Data East/1990バック・トゥ・ザ・フューチャー | ||
原題 | Back to the Future | |
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製作年度 | 1990年 | |
ブランド名 | データイースト | |
メーカー | データイースト・ピンボール・インコーポレイテッド | |
スタッフ | デザイン:エド・セブラ、ジョー・カミンコウ/美術:ポール・ファリス/音楽:ブライアン・シュミット/ソフトウェア:リーマン・マーシャント | |
標準リプレイ点数 | 1千万点 | |
備考 | 製造台数:3,000台/ようつべに動画あるよ!⇒GO! |
▲プレイフィールド上部。左右ランプレーンが空間を生かすどころかフィールドを狭隘にしている | ▲バックグラス。登場キャラは映画3部作を一挙まとめたような顔ぶれ。但し肝心の主役マーティーがいない |
▲プレイフィールド下部。丸ライト(リターン対角ランプショット)と四角ライト(スタンダップでBマルチプライア)の点灯を進めるとEX.やSP.のチャンス | ▲左右ランプシュートによりDELOREANレターが進捗。コンプリートで時間制ミリオン取り放題 |
▲バンパー地帯。これといって何の役割も無くてちっとも盛り上がらない | ▲バックボックス下部。当時この位置にフレームライト表示でヴァリューを示して訴求する演出が流行っており、本機種でも得られるJP.点数を掲示してある |
●美術班ポール・ファリスの後顧によると、ゲイリー・スターンはいつも映画会社に電話で売り込みをしていて、ある時ひょいとユニバーサルから突然「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズのピンボール製品化の許諾が取れてしまった。 ファリスは当時別の台のアートワークに取り掛かっていたのに、それをお蔵入りにしてまで急遽BTFの制作に入ることに。 しかもファリスに与えられた時間は1ヶ月。オマケにまだ俳優たちの肖像権問題もクリアしていなかったので、本当に拙速突貫工事の大急ぎだったそうな。 前作「ザ・ファントム・オブ・ジ・オペラ」の発表が'90年4月、同じ制作クルーによるバックトゥ発表が同年6月。そのたった2ヶ月の間にもう1作ボツがあったというから、その修羅場は只ならぬ壮絶さがあったことが伺えるというもの。 さらに問題は起き、ドク役クリストファー・ロイドはOKしてくれたのに、肝心の主役マイケル・J・フォックスが自分の顔が台に描かれるのを拒否してしまった。 仕方が無いのでファリスはマイケルの代役として自分の息子をマーティ役として台に描いた。マイケル程色男ではないが背丈はずっと高いだろ、とうそぶいてやったそうだが、未だにマイケルJがなぜピンボール媒体を嫌ったのか理由は不明。 かくしてデータイーストピンボールは、イキのいい旬の題材が手に入った途端、着実に進んでいたはずの地味な企画を流し、スタッフに鞭打ち次回納期までの残り1ヶ月で「バックトゥ〜」のピンボールを完成にこじつけ、粗っぽい粗悪台にもかかわらず製造ユニット三千台を、コピライトの知名でキレイに売りさばいてしまった! ……さすがゲイリースターン、相変わらずすばしこいオヤジだ。 そんなこともあり、本機種はピンボールとしてプレイフィールドもゲーム性も練られておらず、出来は良くないです。 せっかく「バンザイラン」の音楽担当ブライアン・シュミットをウィリアムスから引き抜いたのに、彼もこの状況ではあまりいい仕事が出来なかったようで、サウンドもチープでキレが有りませんでした。 駆け足で主柱的フィーチャーを説明しますと、ボールロックは中央ドロップターゲット3枚を倒してVUKホールに放り込めばOK。 ワイヤーレーン内のストッパーに3個ロックすればマルチボール開始。 マルチ中は再びドロップTを倒せば左右ランプレーンでそれぞれジャックポット。 ヴァリューは1回目50万、2回目75万、3回目100万、左右全完成でさらに100万追加。総計550万。 標準リプレイは1千万点ですが、コンプリートが難しいので思ったより稼げないです。尚、マルチ中はVUKに繰り返し放り込んで、[BACK][IN][TIME]のライトを完成させるとエキストラの賞与もあり。 [クロックタワー]と呼ばれるキックアウトホールには「ワールウィンド」を意識したような7項目のミニヴァリューあり。 内容はボーナス点、ボーナスホールド、ライトEX.、ライトミリオンなど。コンプリート賞は50万点(少な!)。 [デロリアンミリオン]は稼げるフィーチャーで、左右ランプレーンショットで進捗するD,E,L,O,R,E,A,Nレター完成で、時間制左右ランプ100万点取り放題。 あと目立つモノはフリッパースキルショット(シューターから打ち出して即左ランプシュートで獲得)、スピナーとバンパーのカジノボーナスぐらい。その他ボールロック数がコンティニュー保留される[バイインプレイ]なんてのもあり。 で、この台の最たる問題はプレイフィールドデザインの拙速な粗雑さ。ボールロックVUK、バンパー地帯、クロックタワーホール。全部ボールフローに繋がりの無い一方通行の行き止まりになってます。 特に左右ランプレーンの裏側とその近辺のデッドスペースは暑苦しく、一見プレイフィールドは広く見えるのに、いざ打ってみると圧迫感を感じるのはこのせい。 ランプ入り口勾配部分の周辺は本来トップレーンやトップホールへ通じるレーンを丁寧に開通させねばならないはず。 例えば「サーフィンサファリ」や「ドクターデュート」みたいにシューターから思いっきりプランジしたボールはバンパーに行かなきゃならないでしょ普通。しかも打ち加減スキルでボールロックとかミニヴァリューがもらえる構造にして。 ところがこのBTFは制作期間の短さゆえ、巨大ランプで周辺スペースを全て埋め尽くす手抜き工事で誤魔化した事情がミエミエなんです。 おかげでフィールド各ポイントのジョイント性が皆無。各フィーチャー編成もその欠点を補えておらず、これではすぐに戦略性が行き詰まってプレイヤーがすぐ飽きるのも無理ないというもの。 とりわけ、他のフィーチャーと全く噛み合いが無くて何の用事もないバンパーとスピナーが無用の長物と化してます。 わざわざ3ボール終了後にもったいぶってスピナーの回転数をカウントする演出のつまらなさと言ったら。「ハリウッドヒート」のヒートボーナスよりつまんない! 全然稼げない上に、キャッチアップやEX.が出るかも!?的なミステリーのフリして取れるものが最初から分かりきってるスキルショットの魅力のなさも酷い。 せめてボールシュート回数×10万にするだけでも、ボールロックを重ねるのが楽しくなってくるはずなのに。 かように、ビッグタイトル映画コピライト許諾により短期間でマシンを粗製濫造する、データイースト社/ゲイリースターンの指針が色濃く反映された1作。 しかしBTFはまだマシな方で、ロッキーブルウィンクルやジュラシックあたりから更に初期故障頻発、耐久性悪化、フリッパーが弱くて入荷初日からまともに稼動しないという凄まじい粗悪品も登場。データイースト・ピンボールはオペレーターとプレイヤーの双方から信頼性を失ってゆきます。 制作陣が入れ替わる前の、ロボコップやマンデーナイト辺りまでは、あんなに完成度高かったのにね。 さらに余談ですが、日本国内では登録商標上の問題で「バック・ツー・ザ・フューチャー・ザ・ピンボール」という、一部単語が微妙に異なる品名によるリリースでした。 また当時ゲーメスト誌が、見返りの期待できないタイトーやセガ販売のピンボールの記事を無償で掲載、基本テクニックを教えながらトムキャット、ファイヤー、サイクロン、アースシェイカー、ジョーカーズをプレイするよう読者に熱を込めて薦めていました。 時にはバリーの「ダンジョンズ&ドラゴンズ」やゴットリーブの「TXセクター」等の駄作には辛辣な評価も厭わぬ渾身の記事を執筆。 かなり頑張っていたはずのそんなゲーメストが、データイーストがスポンサーに付いた途端、同社の幇間に豹変。他社のリリースは一切無視してデコのどんな粗悪台もベタ褒めで特集するようになりました。 特にバックトゥー発売の時期にはピンボールをそこそこ打てた担当者が入院中とかで、PINについてほとんど分からない大学生が代筆して同機種を3ヶ月にも渡ってグダグダな特集を連綿。BTFなんてビギナー台と呼ぶにも程遠い粗悪品なのに。 その提灯記事内容の中身が薄いこと薄いこと。目を覆うほど醜悪だったことを、今でも克明に覚えています。 |
▲VUKロックホール。ワイヤーレーン途中に溜めるボールロックの手順と演出に捻りがないので、ロックそのものが退屈 | ▲プレイフィールド全景。撮った店ではドロップTが1枚だけシンプソンズのボウリングTになってる。ボールの直撃でよく割れたのだろう | ▲せっかくのミニゲ[クロックタワー]も全く面白くない!クイックマルチやビッグゲームがあればいいのに、工夫する時間が無かったっぽい |
▲左リターン付近。リターンせずワイヤーレーンからポイと放るボールフローは何がしたいのやら | ▲左ランプのヒルヴァレー。特にフリッパースキルショットが大変つまらない | ▲右ランプ入り口幅を大きくしてプランジャーレーン兼用にした造りは珍しいが、実のところ細かなレーン構成を省く只の手抜き |