各名門ブランド ピンボール・リスト

Gottlieb Pinball/1978

ピラミッド

原題Pyramid
製作年度1978年
ブランド名ゴットリーブ
メーカーD.ゴットリーブ&カンパニー
スタッフデザイン:エド・クリンスキ/美術:ゴードン・モリソン
標準リプレイ点数不明
備考製造台数:950台/「クレオパトラ('77)」と同フィールド
※ようつべに動画あるよ!⇒GO!

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ゴットリーブ'78年に発表した「ピラミッド」は、前年発表のソリッドステイト台「クレオパトラ」と同プレイフィールドの2P(ツープレイヤー)エレメカバージョンです。

 ……えっ? 去年、華々しく発表されたデジタルスコア表示のソリステ台「クレオパトラ」と、更にそれと平行して製造した4Pエレメカ版「クレオパトラ」があったのに、その翌年にまたわざわざ旧態リールドラムスコアのおんなじフィールドで「ピラミッド」造っちゃったの?同じフィールドで3台目!?しかもエレメカ版で2機目!?!?
 ははーん、エレメカからソリステの過渡期に乗じて両バージョンを量産して売りさばいた、あこぎな策略だな?
 ……いやいや。私もつい最近までそう思い込んでいたのですが、各資料を鑑みると、決してそうとも言い切れないようです。
 この時期はバリーもウィリアムスもそうだったのですが、IC化筐体への投資を渋る保守的な一部のオペレーター側の懸念に応え、ゲーム性の評判高いピンボールは、わざわざソリステ版とエレメカ版の両方をリリースすることでやりくりせざるを得ませんでした。


 ピラミッドの前年ソリステ版「クレオパトラ」のフライヤーをひも解いてみると、

 “ロックウェルインターナショナル社との技術提携により、宇宙開発テクノロジーと同等のマイクロエレクトロニクスシステムを導入。我がゴットリーブの技術力との融合により、将来性溢れるニュー・ソリッドステイト・ピンボールマシーンが、オペレーターの皆様に確かな利益をもたらします。このブルーディスプレイのまばゆい蛍光デジタルスコアは、かがり火のようにロケーションを煌々と照らし、プレイヤーたちをたちまち魅了することでしょう。”

 ……などと、ゲーム性にはまるで触れずにハード的な進化とその訴求力を朗々と強調。大仰にもNASAの宇宙開発の話まで持ち出して、IC筐体の導入に難色を示す保守的オペレーターへの説得に腐心していることが伺えます。

 しかしそんなメーカー側の力説をもってしても、当時の一部排他的オペレーター達の間におけるソリステ化に対する拒絶、及び旧態エレメカマシンへ信頼は根強く、
 “電光スコアピンボールは信頼なぞできん!しかしゲームは面白いから、同じ中身のエレメカ版をもう1機種出してくれ!”
 という需要に応え、今回改めて先祖返りリールドラム筐体「ピラミッド」として千台近いユニットを手掛けることとなった訳です。

 今となっては違和感を感じる話かも知れませんが、保守的なピンボール産業においてこのような事態は珍しいことではありません。
 例えばかつて1953年ウィリアムス「アーミーネイヴィー」でドラムスコアを初導入した際も反発をくらって僅か1年で元の電球スコア式に戻す羽目となり、結局'50年代末頃にゴットリーブがドラム筐体スタイルでまとまったヒットを出すまでその進化が足踏みしましたし、現に近年ではWMSの新基軸“ピンボール2000”が受け入れられず、その反動で同時期リリースの従来型ドットマトリクス筐体他社製品「サウスパーク」に需要が集まった例もありました。

 保守的で排他気質のピンボール業界において何か新機軸を浸透させるのはとても難しいことで、好調期の'70年代後半ですら、各社それぞれが難儀していたことが伺えます。

 余談ながら、このソリッドステイト革命の時節にバリーがロックウェル社とウィリアムスを相手取り、IC化パテント侵害のかどで訴訟を起こしました。
 手元の資料にはその後の判決の詳細については記されていませんが、その後ロケーションにおいてソリステ台が完全にピンボールの主流となって溢れかえるのにさほどの時間はかからず、結果分が悪くなったバリーが刀を鞘に収めたことは想像に難くありません。


 さて、フィーチャーについても触れておきますと、5色のドロップターゲットに呼応するトップレーン&リターンレーンによるロールオーバー各色でライト表示、点け揃えてヴァリューが上昇。
 これを倍にするには、左右キックアウトホール両方へシュート。半月づつに分かれたダブルボーナスライトでステイタス表示。満額は3万点。
 因みにロールオーバーでもドロップでもいいので5色の役をそろえると、左右端スポットTのEx.がリット。

 新宿高島屋ピンボールワンダーランドではついついキャプテンファンタとウィザードに心を奪われましたが、機会があればもう少しやり込んでおきたい1作。

 2014年現在、とうに基盤が潰れてスクラップとなっていった'70年代のソリステ台に対し、この名プレイフィールドが生彩な状態で打てるのは、どれもエレメカ版ばかりであることに気づかされます。


(2014年6月5日)