各名門ブランド ピンボール・リスト

Williams/1991

ターミネーター2

原題Terminator 2:Judgment Day
製作年度1991年
ブランド名ウィリアムス
メーカーウィリアムス・エレクトロニクス・ゲームズ
スタッフデザイン:スティーヴ・リッチー/ソフトウェア:ドワイト・サリヴァン/メカニクス:カール・ビアギ/美術:ダグ・ワトソン/音楽:クリス・グランナー/ドットアニメ:ジョン・ヴォーゲル、スコット・スロミアーニー
標準リプレイ点数3,000万点
備考製造台数:15,202台/ようつべに動画あるよ!⇒GO!
▲バックグラスアート。A.シュワルツネッガーの肖像権もばっちりクリア。しかし後に主役級でブレイクしたT-1000役ロバート・パトリックの顔つきがはっきり描かれていないのが残念 ▲もう一丁バックグラスのアップを。
▲プレイフィールド上部。スティーヴ・リッチーの台には珍しくサイドフリッパーがない ▲微妙な段差がスリリングな3本のトップレーン。完成の利益は定番的なボーナスマルチプライア。勿論レーンチェンジ化
▲ヘリコプターターゲット。バンク完成させる用途ではなく、点滅箇所をラーンチャーで仕留める。スキルショットでも活躍 ▲フィールド下部。赤ストロボ[AUTO-FIRE]フラッシュ中はボールセーヴ有効。ドレインボールの親切で素早い復活には当時感心した

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「T2」ウィリアムス・ピンボールにおける、ドットマトリクスディスプレイの初採用機種

 それまでデジタル数字やアルファベット、ちょっとした記号と絵文字程度しか表現出来なかった“アルファニューメリックディスプレイ”の機種が同社の標準でしたが、既に半年ほど前から巨大なロゴやグラフィックも描くことができるドットディスプレイが、新鋭ライバル社のデータイーストによって標準化されていました。
 WMSはそれに対抗し、デコのそれより縦横サイズの幅が広い独自のディスプレイサイズの仕様を開発し、今後標準装備してゆくことになります。
 尚、同じWMSからの後発ドット台のはずだったバリーネーム「ギリガンズアイランド」の方が2ヶ月発売が先行していますが、これはギリガンがT2より製作期間が短かったため。

 さてこのマシン、新機軸のディスプレイ仕様のみならず、非手動プランジャーのガン型オートシューター,ビデオモード,スウィンギングラーンチャー……等々画期的なフィーチャーが盛りだくさん。
 また、映画嫌いの輩にすら嫌でも知れ渡るSF映画のコピライト台ということで、世界的なセールスは勿論、当時日本国内でも非常にたくさん入荷されていました。

 大砲型のキックアウトポケットに球が込められ、それがうい〜〜ん…とフィールドめがけてゆっくり振り子状にスウィングするので、標的を狙ってシューターボタン操作で発射!狙い打ち成功でビッグポイントをイタダキ!!…というフィーチャーの元祖は、この「ターミネーター2」が元祖。
 その後「ブラックローズ」「スタートレック〜ザ・ネクストジェネレーション」「ダーティーハリー」「バットマンフォーエヴァー」「オースティンパワーズ」等々でも同機構が多用されてゆきます。

 しかしこの“大ヒット”マシン、当時も今も、未だどういう位置づけで認識したらいいのか私よぅ判らんのですわ。こんなに画期的な新機軸のモデルなのに、ちっとも抑揚も緩急も感じない鈍いゲーム性。
 むしろ同デザイナーのデジタルディスプレイ台「ローラーゲームズ」「ブラックナイト2000」よりも後退した印象。

 実は、このT2の大砲ラーンチャー。一見画期的のようだけど、体がタイミングを覚えちゃったら成功率九割九分九厘と言えるくらい、何っとも面白くないシロモノなんですわ。
 前段階の作業としてシングルボールでドロップターゲット破って何度もVUKに叩き込むのも大変だし、マルチ中に3箇所に分かれたボールロックを捌くことの方がよっぽど難しいのに、一番もったいぶる割りに赤子の手をひねるが如くイージーな大砲シュート成功で、やんややんやとJP獲得を爆音で祝われても、達成感も手ごたえも半減。
 更に、中央スポットTの3バンク完成でADV.させてからトップホールで得られる6段階ミニヴァリューにも魅力が無いし、左右ランプミリオンのフィーチャーは他の役と噛み合いが無い上に稼げなくて退屈。単に直接通して上昇させてゆくだけの右ループの最高500万のボーナスヴァリューなんかあって無いような凡庸さ。
 加えるに、Cグランナーの緊迫感に欠ける陽気でポップな音楽のビート“ちゃんちゃかちゃんちゃん・でげでげでっぺーん♪”のなんと間抜けなこと。
 この人遊園地とか川下りとか魚釣りとかカフェとかパーティーとか、ハピネスなテーマだと音楽ノリノリなんだけど、殺伐としたSFテーマとなると、スベっちゃって全然ダメみたい。

 しかし前述のように新仕様ディスプレイ、ガン型シューター、映画コピライトという要素がピンボールバブルの時勢に乗り、出来の悪さに反し一万五千台以上のユニット製造を記録。Sリッチー氏デザインのピンボール機種の中ではハイスピードに次ぐ四番目の高セールスに恵まれています。
 当時私は、同ウィリアムスの「ハリケーン」がそこそこ出回ったのはともかく、同じWMSで近い時期のドットマトリクス台「ザ・パーティーゾーン」「ブラックローズ」の方に傑出を感じていただけに、なぜこんな出来損ないのマシンやアダムスばかりが大量入荷されるのか……とプレイヤーの立場で感じる遺憾に臍を噛んでいました。
 日本では一般リーマン層に妙に好評だった他、クールなデザインのガンに惹かれるのか、通りすがりの幼児やDQNにトリガーをガチャガチャいじられるという事態が頻発していたことを覚えています。故障が少なかったことも幸い。

▲フロント全景。とても画期的なはずなのに、当時アートにもプレイフィールドにも魅力を感じられなかった ▲連続叩き返しが楽しいはずの右ループにはオービットショットがあるが、今回はゲーム性にあまり効果が上がっていない ▲あ、大砲ラーンチャーが稼動し始めた。こん時ガン型シューターのトリガーを引けば、ボールは空中へ射出!
▲左アウト&左スリング近辺。キックバックがあるけど、点け直しても点け直しても落ち易くてキリが無いくらいだった ▲気迫を感じるT−1000ヘッドミニチュアの下には1枚ドロップとVUKホール。繰り返しシュートして大砲ラーンチャーへ挑戦 ▲右アウトレーンと右スリングショット近辺。この台リターンレーンとランプレーンが特につまんない
▲下部左端ロックホール。[Datebase]なるミステリーボーナスも担う ▲撮影は'90年代末頃の四日市ボウルゲームコーナー。リースとメンテはタイトーまかせだったがそれが幸いしてピンボールが遊べた ▲プレイフィールド右奥付近。この右ループの活躍不足も腑に落ちない
▲左ランプレーン。通し易いのはいいがデザインもカラーリングもフィーチャーも地味でつまらん ▲右ランプレーン入り口アップ。役割が左と同じっていうSリッチーらしからぬ安易さには閉口 ▲毎度うっとおしいキックバック復活ターゲット。

(2012年12月25日)