーブ時代の「ハリウッド・ヒート('86)」と並んでベストを尽くせた仕事であったことを懐旧しています。 なんでも、あれもやっちまえ・これも入れちまえ!……と、ソフトウェア担当のジェフ・ジョンソンと共にアイディアを出し合って構築してゆくのが、もう滅茶苦茶に楽しかったそうで。 例のカウントダウンボーナスやミニゲーム等、各パートが出来上がっては2人でゲラゲラ大笑いしてはエスカレートさせてゆく制作状況の様が目に浮かぶようですね。 因みに、その“Move,Yore,Car!!”と激昂する例の災厄男[Mr.Fatality]のモデルこそ、実はジェフ・ジョンソンその人。 彼はそれ以降、Mad-Dogのデイヴ・クリステンセン、Doctor-Flashのトルデオーと並ぶ、ピンボール業界の名物キャラとして、その渾名を轟かすこととなったとかならなかったとか!? 一方美術班のケヴィン・オコンナーによる黒と緑を基調としたアートワークの鮮やかさもお見事で、偉容堂々たる半漁人に、擬人化スナックメニューに、ばくばく走る口のオバケ、等々。 グロテスクながら愛嬌たっぷりの画技を見せた奇才ぶりも、本機種の完成度へ多分に貢献。 この時の半漁人アートは後にウィリアムスの「モンスター・バッシュ('98)」においてセルフオマージュ。オコンナー自身の筆で再度描出されています。 余談ながら、バックグラス右下に描かれている映画の主人公ぽい青年のモデルは、実は主演俳優ではなく、トルデオのご子息。 映画のコピライトはユニバーサル映画社から正式に購入出来ていたものの、俳優の肖像権までは押さえていなかったため、どう配剤すべきか思案をめぐらせた結果、トルデオは当時まだティーネイジャーだった息子の写真をオコンナーに渡します。 ちょうど映画の主人公ぐらいの年齢を想定してトルデオjr.の顔立ちを整えて描いた結果、今や大人になった子息はこの肖像と瓜二つに成長しているそうで、そんな仕上がりには双方ともご満悦のもよう。 さてジョン・トルデオーのその後の動向も追ってみますと、「ジャッジ・ドレッド('93)」「コンゴ('96)」など、仕上がりに到底納得しかねる仕事ぶりを咎められた彼は、'96年にWMSを解雇される憂き目に。 その後2002年にニューヨークシティのICE社が新たにピンボール部門を立ち上げることとなり、そのプロジェクトのデザインチーフとしてトルデオが招聘されます。 ところがICEの人材や制作環境、スキル、ノウハウが致命的に不足していることを悟ったトルデオは、シカゴに渡ってWMSインダストリーズを訪問。 同社が未だ保有していた旧ウィリアムスピンボールのエレクトロニクスシステムを購入しようとしましたが、ICEマネージメント側がこれを拒絶。 プロジェクトは暗礁に乗り上げ、ピンボール新部門設立の展望は破談へと向かいました。 トルデオはその後もコインオペアーケード業界で食いつなぎ続け、リデンプション筐体や幼児向け乗り物など、全く性に合わない仕事をこなしながらも、個人規模で細々とピンボール台のプロトタイプ・プレイフィールドを、辛抱強くカッティングしていました。 その後活動拠点をイギリスに移し、同国のピンボールミュージアムやハイウェイピンボール社に貢献した後、2013年、ついに米スターンピンボール社との専属スタッフ契約が成立。 彼のスターン移籍後第1作目である「マスタング('14)」を大阪のロケーションでプレイできる僥倖に恵まれましたが、閃光が稲光るようなスピード感に、ごりごりにマニアックな奥行を見せる難解性。 WMS時代ともゴットリーブ時代とも全く異なる斬新なゲーム内容は誠に衝撃的。 いよいよトルデオのピンボールマシンが還ってきました。 |
▲センターホール。JPもミステリもハリアップも絡んだ、非常に重要なポイント。どんな球威の時でも冷徹にスパッと決めたいね | ▲'93年当時アナログカメラでなんとか半漁人の姿をカメラに収めようとしたが写りが悪くて全く使えなかった | ▲カウントアアップヴァリューが常にかかる右ランプレーン。通しやすいのが一番の取り柄? |
▲こちらも重要なKISSレーン/KISSホール。延々狙って地道にEx.確保 | ▲CREATURE円形ランプの活躍不足が惜しい。ゲッタのスーパーチャージャみたいにシングルBでも稼働させれば良かったのに | ▲右ホールたもとに連なるミニヴァリュー項目。中には制限時間短すぎて全然使えないナゾなフィーチャーも |
▲左リターン付近のアップ。アウトレの[EXIT]はスペシャルのこと | ▲センターホール付近をボールヴューでもう1枚 | ▲右リターンに乗っかる円形ランプレーンのアップ。実は揺らしテクでボールをブンブン加速できる |