三重県津市/近鉄津新町駅

ムッシュ・コウノヤ

▲コウノヤ外観。随所にお人形が飾られ、お店全体にアンティーク調の可愛らしさがある。店頭脇に泊まる出張販売車がこれまた可愛らしい ▲ケーキは300円前後から400円前後で水準の価格設定だが、サイズは一回り小ぶり。そのかわりお味と品格の濃縮感がひしひし
▲クラシックショコラを頼んだら溶き立てフレッシュ生クリームがたっぷり絞られてきちゃった。ワインスーソもいい香り。 ▲イートインのお客様向けへのセイロン紅茶サービス。あえて砂糖やフレッシュは無し。ケーキと一緒に飲み下せば、心がほどけるようにリラックス

― DATA ―
企画名ケーキバイキング
メインメニューケーキ
ケーキのサイズ【中】
お値段1,500円
制限時間着席込45分/ラストオーダー40分
実施タイムフェア期間内予約制(2013年8月〜9月平日)/午後6時〜午後6時45分
ドリンクHot紅茶が飲み放題
その他ルール全席禁煙/1度のお皿に載せれるのは2品まで/ケーキホイルやフィルムなどのゴミはその都度お皿乗せ返却
※各項目のポイントは10点満点で審査。総合★取りは5つが満点。
― JUDGE & COMMENTS ―

(ずばり、おいしいかどうか)
[9] ●ヘタな愛知県の市より個性的で充実したケーキバイキング店が揃う三重県津市内で、伝統的なフレンチ洋菓子店が時折期間限定で執り行っているケーキバイキング。
 お店の規模や品数にスケール感はないが、頑迷な程に細密で高雅なケーキばかりが揃い、一口ごとにパティシエの殺気すら感じる、凄味の効いた一件だ。

 くだんのお店《ムッシュ・コウノヤ》へのアクセスは近鉄津新町駅からが最寄だが、便利なJR/近鉄津駅からも徒歩での到達が可能。
 最近デザートブッフェを始めた《ザ・グランコート津西》も近隣。学校が非常にたくさん建つ界隈なので、夕方はとかくみちほどに中坊高坊が溢れている。

 コウノヤ・ケーキバイキングの実施フォーマットについて。
 以前は毎週火曜の午後昼過ぎに僅か千円……という、レギュラー実施にしては低廉過ぎるお値段で供していたものの、現在ではイレギュラー実施期間の平日、予約必須、夕方午後6時〜6時45分までの45分間、1,500円という割り振りに落ち着いている。
 今回の実施期間は8月〜9月の2か月間(お盆を除く)。9月初旬の時点でもう開催日全ての予約は埋まり切る程の人気ぶり。
 受付は1日2組・総計4名only。きっちり実施時間の45分間の着席で食べ切るシビアなローカルルールだが、僅か6席の小さなイートイン席を考えるとむべなる采配である。因みにセルフのHot紅茶つき。
 尚、注文は対面ショーケース前でオーダーするスタイルだが、品によってはソースが落とされたり溶き立て生クリームが搾られたりしてからテーブルサーヴされる品も有り。

 で、お店の規模が規模なので、スタートまで店頭入口の屋外チェアで待機しようと思って立ち止まった途端、凄まじい蚊の攻撃!
 入口付近の流水と豊富な観葉植物のためか、筆者本体の衣服や肉体は勿論、設置されているベンチに置いた黒鞄にも反応した数匹がピュンピュン群がる凄まじさ。いられないいられない、こんなトコで待ってられない。
 やむを得ず付近を散策してみつけたお寺さんを参拝して開始時刻6時ギリギリまで時間をつぶさねばならなかった。

 それは置いといてこちらのケーキ。ひとしなひとしなが大変優美で、流行には殆ど阿らぬ気高い仕上がり。
 例えばタルトに配されたマロングラッセの糖度の深遠さとか、ちょこんと一粒だけ乗ったピューレ苺の可憐なお味とか。
 端役程度の添え物にまで徹底して作りこまれた先鋭な構成は、丁寧な作りと言うか頑固職人の執念すら感じる程。

 [ブルーベリータルト]は盛り盛りのブルーベリー粒が大仏さんの螺髪状態。そんな外観からして目の覚める酸っぱさを期待してかぶりついたが、そのようなブルベリ特有のクセはやわらげられ、大変頂き安い甘酸っぱさ。素材が素晴らしいのかそれとも良質カスタードハーモニーのおかげか。ナイフが要るくらいザグザグ鳴るタルト生地にも痺れる!中層に潜ませてあるのはプルーンかしら?この妙味も絶妙に面白い。
 [白いロールケーキ]も忘れがたい逸品で、米粉もちもち且つふわふわのロールスポンジに塗られた苺クリームとの相性も食感も素晴らしい。ちっちゃく乗せられたピューレ苺がとても丁寧に仕込まれていて、このたった一粒がケーキ全体のお味をピシッと引き締めている。画竜点睛とはこのこと。
 聞きなれぬ食材を使用した[カダイフを乗せた栗のタルト]は、そのカダイフの揚げ細麺パリパリ食感を楽しむよりも、大粒マロングラッセがもりもり入った、焼き上がり香ばしいタルト本体こそ、ずっしり重厚で食べ応え有り。特にグラッセ栗の仕込みの丁寧さには感動すらした。
 [ちょっと大人のショコラ]はクラシックショコラというか、この精緻さとパワフルさを兼ねたショコラのお味は、むしろ格調高いザッハトルテみたい。新鮮さにも迫力のある生クリームをたっぷり絞って赤ワインソースをくるりっ。悩殺的な色香を漂わせてテーブルまで運ばれる。
 枝豆2粒と黒みりんを落とした[豆2プリン(とうふぷりん)]のナチュラルな味わいも爽快だったし、艶出し塗らずともキレイな焼き色で、優しくて濃厚な本体の喉越しまろやかな[チーズケーキ]も至宝の出来。

 ゼリーかと思って頂いてビックリしたのが[The オランジュール]。生地にもオレンジ練りこみぎっしり、上にはミント風味のオレンジピールずっしり、濃い目のオレンジカスタードもたっぷり、さらに濃縮オレンジゼリーが溢れんばかり。丁寧な仕事がテクニカルに懲りすぎて、良く分からない凄さに到達。因みにコレ小ぶりサイズで450円。完璧過ぎるお仕事が裏目に出ている品もあった。


 ケーキカフェと言えば白を基調としたカウントリーウッド調やカラフルなパステルファンシー調が流行りなのだけど、こちらは抑えた色彩の中、随所にお人形さんやドライフラワーが飾られていたり、荷馬車の車輪とか彫像とか、何だか伝統的なフランス工房を髣髴させる、厳かな雰囲気が横溢。流れるBGMはクラシック音楽。
 お店の方の生真面目なお人柄を細部に感じる一軒である。

 ただ、前述のように蚊の襲撃には気をまわされてないようで、やはりバイキング中も店内に数匹が侵入。他にみえられた女性客のお方も『蚊!蚊が居る!』と時折戦慄。
 一同ケーキの舌鼓を打ちながらも折りを見て、ペチ!あペチッ!とモスキート退治に勤しんでいた。
雰囲気
(入りやすい店か、落ち着いて食せるか)
[7]
リベラル感
(実施時間が不自由でないか、ルールがやかましくないか)
[4]
接客
(説明など不親切でないか、感じは悪くないか)
[8]
立地
(場所は便利かどうか)
[7]
お得感
(質量共に料金以上の満足が得られるかどうか)
[8]
総合【★★★−−】お味は格調高いが、食べ放題として見ると堅苦しくて寛ぎ感が乏しいのが難点。

当日の収穫!

▲ブルーベリータルト,豆2プリン(枝豆って結構プリンにも合うのね) ▲白いロールケーキ,ムッシュのシュー(一見小さいがフィリングは重めでシュー皮ももっちり) ▲チーズケーキ,カダイフを乗せた栗のタルト
▲いちじくのゼリー(イチジクも生クリも非常にフレッシュ!),ちょっと大人のショコラ ▲The オレンジュール,もんぶらん(ダックワーズ系。マロンペーストは意外と普通) ▲白いコーヒープリン(真っ白だけど確かにコーヒーの風味)
……駆け足で一気に食べた45分。季節のショートもバナナタルトもフルーツタルトも食べたかったが間に合わず。

― みちあんない ―

■最寄駅は近鉄津新町駅だが、JR/近鉄津駅からでも徒歩20分程度、且つ判り易いみちほどで到達可能。津駅の西出口(近鉄側出口)から出て、バスターミナル右手方向向こう側の大通りへ。交差点[津駅西]を左折、そこから20分近く、徒歩でずーっと一直線。

【所在地】〒514-0041
三重県津市八町2−15−1
ムッシュ・コウノヤ
【営業時間】午前9時〜午後7時半
【tel】059-223-2052
【関連サイト】お店の公式サイト 食べログ
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▲子供向けなアニモー型ケーキもあるが、全体的には彩りもお味も大人向けのケーキが多し。流行色は薄いが凄味が効いたラインナップだ ▲こちら入口。しかしこの付近の蚊の多さにはまいった
▲イートインスペース。車の駐車スペースは十分あったけど、喫茶席は6席のみ ▲窓辺のお人形さんたち。みんなお髭を蓄えている……

(取材日:2013年9月5日)