中区/丸の内駅

ザ・カワブンナゴヤ

▲華やかな結婚式場によるフレンチ系デザートブッフェ…てのを想像していたが、予想と大分違う。昭和モダンな和装レストランでの地味〜なバイキングである ▲公道にメニュースタンドなんか立てない、ファザードも殆ど無い、由緒正しき老舗料亭。大きなお屋敷で、お館様とか居そうな雰囲気
▲3Fブッフェ会場。ブッフェボードというか書斎部屋の文机のようなテーブルにプチデザートが並ぶ。政治家や文豪たちの会食とか、そういうのが似合いそうな空気 ▲なんというか、ブッフェに華やかさが無い。演出的に抑えているというより、配膳も品々もとにかく地味で、パッとしないうちに1巡が終わってしまう

― DATA ―
企画名デザートバイキング
メインメニューデザート
ケーキのサイズ【極小】
お値段2,500円/3日以前の事前予約で2,300円
制限時間90分
実施タイム毎週水曜/午前11時半〜午後3時(入館)
ドリンク飲み放題!
その他ルール全席禁煙/館内分煙
※各項目のポイントは10点満点で審査。総合★取りは5つが満点。
― JUDGE & COMMENTS ―

(ずばり、おいしいかどうか)
[7] 中区丸の内に構える老舗料亭《ザ・カワブンナゴヤ》で毎週執り行われているデザートバイキングイベント
 歴史ある“河文”の由緒やその趣き、厳かな佇まいなど、確かにホテルデザートブッフェの優雅さとはまた違った風情があるのは分かるが、残念ながらその味に対して相応的な感動を見出すことはできなかった。

 で、カワブンナゴヤは伏見のあたりから続く繊維問屋街の北部に構えているのだけど、昭和モダンというか、明治の文豪でも通っていそうな、とても古めかしい建造物。生い茂るように取り囲む竹林と正門の提灯からして、近づくにつれ、正直お化け屋敷に着いたのかと。
 入館すると正装の女性コンシェルジュみたいな方々がお出迎え下さり、エレベーターのボタン押しや乗降、コートの着脱などなど、席に着くまで同伴して終始ご介錯。
 不慣れな貧乏人はこの心配りに緊張して落ち着かず、途中通り過ぎる格調高そうな調度品とか窓からの景色とか、のんびり眺めてる余裕がない。

 デザートバイキングのフォーマットはというと、毎週水曜日、午後12時半〜3時、フリードリンクつきで90分2,500円予約制だが、席が空いていれば飛び込みでも案内可能だそうだ。
 また、3日前までの予約で200円引きの利点があり、更に5日前までの予約でツキ変わりの限定特典有り。
 因みに今回の特典は特別メニュー[フォンダンショコラ]の1品サービス。

 会場に用意されているのは、細長ヴェリーヌや一口ケーキなどのプチデザートでぐるっと外周を埋めたブッフェボード。その脇にはドリンクバーとスープバー。
 アイスコーヒーはえぐ味なくコクもあり、軽食やデザートと共に飲み干すのに丁度良い濃さで美味しかった。
 紅茶は飲まなかったが、“宜しければフレーバーティーもお作り致します”と対応スタッフが笑いかけてくれる。

 デザートラインナップには一応賞賛に浴せられる秀作も散見。[苺のショートケーキ]は優雅な生クリームの滑らかさ、しっとりと味の深いスポンジの柔らかさ、果物の鮮やかさ等、どの箇所も劣ることなく気高い完成度を誇っていてイチオシ。
 [ヨーグルトムース]も面白かった。滑らかムースにはヨーグルト特有のクセが無く、コクのある爽やかさが生き生きしている。それに苺や生クリーム、デコポンソースなど、相性の良いトッピングが用意してあるので、好きにアレンジできた。

 しかし、スイーツ全体のお味と見栄えは地味なものばかりで、華やぎが乏しい。

 [チョコチップシフォン]の鮮度は悪くないもののスポンジのキメが粗く、シフォンと言うより焼きたて食パンの中央部を割って食べてるみたい。香りやトッピングにも味わうべき箇所が少ない。
 舌の肥えた人にとって[カワブンロール]はロールケーキとして水準程度。玉子色のスポンジの味は悪くないが出来立てでなかったし、フルーツのフィリングが無いと物足りない仕上がり。
 [抹茶シュークリーム]は西尾産抹茶クリームの清新な苦味と香りは素晴らしいのに、乾ききった凡庸なシュー皮が台無し。
 ワーストワンは、厨房での脇役を寄せ集めたような[カップケーキモンブラン]。土台のブランデーケーキの上に微量の小豆を乗せてマロンクリームを絞り、トッピングにマロングラッセを乗せているが、全部甘すぎて一口で頬張るにはくどすぎる。
 [ティラミス][杏仁豆腐]も正直当たり前のレベルで、味は強くとも弱めの食感と香りの弱さにより、期待には届かず。
 3種の味違いロッシェがつまめる[本日の焼き菓子]が美味しかったのだが、ケーキバイキングの主役を張らせるには荷が重い。メレンゲが得意ならシャルロットやシブーストやカーディナルシュニッテンのホールをドカッと出して欲しい。この空間にはそれぐらいの贅沢が相応しいというもの。


 2,500円という料金の割りに、千円台後半のランチバイキング規模のデザート編成だったこともかなり不満なのだが、それ以上にこのお店の何に納得できていないかというと、お客様に何を楽しんでもらいたいのか、その重心が不明瞭といういこと。
 ブッフェのコンセプトは一体何なのか、良く分からないのだ。ケーキの味や彩りより、堅苦しい雰囲気しか来館者の印象に残らない。

 ブッフェを楽しもうと入店したのに、席についてすぐサラダ、パスタ、サンドイッチのお食事メニュー選択を聞かれたことに、先ず困惑した。
 デザートブッフェなんだからサンドイッチやサラダならブッフェボードに出せばいいのになぜ?
 しかも選択して出てきたサラダは、レタスと水菜とトレビスとツナにドレッシングを回しただけで、面白みに欠ける。
 ブッフェとは別枠でわざわざオーダー取るくらいなら、“苺になさいますかチョコバナナに致しましょうか”とか言って焼き立てパンケーキし出しちゃうとか。それともあのすがすがしい抹茶生クリームをたっぷりポンプ詰め立て新鮮サクサクシューとか。消費者が求めるのはそういうものだ。
 後半になってからテーブルサーヴで限定フォンダンショコラや創作アイスをぽろぽろ出してくるのも戸惑った。ソレだって初めから食べ放題メニューにすればいいのに潔くないなぁ。

 かように食の興味が散漫になってしまい、傑出した目玉品も演出もないので、時間が進めば進むほど感興がそがれてゆく。
 しかも高級洋食亭のクセに冒頭で釘を刺す着席90分宣言の堅苦しさには誠に興ざめ。
 確かに、ピアノが置かれ、毛筆書が飾られ、ジャズサウンドがスウィングし、窓辺では竹の葉が揺れる格調高い昭和モダンな空間の中、かしこまった四角四面のもてなしによる上流階級気分を味わう非日常体験は、魅力のひとつかも知れない。

 しかし忌憚無く申し上げると、味やお品書きがそれに追いつけないなら、人様に薦めることはできない。
雰囲気
(入りやすい店か、落ち着いて食せるか)
[8]
リベラル感
(実施時間が不自由でないか、ルールがやかましくないか)
[7]
接客
(説明など不親切でないか、感じは悪くないか)
[10]
立地
(場所は便利かどうか)
[8]
お得感
(質量共に料金以上の満足が得られるかどうか)
[4]
総合【★★−−−】整合性や豪快さに欠け、満足度も料金相応を下回った。

当日の収穫!

▲本日の焼き菓子,カワブンロール ▲ツナサラダ ▲チョコチップシフォン,ガトーショコラ(表面のチョコメレンゲさくさく感は面白い)
▲杏仁豆腐(もっとゼラチンむちむちの方が良いのでは),赤いフルーツのマリネ(口直し用にはいいかも) ▲苺のショートケーキ,チョコプリン(この店のチョコ系は可もなく不可もなく) ▲ティラミス(クリームチーズの味は良いが食感が軽すぎる),カップケーキモンブラン,抹茶シュークリーム
▲クレームビュルレ(エスプレッソ味のカスタードは個性的だがあまり奏功していない),柚子葛よせ ▲栗とラズベリーのタルト(これもマロングラッセがくどい),緑茶あんみつ(ここ日本茶系は美味しいね) ▲パンナコッタ苺ジュレ(パンナもゼリーも堅調なつくりで爽快),自家製わらびもちwith和三盆黒蜜(とても柔らかかった)
▲フォンダンショコラ(普通……) ▲ヨーグルトムースwith生クリ+デコポンソース+パイナップル,ワッフルwith生クリ+苺+ハチミツ ▲イチジクアイス(イチジクのクセが残ってるのが逆に良い),きなこアイス
▲2巡目のまとめ取りだけどもう時間がない ▲コーンスープ,ポテトチップ(市販品とは一味違う感じ) ▲オニオンスープ(サンドイッチのお供には良さそう),フルーツマリネ
……2,500円の内訳を言うなら、通常ブッフェ1,400円、伝統や格式に1,100円。それはそれで楽しめる方はどうぞ。

― みちあんない ―

■名古屋市営地下鉄[丸の内]駅徒歩5分。C番出口から出てすぐの交差点で左折してしばらく直進。右手側。

【所在地】〒460-0002
愛知県名古屋市中区丸の内2−12−30
ザ・カワブンナゴヤ
【営業時間】午前11時〜深夜2時
【tel】052-222-0020
【関連サイト】公式サイト 一休予約サイト 食べログ
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▲スープバー。コーンスープとオニオンスープ。お食事オーダーの際はどうぞ ▲ヨーグルトムースとワッフル用に添えられたトッピングコーナー。生クリやコンフィチュールの出来はかなり芳しい!もっと早く気付いて色々かけちゃえば良かったな
▲ブッフェ会場内はこんな感じ。2時ぐらいまでは女性客で6割ほど埋まっていた。1人客はいないし、珍しいんじゃないかな ▲ドリンクバー。コーヒー紅茶の他は、オレンジJ,グレープFJ,グアバJ,クランベリーJ,マンゴーJ。

(取材日:2013年1月16日)