各名門ブランド ピンボール・リスト

DataEast Pinball/1992

スター・ウォーズ

原題Star Wars
製作年度1992年
ブランド名データイースト・ピンボール
メーカーデータイースト・ピンボール・インコーポレイテッド
スタッフデザイン:ジョン・ボーグ/ソフトウェア:ニール・ファルコナー、ロニー・D・ロップ/美術:マーカス・ロスクランツ/音楽:ブライアン・シュミット
標準リプレイ点数1億五千万点/二千万点前後のビッグポイントが盛りだくさんなので突破は初心者でも十分可能
備考製造台数:10,400台/日本国内出荷数:500台/写真は'93年当時の撮影した素材をネガスキャンで起こしたもの
※ようつべに動画あるよ!⇒GO!
▲何度プレイしても役割がはっきりしない3バンクドロップターゲット。プレイングマニュアルを熟読してもあまりピンと来なかった ▲プレイフィールド及びバックグラスアートは拙速的で若干粗さを感じるものの、スターウォーズアートとして一応違和感は無し。俳優の肖像権も全部クリア出来たようだ
▲左下スクープのアップ。ホントはここ結構面白いミニゲームが詰まってるのだけど、どうも配剤が良くなくてマルチボールルールとのジョイント性がない。惜しい。 ▲うねるランプレーンと半球デススターのアップ。なかなか悪くない出来
▲こちらがデススターのシャッターが閉じている状態。ここへダイレクトにヒットしてシャッターオープンを目指せ ▲フィールド下部。S-T-A-R-W-A-R-Sレター及びC−3PO両目ライトが役の完成になっている
▲これがシャッターを開けて現れたデススターホール。放り込めばマルチボールがスタート ▲キャビネット側面。やはりちょっとアートの仕上げが突貫工事だったようだ

― COMMENTS ―
●映画「スター・ウォーズ」サーガの正規コピライトマシンを振り返ると、何とこれまでに5回もピンボール化されています。
 '99年公開「〜エピソード1」を題材に、モニターからのグラフィックを上部全体のガラス面に反射させる特殊筐体“PINBALL2000”仕様の同年製ウィリアムス版や、'87年のスペイン製ソニック社版、ワイドキャビネット全盛期'80年発表のオーストラリア製大型マシン……などなど、随分とワールドワイド且つ、どこかしら乱脈に富んだ顔ぶれ。

 しかし、日本国内で数百ものまとまった規模の輸入量がディストリされたのは、意外や意外、たったの1機種のみ。

 それが'92年版の今作、10,400台もの製造ユニット数を誇るデータイーストピンボール社最大の成功作「スター・ウォーズ」であります。
 当時の急進トレンドだったドットディスプレイ及びオートシューターが、映画の各々名シーンを矢継ぎ早になぞらえては豪壮に轟く、八面六臂の大車輪。
 更に、プレイフィールドでは自転する惑星要塞デススターがマルチボールのリリースホールになっていたり、ループショットで「キュキューぴるる〜♪」と愛らしく稼働してくれるRUDUトイオブジェなど、視覚的にも訴求のあるデザインが施されています。
 加えて、イージー且つ劇的なマルチボール、稼ぎどころ盛りだくさんのミニゲーム、名匠ジョン・ウィリアムズの映画音楽をふんだんにカバーしたミュージックなど、余すことなくスターウォーズというビッグタイトルを享受出来たピンボールマシンを生み出してくれました。

 あれから20数年、今でも日本国内で稼働させているロケーションも有るくらい。
 荒っぽい役の組み立てと簡単すぎるフィーチャーのせいもあり、当時のマニアには馬鹿にされていたきらいがありましたが、難易度が低く、題材もゲーム性も非常にとっつきやすいだけあって、ピンボール初心者の入門台として現在のロケーション先に設置するオーナーも少なくないようですよ。



【スキルショット】200万点以上のオートシューター・スキルショットボーナス有り。各ボールスタートプランジの際、ディスプレイで飛び回る宇宙船を照準で捕え、シューターボタン発射で撃破!

【マルチボール】3ボールマルチ。デススター入口のシャッターオープン時にシュートを決めて放り込むと、即3ボールマルチがスタート(ボールロックなし)。
 このシャッターを開けるには、ダイレクトにボールを繰り返しヒットし、盤面でライト表示されている月の段階を最後まで進めるべし。

【ジャックポット】ジャックポットボーナスは初期値1,000万点。中央ランプレーンにかかる。
 取り方は、マルチボールの最中に中央ランプへボールシュートすると“Broooother!”のヴォイスシャウトと共にジャックポット獲得。尚JPヴァリューはデススターシャッターへのヒットで100万点づつ上昇。

【ダブルジャックポット】デススターホールにかかる。但し数秒間の時間制。
 マルチ時のジャックポット獲得後、一旦閉じていたデススターシャッターが再び開くので、これが閉まらないうちに急いでしとめるべし。ヴァリューは文字通りJPの2倍。
 尚JP再点灯はデススターシャッターヒット。何度でも点けれるがヒット数ノルマのハードルは上がってゆく。

【入門者へのお情け】1度もマルチにできず3ボール目になった場合、マルチボールリーチが強引にかかるという取り計らいあり。

【エキストラボール】右上ヨーダレーンに点灯。ランプレーンへのシュート3回目でかかる。

【ヨーダのセレクトフィーチャー】。ヨーダレーンにかかる。ヨーダの掲げる2つの特典のどちらかを選ぶセレクトフィーチャー。選択肢としてビッグポイントや別フィーチャーの完成の他、突如スペシャルが出現することも。
 [ハイパースペース]の達成(ドロップ3回完成でランプに500万がかかるという役)で再点灯。

【ジャバザハットのミステリーボーナス】。右下ジャバスクープにかかる。内容はボーナス点、ボーナスホールド、キックバック再点灯など。
 対角リターンコンボショットで点滅。時間制。

【RUDUランナウェイ】。1,500万点からのカウントダウンボーナス。左右ループにかかる。
 盤面下部C−3POの両目ライトを完成させるとスタート。これはヨーダレーンシュートにより片目づつ点灯する。

【スピーダーモード】ヨーダレーンに掛かる1,000万ボーナス。フィールド下部に散在する黄色い計5枚のスタンダップ全ヒットで完成。長めのドットアニメデモはフリッパーボタンまたはシューターボタン押しっ放しで省略可。

【STARWARSレター1,000万点】S-T-A-R-W-A-R-Sレターを完成させると1,000万点獲得。左右ループ及びランプレーンに通すとスペルが進捗。

【ザ・フォース/ミニゲーム】左下キックアウトスクープでスタートする4種必修ミニゲーム。内容はキャンティナダンスタイム全スイッチ25万点とか、AT-ATがトコトコ迫ってくるのをバンパー銃で撃破3,000万とか、デススター5,000万点カウントダウンとか、時間内にスタンダップでミリオンプラス、等々。4種全て終えるとビッグフィーチャーのお楽しみも有り。
 尚スクープ再点灯はランプレーンまたはヨーダレーン。消灯してるのに入れちゃうとダースベイダーが出るぞ(4回出させて2,500万)。

【ランプレーンヴァリュー】通した回数により、Ex.リット、300万以上のビッグポイント、ザ・フォースAdv.、STAWARSレター進捗などが得られる。

【突然オートシューターで銃撃戦】600万点ボーナス。ディスプレイに突如敵ロボット群が登場するのでシューターボタンで一掃銃撃すべし。主にマルチボール終了直後に降臨。
 コレに気を取られてボールをドレインしちゃっても責任は取れません。



 前述のようにデータイーストピンボールの製造ユニット数歴代トップ1の記録を誇る大ヒットモデルではあるのですが、ゲーム性は相応に高いかというとさに非ず、随所に突貫工事の粗も見え隠れ。

 ピンボーラー肌の見地からすれば、まぁドットアニメが退屈で長ったらしいこと。ビデオゲームもどきをやらされるオートシューターのつまらないことと言ったら。

 役が揃ったらひたすら映画場面再現のアニメがしつこく流れて一千万だ、二千万だと氾濫させるビッグポイント編成は、冗長且つ散漫。こちとらボールロックやプランジャースキルや連続ループショットで役を積み上げたいってのに。
 「アダムスファミリー」を意識した左下スクープのミニゲームもつまらなくはないのですが、主幹のマルチボールルールとの噛み合いが乏しく、ゲームの組み立てがマルチの進行上殆ど進まない。
 これをなんとか解決しようとランプレーンでAdv.させて強引につなげようと試みていますが、その結果ランプレーン以外狙う必要がなくなってしまい、ゲーム性が半壊してしまいました。

 この台に対する扱いがマニア層と一般層とで温度差が激しいのは、初心者キャッチーな反面にそういった奥行の乏しさや、スキルプランジャーやボールロック等の従来のベーシックなピンボール性の喪失にあると言っていいでしょう。

 ただ、テンポよく爽快なマルチボールとジャックポット及びダブルジャックポットの土台はきちんとしている上、疾走感のあるランプレーンや映画キャラの愛嬌ある活躍は、十二分に呼吸しています。
 SWコピライトで興味を持った初心者入門台という役割は、時代的にもしっかり担った一機種と言えましょう。

 '90年代初頭まで永らく煮詰まっていた矢先の新機構でしたから、ドットアニメとオートシューターの極度な濫用は、まぁ時節的に大目に見てあげましょう。


 デザイナーは今作がプレイフィールドデザインデビュー作だったという、ジョン・ボーグ

 かつて在籍していたプリミア社ではメカニカルエンジニア兼製図担当として辣腕を振るい、殊に「ライツ・カメラ・アクション!('89)」のびっくりギミック“どんでん返しミニフィールド”の開発はボーグによるもので、そのパテントも現在彼が所有しているのだとか。

 1990年、当時プリミア社が強行していたシングルレベルフィールド計画に嫌気がさしたJトルデオが同社を去り、続いてボーグもデータイーストへと移籍。
 やがてデコ社内でも技術力が認められた彼はデザインチーフとしてのデビューが決まりますが、実は当初、全く別のテレビドラマ「Tales From The Crypt」を題材とした企画に取り組んでいました(のちにこちらも製品化)。
 しかし同社が急遽ルーカスフィルム社からこの度の「スターウォーズ」ライセンス取得に成功したことから、その企画は一旦お流れに。
 良くも悪くもフットワークのすばしこいデータイーストの急な舵切りに翻弄されつつも、4か月という限られた製作期間の中、超ビッグタイトルのプレッシャーに挫けることなく、手抜きすべき所はギリギリ粗く仕上げながら多種多様なフィーチャー,ドットアニメ,音楽,メカニクスを全てまとめあげて製品化した采配ぶりは、プレイヤーの間ではともかく業界及びスタッフ内では高く評価されました。

 現在もボーグはスターン社専属デザイナーとして第一線で活躍中。

 彼の近年のディレクト作「アバター('10)」「メタリカ('13)」などを日本国内でプレイ出来る機会に恵まれましたが、爆裂マルチボールと共に愛嬌たっぷりのキャラクターによるメカアクションを劇的に演出するゲーム性に、プレイヤーは驚嘆しきり。
 現在の業界でもとても頼りになるピンボールデザイナーの一人です。

▲RUDUの出来がいい!ちゃんとアクション稼働して愛嬌ふりまいてくれるのだ ▲そのRUDUレーンのライト項目。ヴィクトリーラップやスペシャルライトも ▲ふおっふおっふおっ……とジャバザハットがランダムボーナスをくれる右下スクープがこちら
▲気付きました?市場版も白バンパーver.と赤バンパーver.が混在するの。因みにフライヤーのバンパーは赤色。 ▲プレイフィールド全景。ボールフローデザインはそんなに悪くないと思う ▲実は狙い甲斐があるヨーダレーン。Ex.ライトも有り。唯一スピーダーモードがつまらないのが残念
(2015年6月19日)