ポートレートは面白い。同じ相手を撮っても、だんだん撮り慣れていくと写真に捉える表情も変わってくる。さっちんも撮らされるばかりだったのがだんだん圧迫を感じなくなり、自然な表情が撮れるようになってきた。
「見てると面白いよ」
 と、わが心の師も言う。撮るたびに変化していくのがよくわかるからだということだった。
 さっちんは我々素人にもプロとしての仕事をしてくれる。どの撮影会でも誰のカメラの前でも気を抜かない。参加者の好みの表情やポーズを記憶していて、「こんな感じでしょ?」という具合にやってくれる。私の場合は素に近い表情を撮るのが好きで、オヤジギャグで笑ってもらうこともある。
 撮影会のモデルは、さっちんのようなプロばかりではない。アルバイトで撮影会だけに出演する学生さんも少なくない。そういうバイトさんたちでも何度か撮っていると息が合ってくる。
 残念なことにモデルさんは突然撮れなくなってしまうことが少なくない。特にバイトさんは学校を卒業して生活環境が変化すると辞めてしまう場合が多い。プロのモデルさんでも、メジャーデビューすれば撮影会には出ない。せっかく撮り慣れても、いずれは撮れなくなってしまうのだ。
 それを思えば撮影も一期一会だ。そのとき、その場所で、その人を撮れる機会はただ一度きり。悔いを残さないよう撮らねばなるまい。
目次へ   第六話へ