Williams/1993ホワイト・ウォーター | ||
原題 | White Water | |
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製作年度 | 1993年 | |
ブランド名 | ウィリアムス | |
メーカー | ウィリアムス・エレクトロニクス・ゲームズ | |
スタッフ | プレイフィールドデザイン:デニス・ノードマン/美術:ジョン・ユッシー、グレッグ・フレーレス/メカニクス:ウィン・シュリング/ソフトウェア:マイク・ブーン/ドットアニメ:スコット・スロニアーニー/音楽:クリス・グランナー/バックグラス画:ジョン・ユッシー | |
標準リプレイ点数 | 5千万点 | |
備考 | 製造台数:7,008台/国内販売:タイトー/ようつべに動画あるよ!⇒GO! |
▲相変わらずピンボールアートって、美女は登場しても美形や美少年は絶対描かれないのよね。男の主人公はおっさんか、イカれたファニーガイばかり | ▲すり鉢型ランプレーンは激流の渦巻きを表現。2ボールマルチ“ワールプールチャレンジ”ではココがワンショット500万点以上のビッグポイント取り放題に |
▲上段ランプレーン2本の入口。店舗によってサイドフリッパーの状態に差があり、プレイヤーは打力の脆弱化にとても難儀した | ▲タイトルロゴがバックボックストッパーにあるという珍しいデザイン。Gフレーレスは酒店のライトアップポラライズポップを見てこのデザインを思いついたという |
▲ノードマンによるとモデルはオレゴンのクラマス川。よく見るとビッグフットがラフターを襲っており、背後では洞穴の宝物が強奪されている。遠景には彼の愛車も描かれている | ▲フィールド下段赤3バンク&白2バンクスポットターゲットのアップ。赤はキックバック復活、白はビッグフット大火傷ボーナスラウンドに関係 |
●「ホワイト・ウォーター」は、オレゴン州からカリフォルニア州にまたがるクラマスリヴァーにおける急流下り“White Water Rafting”、及びその山岳地帯で出没が語り継がれる巨大類人猿ビッグフット伝説をテーマとした、ウィリアムス'93年製ピンボールの秀作です。 “ラフティング”という決して旬なテーマでは無かったせいか売上は7千台程度にとどまり、製造ユニット1万台突破も珍しくなかった同社好調期のマシンとしては、それ程突出してセールスが良かったモデルという訳ではありません。 しかしタイトーがディストリを務めていた当時の日本と言えば、ゲーセンビル建設バブルの真っ只中。 地方も都心部もピンボール出荷ラッシュに沸き立ち、中でもインディ、ドラキュラ、トワイライト等々同社ディストリ販売製品の中では、実はこのホワイトウォーターこそ出荷とインカムが一番の売上げに。コピライト訴求力の強かったデコ製「スターウォーズ」と競うように、推定500台規模の大入り販売数を呈していました。 何といってもこのマシンの魅力は、激しい急流下りを勾配の急峻なランプレーンで自由闊達に表現した、容赦ないプレイフィールドの凄味、輝き、圧倒感。 断崖と洞穴に見立てたバイレベル構造、類人猿ビッグフットのディヴァーター操作によりボールが渦の底へ飲み込まれる愛嬌たっぷりのトイギミック。そして血気盛んで元気の良い快活なヴォイスとミュージック! これらのスリリング且つデザイン性の高い内容により、一般プレイヤー・マニアプレイヤー共々、当時高く評価された1作です。 その頃筆者が主催していたピンボールサークルで募った'93年度版人気投票においては、かの「トワイライトゾーン」の票数を上回り、ベストピンボール部門の1位に輝きました。 【バイレベルプレイフィールド】本機種のプレイフィールド構造は、河川流れる峡谷の断崖と滝つ瀬に見立てた、上段と下段に分かれた複雑なバイレベル構造。 上段ランプレーン及びアッパーサイドフリッパーが極めて重要な役割りを担っているため、ボールコースを見極めて、下段から上段へ、また上段から下段へすいすい往還できるよう、ボールフローを会得すべし。 【スキルショット】プランジャーショットは無心に思い切り打つと即下段へボールが抜け出てしまい、かなり戦況が不利なる作りとなっている。プランジは必ず加減して上段フィールドのサイドフリッパーに流すように打つべし。 尚慎重にプランジャーショットできた直後、サイドFで上段ランプレーン“狂気の滝つ瀬”に決めるとミリオンプラスのスキルSボーナスが得られるが、それよりもミニゲームリット、ラフト数アップ、ウォーターフォール数加算等々の段階が進められる事の方が、よっぽどデカい。 【ホワイトウォータージャックポット】フィールド上段ランプレーン“狂気の滝つ瀬”にジャックポットがかかる。ヴァリューは二千万点から。3ボールマルチ時に取り放題。 3マルチにするにはボールロックを3回行う。下段フィールド中央奥の見えない位置“行き止まり洞穴”がロックポケット。 ロックライトを点けるには入口両脇ターゲットヒット。 【バウルダーガーデン/ミニゲーム】6つのミニゲーム。 内容は2ボールマルチ、カウントダウンボーナス、ライトエキストラ、ラフト数上昇、ミステリーボーナス、プレイフィールド5X。 上段2本のランプレーン“狂気の滝つ瀬”“類人猿の断崖”を順に1回ずつ通すとスタート。 【ウェットウィリーおじさんの丸太小屋】名物案内人ウェットウィリーおじさんの丸太小屋まで辿りつくと、7箇所全ての川下りレーンが1千万点になるボーナスモードに。一か所1回限り。 プレイヤーが丸太小屋まで進むには、7箇所の川下りレーン“狂気の滝つ瀬”“類人猿の断崖”“丸石の川べり”“凍てつく山の背”“行き止まり洞穴”“崩落の災難”“急蛇行河道”の点滅ショットを繰り返すべし。進捗はフィールド盤面に表示。 【ウェットウィリー1億】ウェットウィリーで7ショットの一千万を全て獲得すると時間制で1億点のチャンス。各レーンを逃げ回るように移動点滅するフラッシュアローを落ち着いてしとめるべし。 【ビッグフットの大火傷】上段ランプレーン“類人猿の断崖”で時間制1千万取り放題。このボーナスラウンド中はボールを渦へ突き落していた類人猿のディヴァーターの稼働がしばらく麻痺。この時“類人猿の断崖”にシュートを決めると1千万+アイテム獲得。尚アイテムの有無はゴールドラッシュ2ボールマルチや隠しフィーチャーに影響する。 これをスタートさせるには、下段右下2バンク白ターゲットを完成させてゆくべし。 【ゴールドラッシュ】2ボールマルチ。全スイッチ25万点。下段フィールド左下キックアウトホールに規定回数シュートでスタート。 但し、マルチボール同志の重ね取りは不可。 【リヴァークラスX】下段左端5バンクターゲットR-I-V-E-R完成によるボーナスマルチプライア。最高6X。点灯リターンレーンで代用リット可。 【左アウトレーンキックバック】キックバック再点灯はフィールド下段中央右寄りの3バンクターゲットの完成(+川下りレーン代用リット)。またマルチボール開始時にも再点灯のサービス有り。 【エキストラボール】下段フィールド下部右端の飴色1枚スタンダップに点滅。点け方はミニゲームヴァリューや下段中央ランプ“崩落の災難”規定数ショットなど。 【ヴァケーションプランナージャックポット2億点】いわゆるウィザード賞。6Xマックス、ミニゲームコンプリート、ウェットウィリー完遂、そして必ず最後にボールロック3個を成し遂げると、特殊なデモと共に2億点+スペシャル獲得。尚プランナー進捗状況は時折ディスプレイでマップ表示される。 兎にも角にもプレイフィールドを余すことなく縦横無尽に縫い尽くす、ランプレーンデザインの素晴らしいこと! 中でも狂気の滝つ瀬“Insanity-Falls”の波打つランプレーンのVの字型急勾配は傑作で、この滝壺真っ逆さまランプへ、神経を研ぎ澄ませてマルチの3連続シュートをバシッと決め、トリプルJPをせしめた時の激越感は筆舌に尽くし難いほど。 一方、バイレベルの宿命であるフィールドの圧迫感は、上段高架下にホースシューをいくつも開通させ、さらにVUKコイルも活用することにより、2段構えの欠点である狭隘さを克服。 行き止まりや孤立スペースを極力発生させないよう、ギリギリのバランスで踏みとどまったバイレベル・プレイフィールド・ランプレーン構造は天晴。 このデザインがいかに優秀であるか。行き止まりや空間の孤立が多い「ドクターフー」「ジュラシックパーク」「レスキュー911」の酷いプレイフィールドと、是非とも比べてもらいたいもの! フィーチャーやサウンドの演出も愉快痛快。 最初のん〜びりした曲調からスタートしたBGMが、ラフト数を上げてボートが川を進みゆく度、徐々にカントリー調のビートが強まって、プレイヤーの鼓動をも高鳴らせてゆきます。 そして丸太小屋到着で一挙にアップテンポな曲調に変わり、ウェットウィリー一千万獲得ショットを決める度に転調、また転調で同じフレーズを折り返す……そのたたみかけるようなミュージックにはゾクゾクさせられます。勿論ミニゲームも全部面白い! プレイヤーを叱咤する無骨なシャウトヴォイス、野太く響くビッグフットの哄笑、マルチスタート時の“Whhhiiiite-Waterrrrr!!!”なる渾身の絶叫、そしてヴァケーションプランナー完成時には突然ライトを一斉消灯させてプレイヤーをあっと言わせる演出など、その劇的で心憎いクライマックスにはしばし陶然! どこまでも刺激的でアップテンポ、且つミステリアスなゲーム運びに、プレイヤーは圧倒されるばかりなのです。 “とにかく急流下りの激しいスリルをランプレーンで表現してみたかったんだ。オフロードバイクレースがテーマの「ブラックウォーター100('88年バリー製)」の時にもVの字ランプレーンには挑んだのだけれど、じゃあ今度は2回レーンを跳ねさせてみようかって。勿論過剰なデザインのせいで予算が膨れ上がり、マネージメントに睨まれる覚悟はあったけど、今回は上や周りからのダメ出しや批難は無く、プレイフィールドもゲーム性も、徹底的に研鑽することができた。ホワイトウォーターの時ほど、やりたいことを自由にやり尽くせた経験は無かったよ” ……と、デザイナーのデニス・ノードマンは、同機種がベストを尽くせた思い出深い仕事だったことを、のちのインタヴューで後顧しています。 そんな反面、 “ブラックウォーター100は僕が大のオフロードバイク好きであることに由来したマシンだけど、ホワイトウォーターに関していうと、実はラフティングをした経験は全く無いんだ。当時はインターネットが普及してなかったから、図書館に通って色々調べたよ” ……なんて裏話も明かしています。 一方、「エルヴァイラ」「ドクターデュード」「パーティーゾーン」等々でデニスと永年タッグを組んできた美術班のグレッグ・フレーレスが、プロジェクト初期に突然降板する……という一悶着も起きています。 永らく家庭を犠牲にして仕事優先の働き詰めな毎日を送っていたグレッグは、悪化していた家族関係の修復を図ることを決意。 バックグラスの草案とタイトルロゴデザインの下描きをしたためた時点で、マネージメントやデニスたちにプロジェクトの辞任を表明します。 それでもグレッグの信頼がチーム内で損なわれるような事は無く、むしろ、元バリー社プレジデントのビリー・オドネルの秘書を勤めていた縁で社内婚した妻のバーバラに、“またそんなくだらないガラクタ買ってきて!”と趣味と仕事に没頭し過ぎて毎日のように怒られていたデニスにとっても、グレッグの気持ちと家庭の大変さが、痛い程よく分かったのでしょう。 グレッグはそのまま長期休暇を取り、ディズニーワールドヴァカンスの家族旅行へと、しばし旅立つこととなりました。 因みに彼の奥さんアンドレアも、デニスの嫁バーバラの向かいの席に座っていたバリーの女性社員だったそうですよ。 そんな擦った揉んだの後、代わって本機種の美術を任されたのが「ワールウィンド」「ファンハウス」等パット・ローラー作品で辣腕を振るっていた妙手アーティスト、ジョン・ユッシー。 彼は断崖から滝が落ちるタイトルロゴを、バックグラスではなくバックボクスのトッパーに設えるという、グレッグのアイディアと下描きデザインをそのまま踏襲。鮮やかに色付けして仕上げてくれています。 さらにウェットウィリーなるホストキャラの創案や、ラフト数の盤面表示を縦列ではなく川を下る蛇行順で立体的に描くというアイディアの湧出にも貢献。 それらの提案に対し反対や疑問の声が他のスタッフから上がった時にも、ノードマンが全面的に信頼を寄せて激励してくれたおかげで、とても心強く、仕事がし易かったと語っています。 もっと素敵なエピソードなのが、類人猿ビッグフットのデザイン。 元々髭を蓄えた毛むくじゃら剛毛男であるノードマンは、自らビッグフットのモデルを買って出て、進んで我が身を献体します。 ユッシーはわざわざノードマンの自宅へ赴き、彼にソレっぽい表情をさせながら色々とポーズを取らせ、あらゆる角度のショットをカメラに収めてスケッチドローを取得。 こうしてノードマンそっくりの類人猿ビッグフット・トイが完成。奴はゲーム中“うぉー!ぐおっほっほ♪”と雄叫びをあげながらボールを突き落す、何とも憎めない悪役として終始活躍することとなりました。 今回が初顔合わせのノードマンとユッシーでしたが、実は二人ともオフロードバイク乗りで、しかもどちらも飛行機が好き、レトロおもちゃが好き、オマケに共々オハイオ州生まれのカントリーガイ……という、趣味も話も出生も、何から何までピタッと馬が合い、今まで仕事が一緒にならなかったのが不思議でたまらなかったそうで。 以来、お互い親友として今も深い交友が続いているとのこと。 ウィリアムスがなくなった後にも、IGT社のスロットマシンでまた一緒に仕事が出来たそうですヨ。 |
▲圧巻は、フィールド上段から急降下と上昇を繰り返す“狂気の滝つ瀬”ランプレーン。3マルチ中はジャックポットが掛かり続ける | ▲バックボックス全景。フィッシュTドクターWアダムスF等々バックボックストッパーにオブジェを設えるのが流行っていた時節 | ▲エキストラのスタンダップ。低い位置の狙い打ちはコワいが、とにかく点いたらしとめなきゃ始まらない |
▲下段左ランプ“凍てつく山の背”。解説では割愛したがこのポイントにはマルチミリオンなる連続ショット系の楽しいフィーチャーがある | ▲プレイフィールド全景。迫りくる立体感デザインも素晴らしいが、どのコースも行き詰まらないボールフローも卓越 | ▲6つのミニゲームの各項目はバンパー地帯に掲示されている。次に取れる項目はバンパーアクションでライトチェンジ |
▲激しくうねるランプレーンの迫力もノードマンらしいが、全編炸裂しっぱなしのヒャッハー感も、いかにも彼らしいテンションだ | ▲ロックポケット入口。奥にはVUKがあるが、このコイルもセンサーも誤作動が多くて、調整の悪い店ではとても呻吟した | ▲類人猿ビッグフットによるディヴァーター。腕を動かし首も動き、愛嬌たっぷり。実はコイツは宝物を守っているという設定 |