各名門ブランド ピンボール・リスト

WILLIAMS/1988

バンザイ・ラン

原題BANZAI RUN
製作年度1988年
ブランド名ウィリアムス
メーカーウィリアムス・エレクトロニクス・ゲームズ
スタッフデザイン:パット・ローラー、ラリー・ディマー/美術:マーク・スプレンガー/メカニクス:ジョン・クラッツク/音楽:ブライアン・シュミット/ソフトウェア:ラリー・ディマー、エド・ブーン
標準リプレイ点数180万点
備考製造台数1,750台/ようつべに動画あるよ!⇒GO!
▲縦型フィールドを備えたバックボックス。ところで今回はあえてボロい店で撮った最古の写真を使いました ▲かの新小岩オモロンでキレイに撮れた写真資料ではなく、写りは悪くとも地元現役時代の写真の方が意義深いと判断しました
▲時節は1993年頃。名古屋市の今池駅前、タイトーリース系「ゲームプラザミモランド」での撮影 ▲因みにコレ1枚だけは、2000年代初頭頃のオモロンで撮ったヤツ

― COMMENTS ―
「バンザイ・ラン」は製造側に難色を示されがちな異色の変形機種でありながらも、その野性的なボールアクションと雄々しいサウンド、ただならぬ緊張感のクライマックス等、プレイヤーをとにかく熱くさせるウィリアムスピンボールの傑作となりました。
 モトクロスのテーマ性や燃えたぎるロックミュージックのBGMもさることながら、何と言ってもバックボックス内に本格的垂直プレイフィールドをしつらえ、プレイ状況によって通常のプレイフィールドとボールが盛んにゆききする、という前代未聞のゲームデザインをやってのけました。

 このゲームの目的はモトクロスレースでの制覇。青の選手(青スポットターゲット3枚)、黄色の選手(黄スポットターゲット3枚)、赤の選手(赤スポットターゲット3枚)、緑の選手(トップレーン3本)ら4人の強豪レーサーに勝負を挑みます。
 するとバンザイヒル(垂直フィールド)出場権が得られるので、トップホール経由でボールはバンザイヒルへ!スピードもアクションも激しい垂直フィールド内で、黄選手(下部左ロールアンダー)、緑選手(下部右ロールアンダー)、青選手(下部中央スポタ)、そして紅一点の強敵赤選手(トップポケット)、のライバル全員を倒して下さい。
 4人のレーサーとの勝負全てに勝ち星をあげれば、いよいよ大勝負マルチボールへ。垂直フィールド内ロックポケットにボールを預け、新たなボールをプランジして2マルチボール開始。マルチの最中、通常はキックバック再点灯を担う上部右バンパー地帯キックアウトホールタイマーロックがかかるので、先ずはここに1コボールロック。それがリリースされないうちにアナザーボールを急いで時間内に垂直フィールドへ!そしてこの時、最も難易度の高いバンザイヒルの頂上(激突キャプティヴボール)を征服した覇者には、100万点のジャックポットを授与!

 バックボックス内にボールアクションがある台…なんてのはエレメカ・リールドラム仕様の頃から別段珍しくはありませんが、それは簡単な演出的ボールアクションだったり、せいぜい単純なパチンコが付いた程度で、通常フィールドと独立した機構にしか成り得ませんでした 。
 ところが本機種「バンザイラン」では通常フィールドとバックボックスフィールドがボールフローとして繋がっており、プレイヤーの目に見えるコイル稼動のアクションにより、トップホールからバックボックスへボールが運ばれてゆくという、驚愕の離れ業をやらかしてくれました。
 しかもそこはフリッパーターゲットキャプティヴも備えた、本格縦型プレイフィールド。その中でボールが暴れまわる様は、すれっからしなマニアから一般ゲーマーにまで強烈なインパクトを与えました。
 バンザイヒル頂上であるトップポケット到達時にとどろく“BAN,ZAHHHHHIII!!!”なる雄叫びには、ゲーセン場内が騒然となること請け合い!?

 このマシンの生みの親パット・ローラーはそれまでビデオゲームのデザイナーとしては芽が出ず、当時の会社を退社させられるも、友人のラリー・ディマーの全面協力の元、自宅ガレージでハイスピードの自己流版「レッキン・ボール」(Wreckin' Ball) を完成させます。バックボックス内にキャプティヴボール付き垂直フィールドを備えたこの自作マシン、まさにソレをウィリアムスで製品化したのが「バンザイラン」でした。
 ディマーの口利きでローラーの自宅までレッキンボールを見に来たウィリアムスの社員たちは、即決でローラーとの契約書にサインしたとか。
 その後ローラーは「アースシェイカー」「ワールウィンド」「ファンハウス」「アダムスファミリー」等々、これまでのピンボール史上のセールスレコードをも打ち破るメガヒット作を連発、S・リッチーとも比肩する'90年代ピンボール市場隆盛の立役者として不動の地位を築きました。

▲キャプティヴボールとスピナー。奥にはボールを垂直フィールドへ運ぶ機構も見える ▲プレイフィールド全景。左スリング内にキッカーポケットがあり、偶然的にソコに入ると爆音と共にボールが勢い良く発射された ▲スコアディスプレイを含めてバックボックス正面を撮影。背景の張り紙が気になるね
▲うわー'80年代テイスト濃厚なゲーセン。ここ、ほんの数年前(2005年)まで現役、しかもこのままの雰囲気で営業してたんよ ▲バックボックス内には“フリースタイル”なるフィーチャーもあり、勝手に蹴り出されたボールヒットでその色の選手が一人倒せるというもの ▲右ランプレーン。他のフィーチャーとのジョイントはあまりないが、通したときのストロボとサウンドの爽快な演出が秀逸

(2010年6月10日)