ヲトメの愛するやおい10大法則
■やおいの法則〜腐女子妄想10大パターン
@受け攻め配役の固執
A固定のカプに恋の仇役を登場させる恋愛三角関係のもつれの妄想に悦
B同人誌冒頭でのカップリング及び複雑な恋愛相関系図の列挙
C大勢の攻めキャラが、受けキャラ1人をめぐって争い合うタイプ〜醜いののしりあい大好き!
D新婚生活、育児・家庭生活を描いた、結婚夢想系やおい本〜結婚させてうっとり!パパママこちょだて幸せ♪
E童話・おとぎ話・昔話の配役でキャラたちの恋愛バトルの攻防を描くタイプ
Fでも、結局エロはギャグ落ち逃げ。
G本のタイトルはハッピー・ラッキー・ラブラブ・ラブリー〜頭はいつでもお花畑
H元の絵柄が気に入らなければお耽美に美形化、または擬人化 『原作ぅ?知ラナーイ(笑)』
I1年も経てば、別のアニメにあっさり乗り換え 『あたし××に転んだのー♪』
■アニメ同人サイクルにおける3つのシーズン
《第1期:作品布教型》
《第2期:受け攻め・三角関係・受けキャラ争奪戦型》
《第3期:固定カップリング・メロドラマ型》
やおいの法則〜腐女子妄想10大パターン
キャプテン翼、聖闘士星矢、鎧伝サムライトルーパー、幽☆遊☆白書、新機動戦記ガンダムW、テニスの王子様、鋼の錬金術師……。
ブームは移れど、いつの時代もやおい本の内容は全く変わっていない。
いや、男性向けショタジャンルの浸透とその影響下により、肉棒・精液の描写が露出的になるなどの変化はあるが、やおい同人誌のシノプシス的な構成、オタク少女たちの欲望の嗜好回路に大きな変動はみられない。
ここでは、やおいの典型的な法則を10項目に分けて論じておく。どんなやおい本・やおいサークルも、後述のどれかに1つ2つ、いやもしかしたら全部、必ずやあてはまる。
事実、面白いほど合致しているのだから、実際に照らし合わせてみると、目からウロコの感動すらあるはずだ。
@受け攻め配役の固執
カップルである以上、愛し合う際に
受け役と攻め役
がある、というのが腐女子らの理論。
好色で嫉妬深く過剰におおはしゃぎする【攻】キャラ相手に、乙女のように困惑しながら体を許す【受】キャラ、というカップリングが、大前提的基盤中の基盤。
例えば、ハガレン(「鋼の錬金術師」の略)のカップリング表記として
【ロイ×エドワード】
と標榜されていたなら、
前者のロイが攻め役で、後者のエドワードが受け役
。
さらに、
『ロイエドサークル』『ロイエドカプ』『ロイエド本』
と略して呼称されるのが一般的。
しかしここで疑問なのだが、男性キャラ同士なら肉体関係は対等同士であり、タチ、ネコはリバーシブルに楽しめるはずなのでは?と不思議に思うご貴兄もおられるかと思う。
さよう、男性向けゲイ本・ショタ本においては受け攻めの境目がボーダレスまたはリバーシブルの方がむしろ当然であるし、受け攻めがあったとしても誘い受け・襲い受け、襲われ攻め・気弱攻め、と言った変幻自在な同性愛関係が柔軟に描かれている。
しかし腐女子向けやおい本ではこの受け攻め配役の固定配置が何よりも基本であり、また頑なな固執とただならぬ妄執が過分に見られるのだ。リバーシブルなどもってのほか(例外あり)。
同じアニメ作品でも受け攻めの役割が逆同士のために派閥ができて、かつてC翼、☆矢、トルーパーブームの'80年代後半頃には同人少女たちの間で反する派閥サークル同士が激しく対立。
カミソリの送り合いは勿論、石や汚物、または相手サークル発行冊子をメッタ斬りに引き裂いた惨殺状態の本の送り付け、
『○○は悪質なサークルです、騙されないように注意してください』
と言った中傷・怪文のばらまき、はたまたイベントでの
【大嫌いコール】
……せーの!××カプなんて信じられなーい!!大っ嫌―――い!!!
という対立相手へ嫌がらせ目的の合唱……などのヲトメテロ行為が実に盛んであった。
しかし現在ではマナーとして、
『カプの相違はあって当たり前、互いに余計な干渉はしない』
という良識が確立。カップリングが異なるサークルやブースなどを【よそのくに】などと呼び合い、全く干渉もしなければ相手にもしない。コミュニケーション断絶拒絶を終始通すことが、やおいサークル運営を続かせるためのルールとして浸透している。
確かにそれならトラブルも起きないが、交歓も交流も情報伝達も完全シャットアウト状態で、同じアニメジャンルでありながらコミュニケーションは喪失してしまっている。
A固定のカプに恋の仇役を登場させる恋愛三角関係のもつれの妄想に悦
やおい少女たちは@で挙げた受け攻めのカップリングに加え、
その2人の恋路を邪魔するキャラを登場させて悦に入る
傾向が強い。
その第三者キャラも同じアニメの主要人気キャラだったりするのだが、その恋仇が卑劣だったり姑息だったり、また無残にも恋に敗れてみじめに踏みにじられるような役回りを演じさせ、メインカプの恋愛成就をスリリングにするための妨害者扱いとして、相当な汚れ役として泥をかけて喜ぶヲトメも多い。
しかし、そのキャラに恨みがあるというより、恋愛三角関係を脳内に想い描いてうっとり萌えるというのが同人ヲトメという生き物だ。3人の関係が醜く泥沼化されればされる程、一層悦に浸って酩酊するのである。
特に、受けキャラをめぐった攻めキャラ同士のののしり合いや罵倒には、過剰な興奮を覚える傾向が非常に強い。
B同人誌冒頭でのカップリング及び複雑な恋愛相関系図の列挙
本の冒頭で、数多く登場するアニメ・コミックキャラクターたちの恋愛相関系図をフロチャートのように、
【片思い⇒】【ライバル⇒】【大好きだけど恋人未満♪⇒】【お前生意気なんだよ⇒】【キミの為なら死ねる⇒】【大っ嫌い!⇒】
……だのなんだの、それぞれの相互的な恋愛感情を、あっちこっち矢印引いて、中にはわざわざ見開き2ページ大図解で大々的に展開しているというパターンも、やおい本の定石。
同人ヲトメたちは皆、この
【恋愛相関係図】
を、極度の恍惚的精神状態で描いている。
『ダレダレはナニナニのコトが好きでー、てもナニナニくんは××のコトが好きでー、でも××はダレダレたんのコト狙っててェー♪そんでこのキャラ受けッコでー、んでこいつは絶対攻めよ!それからそれから……』
……と、かように延々とキリの無い脳内のお花畑妄想が、図式として具現化されたものこそ、この【恋愛相関係図】なのである。
当人は実にウキウキと幸せそうに書いているのだが、読まされる他人にとってはひたすらドン引きの一幕であろう。
C大勢の攻めキャラが、受けキャラ1人をめぐって争い合うタイプ〜醜いののしりあい大好き!
これもアニパロやおいの定番として、昔から盛んに踏襲されているパターンのひとつ。
執筆者いちばんひいきのキャラを受けとして、他のキャラ全員がそいつにベタ惚れしてる攻めキャラたちという脳内設定。
何かある度、
『抜け駆けなんてずるいぞ!』
『こんな奴無視してオレと結婚しよう!』
……などなど、ひとりの受けッコをめぐって攻めキャラたち全員が奪い合いの罵り合いを展開。そんなキリの無いような妄想を延々描いては、ヲトメたちは目を細めてうっとりするのだ。
話としては非常に馬鹿馬鹿しい反面、受けキャラは事態を把握せずぽーっと成り行きをみつめる天然系、一方その他大勢の攻めキャラたちは好色でやかましく、異常に激高的という特徴が、どのやおい本でも統一規格のようにかっちり紋切りで一致というのは、非常に興味深い。
D新婚生活、育児・家庭生活を描いた、結婚夢想系やおい本〜結婚させてうっとり!パパママこちょだて幸せ♪
同人やおいヲトメたちは、
結婚、夫婦、新婚生活、育児、家庭といった枠組み・肩書きに異様にこだわる傾向
が顕著である。
ここでも、お馴染みの相関系図を冒頭で描き、
『この本で2人は夫婦という設定です!』
と声高に標榜。男同士なのに出会いと恋愛、そしてプロポーズを経て結婚、その後マンションで新婚生活を送る……などという昼メロ調のお話が展開される本も、非常にありがちな定番のひとつ。
ごひいきのカップリングが家庭を築き、受けキャラがエプロンして家事や育児をこなし、スーツやYシャツ&ネクタイ姿で帰宅する攻めキャラを自宅でむかえる様子を描くのも、彼女らはいそいそと実に楽しそうに描いている。【夫婦】という肩書き、【結婚】という枠組みに、たまらなく悶えているらしいのだ。
絵柄の魅力に惹かれて本を購入した少年好きの男性ショタ野郎がこういうモノにでくわすと、なんだか幼女のおままごとの延長につきあわされているような、実にこむずがゆい気持ちにさせられる。 このテの本のトーク内容に、こんな記述があった。
『2人が夫婦で新婚なんて設定のこんな特殊な本、皆に楽しんでもらえるかどうか心配です』
……いやいや、実は特殊どころか、やおい本における結婚ネタって昔から超が付く程ありきたりの典型例なのだ。
『スゴイ設定・スゴイ萌えなお話思いついちゃったー♪』と上機嫌で本描いたのかも知れないが、貴方のそのやおいプロットは昔から非常によくある、皆がやらかす典型パターンのひとつなのですよ。
尚、男性向けショタ本の場合、少年キャラ同士が結婚して出産、家庭を築いて育児にいそしむ……というプロットが描かれることは先ず見られ無い。
むしろ、親兄弟などの血縁・近親者による結婚・入籍により、血の繋がらぬ兄弟同志の縁が生じた男の子たちが、性のあそびを2人で始めて関係を肉薄させる…という展開の方が普通。
【男同士で結婚】というプロットそのものにピンとこず、まるで感情移入できないのだ。
実際に男性同志の恋人関係を持つ真性ゲイの作家さんが描くゲイ漫画の場合でも、社会的地位とアイデンティティー確立の夢として、同棲と入籍が描かれる場合がごく稀にある程度で、[結婚夢想もの]は決して盛んに用いられるテーマ性ではない。
E童話・おとぎ話・昔話の配役でキャラたちの恋愛バトルの攻防を描くタイプ
例えば、
「赤ずきん」とか、「不思議の国のアリス」とか、「シンデレラ」とか、おとぎ話の配役で、受けキャラをめぐった恋愛やおいバトルをアニパロで描くというネタ
。
これも非常によくみかけるタイプなので、毎日やおいをむさぼる程でなくとも、同人方面の方なら一度ぐらいは目にしたことはあるのではなかろうか。
こういったおとぎばなしの配役をアニメキャラに当てはめるという二次創作は、描く側の少女たちにとっては非常に楽しくて描き易い、ということは想像に難くない。
しかし読む側は必ずしも楽しめるとは限らない。やおいヲトメの少女趣味や白馬の王子様願望・シンデレラコンプレックスにつきあわされることになるからだ。
特に、「赤ずきんちゃん」は、童話やおいネタとして頻出率トップで、受けのコが赤頭巾、攻めキャラが狼や猟師の配役というパターンが非常に多い。
ところが例外的に、最近あった某アニメの同人誌で、狼が襲おうとした赤ずきんが、実は攻めキャラで、逆に狼クンが襲われてしまうというエロオチの本があった。ケモミミ狼のショタエロスも味わえて、これは非常に面白かったですよ。
こういう作家さん、やおいサークルで終わらせておくのは勿体無い!カプ派閥やジャンル配置に悩んでいるなら、是非ショタイベントへ進出してもらいたいでつよ。
Fでも、結局エロはギャグ落ち逃げ。
男性向けショタ本・ゲイ本ではエロ場面こそ、コアでメインで核心であるのだが、ヲトメの描くやおいでは、
濡れ場へと盛り上がるフリをして、ギャグで落として結局直接描写から逃げるパターンが普通
。
【やおい=過激なホモエロ】というイメージを持つ方もみえるかもしれないが、本当はエロをメインとせずに直接的な性描写は控え、むしろ受け攻めカップル痴話劇を掘り下げることこそ、やおいの真髄なのである。
ただし、'90年代後半頃から、'80年代では考えられなかったくらい、やおい本も性描写が男性向けと同等な程苛烈になってきている。
これは、'95年頃に【ショタケット】なるショタコンonlyイベントの発起により男性向けショタジャンルが確立、同人のみならず、BLものの商業アンソロジーでも男性作家の手によるハードエロのショタものが掲載されるようになったため。
そそりたつ肉棒や射精、大量に飛び散る精子、息絶えだえの自慰行為、ローターやローションなどの道具までも持ち出すアナルファック等、男性作家ならではのダイレクトな少年エロスに、多くの腐女子たちが多大な影響と感銘を受けることになった。
G本のタイトルはハッピー・ラッキー・ラブラブ・ラブリー〜頭はいつでもお花畑
やおい本はタイトルのネーミングについても、実に面白い傾向がある。
例えば
「HAPPY♪(またはハートマーク)」とか、「LOVE(ハートマーク)」とか。あと「らぶりぃ(ハートマーク)」、「LUCKY♪」、「Hello♪」、「らぶらぶゴー♪」
……などなど、至極シンプルである。
意味合いがポジティヴではあるのだが、平たく言えば頭の中が毎日[お花畑]状態なだろう。
やたらと小むずかしい言葉を羅列したがる男性作家の同人誌の本のタイトルとは真逆の傾向があると言えよう(コレも同人女から見ればどエラいアホに映るそうだが)。
最近でも、三角関係どうどうめぐりの痴話劇を延々描いた某アニメのこてこてやおい本のタイトルが、「ハッピーラッキーゴー♪」であったし、ほら、ちょうど今私のすぐ傍にあるやおい本のタイトルも「Happy Max」。
ハッピー・ラッキー・ラブラブ・ラブリー!………うーんまぁ、お幸せそうで結構なこっですが。
H元の絵柄が気に入らなければお耽美に美形化、または擬人化 『原作ぅ?知ラナーイ(笑)』
巷に溢れるアニパロ・漫画パロのやおい同人誌を手に取ると、大抵の場合、
原作・アニメ本編とは絵柄がまるでかけ離れていることが殆ど。顔は面長にとんがり、唇は厚く、まつげは伸び、すっかりおタンビに美形化されている
。
同人ヲトメがアニパロ・漫画パロのやおい本を出すのは、その原作・本編の絵柄や作者のスピリッツに焦がれて慕ってファンになったからではない。自分の恋愛成就シミュレーションの材料として旬のアニメのキャラ設定を借り、受け攻め配役を当てはめてカップリング夢想に酩酊しているだけ。元の作品に対しては敬愛も尊厳も持ち合わせてはいない。
作品本編がイヌ・ネコ等の動物キャラだった場合、
【擬人化】
というアレンジがなされることもあるが、美形化も擬人化も、何事も全て受け攻めカプフィルター仕様に通そうとする。それらヲトメ回路の根本的システムは、同じものである。
I1年も経てば、別のアニメにあっさり乗り換え 『あたし××に転んだのー♪』
これもやおい同人ヲトメの最たる特徴のひとつ。とにかく、ひとつのアニメ作品に飽きるのが早い早い。
同人サークル活動において、これまで腐心していたはずのアニメ作品への献身をばっさり捨て、別の新番組にあっさり乗り換えてしまうことを同人用語で
『転ぶ』
と言うのだが、これが言葉として非常に言い得て妙である。
新たな新番組アニメに転んでからは、以前活動していたジャンルに対して、あれほどカップリング派閥やら受け攻めやらの偏執ぶりは凄まじかったのに、別ジャンルに移ってからは、もう見向きもしやしない。
それどころか、作品やキャラクターに対して非難や嘲笑など、作者に対してすら馬鹿にした言動すらあらわにし始めるのだから、こちとら唖然呆然で開いた口が塞がらない。
但し、ごく稀ではあるが、中には10年以上、同じアニメ作品の同人誌を出し続けているやおいサークルも存在する。いわゆる[倦怠期]を乗り越えれば、そのアニメは自分にとって一生ものになるのだという。
そのアニメに出合ってから最初の半年間ほど、同人誌を出して『奉仕』することが楽しくて幸せで仕方が無い時期は、さじずめ[新婚期]といったところか。
アキバ系の男のヲタクも、社会的現実を無視して二次元キャラを自分の本当の恋人として日々を送ることが知られているが、その点では池袋ヲトメもAボーイも同じのようだ。
アニメ同人サイクルにおける3つのシーズン
前センテンスにて、10パターンのやおいの定石を挙げたが、今度は別の側面から見て同人やおいの動向を分析する。 ひとつのアニメ作品のブームにおいては、大体3つのシーズンで構成したサイクルが巡ることにより、ブームが到来し、発展を経て、やがて終結する傾向があるのだ。
《第1期:作品布教型》
原作の連載スタート間もない頃、またはTVアニメ放映開始から2クールあたりまでに出される、作品紹介・解説・布教タイプの同人誌が発行される時期のことである。
文字通り布教目的の意味合いが強く、作品自体の存在やキャラの魅力を敷衍、同人界に認知させ、同志の有無を模索する内容に終始した本が主に発行される時期のことである。
大体のごひいきのカップリングの標榜はあるが、それよりアニメ作品自体の敷衍に重きを置いているのが特徴。大体のあらすじ、原作についての言及、生粋パロ漫画による物語性の解説、そして何よりキャラクターの魅力に関し、冷静で落ち着いた筆致で誠実に語る姿勢から、そのアニメ作品が同人でブームに乗ることを強く願う想いが伺える。
また、この時期の同人誌の絵柄には極端な美形化は乏しく、比較的アニメ本編または原作の絵を崩さないまま、ホンモノの雰囲気を大分残したままの筆致で描かれていることが多い。
《第2期:受け攻め・三角関係・受けキャラ争奪戦型》
TVアニメ3クール頃から終了前までに時期に出される同人誌がこのタイプ。
コミックマーケット等のイベントでは目に見えてサークル数が増え、そのアニメ専用ブースも設けられ、オンリーイベントの開催もぽつぽつ見られはじめる時期である。
それぞれの描き手・サークル各々のカップリングや受け攻め配役も固まってきており、対立カプの派閥が生じ始めるのもこの時期。
本の内容も、前シーズンの布教・敷衍を望む内容から、自分ひいきのカップリング、自分の受け攻め配役をやかましく喧伝するコンテンツへと移っている。
特に三角関係もの、大勢の攻めキャラによる1人の受けキャラ争奪戦、という定番やおいネタが最も多く出回るのがこのシーズンだ。
フリートークなども病的に躁状態の妙なテンションで突っ走っていることが多く、色々な意味で読み応えがある。
各キャラクターの絵柄も性格もそれぞれ好き放題アレンジが加えられ、得手勝手に料理され始めるのもこの時期から。
《第3期:固定カップリング・メロドラマ型》
アニメの最終回直後からブーム終焉まで1年ほどの間の時期のことを指す。
サークル数の多さはキャパシティいっぱいに達して最高潮に盛り上がっては見えるものの、発行される同人誌の内容は、受けキャラとりあいの嫉妬劇よりも、ひいきのカップリングの道行をじっくり掘り下げた恋愛メロドラマものやパラレルもの、女体化や結婚ネタが数多く頻出する。
このシーズンを迎えると、既に理想の恋愛カップリングへの形骸が『出来上がった』本ばかりなのだ。
また、この時期になると、原作やTVアニメ本編とは似ても似つかぬ、おタンビな美形化キャラにすっかり変わり果てた絵柄の同人誌が多数を占めるようになる。
これは、アニメ・原作本編よりも、他のサークルが発行した同人誌の方を先に目にしてそのジャンルに転んだ、というタイプの描き手がブームに参入してくるため。
キャラクタリスティックも、同人版パラレルストーリーも、カップル関係も、脳内妄想ですっかり醸造されたものが、本編を目にする以前に既に同人ヲトメの中で出来上がってしまっているため、絵柄も内容も本編寄りではなく自分の妄想ありき…という下地で描かれる。
だから本編・原作の絵や世界からは浮世離れしてしまっているのだ。もっと極端になると、原作・アニメ本編を一度も目にしたことがない、というやおいヲトメが、カップリングのブームにつられて本を出すのもこの時期であるのだ。
この完全な完成体へ出来上がった固定カップリング・メロドラマが多く読める時期である第3シーズンを経て、同人界におけるアニメのブームは終焉を迎える。そして、この時多くのやおいヲトメが他のアニメにあっけなく[転んで]しまう。勿論そのアニメのファンサークルを5年・10年と続ける女性作家も確かにおられるのだが、ごく稀な例と言ってよい。
同人少女にとって、[やおい]とは、常に旬の材料で描くものなのだ。