私には、写真を撮るうえで心の師と仰ぐ人がいる。
 心の師とは、直接指導を受けたことは無いが尊敬してやまない人を指していう言葉で、その方はプロの写真家である。
 私がインターネットを始めたばかりの頃だった。とあるサイトの掲示板に「一日限りの写真展」の案内が書き込まれた。リンク先に飛んでみると、とても優しい気持ちが込められた写真が並んでいた。そのサイトの管理人さんが、日記に辛い心情を書き綴っていたとき、突如としてがアップロードされたのだ。写っているのは無邪気に笑う管理人さんだった。
 なんて優しい写真なんだろう!
 住宅街の路地で無造作に撮ったスナップなのに、そのときの管理人さんの楽しさが伝わってくる。私は、写真が気持ちを伝えるものなのだと知った。その写真を撮り、このタイミングでアップした人を心から尊敬した。それはプロの写真家だった。
 以来、私はその先生を心の師と決めた。先生のサイトを見たり、個展にも通ったりしている。少しでも先生の写真表現を学びたいからだ。
 ここのサイトを立ち上げる前に、心の師から初めてメールをいただいた。以前のサイトの写真コーナーを見ての感想だった。
「ファイル名を見ましたが、はじめと終わりを見比べると何回シャッターを押したかわかります。こんなに少なくては写真が巧くなるはずがない」
 どうやら内容を云々する以前に、もっとたくさん撮れということらしい。厳しいなとは感じたが適当なお世辞を並べられるより、よほど嬉しかった。
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