各名門ブランド ピンボール・リスト

Data East/1988

タイムマシン

原題Time Machine
製作年度1988年
ブランド名データイースト
メーカーデータイースト・ピンボール・インコーポレイテッド
スタッフデザイン:ジョー・カミンコウ、エド・セブラ/美術:ケヴィン・オコンナー、マーガレット・ハドソン/音楽:デヴィッド・シール/ソフトウェア:ジェリー・コラゲニス
標準リプレイ点数不明
備考ようつべに動画あるよ!⇒GO!
▲このスナップの撮影は1992年。名古屋は栄の「サーカスサーカス」で撮影。う〜ん隣のライカメといい、いいラインナップだ ▲プレイフィールド下部。左アウトのキックバック再点灯も簡単で、リライト点灯中左右ランプレーンのどちらかに通すだけでOK

― COMMENTS ―
データイーストピンボール社は'90年代前半以降、耐久性の低い粗製濫造台に安易なキャラクターコピライトで箔をつけ、ウィリアムスヒット作を模倣したコピーキャット台を濫作するという、目を覆うような方針転換でプレイヤーの信頼を失ってゆきましたが、設立期から'90年代初頭にかけては、その完成度アヴェレージのただならぬ高さから、
 「ひょっとしたらすぐにでもウィリアムスを抜いてシェア1位に君臨するのではないか」
 と、ピンボール業界の将来を厚く嘱望されていました。

 「タイムマシン」はそんな当時、新進気鋭のピンボールメーカーだった、データイースト社の第4作目。
 胸躍るSFファンタジーのテーマ性、美しくインパクトの深いプレイフィールド、演出的に凄みすら効いたポップなミュージック、まばゆいばかりの夢想的世界観と郷愁ロマン……等々、堰を切ったようにあふれ出るデザイナーたちのアイデアがふんだんに盛り込まれた、データイースト初期を代表する傑作。

 アメリカ本国ではもちろん、日本の一般ゲームファンの間でも評判が高まり、かの「ゲーメスト」誌その年の読者ピンボール人気投票で、バンザイランやアースシェイカーを抑えて1位に選ばれたほど。
   この新鋭メーカーの猛追にはさすがにウィリアムスもあせったらしく、例えば「アースシェイカー!」ではクイックマルチボールや盤面地下通路経由のVUKリターンという斬新な構造やフィーチャーを採用したり、「ブラックナイト2000」ではミュージックにコーラス音声を取り入れたりしていますが、これらは全てデータイースト台に端を発したトレンドだったりします。

 主なフィーチャーを簡単になぞってゆくと、やはりメインのゲームはマルチボール&ジャックポット。左右ランプレーン入り口の[1970],[1960],[1950]のライトを点滅させて、そこからボールロック。因みにその点滅はスポットターゲットやトップレーンで進展。
 3個目のロック完了(1950年代に到達!)でマルチボール開始。この時中央渦巻きランプレーンで最高100万点のジャックポットがかかります。“JA〜CKPOT♪”というノリノリコーラスにゾクゾク。
 あと逃せないのがスターワープミリオン。バックグラスのS,T,A,R,W,A,R,Pの全レター完成で中央渦巻きランプレーンに20秒間ワンミリオンのチャンス!ちゃっかッちゃっか・ちゃっかッちゃっか♪というトワイライトゾーン風の緊迫サウンドがたまりません。尚STARWARPレターはトップレーン完成orランプレーン類へのシュートで進捗。

 プレイしてみると、とにかくワンショット・ワンショットがとても気持ちいいです。ボールロックごとに'70年代、'60年代、'50年代へと時代をタイムマシンでさかのぼります。
 プランジャーショットの度に流れるのはボコーダーボイスと清涼な音声コーラス。またプレイ中奏でられるBGMはその時代を代表するポップス。
 デジタルディスプレイでリールドラムスコアリングを表現したり、マルチボール中に盤面下にしつらえた本物メカ制御の愛らしいチャイム音が古風に鳴り響くなど、随所に散りばめた心憎い演出には思わず胸が熱くなりそう。

 マニアからすればフィーチャーが簡単すぎるような気もしますが、ボールロックやミリオンショットの優しさと簡明さは初心者にとって非常にとっつき易かったはず。
 また全編を包むきらめくようなキュートさは他社にない愛苦しさがあり、この時節からしばらくはデコ崇拝がまかり通ったのも当然やも知れぬ、誠に印象深い1台。

 尚、データイーストが甚だしく評判を落としたのは'93年のアダムスファミリーの粗悪コピー台「ジュラシック・パーク」あたりから。オペラ座やバックフューチャー、リーサル3やスターウォーズまで我慢していた人も、さすがにアレで堪忍袋の緒が切れたようです。

▲隣接する左ランプレーンと中央渦巻きランプレーン。カラフルなイルミネーションの演出も強烈 ▲プレイフィールド全景。効率の悪い無駄な箇所もあるものの、フィーチャーとサウンドと演出で圧倒されてしまい、気にしてる余裕がない ▲右ランプレーン。プレイヤーはボールロックで時間旅行を体験出来る

(2010年5月20日)