Stern Pinball/2023ヴェノム(Pro版) | ||
原題 | Venom(Pro) | |
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製作年度 | 2023年 | |
ブランド名 | スターン・ピンボール | |
メーカー | スターン・ピンボール・インコーポレイテッド | |
スタッフ | プレイフィールドデザインチーフ:ブライアン・エディー/ソフトウェアエンジニア:ドワイト・サリヴァン、コーリー・ストゥープ/美術班チーフ:ジェレミー・パッカー(異名:ゾンビ・イエテイ)/サウンドエンジニア:ジェリー・トンプソン/アニメーションチーフ:ポール・チャナンキット/メカニカルエンジニアチーフ:トム・コペラ、ケヴィン・コロッゼイ/音楽:マーク・トレモンティ | |
標準リプレイ点数 | ― | |
備考 | ― |
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【取り急ぎ1st.インプレッション】 ●2023年7月にサンディエゴのコミコンでスターンピンボールの「ヴェノム」がようやく発表された。本当は発売できる段階の初号台がとうに完成していたようなのだが、スターン社は「ジェームズボンド」2作を60周年の時機に合わせたいが為、発売の順序を逆にして見送っていた。 ●もっともヴェノムピンボールの登場は噂として早くから目されていた。なぜなら2021年頃から原作者トッド・マクファーレンの気配がスターン社で見え隠れしていた為。「ヴェノム」ピンボールの情報に関しては口をつぐんだまま、スターンはイベントブースでマクファーレンのサイン会を取り仕切っている。いやいや目の前に原作者がいるじゃん?ってな状況だったそうだ。 ●ゲームデザインクルーは「ストレンジャーシングス」「マンダロリアン」のチーム。ブライアン・エディーがチーフ及びプレイフィールドデザインを担当し、ドワイト・サリヴァンがメインプログラマー。但し美術はどちらかと言えばジョンボーグ組のゾンビ・イエテイことジェレミー・パッカーが健筆を揮っている。 ●イリノイ州郊外エルクグローヴヴィレッジ新工場移転最初の製造機種。データイースト/セガピンボールからスターンになってから2度目となる工場移管だったが、新工場はつつがなくまわって「ヴェノム」を無事生産した。尚、移管監督責任者は前回の引っ越しと同じくレイ・タンザーが担った。彼は過去にプリミア社で怪作「ストリータファイターUピンボール」をデザインしたこともあるが、どうやらゲームデザイナーより引っ越し大名の方が向いているようだ。 ●さて「ヴェノムPro」を打った筆者なりの感想。あまり傑作ではない。ピンボールを作るならプレイフィールドにはゲーム運びの軸となり得る大掛かりなメカギミックショットがひとつは必要なのに、それが無い。プレミアム版を鑑みても決定的ショットと成り得るものが無く、物足りない。そのプレミアムから更に仕掛けを省いたPro版は、もはやスカスカなHome仕様。ちっともワクワクしない。一応はボール3つを縦に積み上げるカプセルが中部左右に1つずつ設えてあるのだが、これはマルチボールを生起させるボールロックではなく、元々貯めてある3個貯められたカプセル内にへ1個来たらまた下から1個送り出すだけ。アウトホールのトラフと何ら変わらない役割で、見た目にもゲーム展開にも奏功が感じられない。なぜこれをマルチボールロックにしなかったのだろう。 ●深堀りしてみたゲーム性の巧拙に関しても賛同できない。白・水色・黄色の点滅メジャーショットを2連続コンボで決めるとその色が点いて、盤面表示ライトの縦・横・スクエアが揃ったらビンゴ!アウォードが貰え、更にKnullやGrendelとのバトル突入!!……となるのだが、色の点滅コンボにしろバトルにしろ、“もうすぐ点滅が消えるよ〜〜はいダメー!ブーッやり直し〜”という構成で、無力感が募るばかりで楽しくない。ピンボールの役は完成に失敗しても何らかの進捗があるのだから希望をもって何度も挑めるのに、振り出しに戻されることを繰り返されるばかり。優位に立っている奴にからかわれているような虚しい感覚に陥り、フェアなプレイが楽しめない。ピンボール特有の難易度ストレスを乗り越える痛快な充足からも遠い。3ボール制のはずが、時間に追われるばかりの“タイマーピンボール”を打っている様な気分に陥った。 ●近年のDC/マーベルピンボールの定番路線である、キャラクターを一人一人コレクトして全員集合で最終決戦!とか、格ゲー風バトルで自分より先に相手のライフバーをゼロにする勝ち抜き戦!等、クリシェ化してきた定番の方向性とは違うものに挑もうという意欲は分かるのだが、残念ながらピンボールの元来の面白さを殺ぐ方へ迷い込んでしまった失敗作である。ライトを縦・横・スクエア揃えるなら「サーフィンサファリ」のような陽気で楽しい簡明さが欲しい。 ●尚、本機種ヴェノムにおいては[Insider-Connected]に毎回ログインしてプレイするとステイタスが保持される。プレイを重ねてゆくとレベル数値が上がり、Knullとのバトル直前の段階でスタートしたり、レギュラー4人以外のウルヴァリンやハルクがいきなり選択出来たりする。しかし身一つの手ぶらでのまっさらプレイがピンボールの魅力なので、筆者はこの施しを不要と感じた。 ●スターンのデザイン部長のジョージ・ゴメスはピンボールイベントで“ヴェノムは他のスーパーヒーロータイトルよりもキャラクターがマイナーであるにもかかわらず、ロケ地で最も収益の高いピンボールゲームの1機種である”と強調しているが、これは勿論お手盛りな大本営発表。実際ロケーション実地でのプレイヤー反応は皆苦々しく、良い声は聞かれない。スターンのキレキレフリッパーやフィールド構造の全体的メカニクスの信頼性の高さで、かろうじてプレイできるレベルのシロモノである。 ●ブライアン・エディー氏は今後気負わず焦らず、マーズメディーヴァル路線の「ストレンジャーシングス」、シャドーインディ路線の「マンダロリアン」など、'90年代ピンボールラヴァーを楽しませるシニアな方向性でプレイヤーを楽しませて欲しい。今作「ヴェノム」はスターンにとっても迷走としか言いようがない。早めの軌道修正を願う。 (2024/11/2) |
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