Jersey Jack Pinball/2017ダイヤルド・イン!(リミテッド版) | ||
原題 | Dialed In! (Limited Edition) | |
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製作年度 | 2017年 | |
ブランド名 | ジャージー・ジャック・ピンボール | |
メーカー | ジャージー・ジャック・ピンボール・インク | |
スタッフ | 原案:パット・ローラー、テッド・エステス/プレイフィールドデザイン:パット・ローラー/美術:ジョン・ユッシー/映像:ジャン・ポール・デ・ウィン、J・ズィーリンスキ/メカニクス:ダン・モルター、ヨランダ・ワイゼントン、ウォーリー・ウェルチ/音楽:デヴィッド・シール/ソフトウェア:テッド・エステス、ジョー・カーツ、JT・ハーキー、キース・P・ジョンソン | |
標準リプレイ点数 | ― | |
備考 | ― |
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【1st.インプレッション&雑感】 事故や災害に日々脅かされている架空の都市、クワンタム・シティ。大地震、竜巻の発生、酸性雨、火山噴火、隕石の落下、電磁波発生や人工知能の暴走まで。 “こちらの地区で大火災発生だ!” “列車事故よ。閉じ込められてるわ!” 信頼される友から次々と連絡が入り、自己のセルフォンネットワークを駆使して事態の収拾に奔走する主人公。 そんな時、非通知で正体不明の人物から警告めいた謎の着信が入る。……キミはいったい何者なんだ! それはクワンタムシティに未曾有の混乱を巻き起こす、ほんの嚆矢に過ぎない着信だった―――。 とまあ、ストーリーラインはこんなところか。 「ダイヤルド・イン!」はジャック・グァルニエリがGMを務めるジャージージャックピンボール社による、「オズの魔法使い('13)」「ホビット('16)」に続く通算3作目のピンボール。コピライト台だった前2作と異なり、完全オリジナル作劇で挑む意欲作である。 尚、明文化する以上ダイアルドイン、ダイヤルディン、ダイヤルイン等々、機種名日本語表記をどうすべきか迷ったが、そのまま自然なカタカナ表記である「ダイヤルド・イン!」を正式名称とし、動画ヒアリング確認による“ダイヤルディン”を通称で呼ぶことに。 ディストリ不在により商標登録がない為、日本語名が統一出来ないのが悩ましいところである。 国内ではピンボーラーに今やお馴染み、大阪心斎橋アメリカ村ビッグステップ内《Silver Ball Planet》に英姿颯爽と入荷、絶賛稼働中。 輸送事故により設置がやや遅れてしまったそうだが、2017年秋に無事登場を叶えた。 筆者はやり込んでまだまだ日は浅いが、期待にそぐわぬ秀作であった。 プレイしていてとにかく楽しい。 スクープで始まる[ディザスター]イベント、レーンへの立体アニメーション投射のみならずマグネット稼働のボールアクションもある3-Dプロジェクター[シアター]、奥の仕組みががどうなってるのか分からない左ループの[クレイジーボブ]のちょっとしたアウォード……などなど。 役を揃えるのが面倒くさいと思わせず、自ずと次々噛み合わさっては更なる展開に導いてくれるパット・ローラー独特のゲーム性は健在。 ジャージーJのお株であるバックボックスのフルスクリーンLCDは勿論、右スクープには実物大スマートフォンを掲げ、更にはカメラフラッシュでプレイヤー当人や周辺のギャラリー達の顔認証をゲーム上に登用する離れ業まで登場。 映像ハードを駆使し、ゲームの戦況や咄嗟のフィーチャーの説明、ファニーなキャラクター達の出現を演出していて、プレイヤーはゲームの世界観へとたちまち魅せられてゆく。 それでいて決して内容をビデオゲーム化に飲まれることなく、歴々とピンボールのゲーム性を厳然に保っているのが素晴らしい。 そんな中で一番面白いのがやはり定番マルチボール[アンダーアタック]。 ボールロックを完了すると犯人から非通知の着信が入り、右スクープスマホの呼び出し音が鳴り続ける……というマルチリーチ時のミステリアスな緊迫感にはゾクゾク。 マルチボール中は各ランプ&ループレーンでジャックポットだが、獲得後の時間制スーパーJP確保に失敗すると犯人からの攻撃を受けたことになり、フリッパーが3秒ほどではあるが脆弱化する……という禁じ手の演出には憮然。 ピンボールのコンディションの悪さに永らく悩まされている日本にとっては全くシャレにならない演出である。ただマシンの状態さえ良ければ面白いアイディアだ。 別脈のマルチボールとして左ループにあるクレイジーボブ系が3種あり、それとディザスターモード+シアターヴァリューを重ね取りすると相当稼げてしまう模様。 ウィザードもクワンタムカオス、アルマゲドン、ショウダウン…と3段階用意。これはやらいでか!と腕が鳴る。やり込みがいがありそうだ。 デザイナーはピンボール業界においてSリッチーと双璧レジェンドと言える老練パット・ローラー。 ウィリアムス時代には常にマネージメントから睨まれ続け、自分の思うようなゲームデザインが叶えられなかったそうだが、ジャージーJにおいては全面的な裁量を与えられ、思う存分手並みを振るえたという。 フィールドデザインは勿論、ジャージー仕様のキャビネットも全面的にパットがリデザイン。 カメラレンズ搭載のバックボックス、スピーカー仕様と音質の向上、ちょうつがいの仕組みまで指定通りに作り変えた。 キャビネットフロント左下のヘッドホン端子及びボリュームコントロールスイッチの存在も、ホーム需要が増加した現在の市場を考慮、鍵の開閉無しに手軽に音量調節を行えるよう配慮した結果である。 ただ、グァルニエリが掲げるジャージーJ社の厳格な表現コードだけは遵守したという。 登場人物に銃を持たせない。爆弾は用いない。テロリズム性のイメージからは出来るだけ遠ざける。 映像がリアルになって来た以上、プレイした10歳の少年が夜中にうなされるような過激な描出は徹底して排除することにしたそうだ。 パットローラー過去作品である「アダムスファミリー('92)」「ロードショー('94)」「リプリーの大発見!('04)」との類似性をプレイヤーが指摘したところ、パットはむしろダイヤルディンはウィリアムス末期の未発表作「ウィザード・ブロックス('99)」からの血を引いているという。 マルチボール中に攻撃元から迫り来るラインフラッシュがフリッパーまで到達すると敵からの攻撃を受けたことになり、フリッパーがしばし制御不能になる……というゲーム性は、そのウィザードブロックスで一度試みていた。 残念ながらウィリアムス閉鎖により10数年間日の目を見ることはなかったが、かようにジャージージャックのダイヤルディンでこのアイディアは結実。 奇しくもウィリアムス晩年フォーマット“PINBALL-2000”とよく似たプロジェクターハードも搭載。“プレイヤー攻撃”のスーパージャックポットフィーチャーは、こうして甦ったのだった。 ただ、パット・ローラー達が口惜しがっていたことは、2年に渡る制作期間中、その自信作である3-Dプロジェクターの登用がスターン社にリークされてしまい、同社'16年製「ゴーストバスターズ」でまんまと同じ装置が出し抜かれてしまったこと。 明らかにジャージーJ側の誰かによる漏洩で、ウィリアムス及びデータイースト時代に辛酸を舐めた経験を繰り返したような事態に、パットも臍を噛んだという。 今作「ダイヤルド・イン」、ピンボールとしては5段階評価で言うと4点ぐらいの秀作であるが、Pローラーのデザイン作としては正直標準の出来。「ロードショー('94)」「ワールウィンド('90)」に出逢った時の衝撃には及ばない。 疑問点としては、無駄なギミック趣向によるボールスタックがあまりにも多過ぎることや、ロードショーの時にはわくわくするカウントが楽しめたはずのアウトホールボーナスがちっとも楽しくなくて無味乾燥に退屈なことなど。 それでもスターン時代の中途半端なローラー作よりは完成度は断然高い。 あの堂々たるフィールドデザインはマニアプレイヤー以外にも訴求力があるようで、一般人がコイン投入して楽しそうにプレイしている光景を見かけるのは嬉しい。 ジャージージャックがホビットの発表まで3年もかかった時には“果たして大丈夫なのか”と思ったが、ダイヤルディンは勿論次作「パイレーツ・オブ・カリビアン」がショーで最高の出来と礼讃を浴びていて、プレイヤーとしても大変頼もしい。 全年齢向けピンボールを目指す同社今後の新作は、「トイ・ストーリー」とも「チャーリーとチョコレート工場」とも「ザ・マペッツ」とも言われているが、今後ジャージージャックの動向には益々要注目である。 (2018/3/17) |
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