本格的に写真を撮ろうと考え始めた頃、さっちんのオフィシャルサイトを発見した。まず洗練されたデザインに目を引き付けられた。コンテンツには熱く燃えたぎる野望が語られていた。さっちんはレースクイーンとして活躍しつつ、モデルとしても活動し、いずれはシンガーとしてメジャーを目指すという。
 綺麗なモデルなら他にもいる。さっちんにはそれだけでない魅力がある。まっすぐに夢を追いかける一途さがいい。
 さっちん自ら主催する撮影会があることを知った私は、迷うことなく入会希望のメールを送信した。そして、以後一年間は毎月必ずさっちんを撮ってみようと考え、それを実行した。
 さっちんを撮った三度目の写真をアップしたとき、心の師からのメールをいただいた。どうか御覧くださいと図々しくおねだりしたのだが、お忙しい先生のことで、そうそう御返事はいただけない。喜んで読んでみると、
「なんか撮らされてる感じなんですが」
 という内容であった。
 まったく御指摘のとおりだった。さっちんがカメラの前でポーズを決め、それに圧倒されて思わずシャッターを押した写真ばかりだった。
 ポートレートの8割はモデルで決まるという。さっちんに撮らされていたとしても、自分ではそれなりに良い写真が撮れたと思い込んでいた。だが、プロの目は撮らされただけであることを見抜いていたのだ。
 さっちんはプロ、こちらは素人。かなわないとは知りながら、さっちんの前でカメラを構えるたび、撮るか撮らされるかの真剣勝負をするよう心懸ることにした。
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