各名門ブランド ピンボール・リスト

WILLIAMS/1988

サイクロン

原題Cyclone
製作年度1988年
ブランド名ウィリアムス
メーカーウィリアムス・エレクトロニクス・ゲームズ
スタッフデザイン:バリー・オースラー/美術:パイソン・アンジェロ/音楽:クリス・グランナー/ソフトウェア:ビル・フッツェンローター/メカニクス:ジョー・ジュースJr.
標準リプレイ点数不明
備考製造台数:9,400台/ようつべに動画あるよ!⇒GO!
▲バックグラス。ジャックポットの掲示やミステリーのルーレットあり。コースターの先頭には当時の大統領夫妻がご搭乗 ▲トップレーン。完成時のフィーチャーは今回ボーナス倍率UPではなく、プレイフィールドスコアが20秒間2倍。狙えダブルミリオン!
▲フィールド上部。うねり、のたうち、弧を描くランプレーンが豪胆。当時はカラフルな不透過ランプで彩るのが常套で、大部分を透明ランプレーンで構成するのは珍しかった ▲3バンクあひるターゲット。サイクロン再点灯やボーナス点の他、エキストラリットの賞与も有り
▲フィールド下部。ジョーカーズの時も感じたんだけど両フリッパー間に思いっきり暑苦しい顔デカデカと描くのやめてもらえませんかパイソンアンジェロ先生 ▲バンパー地帯のアップ。急勾配中央ランプレーンを登りきらず逆走してきたボールは安全なバンパーへ落とす。でないとフリッパー飛び超えちゃうから

― COMMENTS ―
バリー・オースラー&パイソン・アンジェロコンビの名機三部作と言えばピンボットシリーズですが、もうひとつ忘れてはならぬ彼らのマスターピース・トリロジーとして「コメット」「サイクロン」「ハリケーン」“遊園地三部作”も、ウィリアムスマシン綺羅星の名作として挙げておくべきでしょう!
 特に今回取り上げる「サイクロン」はその三部作中もっとも完成度が高く、その後のピンボールのプレイフィールドデザインやビッグポイントのスタイルなどにも多大な影響を及ぼした金字塔として、世界中のプレイヤーたちを熱中させました。
 同機種は製造台数9,400ユニットという、'88年のウィリアムス社最大のセールスを記録。日本でも大評判となり、同年ゲーメスト誌ピンボールコーナーの人気投票で1位に選ばれたほど(尚レーザーウォーとシークレットサービスが同率2位)。


 それでは簡単にフィーチャー解説を。

【スキルショット】何も考えず思い切りプランジするとボールはトップレーンへ放られるが、力を加減して打つとコースターの車両を象った5K,25K,100K,25K,10K、の5つのスキルショットホールのどれかへ降下。当然3番目中央の10万点ホールを狙うべし。
 しかもピンボット同様ボール数倍率がかかるので、エキストラを重ねてスキルワンショットでワンミリオンも夢じゃない!?

【トップレーン】3本のトップレーン[1][2][3]を完成させると20秒間プレイフィールドスコアが倍。ワンミリオンにもかかる。但しジャックポットだけにはダブルスコア対象外。レーンチェンジ可。

【観覧車】左レーンを通すと奥にある観覧車がボールをえっちらえっちら汲み出してくれる。通常スコアは2万5千点だが、右リターンレーンを通すとここにフェリスホイールヴァリューが点滅。
 このヴァリューは5万点からの積み立てで、バンパーヒットで上昇。

【ミステリーボーナス/スプークハウス】ドラキュラ伯爵が描かれた中央お化け屋敷ホールに入れるとバックグラスのルーレットが回り、ミステリーボーナスが得られる。内容はスコア20万点、エキストラボール、スペシャル、スカ0点など。
 尚お化け屋敷ホールは通常1枚ドロップが遮っている。倒しても時間制で復活するので入館はお早めに。

【ボーナスマルチプライア】スクープ型の下部左端キックアウトホールにボールを入れるとボーナスマルチプライア。最高7Xまで上昇。
 尚フィールド下部中央に2X〜7Xまでライト表示されているが、点滅している倍率目標まで上げるとスペシャル獲得。

【ミリオン】コメットコースターを象った中央ランプレーンに右リターンを利用して連続シュートを決める。1回目4万、2連続6万、3連続8万、4連続10万、そして5連続シュート成功で100万点獲得!連続判定はアザースイッチではなく結構寛容な時間制なので、消えるまでは諦めるべからず。
 尚一旦ミリオンを成功させると有効ライトが完全消灯するが、その場合は中部左端の3連ぬこターゲットで復活。

【ジャックポット】サイクロンコースターを象った右ランプレーンに注目。1回目シュートで5万点、2連続で10万点、そして3連続シュートを決めれば最高400万点のジャックポット獲得!
 但しコメットと違いボールリターンが反対側なので難易度は高め。リターンレーントランスファーか観覧車リターンを利用するのが常套テク。
 尚JP再点灯は、エキストラのご褒美もある下部右端あひる3連ターゲット。


 さてこの台、この時代のウィリアムスとしては珍しくマルチボールがないのです。
 しかしプレイフィールドの爽快感と圧倒的演出力の力技で、マルチ欠落というトレンド逆行を無理やりねじ伏せたような豪傑さが全編にみなぎっています。

 ミリオン&ジャックポットの他観覧車メカの楽しさやミステリーのルーレットの大仕掛けなど、ホント見どころ盛りだくさんの台なのですが、なんと言ってもワンショットワンショットの度に賑やかしくおたける快活なヴォイスとサウンドが、このゲーム全体をとても華やかにしています。
 豪快に弧を描くコースターランプレーンに通した時の滑空音と歓声、ディスプレイで弾けるようにクルクルとカウントされるビッグポイント、スルスルとフリッパーに戻ってきてくれるスムースなボールフロー、セロファン包みのお菓子みたいにカラフルでスウィートなカートゥーン調音楽の愛苦しさ!

 特に、ランプレーンの出口をリターンレーンに落としてフリッパーと直結させることにより、テンポよく連続ショットを決めてビッグポイントを狙わせるアイディアは、シングルボールの魅力を新開拓しました。針の先ほどにまで精神を研ぎ澄ませてワンミリオンをしとめた達成感は恍惚の悟りすら法悦しそう。

 この連続ショットフィーチャーは“まわしもの”としてこの後ピンボール定番ルールとして定着。バリーの「エルヴァイラ」などでも効果的に用いられていました。


 ところで、この華々しいヒット作にもゴタゴタした裏話が。

 先ずテスト台ではコメットコースターのワンミリオンのルールが異なっており、連続シュート技なんかではなく、1回通すごとに消えてしまうヴァリューライトをぬこバンクでその都度完成させねばなりませんでした。

 テンポが悪い上に難易度が高かった訳ですが、スポットターゲットとのいい噛み合いが有り、ゲーム性の高さを惜しむ声も少なくなかったものの、結果的にメガヒットとなった市場版が正解でした。

 因みにサイクロンコースター最初1回目だけあひるバンク完成が必要だったものの、2回目以降は連続ショットOK。
 ただしタイムオーバー消滅させてしまうとまたあひると戦わねばなりません。でもバンク完成Ex.Litとの兼ね合いが生じてきてコレはコレで奥行きがでてきます。なるほどね。

 しかし更なる物議を醸したのはバックボックス
 テスト台ではモーター稼働の回転盤によるルーレット作動で、止まった所のクラウンの指す項目がミステリーボーナスとして得られましたが、日本で出回った市場版はライテッド式
 電球の点灯がまわって止まった項目が得られるという仕様に変更となりました。
 これ、なんと日本独特の仕様。つまりタイトー販売版だけに加えられた改造で、本国は勿論、他国でもこんな仕様の出荷バージョンはありません。

 本国ウィリアムスのスタッフもコレには全くかかわっておらず、のちに日本仕様を知って驚かれたようです。

 これは当時の日本の法律・電気用品取締法(現・電気用品安全法)が原因。

 モーターを複数機搭載した「サイクロン」を製品の新仕様として国に通す必要があり、政府にべらぼうな登録料をとられる上、認可おりるのに1年近くかかるような販売許可申請の煩雑さを回避するため、わざわざタイトーはこのような改造を行ったのだとか。

 だからってマシンのアトラクション性を落としてまでディストリの雑務から逃げるなんて!
 ……とマニア怒りの矛先がタイトーへ向けられましたが、「ジョーカーズ」「リヴァーボートギャンブラー」でバックボックスルーレットの故障がのちに頻発したのに対し、故障が少なくい上に清掃の手入れがラクになったライテッド式サイクロンは、これはこれでメリットがあったと言えるのかも知れません。

▲プレイフィールド全景。盤面アートの描きこみがすごいですな。 ▲コメットランプレーンとスプークハウスの入口。スプークのミステリーはエキストラがよく出るので1回は狙っといて損はない ▲スキルショットホールに注目。スキル獲得後、ボールは下側のキックアウトポケットに一旦収まり、トップレーンへキックアウトされる
▲うねうねうねうね。ランプレーンがとにかく楽しい。観覧車搭乗後は左フリッパーにリターン ▲観覧車どアップ。絵もイイですな ▲うねうねうねうね。サイクロン及びコメットランプ搭乗後は右フリッパーへリターン
▲左リターン近辺のアップ。因みにエキストラライトはアウトレーンに点灯。リターンLぢゃないのだ ▲ドラキュラ伯爵アップ。タイムアウトでドロップが立ち上がる時の「ゴルァー!ぼーん!!」というサウンドも楽しい ▲右リターン近辺。因みにアウトレーンは結構落ちやすいつくりだった

(2011年6月11日)