各名門ブランド ピンボール・リスト

GOTTLIEB/1989

ビッグハウス

原題BIG HOUSE
製作年度1989年
ブランド名ゴットリーブ
メーカープリミア・テクノロジー/ゴットリーブ
スタッフデザイン:レイ・タンザー/美術:コンスタンチーノ・ミッチェル、パム・エリックソン
標準リプレイ点数不明
備考製造台数1,179台/ようつべに動画あるよ!⇒GO!
▲一応一番目立つ仕掛けのスクリュー。でも演出として全然効果があがってない ▲バックグラス。追うのは人だけどマフィア&囚人がケモノというキャラクターデザインが凡庸。ちっとも可愛くないし。逆の方が絶対面白いのにね
▲フィールド下部。スイッチ反応毎に破壊されてゆくブロックを表現してるつもりらしい。4列消すとマルチプライア上昇 ▲この4連ドロップもアホだったなぁ。ぱかぱかせわしなくタイマーライトチェンジしてる項目が、完成時に得られるんだと。作戦の練りようが無い。因みに赤色スペシャルリットが点くのはほんの一瞬

― COMMENTS ―
ビッグハウス、バッドキャッツ、バッグスバニー、ポリスフォース、ジュラシックパーク、ポパイ……いや別にピンボール市場最低のクソゲーを列挙しているのではなく、これはアニモーネタのピンボールを並べているのですが?
 んな訳で、アニモーがテーマのピンボールにろくなものが無いのですよ(マウシンアラウンドやパーティーアニマルはどうなのか知らんが)。今作の「ビッグハウス」もご多分に漏れず、1989年というPIN業界の脂の乗った時期とはとても思えぬ、想像を絶するクソゲーぶりに閉口すること請け合い。

 テーマは囚人たちによる刑務所の脱獄……なんですけど、脱獄のスリルや緊迫感がフィーチャーに全然醸せてないのよコレが。
 プレイフィールド一番目立つ特徴と言えば左奥に建つスクリューで、ここにボールをロックするとスクリューのふもとにボールが待機。マルチボール時にはスクリューが稼動してボールを吊り上げるように巻上げ、チューブ型ランプレーン⇒左リターンレーンにボールを運んでマルチリリースとなります。
 ……が、このスクリューの稼動のスケールが小さくて地味で目立たなくて、演出的に全く効果は上がらず。ノロくてトロくてちっとも盛り上がりません。これみよがしにそびえたたせて5ボール6ボールがズンズン上がって来るようにすればまだ盛り上がるのに、スクリューアップの見せ場はボール1コだけなんですもの(ロックポイントは無意味にも3箇所に分かれている)。

 じゃあマルチボールの最中は何が稼げるのかよく探してみても、ジャックポットもビッグポイントも何も無いなんて正気の沙汰じゃないですよ?脱獄1人成功ワンミリオン、2人目ツーミリオンとか、スクリューやスロープにかければいいのに、そういった稼ぎ場を用意してないんですもの。唯一かかるのはプレイフィールド倍率だけ(最高15倍)。
 ならその倍率アップはどうすればいいかというと、なんとただの定数スイッチ反応。漠然とバンパーを狙う以外にどうしろっていうの。
 それならバンパーアクションの多いコースのボールフロー過程に何か面白い役はあるかというと、これもスカスカ。左奥スクリューはボール吊り上げ以外に意味ないし、マルチボールスタートのかかる右のスロープは、上がってても下がっててもボールリリース以外にヴァリューの進展なし。どうしてこんな無駄なことするの?と首を傾げるばかり。

 あっ、フィールド中央に囚人の桎梏を髣髴させる鉄球形ヴァリターゲットもどきがある!これ何かあるだろ?と思って期待して狙い打ちしたら、9割がたの確立で、ワンクッションしてキレ〜〜にアウトレーン堕ちるんですよコレが(泣)。しかもヒット判定厳しい上に得られるのは倍率アップだけで、他に感興深いフィーチャーの絡みはないし。

 オマケに、ボールロックしたままマルチ開始しそこねてボールアウトすると、なんとロックしたボール全部無効ですって。2個ロックしててもフリッパー効かなくなって2個とも放られて強制アウトホール。ボールロック手順は全部初めからやりなおし。これひょっとして脱獄のシビアさ演出してるつもり?
 初心者は動かないフリッパー必死に打とうとしてボタン効かなくて混乱してるし、マニアにとっても理不尽以外何者でもないよ。何考えてんのバカじゃないのさ。

 挙句の果てに、バックグラスの絵に全く魅力がありません。追う看守や刑事たちは人間、プリズナーを獣人として描いているけど、日本の手塚治虫や宮崎駿のケモキャラのように萌えを投影するのではなく、愚かしい粗暴さを醸すためのアニモーデザインなもんだから、何〜〜〜〜もカワイクねぇぇ!しかもヘタクソ!
 プリミア同年発表作「ホットショッツ」も前年の「エクスカリバー」も無視してたタイトーが、なぜこんなカスのような失敗作をようけ国内に仕入れてきたのかは全くの謎。

 何の役にも立たない歴史的駄作だった訳ですが、じゃあ私はコレを2度とプレイしたくないかというとさに非ず。むしろ当時しっかりやり込んだ1台。
 唯一の稼ぎどころであるトップレーンスキルショット成功で、10万点×マルチプライア最高額15倍の150万がプランジ一発&ナッジング操作で決まった時の手ごたえはクセになりそう(リプレイは確か350万だったかな?)。キーボードトリルサウンドと共にカウントされるアウトホールボーナス15倍一挙流入も恍惚感たっぷり(アラビアンナイツのシタールみたいな感じ!)。
 加えるに、音楽とサウンドの痛快さはプリミア台の中でも傑出。コンポーサーの表記は無かったけど曲調からして恐らく担当はデイヴ・ザブリスキー。痛快なビートに華麗なキーボードプレイ、時折響くホイッスルやヴォイス、爆音SEなども相当気持ち良かったです。
 でもやっぱり納得いかないなぁ。トプレスキル以外、スクリューとかトップホールとかスロープとか鉄球とか全部ゲーム性に意味を成さない、バンパーヒットやスリングヒットのスイッチ反応と大して変わらない扱いっていうの。結局はクソゲーだよね。

 おっと、写真のスゴ過ぎる背景も皆さん気になってると思うので撮影時の店についても言及しときましょうか。
 店は名古屋駅前西、現存するパチンコ店“TAIYO”のビルの地下1階、《ゲームハウスTAIYO》。撮影当時は1993年頃で、当時としても昭和のインベーダーハウス風の内装は天然記念的でした。
 中は真っ暗!トイレは汚くて臭いしメンテも掃除も酷いもんだし、ボール引っかかってじじいの係員呼ぶとガラス開けるどころか台を持ち上げて床に落とすし、それ3回繰り返してフィールドが外れ落ちて壊れちゃうし、それでもボールまだ引っかかったままだったし、そんな頭弱過ぎな白痴じじぃの店員しかいないし。
 その後リースとメンテをタイトーが請け負う《ダンシングサン》なる店に改装、プリクラも置く明るくキレイな店に生まれ変わりましたが、結局そのお店も閉店。代わるテナントが入ることもなく、今も置かれたままのダンシングサンの看板がその名残りとなっています。

▲左奥スクリュー近辺。ボールロック点滅時以外はトップレーンへキックアウト。実は10万点スキルショットの関係でその方がおいしい。 ▲プレイフィールド全景。3ボール目限定でアウトレーンに点くボールセーブ[LAST CHANCE]はなかなか。 ▲トップレーン、バンパー、トップホール。サメの絵は結構カワイイな
▲この背景。パチンコ屋地下の淫猥な飲食店を急遽そのままゲーム機置いてインベーダーハウスにした歴史が手に取るように分かる ▲無意味すぎる鉄球。ダイレクトに打つと後退するのでヴァリターゲットの変種と見れば良いのだろうか ▲この下がったスロープ、マルチボールスタートがかかる以外、なんにも役割がない。因みに上がった状態だとボールはトップホールへゆく

(2010年2月4日)