この世の中、いつでも何処でもついてまわるのがお金の話。なるべくなら避けて通りたいが、そうはいかない。
 銀塩フィルムを使う人は感材費がかかる。一日に10本くらいは撮るからフィルム代と現像代だけで万単位になる。私のようなデジカメ派は感材費がかからないだけ費用の面で楽が出来るけれど、それでも毎月の支出は決して少ないものではない。
 費用が掛かるのは撮る側だけではない。撮られる人だって、お金を掛けてカメラの前に立っている。まったくの普段着でスッピンのまま撮影会に出るというなら費用は掛からないが、モデルさんたちも美しく写りたいがためにいろいろとお金を掛けている。衣装にこだわる人は新しい服を買うだろうしメイクにこだわる人は美容師にメイクしてもらうだろう。
 服が一揃いでいくら掛かるかはピンキリというものだろうが、たいていは万単位のお金が掛かることと思う。また、顔だけのメイクでも床屋一回分に等しい費用が掛かるという。ヘアメイクや着付けを頼んだら万単位でお金が掛かるのは言うまでもない。
 してみると、撮影会というものは撮る側も写る側も贅沢な時間を過ごしているものだと思えてくる。業者さん主催の撮影会に一日通しで参加する場合2万や3万の参加費がかかるうえ、感材費がかかるから、人によっては一日あたり5万くらい使う計算になるが、モデルさんだってお金を掛けて自分の美しさを磨いているに違いない。
 その一方で、お金の掛からない撮影も出来なくはない。事実、個人撮影で撮らせていただく方のなかには無償で撮影させてくださる方もいる。衣装は手持ちの外出着であったり、まったくスッピンで登場する人もいるけれど、その人の自然体を撮るには好都合ではないだろうか。
 モデル料としていくらか差し上げる方にしても、赤字になるほどメイクにつぎこんでいる人が居る。そうやって飾ることが似合う人ならば、こちらも納得してお金を出せる。
 しかし、どうも勘違いしているようなモデル志願者もいる。自分の若さと美しさを写真に残しておきたいという動機は良いとして……。
「衣装は用意して欲しい。メイクは無し」
 そんな条件で高額な報酬を要求してくる人があった。おまけに撮影の経験無しなのだという。自慢の衣装もなく、メイクもせず、カメラの前に立ってポーズひとつ出来ないとなれば、そんな人にお金は一円も払えない。
 もし、本当に自分の美しさを写真に残したいのなら、私のような素人など相手にせず、プロのスタジオへ行くべきだろう。ヘアメイクと顔のメイクもセットで2万や3万は掛かるし、しかるべき衣装を新調するならば合わせて5万も掛かることになるだろう。
 本当に撮る側も写る側も、本格的にやろうとするとお金が掛かる。それに比べれば、私の個人撮影なんか「お遊び」にすぎない。だが、楽しみでやる道楽なのだから、プロとの違いを自覚しているかぎり許されることだろうと考えてもいる。
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