各名門ブランド ピンボール・リスト

Data East/1990

ザ・ファントム・オブ・ジ・オペラ

原題The Phantom of the Opera
製作年度1990年
ブランド名データイースト
メーカーデータイースト・ピンボール・インコーポレイテッド
スタッフデザイン:ジョー・カミンコウ、エド・セブラ/美術:ポール・ファリス/音楽:カイル・ジョンソン/ソフトウェア:ロニー・D・ロップ
標準リプレイ点数不明(確か640万ぐらいだったような記憶が…)
備考ようつべに動画あるよ!⇒GO!
▲バックグラス画。ライトの照射で仮面が透けてみえる仕掛け有り ▲プレイフィールド上部。右の巨大オルガンの場所取りは必然性があるから良いものの、むしろ左のランプレーン近辺がデッドスペース状態でフィールド全体を狭隘にしている
▲フィールド下部。無作為で決まる4つのヴァリューライトはスペースシャトルやレーザーウォーを思い出すけど、今回はゲーム性にあまり貢献してない ▲中央には5回放り込んでEX.がもらえる倍率アップマジックミラーがあるけど、他のフィーチャーと噛んでおらず面倒くさいばっかで楽しくないのよね

― COMMENTS ―
データイーストピンボール社1990年発表の問題作。原作小説・舞台・映画・TVドラマとして高名なゴシックホラー「オペラ座の怪人」のコピライト台という、GスターンとJカミンコウの慧眼な版権センスには脱帽できますし、しばらく業界から離れていたポール・ファリスを起用した重厚万感の美術は素晴らしいの一言。

 が、この一目見て魅了される眉目秀麗な外観から懸け離れた粗雑なゲーム性に、当時のマニアプレイヤー各位は愕然とさせられることになります。

 メインのフィーチャーは簡単な[マルチボール]。ボールヒットでガバッと開くスロープ状の[巨大オルガン]の中が[ロックホール]で、1個目のロック後のアナザーボールのプランジで[2ボールマルチ]スタート。2マルチ時に再び2個ともオルガンにロックすると[3ボールマルチ]。そして3マルチ時にオルガンへシュートが決まれば[ジャックポット]獲得。但し難易度が低いため、JPは最低10万点とかなり低額。
 一方、各プランジ時には非レーンチェンジ式[トップレーンスキルショット]があり、ライト点滅するトップレーンにボールを通せたら10万点×ボール数オルガンオープン。初心者でも高確率で1度はオルガンが開けられるほどこし。
 尚、通常トップレーンを完成させると、20秒間JPヴァリューがスイッチ反応で上がるというセコいフィーチャー。倍率アップなどは無し。
 他のビッグポイントとしては[左ランプレーン][ミリオン]が有用。シュート毎にP,H,A,N,T,O,Mのレターが進捗、スペル完成でミリオンがリーチ。これが消えないうちに更なるワンショットでミリオン獲得。間髪入れず通せば連続獲得も可能。
 さらに左ランプには3ボール目開始時の2連続叩き込みで得られる、当時流行りの[ダブルユアスコア]も有り。

 先ず失望させられることは、ゲーム内容に戦略性と奥行きがあまりにも乏しいこと。
 特にマルチボールに関しては、プランジャースキルにしろフリッパーにしろメチャ打ちすれば偶然でオルガンオープン,ボールロック,マルチボールが得られるという、“簡単にすればいいだろう”というプレイヤーをナメた指針。
 おかげでジャックポットの難易度もたやすくなっているためヴァリューを低額にせざるを得ず、一発逆転であるはずのJPの存在感もマルチそのものも軽薄なものに。
 同時に、オルガンターゲットへのヒットやトップレーンの完成という、根幹のゲーム性が破壊されています。
 初心者たちはマルチボールに到達できでも、
「オルガンに3回当ててロックホールを開ける」
「3本のトップレーンはレーンチェンジなど活用してライト完成させると価値がある」
 等の元来のルールを知る由もありません。
 デコはその後「リーサルウェポン3」でもラストボールでマルチリーチを強引に点灯させて初心者受けを狙ったため、“ドロップ完成”という本来のマルチへのルールを誰も分かってなかった、という同じ轍の弊害を起こしています。

 加えるに、プレイフィールドの他の箇所の活躍不足が甚だしい上、フィーチャーのかみ合いが乏しく、ゲーム性の奥行きがゼロ。
 せっかくトップレーンに通ずるスピナーに何の用事もない、その先のトップレーンとバンパーにもいい役割がない、カスみたいなアウトボーナスの倍率アップ[マジックミラー]にもそれ以外で狙う機会がない、ミリオンやダブルスコアのランプレーンもひたすら連続シュートをまわすばかりでフィーチャー上で孤立……。
 むしろオルガンの方にミステリーやミリオンリーチかければゲームルールが噛み合うのに、まるで戦略が練られないし、どのフィーチャーもちっとも楽しく稼げない。
 各ポイント、各フィーチャー同士のジョイント性が皆無な為、すぐ戦略に行き詰まって退屈し始めてしまいます。

 瑕疵はそれだけにとどまらず、これまでのデコ台に良質のコンポージングを提供していたデヴィッド・シールの降板により音楽が致命的に凡庸、ロックホールとVUKの故障が多くて稼動がしょっちゅう止まる……等々の綻びは、枚挙に暇がないくらい。

 これまで快調だったデータイースト機種としては初めて最低限のラインを下った駄作であると言わざるを得ません。赤と黒を基調としたアートワークは壮麗だっただけに、本当に口惜しくやるせないマシンでした。

 ところが、当時の地元ロケーションではこんな逸話が。

 名古屋市本山駅前学生向け50円ゲーセン「ピエロ」では、一時期ゲーム筐体全ジャンル売り上げBEST20を壁に張り出していたのですが、なんとこのファントムオブジオペラがある週では2位にランクイン!(えぇっ!?)
 確かに、普段ピンボールをしない学生たちが、1ゲーム50円のファントムオペラで「うぁー気が狂うやめれー」「あそこだアソコ入れろ、次は3つになるぞ!」などと賑わいでいた姿が当時印象に残っています。
 ただ、案の定ゲーム性に奥深さがないのですぐにランキング圏外に落ちてしまいましたが、この傾向に気をよくしてくれた同店は2台体制だったピンボールを4台へ増設。本山駅界隈はちょっとしたピンボールブームに沸いたのでした。

※写真は1990年代半ば頃の、名古屋市星ヶ丘駅近辺「ジョイテックプラザ」にて撮影。PIN以外でも面白い店だったのですが残念ながら2004年に閉店してしまいました。

▲左アウトレーンにはキックバック有り。再点灯は右ホールのミステリー[トラップドア]へ ▲フィールド全景。特に真っ赤なワイヤーレンが麗々しい ▲閉じた状態のオルガン。スロープ状の突き当たりに音符マークのターゲットがあって、本来これに3回ヒットするとロックホールOPEN
▲左ランプレーン。通すとフィールド奥にあるPHANTOMレターが進捗。でもランプの裏側や左側のスペース無駄になってない? ▲右レーンのスピナー。トップレーンに通じてるけど何度狙っても大した報いは無いので用無し。それ自体も稼ぎ悪いし ▲開いた巨大オルガンはメチャ打ちすればすぐ入る。だからこそもっとボールロック以外にも色々フィーチャーを付けて欲しかった

(2010年5月20日)