各名門ブランド ピンボール・リスト

Stern Pinball/2016

バットマン66 スーパーリミテッド

原題Batman(66 Super Limited Edition)
製作年度2016年
ブランド名スターン・ピンボール
メーカースターン・ピンボール・インコーポレイテッド
スタッフデザイン:ジョージ・ゴメス/美術:クリストファー・フランチ/ソフトウェア:ライマン・F・シェイツJr.
標準リプレイ点数1億
備考世界限定製造80台

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【1st.インプレッションと雑感】

 5点満点で3点ぐらいの小品……というのが本音の印象。正直言うとちょっと物足りない。

 バットフォン/マグネット、ウィーリングディスク、スタンダップと変化するせっかくの回転盤が思ったほど効果を上げていないし、ボールロックのポイント及び機構が凡庸な為、マルチへの到達にもときめきが生まれない。
 特に、プレイヤーのショットに手応えを覚えさせる役割であるはずのマグネット稼働のキャプチャーが不確実。これは単に詰めが甘いだけなのでは。

 ペンギン、リドラー、キャットウーマン、ジョーカーとそれぞれ対決する際、シングルBでまともにお相手するよりもマルチを併用すべき……という戦略は面白いが、1ゲーム中同じ怪人・同じフィーチャーを何度も取らされるのは億劫
 4人全員投獄してもウィザードらしきものは何もなかったが、他にまだまだクリアすべき役があるのだろう。

 マルチスタート時やジャックポット獲得時にはTVシリーズのハイライト映像が挿入。
 かつてWMS零落の端緒となったバリー'94年製「ポパイ」では、ドットディスプレイを濫用してアニメ場面を再現することばかりに腐心。ゲーム性とプレイフィールドの研鑽がおざなりになった失態を思い出し、一介のプレイヤーとして不安がよぎってしまった。

 但しディスプレイのLCD化は賛成だし、TV版バットマンの愛苦しいキャラ達と世界観には大いに魅了される。歴代バットマン台の中では決して悪いと決めつけるべきモデルではない。

 因みに今も人気のデータイースト'91年版はとてもテンポが良く、打ち心地が気持ちのいい佳作だった。
 セガピンボール'95年版「バットマンフォーエヴァー」は元々商品としての状態の悪さ故、未だプレイヤーたちの怒りが収まらぬ論外の粗悪台としが言いようがない。
 クリストファー・ノーラン監督作2本をベースとした'08年製ダークナイト版のゲーム性は確かに高いのだが、元にした映画があまりにも重厚かつ陰惨過ぎて、ピンボール化にはちょっと不向きだったかも。

 因みに本作はスターンピンボール社30周年記念作とのことだが、それはデータイースト時代・セガ傘下時代も含めてのカウント。
 ゲイリー・スターン自身がオーナーとなったスターンピンボールインクとしては、未だ20年にも届かない。

 ちょっと前まではどこの会社も50年やってて当たり前だったピンボール産業。現役メーカーの中でスターンは仕方なく最年長の扱いだが、まだまだ老舗とは言い難い。
 新時代の寵児として褒めそやされた'80年代後半の幼少期に始まり、コピーキャット犯のならず者として荒れていた'90年代青春期、一族所有の不動産を手放してまで孤塁を守った2000年代青年期を乗り越え、やっと今働き盛りの壮年期に入ったところと言えそう。

 スターンの歴史で思い出したけど、スターンエレクトロニクス(旧スターン)のサム・スターンって、WMSからシーバーグ社/ジュークボックス部門を買い取ってしばらく面倒見てたのね。最近知ったけど。
 ハリー・ウィリアムスサム・スターン、親友同士でのお友達価格だったのかも。

 閑話休題バットマン66のデザイナーは、お馴染みデザインチームVPのジョージ・ゴメス
 彼によると、このマシンは2010年製ダークナイトバットマン低価格版をべースとしたリワーク台とのこと。
 ゴメスの2016年は「スパイダーマン」のホームイディション「バットマン66」3バージョン制作同時進行で大忙しだったようだ。

 ピンボールエキスポ2016のスターンブースには、何と当時のバットマン役で御年88歳のアダム・ウェストが同席。バットマン66の制作やパブリシティに全面協力。
 大阪SBPの同機種にも、彼のサイン入りカードがエプロン部分にしっかり掲げられている。

(2017/3/12)






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