各名門ブランド ピンボール・リスト

Jersey Jack Pinball/2025

ハリー・ポッター(アーケード版)

原題Harry Potter(Arcade Edition)
製作年度2025年
ブランド名ジャージー・ジャック・ピンボール
メーカージャージー・ジャック・ピンボール・インク
スタッフプレイフィールドデザイン:エリック・メウニエル/ゲームデザイン:ジョー・カーツ/美術:MinaLima(映画ハリポタ公式アーティスト ミーナリーマはミラフォーナ・ミーナ、エドワルド・リーマのユニット)、ジャン-ポール・デ・ウィン、ジャスパー・エイブルス/ソフトウェア:ダンカン・ブラウン、ビル・グルップ、ジェイスン・アレン、テイラー・スナイダー/エレクトロニカルエンジニアリング:ジョー・アーヌスト、ウィル・メルカード、エリック・ミラー、ルナ・シラヴァーファング/LCDアニメ:オラフ・グレミー、ジャン-ポール・デ・ウィン、ジョニー・ウィーゲル/音楽:デヴィッド・シール、ピアース・コルベア/声優:マーク・シルク/メカニカルエンジニア:ダン・レイチック、ニック・ジェンセン/3Dスカルプチャ:ラース・ショールテン/許諾監修:ジャック・グァルニエリ/プロデューサー:デビー・ホルスティン/プロダクションディヴェロップメント:クリストゥル・ゲミニック
標準リプレイ点数
備考

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【1st.インプレッション&雑感】

●各ボール開始時、早くも指令が出ている。[ロンターゲットに当てること][ハーマイオニーターゲットへ当てるべし][左ランプレーンに行きなさい]……等々。10秒以内の成功でミリオン単位のスキルショットボーナス点は勿論、ボールロック点灯、クィディッチ試合即開始など、その箇所に因んだ有益な役が得られるのでお見逃しなく。アクションボタンで箇所の変更も利くし、左フリッパーボタン押したままにすると更なる案内状が……

School-Lesson分かりにくい!スクープ突入後1〜6年のどれかを選んで、その年の10本の授業を受け終えたのち、もう一度スクープへ駈け込んで最終試験を受ける。それらレッスン内容は時間制で、[オービット3連続]とか[スピナー20回転]等々。示唆に乏しく、分かりにくいのが難点。赤/金色フラッシュアローが啓蒙らしいのだが、タイムアウトで“LessonFailed...”と表示されても、結局どこに何がかかっていたのかは分からずじまい。但しアクションボタンのパワーボムでレッスン強制合格の技があり、このボムはダイアゴン横丁のうちの1軒で貰える。

●で、その中央ミニレーンのダイアゴン横丁も分かりにくい!ハリーアップ?パワーボム獲得?JJPには珍しくビデオモード?突然高額JPまであるのは嬉しいけど料簡が腹に落ちない。なぜなら、店舗5軒、全部毛色が異なるフィーチャーなのだ。但し有効化方法は同箇所中央レーン3回以上シュート…とシンプルなのはよろしい。ビデオモードは説明が一瞬だけ出てスタートするが、教示が出たら声に出して“左,アクション,左,右!”などと声出し確認しながら挑むとクリアし易いゾ。

●レギュラーマルチボールが3種ほどあるのだが、どれも初心者にとっては難物、難解。[ホグワーツ探検]2ボールマルチ開始には中央ランプ/階段ランプ経由で階段通路を2箇所みつける…って言っても普通分かんないよね。[ゴールデントリオ]3ボールマルチボールも、スタンダップのR-O-N,スタンダップのH-E-R-M-I-O-N-E,リターン/アウトレーンのH-U-R-R-Yの完成でロックリット、最終ボールロックの決め手は右オービット…って全部難しいよね。[デスイーター]カウントダウン2ボールマルチも、あの狭っこい1枚ドロップレーン連続狙い打ちしんどいよね。ビギナーズラックをもたらす易しいマルチボールが無いのだ。

●クィディッチ試合に準えた左上角上段フィールドは宙返りランプレーン連続でOK……かと思いきゃ、スピナーとその両脇ゴールポスト激突⇒上部に両端に掲げられたプチボールを稼働させて、ようやく勝利。また点滅サイクルで逃げ回る白ライトはあの羽ボール[スニッチ]の準え。捕まえれば一発勝利。スリザリン,ハッフルパフ,レイブンクロー全てに勝利すると[クィディッチワールドカップ]マルチボールも有り。

●スネイプ先生の授業が始まって、左ランプはコレ,中央ランプはコレ,右オービットはコレ!2回通したら獲得、でもこのうち得られるのはひとつだけ。はいスタート!……って面白いけど性急過ぎて頭に入ってこない。でもどれも確保すると有利なものばかり。特に[Protego!ボールセーヴMAX]が出たら絶対逃せない。[TILT警告1回猶予]も欲しい。開始時に“ヨシ!ヨシ!ヨシ!!”指差し確認すると認識し易いのでお試しあれ。

●駆け足でゲームの真贋を下すが、ジャージージャックハリーポッターは、そのビッグタイトルに全く引けを取らない傑作となっている。例によって日本国内低電圧稼働によるフリッパーの弱さ、ロケ特有のTILT判定の峻険さには苦戦を強いられるが、ゲーム性の高さは同社製の上位に位置する。複雑なボールフローが次々に呼び込む豊かなゲーム展開が素晴らしい。特に回転して変化する空中階段(ステアケース)などは、3つの突入口と13ものコースが咄嗟に組み換えられて転回に次ぐ転回、ボールをまさかの場所へ着地させる。そこから少額フィーチャー、高額ハリアップ、重要ボールロックを織り成しながら、次はコレ!次はコレ!……とのべつまくなしに試練を課す。クリアすればマルチボールやプレウィザードなど、更なる大掛かりなイベントが降りかかる。しかも、映画そのままの展開、そのままの映像、そのままの俳優達が、四方八方から押し寄せるようにプレイヤーの技量を問う!映画好きもピンボールマニアも堪えられない。デザイナーは「ガンズ・アンド・ローゼズ〜Not In This Life Time」「パイレーツ・オブ・カリビアン」でも曠世の才を発揮したエリック・メウニエル

●ところで「ハリーポッター」ピンボール。本当はスターン社が出すはずのシロモノだった。2018年の段階でジョディー・ダンクバーグ、ジョージ・ゴメズ、キース・エルウィンら一行がフロリダハリポタパークにロケハンに赴いていた。「バットマン66」「ビートルズ」で陰に陽に活躍したライセンシング代行業者カポウ・ピンボール社ジョー・カミンコウもライセンス取得に動いている。当時スターン社在籍のクリストファー・フランチもハリーポッターPINのモックアップアートを手掛けた。ワーナーとJKローリングとの許諾交渉は難航し、かなり時期が空いてから許諾購入の競売が開始されたのだが、なんとスターン社はうっかり入札し忘れてしまい、締め切り直前に目敏くジャージージャックが射掛けるように落札、権利を獲得したのだという。ほんの一瞬の油断で、スターンは鳶に油揚げを攫われたのだ。

●勿論、ジャージージャックとてこのライセンス料は半端ではない。本編映像も俳優肖像も、ワーナーから使用許諾をきっちり押さえている。比較対象の踏み台にして恐縮だが、本作を打った後にオープンワールドRPG「ホグワーツ・レガシー」の動画を開くとチープ過ぎて見れたものではないし、ゲームボーイやらプレステやら1,2作目公開時に発表されたハリーポッターゲームジャケットの、薄ら寒いリアルのび太風ブサイクづらに至っては、もう思い出しただけでもオゾケが震う。それがどうだ。アートワークやLCDの麗しさたるや。主人公3人も先生たちも名立たる悪役達も完璧なパッケージだ。その許諾料、ざっと100万$かかっている。この値段はスターンの「ビートルズ」ピンボールの許諾費用に匹敵する。

●白眉は、オルゴール調ワルツのしらべが特徴的かつ魅惑的な「ヘドウィグのテーマ」の使用許諾だ。ワーナーから購入した許諾一式の中に、ジョン・ウィリアムズのスコアは含まれていなかった。よってパイレーツオブカリビアンの時と同様、“とても良く似た雰囲気の、それっぽい別の音楽”をコンポーズすることになったのだが、あの象徴的なヘドウィグのテーマだけは、どうしてもゲーム中に流したい。スタートボタンを押した時にあのメロディーが流れないとハリーポッターではない。しかしその使用許諾として提示された額は、「ゴッドファーザー」全許諾料の2倍以上だった。メウニエルとグァルニエリらが話し合った結果、ジャージージャック社はその使用許諾を購入した。各自プレイヤーはスタートボタンを押した時に聴こえてくるあのしらべを、心して聴いて欲しい。

●どうしてもワーナーから許可が下りなかった事象もあった。TILT判定アウトのデモでは“嘘ついちゃダメよ”とハリーの手の甲に焼き印が押される体罰シーンが本編から引用されていたが、本当はI Must Not Tell Lies⇒I Must Not TILT“台傾けちゃダメよ”と押される、シャレの利いた演出をやりたっかったのだという。LCD担当オラフ・グレミーが僅か4時間ながら、完璧に文字を並べ替えて、リアルに本編がそうだったかのように仕上げた映像を提出。しかし、確かにピンボールに準えた素晴らしいアイディアですね、と多少のフォローを挟みつつも『本編改竄は禁止』とワーナー側は却下。他、ボールロック時にはハリーの手の上に水晶玉が浮かんでいるアニメーションデモを起案。見本映像を送ったが、『ハリーにそんな場面は無い』とこれも突き返されている。しかしそのおかげで、3個分のロックリットでLCDアイコン3人がワンドをかかげ、ボールロックで鹿,カワウソ,テリア犬、のそれぞれの守護霊が3人の背後につき、全員揃ってマルチボール突入!という、最高にドラマチックな演出が生み出されることとなった。

●公式キャストとの邂逅もあった。本機種コールアウトを担当した声優マーク・シルクは、映画本編で演じていた高齢の俳優さんが亡くなられた跡の、後任の組分け帽子役公式声優。USJ,おもちゃ商品でも同役を演じている。そんな彼は、なんと生粋のピンボーラーだった。しかも彼から売り込んだのではなく、ジャージージャック社から“私はジャージージャック社でピンボールのリードデザイナーを務めておりますエリック・メウニエルと申します”……と、襟を正した懇切丁寧なオファーが自分宛てに正式通達。非常に驚き、歓喜した。勿論ジャージージャックもエリックのことも全部熟知している。二つ返事で引き受けたのは勿論、ピンボールエキスポでも登壇し、組分け帽子ヴォイスをご披露してくれている。同社スタッフ陣とも友達になれて本当に上機嫌そう。

●他、48通りという驚愕のボールフローを考案したエリックも凄いが実現化したメカ担当ダン・レイチェックも相当の俊傑、デスイーター部門もアニメーションも含めてライセンサーにOKを貰って心血注いでまとめあげたのはジェイソン・アレン、音楽担当1st.ビリングはこの道のベテランデヴィッド・シールと打たれているが実質的には彼の扶助をもらいながら初登板のピアース・コルベアが手掛けた、髪も髭も本当に魔法使いみたいな外見のダンカン・ブラウンが恐ろしく複雑な転回ステアケース瞬時判断ボール適切着地コードを完璧に仕上げた、ステアケースをよく見ると小さくレンチキュラーレンズが張り付けてあって角度を変えると肖像画が変わる、100プレイ毎に自動難易度調整するよう施してあるから上級者ばかりが続けて打つとウィザード行くのがどんどん難しくなる、'64年製フォード車のミニカーが刺さった樹木の枝が滑らかにブルブルするミニチュアはバンパー地帯という設置場所からして耐久性を考慮せねばならず完成まで大変に苦労した―――等々。非常にたくさんの逸話や苦労話があるのだが、筆者としてはファイナルである[The Boy Who Lived]に到達してから改めて批評と解説文をしたためたい。[ホグワーツ大戦争]、[デスリーホロウ]、[OWLマルチボール]まではなんとか来れたが、まだ先は長い。どうか正式リライトはあと2年くらいお時間頂けませんでしょうか。なにとぞ。


●各ヴァージョンの価格も表記。

・アーケードイディション:9,999$
・ウィザードイディション:12,000$
・コレクターイディション:15,000$

 コレクター版は公式ハリポタアーティストのミーナリーマがキャビネットやバックグラスのアートワークを描き下ろしている。ウィザード版は映画本編に準拠したアートをジャン-ポール・デ・ウィンらが仕上げた。アーケード版は豪華版の装飾が省かれているがゲーム性の劣化が無い。

 また、下記の映画8作もの財産が含有されている。

「ハリー・ポッターと賢者の石」
「ハリー・ポッターと秘密の部屋」
「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」
「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」
「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」
「ハリー・ポッターと謎のプリンス」
「ハリー・ポッターと死の秘宝(前後編の2本)」

 要は本家8作全てのパッケージである。本編映像、俳優肖像、サウンドトラックを除いた音声一式。改めて本作がハリポタゲーム史上、前代未聞の偉業を成し遂げているのがお分かり頂けるだろう。ピンボールファンは是非虎の威を借る狐の如く、他のゲームジャンルへ胸を張って誇ってもらいたい。

(2026/3/21)



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