各名門ブランド ピンボール・リスト

WILLIAMS/1989

アースシェイカー!

原題Earthshaker!
製作年度1989年
ブランド名ウィリアムス
メーカーウィリアムス・エレクトロニクス・ゲームズ/ウィリアムス
スタッフデザイン:パット・ローラー/美術:ティモシー・J・エリオット/メカニクス:ジョン・クルッチ/ソフトウェア:マーク・ペネイクホ/音楽:クリス・グランナー
標準リプレイ点数不明(う〜ん、確か250万点だったかな?)
備考ようつべに動画あるよ!⇒GO!
▲破天荒な能天気さで見る者を圧倒するバックグラスアート。テスト台ではキャデラックの色が違うそうだ ▲上部奥にあるネヴァダとカリフォルニアの断層。ボールロック時にはこれが割れてレーンを形成、ボールを振り分ける
▲フィールド下部。アウトホールボーナスの貯蓄具合を丁寧にライト表示&カウントするのはやや時代遅れか。因みにボーナス倍率はゾーン完成で上昇、エキストラ賞与もあり ▲下部右端リターンレーン付近。内側リターンは9つある[ZONE]のひとつ

― COMMENTS ―
●緻密なフィーチャー且つ豪傑なゲーム性で新時代の寵児となった、パット・ローラーのディレクト作第2号機「アースシェイカー!」
 バックボックス内フィールドなる横紙破りをカマした前作「バンザイラン」に引けをとらないぶっとびフィーチャー満載、ピンボール界激震のウィリアムス1989年発表作品。
 ダイナミックなスケールを感じるテーマ性、斬新なギミック、サイドフリッパーとサイドランプに重点を置く采配、ボールロック+エキストラボール+クイックマルチの絶妙なジョイント性…等々、後に成熟してゆくパット・ローラーのゲームデザインの方向性は、ここで確立したと言えましょう。

 このマシンのテーマは大地震(マルチボール)の脅威。プレイヤーは全9箇所あるゾーンを通過してシェルターへ避難、勃発する地震の揺れにひるまずFAULT(活断層)撃破でジャックポット獲得に挑みます。

 点滅中の1〜9ZONEをクリアすると、シェルター(右ホール)orサイドランプレーンLOCKライト点滅。そこでボールロックを終え、さらにもう1度同じ手順を踏んでもう1個ロック。直後3コ目をプランジすれば、いよいよマルチボール開始。
 マルチ中、普段はアウトホールボーナスやEX獲得のため上げておきたい[MILE数]が稼げる中央ランプレーンに1回シュート。するとサイドランプレーンにジャックポットが点滅!
 因みにJPヴァリューはバックボックスの底辺の明晰なライト表示でプレイヤーに訴求。内容は50万+SP、100万、125万、150万、150万+EX、200万、250万の全7項目で、ドロップターゲットの完成でローテーション移動。ジャクポ獲得時の“jajajajaJACKPOT!!”のヴォイスも楽しいよ。
 左ホールにかかるクイックマルチも魅力的な稼ぎどころで、これは右下キャプティヴボールのヴァリューを最高額15万点にまであげてから一撃するとリーチ。この2マルチ中に狙うべくはサイドランプレーンの100万点

 西アメリカ大陸を象った上段フィールドがパッカリ分かれてボールを振り分ける大胆なディヴァーター、VUKを駆使して意表をつくボールアクションなどなど、数々の画期的な仕掛けの中でも突出して度肝を抜いたのが、筐体全体に激震的ヴァイブレートを起こす、シェイカーモーターなるショッキングな新装置!
 ボールロックやマルチ中に轟音と共に稼動するこのモーター、プレイヤーの体を両腕から全身にかけて襲撃するのみならず、ギャラリーの足元まで揺さぶるような振動を周辺にビリビリと巻き起こす!
 当時流行っていた体感型大型筐体より激しい振動を周りに駆動させたこの前代未聞の演出は業界中の耳目を集めましたが、土地事情の悪い日本だと店のテナント隣近所迷惑の為、止められることもしばしば。嗚呼無情。でも苦情が来ること自体、そのシェイカーモーターの迫力の凄まじさが証左されているかと思います。

 もっと特筆したいのが、プレイ状況の組み立てが豊富に楽しめる精緻なプレイフィールド構成とそのフィーチャー編成。
 各小物・大物フィーチャーが端々で何通りも組み合わさって、スキルショットから始まってキックアウトホール、サイドフリッパー、サイドランプ、ロックホール……と次々と狙い目が攻略される、その過程に深い奥行きを感じさせ、やればやる程プレイヤーは深遠に引き込まれてゆきます。
 凡庸なマシンでよくある“またメンドクサイ単調作業の延々繰り返し”を課してプレイヤーに閉口させることもなく、無限大の攻略パターンがプレイヤーの目の前に広がってゆくのです。

 後にアルヴィン社に移籍したティモシー・J・エリオットのアートもロケーションで強烈な存在感をアピール。また、じっとしていられずに踊りだしたくなるクリス・グランナーの音楽も実に快調。
 「アースシェイカー!」はアーケードゲーム業界において文字通り驚天動地の傑作とあいなりました。

 この名機は一見順風満帆なヒット作に見えますが、ローラー氏にとって少し苦い思い出もある機種なんだそうで。
 筐体のモーター振動でホントに地震を起こせないか、ネヴァダとカリフォルニア州を真っ二つにできないか、ビルが崩壊する仕掛けは作れないか…とWMSに絶対却下されそうなぶっ飛んだアイデアを次々湧出するローラーにスタッフ全員呆れながらも、理解者のスティーヴリッチーが内々に口を利き、人脈の信頼面で彼をバックアップ。スタッフクルーたちも最良の仕事を見せ、彼の驚愕のアイデア各々を全て実現化してみせたのです。
 イリノイ州ロックフォードの店で行われたプロトタイプ台の週末ロケテストでは、そのあまりに型破りなゲーム性に場内は騒然、予想を上回る大好評を博しました。
 ローラーは早速月曜の朝に
「信じられるかい?16人も行列が並んでたんだ!たった2日間で200ドルも稼ぎ出したぞ!」
 と嬉々として会社に報告するも、大幅の予算オーバーに眉をひそめていたマネージャーは
“ライアー。ユーアーライアー!大ボラこいて会社にゲームを売りつけるデザイナーどもはどいつもペテン師だ!この大嘘つきめ!”(翻訳:戸田奈津子)
 とローラー氏を面罵し、聞く耳持たず予算削減の令を厳命。

 結果、残念ながらビル崩壊の装置はお流れとなってしまいました。

▲狭苦しくならないギリギリの配置で、特にサイドフリッパーへのコースを確保せねばならぬマルチ時のボール操作は大変! ▲ゾーン通過状況をライト表示するビルのミニチュア。テスト台ではコレが盤面下へするする〜っと“崩壊”した ▲慣れたプレイヤーでも通すのはとっても難しいサイドランプレーン。ロック時の“アースシェイカー!”なる絶叫が豪胆。
▲クイックマルチのホールとサイドフリッパーが重要な、フィールド中部左。ところでバンパーによそ者の仲間はずれがいるんだけど ▲クイックマルチへ繋がるキャプティヴボール。低い位置にあるのでショット直後はアウトレーンに注意 ▲フィールド右上近辺。同氏のデザインだといつも入り組んだ奥にエキストラ&ロックホールがあって狙い辛いけど、コレなんか特に厳しい

(2010年6月20日)