Gottlieb Pinball/1993ストリート・ファイターU | ||
原題 | Street Fighter U | |
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製作年度 | 1993年 | |
ブランド名 | ゴットリーブ | |
メーカー | プリミア・テクノロジー | |
スタッフ | デザイン:レイ・タンザー、マイク・ヴェットロス、ビル・パーカー、ジョン・ノリス/美術:デヴィッド・ムーア、コンスタンティーノ・ミッチェル、ジャニーヌ・ミッチェル | |
標準リプレイ点数 | 不明 | |
備考 | 製造台数:5,550台 ※ようつべに動画あるよ!⇒GO! |
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●当サイトが矜持を持って明言申し上げましょう。 「ストリートファイターUピンボール」は、筆者がこれまでプレイした台の中ではケツから2番目!今も尚語り草なクソゲーの鑑です。 言うまでも無く、'90年代における格闘ゲームブームの火付け役となったカプコン社同名ビデオゲームのコピライト作で、「スーパーマリオブラザーズ('92)」のピンボール化企画により一定のセールス的成功を収めたプリミアテクノロジー社が、ビデオゲームライセンス作第2弾として'93年に発表した迷モデル。 ピンボーラーは勿論、一般ゲーマーをも唖然とさせた永遠の怪作です。 何といっても、カプコン格ゲーキャラを海外のアーティストがそれなりのアメコミ的アプローチで描出したバックグラスアートの出来が、失笑禁じ得ぬ、壮絶極まりない体たらく。 ベビーフェイスだったリュウとケンが、当時としても時代遅れのむさ苦しいブ男にアメコミナイズ化されて器量が大幅に落ちたのはまだいい方で、中でも頬骨が尖り目じりと口角の釣り上がった研ナオコそっくり春麗なんかは、ある意味世紀の傑作! そのイロモノ丸出しぶりの痴態はしばらく絶好の話のネタとして、皆のいい笑いものになりました。 ゲーム性の評判はと言うと、これまた惨憺たる有様。 氾濫するビッグポイントへの散漫で退屈な各ショット。チープで下手クソなサウンドとドットアニメ。そして魅力もカリスマ性も欠如しただらしのないアートへの指弾は、日本国内は勿論海外でも止むことが無く、例え本国アメリカのプレイヤー達の視点から見ても、あの絵に関しては受け入れ難い印象を持たれたようです。 支持の低さは数字にもはっきり表れており、ストUという強靭なネームヴァリューにより5000台以上の製造ユニット数を記録しておきながら、米誌ReplayMagazineのインカム集計ランキングでは発売月から僅か4か月でランク外へ早々と転落。同社「レスキュー911」ですら9か月持ちこたえたというのに。 加えるに、発売当時に筆者が運営していたサークルで集めた'93年版ピンボール人気投票でも、「ジュラシックパーク」「ジャッジドレッド」といった強敵クソゲーを蹴落としてワースト1に輝くという、誠に揺るがない悪評ぶり。 さらに混乱は続きます。 当たり前の事なんですが、日本でストUPINを販売したのは当然カプコンではなく、当時プリミア社とディストリビュート契約を結んでいたタイトーでした。 しかしながら筐体にはプリミア、ゴットリーブ、タイトー、そしてライセンス元のカプコン……といった4つのブランドが銘打たれることとなり、普段ピンボールをしないゲーマーにとって、これがどこのメーカーの製造台なのか分かりかねたようです。 しかもこの2年後にU.S.A.カプコンがピンボール部門を設立、真正のカプコンピンボール社が世に現れたもんだから、益々混乱に拍車がかかりました。 中にはゲーム雑誌側にも理解しきれてない馬鹿がいて、“カプコンのピンボール(ピンボールマジックのこと)を見た!”と格ゲー全盛のさなかにはしゃぐ、ゲーメスト誌読者コーナーの無邪気な投稿へのレスポンスとして、 『カプコンのピンボールと言えばストリートファイターUがあったけど、それ以来ヒソカに続々と新製品をリリースしていたらしいぞ!』 ……などと、無知蒙昧な担当者による適当コメントまで巷に流言する始末。 雑誌の立場上、メーカー側に電話1本入れるなり、ファックス1枚送ってもらうなりして簡単な裏取りぐらいすればいいものを。なんて幼稚なジャーナリズム。 一応フィーチャー構成の詳細にも触れておきますと、同社では過去に「ヴェガス」や「シルヴァースラッガー」などにもあった、二者択一のセレクトフィーチャーが重心の編成。各ポイントで点滅するディフィートライト目掛けて放り込む度にそのパートのキャラを倒したことになり、左右ボタンの選択で獲得したい方のフィーチャーを拾得。 内容はボーナス点、2ボールマルチ(散在する点滅箇所のJPを通していくだけ)、カークランチ(地下フィールドのミニカーへのボールヒット稼動)、ローリングニンジャラウンド(各ポイントローテートで逃げ回る点滅赤ライトをシュート)、ワンツーパンチ(コンボショット挑戦)、各レター進捗、など。 全キャラを倒すとチャンピオンチャレンジモードへ突入、シングルボールによる点滅箇所全て撃破で5億点獲得。 他、なぜか春麗がダーツをするプランジャースキルショット、時間内にブレスレッドターゲットに当てるカウントダウンボーナスなどが有り。 全てにおいて難ありのマシンではあるのですが、このゲームの最たる問題点は、やはりそのゲーム性の低さ。 バトルの熱さやタイマンの丁々発止、戦いの緊迫感と言った格闘ゲームのスリルが、これっぽっちも再現できていないんですよ。 肉弾バトルを再現したいなら「チャンピオンパブ」や「メディーヴァルマッドネス」のように、変化のある大掛かりなトイオブジェを出現させ、ひたすら打ち合う激突ボールアクションを起こさせるべきでしょう。 なのにこのストUPINでは熱いバトルどころか、淡々と各所を通して点滅ライトをリットさせていくだけの、まるで緊張感の無い緩い展開がダラダラ続くばかり。すぐにプレイヤーはうんざり。 カークランチのミニカーや春麗の回転人形、ケンの円形ループも仕掛けとして全く面白みが無く、盛り上がらぬこと夥しいです。 他、意味不明な“ローリング忍者”やダーツをする春麗など、そんなくだり本家にあったっけ?と首をかしげる場面も散見。ストUや格ゲーに対するデザイナーの思い入れの無さが伺えてしまい、クリエイティヴ的にも苦しい様相。 バックグラスアート以上に乱雑なドットアニメやプレイフィールドアートの出来も、ご覧の有様……としか言いようがないですわ。 チーフデザイナーはメカニカルエンジニアとしては優秀なはずのレイ・タンザーでしたが、所詮全く門外漢のストUビデオゲームのピンボール化デザインを請け負ったビハインドに加え、ドットマトリクスシステム等の不慣れな新機軸ハードに挑まねばならなかった逆境に対しても、彼本来の素養を発揮しきれていません。 ルール的な部分はジョン・ノリスのヘルプ援護を貰い、どうにか商品として間に合わせたという内実だったそうです。 そもそもゴットリーブはトランプやスポーツをテーマとした、カジュアルで軽妙なルールデザインを得意とする一団であって、熱い格闘バトルアクションやシリアスで重厚な大量キャラクターを蔵するコピライトのピンボール化なんて、始めから向いていなかったのでしょう。 因みに日本国内では今でも《台場一丁目商店街プレイランド》などに設置されているものの、やはり当時を知らぬプレイヤーにとっては格好の笑いネタ。写メツイートで弄ばれては今も噴飯され続ける、道化者のような余生を送っているようです。 ところで、プリミア社のその後のビデオゲームコピライト路線についてですが、「スーパーマリオブラザーズ/マッシュルームワールド」「ストリートファイターUピンボール」に続くビデオゲームライセンス作の第3弾として、かの「ゼルダの伝説」ピンボールの製作にも着手していました。 「キューボールウィザード」のジョン・ノリスをチーフデザイナーに、美術班にはマリオの時と同じくデヴィッド・ムーアとコンスタンティーノ・ミッチェルらを迎え、マシンも着々と完成へ仕上がりつつあったその矢先。 コピライト元の任天堂側がライセンス料として最終的に提示してきた額があまりにも高額だったため、マネージメント側はライセンス取得及びそのゲーム化を断念せざるを得ない事態へと逢着。 慌てたデザインチームはアートもゲーム内容もゼルダをダイレクトに髣髴させない作風へ急ピッチで焼き直さねばならず、それで急ごしらえで世に出したピンボールが「グラディエイターズ('93)」だった訳です。 確かにグラディエイターズにはそこはかとなく「ゼルダの伝説」だった頃の名残が、ゲーム性及び世界観の随所に感じられるような気もしないこともないです。機会があれば一プレイの程を。 それにしても、Cミッチェルの筆勢による、アメコミ風筋肉マッチョなリンクとか。研ナオコ顔のゼルダ姫とか。 もしかしたらそんなトンデモピンボールアートが拝めていたかも知れないと思うと、やはりお蔵入りは残念だったような気がします。 |
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