各名門ブランド ピンボール・リスト

WILLIAMS/1997

メディーヴァル・マッドネス

原題MEDIEVAL MADNESS
製作年度1997
ブランド名ウィリアムス
メーカーWMSインダストリーズ/ウィリアムス
スタッフデザイン:ブライアン・エディー/ソフトウェア:ライマン・シェイツJR./メカニクス:ロバート・フリースル/音楽:ダン・フォーデン/美術:グレッグ・フレーレス、ジョン・ユッシー/ドッツ:アダム・リーネ、ブライアン・モリス
標準リプレイ点数28,000,000点
備考国内発売:タイトー('97年11月中旬頃)
▲役物明滅表示がびっしり……!フィールド下部。 ▲2枚のドアがせりあがってトロールターゲットが現出するギミック有り。左右ランプ入り口勾配で縦に走る段差があるのは逆走ど真ん中コースを憂慮したもの。でも球が跳ねて狙いにくかったな。
▲あの「アタック・フロム・マーズ」を超えるデカギミックが登場。累積ボールヒットによる落城を見よ! ▲このように橋が下り、城門も開き、さらにボールシュートに成功すればひとつめのお城崩落。6つめのマッドネスキングの城までたどり着けるかな?

― COMMENTS ―
●むむむ困ったな。メディーヴァルだったら、まだぴっかぴかな新台の時節に地元のタイトーの店でめいっぱい写真は撮ったのだけど、過去に出した同人誌で7割ぐらい使い捨てちゃって、もうロクなショットが残っていないのにゃ。よって、どうでもいいモノを不自然なアップで撮ったヤツとか中途半端なアングルとかそんなんばっかりしか残ってないなのはそのせい。なにとぞ許してくんさい。

 んな個人的懐事情は置いといて、この「メディーヴァル・マッドネス」米誌“リプレイマガジン”のトップピンボールスにおいて、'97年8月号〜'98年10月号までの14ヶ月の間1位を独走し続けたという、正に破竹と言える勢いとパワーで米ピンボール市場を席捲しました(但し日本ではディストリ事情とシェアの低下により一部のタイトーの店舗でしか見かけず)。傑作中の傑作で、無限の如く奥行きをみせるそのゲーム性には“無駄がひとつもない”ような完成度で、もはや申し分ありませんでした。

 お城のミニチュアを打って打って打ちまくって、橋を降ろし、門を開けさせ、中へ突入すれば、お城の尖塔が倒れる落城ギミックどっかーん!とか。フィールド盤面から悪鬼トロールがにょきっとせり出し、ボールヒットでやっつければマルチのリーチ!とか。そういった明確な視角表現でビギナーの心をつかむのも優れた点のひとつではありますが、しかしこのゲームの真意はそのような表層的インパクト程度のものでは終わりません。

 例えば[マッドネス・マルチボール]なんか初心者でも簡単に始められます。しかしソレは安易なマルチスタートとカスのようなボーナス点だけで構成する、浅はかな素人受け狙い作とは、格も次元も違います。
 関連役5つのうち1つ揃えただけでもホールが光って即2ボールマルチが始められるけど、上級者の場合、5つの仕事全部こなして粘って粘って全部揃えてからマルチに挑めば、同じフィーチャーでも4ボールマルチ&ジャクポ額4段階上乗せ!と稼ぎの良し悪しに大きな開きが出てくるという優れもののシステム!
 しかも先にマルチを済ませてしまって役が3つ4つ残っていた場合、その時はその時で残りの役の完成時には、成功数ノルマ超えでEXのご褒美も潜んだお城シュートハリーアップボーナスが組まれているという巧みなはからい。

 かように、プレイフィールド各ポイントに分散されている各フィーチャーを全てこなして最終ゲームに向かうにあたって、単純な同じ役を何度も繰り返すような、かったるい手順を踏まされることがないのです。全て同時進行で何かと裏で繋がっています。
 凡庸なデザイナーがフィーチャーを多彩にすべくあれこれ欲張った結果『うわ、またこのつまんない時間性ミニゲームやらされるのか』となるような繰り返しの無駄足は何もありません。フィーチャーの表裏とも全て精緻且つ丁寧に研鑚され、精巧にまとめ上げられています。特に、配分よくちりばめたエキストラボールの采配と再獲得における難易度ののしあげ具合は絶品。

 ウィリアムスにおいてこの「メディーヴァル・マッドネス」の制作は、これまでにない程ハード且つ多人数による大掛かりなプロダクトだったそうです。例えば美術担当はグレッグ・フレーレスとなってますが、実際にバックグラスはジョン・ユッシー(よくパットローラー台の絵を描いてる人)と共同で仕上げたもの。プレイフィールドにおいてもケヴィン・オコンナー(最近もスターン台で頑張ってる人)、ダグ・ワトソン(スティーヴリッチーの相棒)、リンダ・ディール(ポパデュークのおかかえ)といった錚々たるメンバーがこのアートワークを支えています。
 サウンドのセリフ数は、しょうもない一発ギャグみたいなのも含めて400種を越え、トロールのギミックもお城の爆発も、今までの使いまわし一切なく一から手掛けたメカニクス担当のロバート・フリースルも、『本当に莫大な大仕事だった』とその苦労を語っています(その割にはドットアニメが安っぽくて壮麗さが欠けていたが…)。
 一方、この名機を生んだ名デザイナー、ブライアン・エディーは、'99年のウィリアムス閉鎖を待たずして本機種を最後にピンボール部門を去っています。どうやらこのメディーヴァルこそ、彼にとってベストを尽くした集大成作品であったようです。

▲レーン同志密接してキツキツだけど、入り口それぞれ前後させてボールを受け入れる範囲を少しでも広くする工夫が伺えます。 ▲ダムゼル(右ランプレーン)奥に幽閉されているお姫様。 ▲プレイフィールド下部右側。
▲中部左端のカタパルトポケット。そう言えば「タクシー!」や「ロード・オブ・ザ・リング」にもよく似た構成ありましたな。 ▲右ランプ入り口にはお姫様をかどわかしたドラゴンが居ます。 ▲本当にロクな写真が残ってなくてすんません……。これは比較的まともなショット。

(2006年10月24日)