各名門ブランド ピンボール・リスト

Gottlieb Pinball/1974

アトランティス

原題Atlantis
製作年度1974年
ブランド名ゴットリーブ
メーカーD.ゴットリーブ&カンパニー
スタッフデザイン:ジェフ・ブレンナー/美術:ゴードン・モリソン
標準リプレイ点数ファーストリプレイ43,000点、セカンド57,000点、サード65,000店
備考製造台数:2,225台/「シェリフ('71)」「ローマン('71)」と同フィールド
※ようつべに動画あるよ!⇒GO!
▲バックグラス。濃い顔立ちでマッチョなお兄さんを先頭に、伝説の海底巨大大陸を探索する一団というアートワーク ▲1枚500点のドロップターゲット10枚バンク!全部倒せばスペシャルのチャンス、ヴァリューも五千点にアップ。
▲フィールド下部。変則アウトレーン仕様が右も左も面白い ▲フロントキャビネット。この時代のスタートボタンはキャビネットにあるのだが、コイン返却ボタンに紛れて分かりにくい
▲バックボックス。約40年前の筐体。ゲーム博物館ワンモアタイムでのマシンの整備状態は最高に良かった ▲トップに放り込まずにはいられないロールオーヴァープレイボード。順にH番ライトまで消灯させればスペシャルリットのご褒美。トップレーンのADV.でも進捗可
▲そんでこちらがトップレーンズ。ADV.を通せば戦況が有利になるのでプランジャースキルは重要よ ▲WOW!エプロン部分にはタイトー販売版インストラクションカードが当時のまま残っていた!

― COMMENTS ―
●命中した途端にパシッと引っ込む、4枚組とか5枚組とかのドロップターゲット。これを一組全〜部倒すと、バサーッ!と一挙リセット。段階が上がってEx.リット、Sp.リット、アウトホールボーナス2X、スコアヴァリューも桁違い。落とせ落とせ、スコアリプレイもスペシャルもイタダキだ!

 '70年代のゴットリーブは、そんなドロップターゲットバンクを多用するゲーム性が顕著でしたが、その傾向を源流まで遡行してゆくと、'71年発表の3兄弟マシン「ディメンション」「ギャラクシー」「2001」の同プレイフィールドにおける、4色カラー20枚ドロップターゲットのゲームに辿りつきます。

 もともとドロップTのはじまりは単独1枚仕様で、重要なワンショットを担うワンポイントとしてウィリアムス「ヴァガボンド('62)」からスタートしたものでしたが、ゴットリーブはこれを上記3機種において10連2組の大仰なバンク機構として20枚ものドロップをゲームに組み込みました。
 ずらっと並んだ壮観なドロップTを打ち落としまくる快感がプレイヤーに好評で、以来同社はドロップTバンクを主軸としたゲーム性を好んで登用していきます。

 今回の機種「アトランティス」も、そんなゴットリーブ特有のドロップターゲットの豪胆バンクに打ち応えを感じる秀作です。

 実はこのプレイフィールドには元となった同じ設計のマシンが。'71年発表の「ローマン」「シェリフ」の兄弟モデルがそれに当たります。この時のテーマと主人公は西部劇の保安官。
 上部左端にずらりと配された10枚バンクのドロップターゲットの迫力にとどまらず、右上に設けられた大仕掛けが6本組ロールオーバープレイボード、別名ファッシネイティングピンボールレーン。これがプレイヤーを大いにしびれさせます。
 左端のドロップ群に負けじと右端に連なったこのローオーバー群。ボールがトップから降りてくれればヴァリューとアドヴァンスが総なめになりそうでならなず、途中で離脱したり思うようアドヴァンスに通らなかったり。大胆でスリリングなプレイフィールド構成です。
 このドロップターゲットとロールオーヴァーの両輪で戦略を練らせるゲーム性は、プレイヤーを実にエキサイトさせました。

 当時海外出荷版「シェリフ」が、リプレイ規制の無かったドイツで三千台近いユニット数を売り切るスマッシュヒットを起こし、'71年度のゴットリーブ台まさかのトップセールスを記録。
 一方アメリカ国内ではピンボールを規制する法律と情勢の顔色をうかがいながら作った、リプレイやスペシャルの無いアドアボール(代わりに残りボールが追加される)版「ローマン」が出荷されましたが、それでも千七百ほどのユニット数を売るセールスを記録しています。

 やがて'70年代も半ば頃に差し掛かると、ピンボールカルチャーは徐々に全米で市民権を獲得してゆきます。ロサンゼルスで、ニューヨークで、地元シカゴで。各州で禁止していた台自体の設置やリプレイルールも次々解禁へと動き始めます。

 そこで、やっと国内で堂々と発表されたマシンが「アトランティス」だった訳です。

 リプレイもスペシャルフィーチャーもバッチリ。海底に沈んだ伝説の大陸への冒険…というヒロイックに一新したアートワークもプレイヤー達を魅了します。
 案の定、元のゲーム性が高いこともあって、同じプレイフィールドで3年も前の「ローマン」より五百台余計にオーダーが入ったそうです。

 その後、ドロップターゲットバンクというゲーム性の力量を確信したゴットリーブは、やはり大量のドロップとロールオーバーを絶妙に配した「エルドラド('75)」「ロイヤルフラッシュ('76)」「ヴォレー('76)」「カウントダウン('78)」を矢継ぎ早に放ち、巷のロケーションを埋め尽くしてゆきます。
 特に「エルドラド」は「ターゲットアルファ('76)」「カナダドライ('76)」「ソーラーシティ('77)」等々バージョン違いで7機種もの兄弟モデルを生んだ、ピンボール史に残る名デザインとして今日まで語り継がれています。

 同社によるドロップターゲットへの偏愛と伝統はプリミア時代以降の'80〜'90年代にまで受け継がれ、次世代のデザイナーであるジョン・ノリスジョン・トルデオーレイ・タンザー達の手によって「ロック('86)」「ダイヤモンドレディ('88)」「カーホップ('91)」「キューボールウィザード('92)」「ワールドチャレンジサッカー('94)」などで矜持的に示されていましたが、残念ながら'96年にプリミアテクノロジーは閉鎖され、ゴットリーブブランドも途絶えてしまいました。

▲スポットターゲット。ADV.は有り難いけど狙い撃ち難しいし危険だよね ▲バンパー地帯。ワンクッションでドロップやトップレーン、ロールオーバーが狙える ▲トップに放りこめばテケテケ三段通りまくりそうなモンだけど、実は壁際ポストで跳ねて脇へと離脱してしまうのだ
▲左アウトレーンアップ。無理せずDはADV.で、Sp.はライトチェンジして取ろう ▲フィールド全景。確かに一目見ていいデザインだと思う ▲ホールディング要注意な右アウトレーンのアップ

(2013年12月17日)