各名門ブランド ピンボール・リスト

Stern Pinball/2018

デッドプール(Pro版)

原題Deadpool(Pro)
製作年度2018年
ブランド名スターン・ピンボール
メーカースターン・ピンボール・インコーポレイテッド
スタッフデザイン:ジョージ・ゴメス/美術:ジェレミー・パッカー(ゾンビイエテイ)/LCDアニメーション:チャック・アンスト、/スクリプト:ブライアン・ポーゼン/ヴォイススピーチ:ノーラン・ノース、ブライアン・ハスキー、ジェニファー・ラフルール
標準リプレイ点数
備考

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【1st.インプレッション&雑感】

 ゴットリーブ及びWMS出身の熟練デザイナーであり、今作の制作チーフだったはずのジョン・トルデオー突然の解雇により、制作状況に混乱が生じていた「デッドプール」
 しかし「モンスター・バッシュ('98)」「ロード・オブ・ザ・リング('03)」等の端正なフィールドデザインで知られるジョージ・ゴメスがチーフの代打を引き受けることで事なきを得た。

 デッドプールは映画版も有名だが、今機種は淵源の原作コミック版に重き置いたピンボール化企画。
 そんなこともあり、ジョージ・ゴメスは余計な影響を受けないよう、あえて映画2作目を観ずに制作を進めたという。
 同作は無事2018年8月に完成を発表。同月に無事工場出荷となった。

 日本国内では同年9月に原宿《トイサピエンス》で初公開、ホーム需要として2019年2月に発売予定の目途が立っている他、プレイヤーにはお馴染みの大阪心斎橋BigStep内《SilverBallPlanet》でもPro版が設置されている。

 実はマニア評価が高いだけでなく一般プレイヤーからもかなりの人気で、土日祝の繁忙時刻ではタイミングを逃すとなかなかプレイが空かない!という状況。現在同ロケーション一番の金看板マシンとなっている。


 デザイン的に最も美しく精悍なのが、ランプレーン及びボールロックの役割を果たす日本刀
 柄の部分に3個の球を実働ボールロックさせて[忍者マルチボール]に突入するマルチフィーチャーが目玉。対角するいくつものレーンに迂遠させてから日本刀へ収斂させるボールフローも素晴らしい。
 忍者3ボールマルチでは全レーン制覇後に刀ランプショットへシュートを決めればスーパージャックポット獲得だ。

 次に目に留まるのが、首振り二等身リトル・デップーの袂にあるドロップターゲット3枚バンク。この3枚を打ち破って奥の囲いにロックするとリトルデップー2ボールマルチ。ノリの良いビートサウンドとスピード感のあるテンポ運びが痛快。
 但し、開始条件が簡単なだけあって、粘らないとなかなか稼げない。

 尚リトルデップの2回目完成では全スイッチ10万点[フレンジー]、3回目は逃げ回る高額ライト点滅を追う[サイクルバウンス]など、魅力のある順列フィーチャーが用意されている。他のフィーチャーとの連携で更なる荒稼ぎが期待できそう。

 メカのガジェットというよりLCDのゲーム演出が冴え冴えしいのが、左上スクープに掛かる[バトルモード]。まるで格闘ビデオゲームのような画面様式で戦えるのだ。
 ジャガーノート、ミスティーク、セイバートゥース、T-REX、メガロドン……等のヴィランやモンスター達をセレクトして戦闘開始。
 左右ループが弱点の者、下部両端4枚バンクへのヒットが鍵となっている者、盛んに各レーンをライトチェンジしてすばしこく逃げ回る者……等々、相手によってそれぞれ異にする戦略には腕が鳴る。
 うっとおしい相手や手強い敵の場合、忍者マルチやミニデップマルチを併発させて片付けるのも得策。

 全員倒した後には準ボスのサウロンマルチボール、ラスボスのMr.シニスター、そしてウィザードマルチボールが待ち構えていたけど、肝心なボスキャラにもフィーチャーにも、それ程の魅力が無かったのは残念だった。

 一方左右ループショットのメーターを満タンにしてダサ恰好いいダンスパフォーマンスが始まる[ディスコマルチボール]と、ロボット武装で大暴れ出来る[メカスーツマルチボール]など、他種のマルチボールフィーチャーがめっぽう面白い。
 特に獲得ウェポン数の閾値で開始できるメカスーツマルチは億単位の荒稼ぎが期待できる最大の山場。メジャーショットの点滅をクリアした後フラッシュするスクープに決めればスーパージャックポット!

 ただ、ミニデップマルチや忍者マルチと違い、ディスコとメカスーツはバトルモードと同時併発させられないのはやや不満。ゲームの流れがややこしくなり過ぎないよう、あえてそうしたのだろう。


 総評としては、バランスよく整った各メジャーショットレーンのボールフロー及びボールアクションによる端正なプレイフィールドが心地よい一機種……と惜しまず称賛したい。

 「ガーディアンズオブギャラクシー」のグルートマウスや「エアロスミス」のおもちゃ箱カタパルトシュート、「X-MEN」のスピニングマグナディスクのような決定打となるボールアクションメカが欠けているのがやや惜しまれるものの、その分広々としてスカッとする打ち心地をプレイヤーに提供してくれる挽回は大きい。
 どのレーンでも何かが起きるよう、感興深くくばせてあるフィーチャー采配も上製。

 決して善玉ヒーロー然とせず、欲と煩悩に溢れたデッドプールの浅ましいキャラクター性も、元来的に理不尽なピンボールのゲーム性に程よくマッチ。思わずシニカルな苦笑いをこぼしつつも、ゲームルールと絡めて大いに楽しめる。
 またセンター及び両アウトレーンが意外と落ちにくいので、一般プレイヤー人気も納得の一台だ。


 この「デッドプール」のプレイフィールド。実は不祥事により途中降板したジョン・トルデオーの手掛けたホワイトウッドが製品化されている……という噂が一時期流れていた。
 しかし代行で着任したジョージ・ゴメスはその説を否定。トルデオー制作途中のプレイフィールドは一旦破棄されたそうだ。

 ただ、フィールド中央に据えた3枚ドロップバンクのまた更なる奥にターゲットを設えるという作家性。急カーブするレーンを経由して登坂へとあがらせるランプレーン。4本バンクのトップレーンズ。
 まるで彼の銘打つ刻印のような施しが随所に感じられる作風には、トルデオーの面影を感じずにはいられない。
 破棄された彼のフィールドは魅力的で完成度が高く、スターン側スタッフはとても名残惜しかったと聞く。

 重ね重ね、ジョン・トルデオーの追放は残念である。

(2019/2/26)





(年月日)