各名門ブランド ピンボール・リスト

Gottlieb Pinball/1981

ブラックホール

原題Black Hole
製作年度1981年
ブランド名ゴットリーブ
メーカーD.ゴットリーブ&カンパニー
スタッフデザイン:ジョン・ブラス、アドルフ・シーツjr./美術:テリー・ドエルゼイフ
標準リプレイ点数
備考製造台数:8,774台
※ようつべに動画あるよ!⇒GO!
▲プランジャーショットは定石通りトップレーンへ。全レーン完成でボーナスマルチプライア ▲バックボックス。モーターでゆ〜っくり回転して渦が回る仕掛け。多層構造ガラスの枠に沿って等間隔電球が走る演出はマーズゴッドやヴォルケーノ譲りね
▲で、その渦のアップ。そういえばウィリアムスの「ハリケーン」も同じ演出を用いていた ▲フィールド下部。必要なショットは通常フリッパーで間に合うので、変則ツインフリッパーには実はあまり重要性が無かったりする
▲スペシャルやエキストラリットが関わる左側5バンクドロップターゲット。 ▲右側4バンクの写真も。
▲キャビネット正面はこんな感じ。スタートボタンは現行とは逆の右側に。 ▲プレイフィールド上部。決してワイドスペースに甘んじてごちゃごちゃさせず、すっきりしたデザイン。おかげで狙い打ちの習得がたやすい
▲左サイドフリッパーとロックホール近辺を斜辺ショットでパチリ。そういえば地下フィールドのスプリング形状のボールリード、ストUPINでも使われてたっけ ▲ロウワーフィールドにピントとフラッシュを合わせて撮ったらこんな感じ。地下フィールドでボールロックするの難しかった!

― COMMENTS ―
●'80年代初頭。ドラマチックなバイレベルフィールドと快活なマルチボールを導入したウィリアムス「ブラックナイト('80)」は、当時圧倒的な新勢力を誇るビデオゲーム軍に一矢報いる、ピンボール産業全体の橋頭堡となりました。

 そんな目覚ましき新機軸スタイルを名門ゴットリーブも自社に取り入れるべく、バイレベル×ワイドキャビネット×マルチボールの大作ピンボールの第一弾として「ブラックホール」の開発へと着手します。
 デザインチーフに抜擢されたのは、両親共々同社工場の古株ラインワーカーで、電子工学を志す学生だった1972年から既にアルバイトワークでウェイン・ナイアンズやエド・クリンスキに才能を認められていたジョン・ブラス
 「バックロジャース」「マーズゴッドオブウォー」で既に実績のあったブラスはこの重責プレッシャーにくじけることなく、多彩で幻惑的な仕掛けと定石に囚われぬ変則的なプレイフィールドデザインを繰り出します。
 特にフィールド中央に空いた窓からのぞける地下にロウワープレイフィールドをこしらえ、通常フィールドとボールを行き来させる……という、ある意味ブラックナイトを凌ぐ画期的なフィールドを実現化させました。
 他にもアウトホールボーナスを特設盤面デジタルディスプレイでまばゆくカウント表示したり、バックボックスではブラックホールの渦をモーター回転でアニメイト表現……等々、大掛かりなガジェットが贅沢且つファビュラスに盛り込まれています。

 余談ながら筆者は幼少期、同機種にリアルタイムで触れた覚えがあるのですが、同社がバイレベルコンセプトを更にエスカレートさせた「ホーンテッドハウス」の方を先にプレイしてしまい、ホーンテッドの方が面白い!と、ボウリング場のゲームコーナーでそっちばかりプレイしていました。


 当時同作による一般的な評価及び業績はどうだったのでしょうか。

 “あれは大掛かりで大変なチャレンジだった!同じく僕のゲームデザインだった「ケーヴマン」も勇気のいる企画だったけど、「ブラックホール」も実験的な仕様やデザインをたくさん取り入れた意欲作だったんだ。地下フィールドのボールを見易く作るには?どうやってプレイフィールド上下でボールを行き来させよう?って。開発中はわくわく楽しかったよ。初出荷直後にオペレーターから最初に入ったクレームは、コインスロットがすぐダメになったっていうものだったんだけど、ソレはコインでキャッシュボックスが満杯になったのが原因だったんだ!大評判だったよ”

 ……と、プリミアが閉鎖される'96年までゴットリーブプラントに献身し続けたデザイナージョン・ブラスの後顧を伺う限り、暗黒の地下フィールドを往還するブラックホールのSF世界観を存分に醸し出したゲーム性に当時のプレイヤーはかなり熱くなれたようで、ビデオゲームブーム相手に苦戦を強いられていた当時の市場では十分と言える、8700台以上のユニット製造を記録しています。
 さらに、前述した同社次作のお化け屋敷テーマ作「ホーンテッドハウス」では、なんど通常フィールド、2階フィールド、地下フィールドの3段階でゴーストハウス・プレイフィールドを表現。こちらも同規模のセールスをもたらしました。

 しかしバイレベルやスロープの多用によるコスト肥大化は高セールスの収益を相殺させる程の大きな問題となり、翌年開発した3段階プレイフィールドのワイド台「銀河伝説クルール」にあたっては、プロトタイプの完成時点で予算超過をこじらせてしまい、映画の不振という不運も重なり製品化を見合わせる……という、由々しき失態を招いています(余談だが同時開発のテレビゲーム版クルールのサウンド担当がデコ初期台やスターンスタトレACDCマスタングのデヴィッドシールだったという奇遇な縁にはちょっと驚いた)。

 7千8千売り捌いても収益が実らぬコストパフォーマンスの悪さを重く見た同社は、ブラックホールのバックボックスと筐体はそのままで、プレイフィールドとバックグラスと基盤を取り換えて別の新作に化けさすコンヴァーションキットピンボール「エクリプス」を開発、低価格路線を模索しました。

 ピンボール産業におけるこのコスト肥大化問題の火種はその後、

 『低予算シングルレベルフィールド台は800台しか売れなくとも修正が小回りに効いたが、高額コピライトと複雑化ガジェットと煩雑ランプレーンを濫用した「スターゲイト」「ウォーターワールド」は、例え二千台売れても泥沼の赤字をもたらすばかりだった』

 ……という、'90年代ゴットリーブの迷走で再噴出することとなってしまいました。

▲左スピナーレーン。奥のホールは暗黒地下フィールドへの抜け道に! ▲フィールド全景。下部の6桁デジタル表示はスコア表示じゃなくてアウトホールボーナス。 ▲コレなんだったんだろ。ゲーム性の低い上部右端ロールオーバー
▲ロックホールのアップ。黄色のスポットTの完成でロックライトが点滅。 ▲地下フィールドアップ。ボールロックもドロップ完成も難しいよ〜 ▲地下フィールドから脱出するボールはこのチューブ状ランプから射出!まだVUKの概念が無い時代なのだ
▲左アウト近辺。ホールディングでボールを受け止めるがちょっと怖い構造 ▲トップレーン・リエントリーとなる左レーンのアップ。惑星や恒星のようなEx.Sp.ライトが素敵 ▲地下フィールド尊重のため実質右アウトレーン・ドレインのない構造。スリングショットも排斥。ボールアクションが退屈になった

(2014年8月22日)