いよいよtentenファームを卒業したことにする。「もう来ないでいい」という
k-oka先生のお言葉の真意を質したところ、「ファームでは教えることがなくなった。その上へ行け」とのことだった。それを聞いていた人たちは、上というのはフォトアラジンではないかと思ったことだろう。だが、アラジン先生は首を縦に振らなかった。 フォトアラジンとは、銀塩での作品づくりを学ぶセミナーでアラジン先生御指名のメンバーで構成されている。指名を受けなければ参加できないということで、会員の中には鼻息の荒い人も少なからず見かける。 ファームを計画していた頃にはフォトアラジンをファームの上位に置く構想もあったと聞くが、実際に始まると両者に上下関係を持たせることは適当でないことがわかった。教えている内容が違いすぎるからだ。 実際のところ、フォトアラジンにお呼びがかからない私にはどう違うのかを説明するのも苦しいが、フォトアラジンで学ぶテクニックはスゴイのを一枚撮るためのものだろう。その点、ファームは組み写真の流れと繋がりをテーマとし、たった一枚スゴイのが撮れても他のと繋がらないという理由でボツになることも多い。 誤解を恐れずにいえば、フォトアラジンはコンテストで上位入賞を目指す人のためのセミナーでありアマチュアにとってはメリットが大きい。一方のファームは組み写真をつくるためのセミナーである。たいがいのコンテストは単写真の募集なので組み写真の奥義を極めたとしても役立たない。では、いったいファームのメリットとは奈辺に存するか? 実を言えば、ファームで「もう来るな」と言われたのは私が第一号ではない。とっくの昔に言われた凄腕の持ち主がいるが当人は納得しないで通い続ける意向であるらしい。いうなれば卒業第一号は名乗った者勝ちで獲得した称号なのだ。 閑話休題。不肖たぬきとしては、卒業第一号の看板を背負うからにはファームそのものの地位向上を目指している。見下すような輩には正面からぶつかる覚悟もある。ただ、それをやるからには努力も惜しまない。とうてい自分には荷が重いことも引き受ける。まさにフォトハイキングのスタッフ業務がそれにあたる。 この新しい企画の趣旨を活かすためには、いままでどおりのやり方ではいけない。まず楽しむことはさておいて、背景重視というテーマを第一にすべきなのだ。わかりやすく線引きするために、通常のtenten撮影会では恒例の色紙書きと記念撮影を廃止したし、御参加の皆様の撮り方にも注文を出す。お客様の御要望も背景重視のテーマに反する方向であれば聞き入れず、いままでの開催形態に慣れた人にとっては迷惑に違いないが、そうやって憎まれることもスタッフの仕事だ。なんとなれば、フォトハイキングは採算性を度外視した企画であり、お客様に機嫌よく撮っていただくよりも、その趣旨を御理解いただけるようにすることが目的なのだ。 さて、その趣旨というのは背景重視のことだ。ファームでも重要な課題のひとつとして学んできた。それがいかに役立つかということをアピールしなければならないと思い至ったとき、私は大いに苦悩することになった。この項続く |
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