各名門ブランド ピンボール・リスト

Bally/1991

ザ・パーティー・ゾーン

原題The Party Zone & Captain B.Zarr
製作年度1991年
ブランド名バリー
メーカーバリーミッドウェイ・アミューズメント・ゲームズ/ミッドウェイ・マニュファクチュアリング・カンパニー
スタッフデザイン:デニス・ノードマン/美術:グレッグ・フレーレス/ドットアニメ:スコット・スロミアーニー/メカニクス:ウィン・シュリング、ゾフィア・ビル/音楽:ダン・フォーデン/ソフトウェア:ジム・ストロムポリス/バックグラス画:グレッグ・フレーレス/その他:ジム・ジェンタイル、マイク・ブーン、ジェリー・ピンスラー、ジョン・キーニー
標準リプレイ点数八百万点
備考製造台数:不明/ようつべに動画あるよ!⇒GO!
▲荒ぶるように渦巻くランプレーンの影で見えにくくなっているトップレーン&バンパー地帯のアップ。 ▲バックグラスのタイトルロゴアップ。細かな描きこみが壮絶に面白い
▲デコ版「スタートレック」とのツーショット。AGスクエア栄店'92年頃の撮影。因みにこのデコのスタトレは酷いクソゲーだった ▲フィールド下部。この頃はまだフリッパーのパーツもバンパーもバリー仕様
▲バックボックス。絵の中にドットディスプレイを組み込む特殊仕様。こんなバリー筐体はギリガン、パーティー、ブラックローズの3機種だけ ▲ファンハウスに触発されたか、中央に主人公のトーキングヘッドを搭載。首を回してボールの動向を追いかける演出も
▲フィールド上部。込み入っているようで、どのレーンもとても通し易く設計されていて非常に打ち心地がよろしい ▲因みに今回'92年頃に撮った写真と'96年頃に撮った写真が混在。同じ店の同じ台。こちらはラバーが張り替られえ、リプレイも1,600万点に上げられているのが分かる

― COMMENTS ―
デニス・ノードマングレッグ・フレーレスなる、バリー出身の名デザイナー二人のコンビが繰り出した“シルヴァーボールコミックス”シリーズの総決算。

 2人はこれまでも、フレーレスが原案コミック及びアートワークを担当し、ノードマンがプレイフィールド及びゲームデザインを手がけた「パーティー・アニマル('87)」「エルヴァイラ('89)」「ドクター・デュード('90)」という秀作トリロジーをコンビで発表済み。
 後付けながら、これらフレーレスのオリジナルの描き下ろしコミックを元にしたノードマン作品は、シルヴァーボールコミックスシリーズともパーティシリーズとも呼ばれるようになります。

 そしてその連作の極め付けが今作「パーティー・ゾーン」!
 新キャラの案内人キャプテンBザールなるカリスマ人物が導く、'70年代ピンボール風サイケデリックアート感覚な異次元パーティー空間にて、アニモーもモンスターもデュード先生も入り混じる、究極的坩堝の大宴会を繰り広げる!……という、超・躁狂状態ハイテンションピンボールを巷に送り届けました。
 プレイスタートから圧倒的な祝祭感と疾走感でキレてキレて切れまくる、底抜けにアップテンポなゲーム性は素晴らしいの一言。シリーズファイナル作にふさわしい掉尾を飾った至宝のバリーピンボールです。



【スキルショット/ドアプライズ】10万点×成功回数のプランジャースキルショット有り。トップレーンの右隣に窪んで隠れる位置にあるドアプライズレーンを狙い、微妙な打ち加減で通す。但しスコアの割に難易度高め。失敗して逆走するとセンターに落ちてくる危険性もあり、ボールセーヴも無いのでお勧めしない。

【左ランプレーン/ロケット】古風な風貌のロケットミニチュアが跨る左ランプレーンでは、常にオゾン層破壊ボーナスとして10万点×成功回数が得られる。規定シュート数で同じ個所にエキストラボールも点灯。“あと○回のシュートでEx.点くよ”と毎度表示されるので分かりやすい。
 ランプの奥で一旦ボールをキックアウトホールに収め、VUK射出で宙を渦巻く極細ランプレーンのボールフローが爽快。スプレー缶噴射のドットアニメデモにも失笑。

【ミステリーボーナス/ロボティックコミック】スーパーソニックロボティックコミックと呼ばれるおじさんロボットがくれるミステリーボーナス右上トップホールにかかる。“あぐあぐあぐ!”とロボットヘッドがフィールド奥突き当りで口パクする演出つき。
 内容はランダムボーナススコア、ボーナスマルチプライア、ラッフアタック(フレンジー)、サプライズパーティ(インスタントマルチボール)。
 点け方はホールたもとすぐ右脇の3バンクターゲット完成。ヒットごとに“ヒャーハハハハ!”というけたたましい笑い声が痛快。

【ダンスコンテスト/トップレーン&バンパー】ダンスミュージックがかかるとその間はバンパーヒット10万点。スタートは左上レーンにかかる。トップレーン完成で何度でも再点灯。
 稼働時左奥の猿顔ミニチュア人形が激しくシェイクする演出もあり。

【コンボショット/イート・ドリンク・メリーB】100万、200万、300万点のコンボショット。左ランプ、右上トップホール、センターホールの順にかかる。
 点け方は、中部左端5バンクターゲット完成。ミリオン獲得時は“喰って100万、飲んで200万、メリーさんとお友達?……ギャー!!300万”という畳み掛けるようなドットアニメのギャグ演出が非常に楽しい。

【スペシャル/ウェイアウトオブコントロール】中部右端ロールアンダーレーンスペシャルがかかる。点け方は、レーンすぐ外側にある4バンクターゲットの4回目の完成。但し1ボールデッドでその都度完成回数リセット。
 尚1回目完成では500万が得られ、2回目完成ではミリオンバンパー、3回目は10秒間プレイフィールド10X。どれもヴァリューはデカい。
 獲得時“Wow-Wa,Wow-Wa,WowWowWow,Wahhhh!!”と底抜けに絶叫する「制御不能野郎」のキショさが最高。
  
【マルチボール/ハッピィナワー】2ボールマルチ。UFO型建物のミニチュアが跨る右奥レーンに3回通すとボールロック。アナザーボールを打ち出せば即2マルチスタート。
 ボールロックするまで段階ごとに歴代バリーキャラ[アニマル][モンスター][デュード]たちが“How You Doing? Hey,Let's Party!”などとダイアローグを展開。パーティメンバーが気立て良く揃ってゆくデモが愛苦しい!

【ゲット・ザ・ロケット】ジャックポットに該当するマルチ中のビッグポイント100万点〜700万点ものボーナスが左ランプにかかりっぱなし。この値は左ランプたもとのメーター[ロックオブメーター]でライト表示されており、左レーンまたは右上トップホールで1ミリオンずつ上昇する。
 ボール射出と同時にワンミリオンずつドカドカカウントする爆音SEが快感すぎてクセになりそう。

【ビッグバン】パーティーゾーン最大のビッグポイント。2マルチ中にロックオブメーターを満タン状態にすると左ランプがボールロック待ちになるので、2個ともロックを完了させると、積み立て式で最大99,999,999点まで上がるビッグバンボーナスを獲得。
 大口開けてのどチンコをブラつかせるビッグバン発動時キャプテンBザール絶叫演出も気概十二分。

【プレイフィールドX】マルチボール終了後はプレイフィールド倍率が全て2倍。ボールデッドまで有効。但しEx.やSp.の獲得数は変わらない。
 大胆過ぎる気もするが、マルチ終了後の鬱を解消、シングルボールに戻った後もあれこれ狙いたくなる豪放フィーチャー。

【リクエストタイム】中央ホールにかかるBGMセレクトフィーチャー。シングルボール時のBGMを、用意された4曲候補から左右Fボタン操作で選ぶことが出来る。ザ・フーが元歌の「ピンボールウィザード」が一番人気。尚消灯時は両脇スタンダップ完成で点灯。
 2回目以降のマルチボールはココを経ないと進まないようになっていて、実は重要。しかし入れにくい!

【エンドゾーンボーナス】左右アウトレーンにかかるなけなしの点数。左ランプ右脇のスタンダップへのヒットで点灯。
 筋肉デブなラガーマンがのこのこ出てきて腰を振るドットアニメの演出がステキなので、アウトレーン落下の無念の慰めになること請け合い。



 とにかくテンポと勢いが凄い。スゴイスゴイ。スタートボタンを押した瞬間からサウンド、ボールアクション、ストロボフラッシュ、ドットアート、のべつ幕なし矢継ぎ早。
 VUK仕掛けのランプレーンデザインが素晴らしく、キッキングと同時にズドン!と爆音轟いてボールが宙を滑空しながらすっ飛んでくるのに合わせてワーッと煌めくストロボ&イルミネーション、ゴーッと唸る宇宙船飛行音、そしてストンと絶妙タイミングで還ってくるボールリターン。
 よくこんな極細でうねりまくるプラスチックランプレーンを製品化できたもの。千回やってもボール脱落が全くないし初期破損もない!

 例えば他社で言うと「キューボールウィザード」「スーパーマリオ」なんて、無駄にデカいばかりでスピード感の無いランプレーンにうんざりする上、ドットマトリクス表示もBGMもイルミネーションもうまく連動せず、ミニゲームひとつ始めるのにものろのろ〜〜グズグズ〜〜と処理しているのに対し、この快活でスピード感溢れる歯切れの良いゲーム性は比べるべくも無し。

 さらにピンボール業界の新兵器ドットマトリクスディスプレイなる新機軸も八面六臂の大車輪。ビザール船長のカリスマMC、ラガーマンの腰振り踊り、底抜けサイケ野郎の絶叫、曲者パーティーメンバーの多士済々……等々。フレーレスデザインの電撃コミックアートがドットディスプレイに容赦なく炸裂!

 これらに加えて「ブラックナイト2000」「ローラーゲームズ」などでいい仕事をしてきたダン・フォーデンの先鋭なサウンドも強烈。プレイヤーの脳天に突き刺さるようなキンキン・サイケデリック・ミュージックと歯切れの良い爆音が愉快痛快。
 ビッグポイントカウント時にはドッカンドッカン、ヒャッハー!と熱狂と喧噪の連続。プレイヤーは脳みそが沸騰しそう。

 もちろん基盤的プレイフィールドデザインもフィーチャー采配もうまく出来ており、圧倒的にデカい点数配分を持たせた2ボールマルチ[ハッピィナワー]に重心を置き、それに他の周辺フィーチャー[コンボミリオン][エキストラボール][ロボティックコミック]等を連結的に絡めて戦略させる配置。
 唯一惜しまれるのが、[リクエストタイム]のセンターホールの作りのいびつさと、スキルショットのヴァリューの乏しさに、ゲーム性の部分的歪みが感じられたところ。
 また、初心者がやってもミリオンがドカドカ入るようなスコア配分なのに、いくら易しくしたいからって標準リプレイ800万設定はさすがに甘過ぎたように思えます。
 それさえ無ければマーズもアダムスも目じゃないような、バリー傑出のマスターピースと断言してイイです。快哉!

 大学時代だった当時、個人的にもこのマシンを筆頭に当時の台には非常に深い思い入れがあります。
 エルヴァイラ、ジョーカーズ、チェックポイント、フック、ブラックローズ、ハリケーン、フィッシュテールズ、ホワイトウォーター、ドラキュラ……等々のマシンが街中のロケーションにわんさか溢れてた時代。
 各店舗をしたり顔で闊歩するように回ってローテーション的に打ち込む日々は、まるで駅前ゲーセンと言うテーマパークで毎日絶叫マシンに乗り込んでワーワーキャーキャー、怒涛の興奮に奇声をあげる青春期のティーンのよう。
 しかも毎回たった100円でリプレイ延々繰り返し、2時間も3時間も燃焼する熱狂の日常。
 '90年代いっぱいで瓦解した“長時間プレイ”という、至極少数マニアだけの厚かましい既得権を我が物顔で謳歌していました。

 今のアーケードのロケーションで考えると、そんな環境絶対有り得ないし、二度と戻ることはないでしょう。

 そりゃピンボールが滅ぶ訳です。

▲こちらが3グループ揃えるパーティーメンバー。ノードマン歴代バリーキャラ豪華キャスト! ▲今回の新主人公キャプテンBザール。ファッションは古風なミリタリーウェアのようなバイク乗りのような'70年代ロック歌手のような ▲地味のようで強烈に面白かったウェイアウトオブコントロール。ターゲット完成が面倒だがヴァリューが凄まじくデカい
▲左リターン近辺。渦巻くランプレーンの仕上がりは素晴らしいが7,8年で固定箇所の亀裂が進み、晩年の耐久性に不安を感じた ▲プレイフィールド全景。なんか昔清水屋四軒家店ゲームコーナーでやってたバリーの「エキスプレスウェイ('71)」思い出しちゃった ▲右リターン近辺。アウトレーンも丁度良い落ちやすさだった
▲これがダンスコンテストの踊る人形。シェイクしてる間はバンパーヒット10万点。でもバンパーが元気ない台だと盛り上がらないね ▲バックグラスに描かれたDr.デュード御一行。後ろの連中もグルーヴィな奴らばかり ▲フィールド右奥一帯。しゃべるロボおじさん、コズミックコッテージ、そしてVUKトップホール。

(2013年9月2日)