Williams/1995コンゴ | ||
原題 | Congo The Movie | |
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製作年度 | 1995年 | |
ブランド名 | ウィリアムス | |
メーカー | ウィリアムス・エレクトロニクス・ゲームズ | |
スタッフ | プレイフィールドデザイン:ジョン・トルデオー/美術:ケヴィン・オコンナー/メカニクス:エディー・ヒックス/ソフトウェア:ビル・グルップ、ディーン・グローバー/音楽:ヴィンス・ポンタレッリ/ミニチュア:エディー・ヒックス/ドットアニメ:ブライアン・モリス、アダム・リーネ/スペシャルサンクス:スタン・ウィンストン、ポール・バーカー、マーガレット・ハドソン/バックグラス画:ケヴィン・オコンナー | |
標準リプレイ点数 | 8億点 | |
備考 | 製造台数:2,129台/筐体にバリーミッドウェイ発売扱いの表記有り/国内販売:'96年2月タイトー/米リプレイマガジン誌ピンボールランキング9ヶ月ランクイン、初登場'96年4月号1位/ようつべに動画あるよ!⇒GO! |
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●ウィリアムス1995年製「コンゴ」は、同社にとって、あらゆる面で区分にピリオドを打つ、時代の端境期にあたった一機種でした。 先ず一つ目。移転が決まったカリフォルニア・アヴェニュー・プラントなる歴史あるウィリアムス工場での最後の生産商品となったこと。 デザインクルーたちが工場に入ってあれこれプロトタイプ台を構築している間にも、新工場であるイリノイ州北部ウォーキーガン・プラントへの移設は既に始まっていました。 好調だったビデオゲーム部門のスタッフは前年より25%増員。旧工場はモーションキャプチャーやデジタリゼイション、プロモV撮影用スタジオへと転用されることとなりました。 因みに、新工場での初生産ビデオゲームは奇遇なことに、10年近く経ってからスターンでピンボール化されるTV番組ネタ「リプリーの大発見」だったそうな。 二つ目は、迷走を尽くしていた同社ゲーム性の方向転換。 ウィリアムス&バリーという両ピンボール部門を有するWMSは、ここ3年ほど安直な映画ライセンス購入、及び偏重的で晦渋なルール編成の蔓延がプレイヤー離れを招いたと猛省。 現代ピンボールルールの基盤が整った'80年代後半頃への原点回帰を目指し、研鑽されたオリジナルコンセプトによるフィーチャーとテーマ性を旨とする企画をゲーム作りの規矩準縄に据えるべく、遅すぎる舵を切りだします。 そして、10億、20億……という極度のインフレーションを起こしていた無意味なスコア編成も、数十万・数百万……という、プレイヤーが外延を認識し易い規模の点数編成へとバッサリ改善。 因みに「コンゴ」のリプレイ点数は8億点で、これがWMSインフレスコア台の最終作に。尚ウィリアムスの前作「JM」のリプレイは25億点でした。 そして三つ目。ジョン・トルデオーをはじめとする各デザインチーフたちの馘首。 ピンボール部門の収益悪化を重く見た同社は、セールスの思わしくないクルーの解散を決定。デニス・ノードマン、バリー・オースラー、そしてJトルデオを解雇する決断を下します。 既に自ら退任を決めていたスティーヴ・リッチーをも含め、ピンボールの制作陣の規模は約半分へと大幅に削減されました。 さて本機種「コンゴ」のコンセプトについてですが、'95年公開の同名UIP配給による冒険活劇映画がテーマ。 アメリカの企業に雇われた調査隊たちがアフリカ奥地でダイヤの鉱脈を掘り当てるのが目的なのか、ジャングルに生息する殺人ゴリラの脅威がテーマなのか、幻の古代遺跡を探しているのか原住民との遭遇を描きたいのか、オマケに突如火山の爆発まで起こるという、てんでプロットのはっきりしない映画の出来と興収は惨憺たるもの。 翌年ラジー賞7部門ノミネートという汚点も致し方ない仕上がりに。 当時筆者もビデオレンタルで拝見して憮然としたことを覚えていますが、ラストでローラ・リニーが唯一の収穫だったダイヤモンドを気球からジャングルへ投げ捨てるシーンだけは記憶に残っています。 つまり、あの「ジュラシック・パーク」原作のマイケル・クライトン映画の新作、ということで他社の機先を制しようとWMSが公開前にコピライトを勇み足で買い付けてしまったお仕着せ企画だった訳です。 ピンボール職人として請け負ったトルデオ達は映画会社の試写室で本編を鑑賞し終わり、茫然としつつどのように商品化すべきか頭を抱えたようです。 現に、プリミア時代には過去のホワイトウッドを使いまわして1か月で新作を仕上げたり、WMSでも「バッグス・バニー」「ザ・マシーン」を同時進行で仕上げてしまう早業師ドクターフラッシュの異名を持つトルデオをもってしても、1年半近くかかった長期制作期間に、彼らの苦悩が伺えます。 箱に入れる直前のアダムスファミリー商品検査がWMSでの初仕事だったというソフトウェア担当ビル・グルップの証言によると。 あの何の面白味もない孤立したロウワーフィールドの凡庸なゴリラの仕掛けは、元々ボールを握ったゴリラが盤面から飛び出し、プレイヤーを攻撃するという凝ったギミックであったものの、あまりに複雑すぎた為、仕掛けとしては勿論予算的にも時間的にも商品化は不可能と判断、全て一から作り直す事態に陥いりました。 映画の出来の悪さをどうにか挽回しようと、大仰な仕掛けをぶち上げようとして空回りを喫した訳です。 制作状況は混迷を極め、「アタック・フロム・マーズ」のソフトウェアを大方仕上げていたライマン・シェイツが急遽プログラミングのヘルプに加わり、予定していたフィーチャーを極力崩さないよう努めながら何とか仕上げたものの、本国での発売は大コケした映画の公開がとっくに打ち切られた後。 日本での出荷においてはどうにかビデオ発売に間に合った……という遅きに失するリリース。映画ライセンスのメリットは全く無かったと言えます。 筆者の同機種への当時のプレイ感想や印象も述べておきますと、プレイフィールドと言いフィーチャーと言いテーマ性といい、魅力に乏しく、散漫且つ非常に冗長。 狙って楽しいと思える爽快なポイントがひとつも見当たらない上、ビッグポイントがだらしなく氾濫しており、達成感も満足感も皆無。 前述した出来そこないロウワーフィールドのボールアクションは「ストUPIN」の退屈なカークランチと何ら変わらず『だから何?』としか言いようがないし、火口からボールを吐き出すヴォルケーノにも全く感動ナシ。 VUKからボールを受け取ってサイドフリッパーへ落とすゴリラの可愛くないトイオブジェやボールアクションにも興奮は感じられず。かと言って映画ネタだからゴリラのキャラを面白おかしく改竄する訳にもいかないし。 一方ダイヤモンドをコレクトしていく過程や規定数によるアウォードがちっとも楽しくなく、点灯する原住民襲撃2ボールマルチとかも全く単調で、何も面白い事が起きてくれない。 必死に100個集めて始まるスーパーマルチも、締まりのないジャックポットが延々飽和状態でうんざり。 三流映画から乾いた雑巾を絞るように何とか捻り出した各アイディアは、やむを得ない側面もあるとはいえ、ゲーム性に全く成果を上げていません。 制限時間内にひたすらプランジャースキルを連続打ち放題という[スキルファイヤーモード]や、短時間でトップレーン3連続攻撃を課す[エイミーグッドゴリラ]など、傍流的に斬新なフィーチャーが見られないこともないものの、本流のゲーム性とフィールドデザインが平坦なため、全編を救うには遠く及ばず。 このような根本的に間違っている劣悪企画の傾向はウィリアムスの前作「JM」でも如実で、当時は同社とピンボール業界に幻滅の思いを隠せない心情と絶望に襲われました。 「コンゴ」が2017年現在になって上げられているロケーションもありますが、通りかかっても何の一瞥の価値もないし、触りたくもない。 プレイヤーにとっても前途を暗然とさせた、悪夢のような時期の薄ら寒い1機種です。 今でこそ熟考の上コピライト購入を峻別し、フィールドもルールもよくよく練られたスターン製のライセンス台の品々は概ね好評を博していますが、未だ“映画版権もの” “ライセンス企画”に激しい嫌悪感を抱くプレイヤーやデザイナーが時折見られるのは、この映画ネタピンボール粗製濫造期の忌まわしさを身に染みて経験し、大げさでなく本当にストレス障害として抱えているかから。 ピンボールがゲーセンから姿を消している今よりよっぽど不幸でした。 私も、あの時期の想いは二度としたくはないです。 |
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