各名門ブランド ピンボール・リスト

Jersey Jack Pinball/2018

パイレーツ・オブ・カリビアン

原題Pirates of The Caribbean(LE)
製作年度2018年
ブランド名ジャージー・ジャック・ピンボール
メーカージャージー・ジャック・ピンボール・インク
スタッフ原案:エリック・メウニエル/プレイフィールドデザイン:エリック・メウニエル/ルールデザイン:キース・ジョンソン/ソフトウェア:キース・ジョンソン、ジョー・カーツ、JT・ハーキー、テッド・エステス/メカニクス:ダン・モルター、ヨランダ・ワシントン、ウォーリー・ウェルチ/エレクトロニクス:トニー・タンミナーロ/3Dスカルプチャ:デイヴ・リンク、マット・リーステラー/映像:ジャン-ポール・デ・ウィン/音楽:デヴィッド・シール/美術:ジーリンスキ/ヴォイススピーチ:ケヴィン・マクナリー(ジョシャミー・ギブス役俳優)
標準リプレイ点数
備考プレイフィールドに隠れミッキー有り(ヒント:古風な日本風アートな虎と共演)
▲バックボックス。プレイヤー顔写真撮影機能は前作ダイヤルディンからそのまま継承 ▲フィールド下部。ワイドキャビネットに然るべくリターンレーンが増やされ、アウトレーン構造はイレギュラー。
▲サイドホール,サイドループが狙いやすくて気持ちが良い。MAPフィーチャーも楽しい ▲上段ミニフィールド・ブラックパール号。目標は2枚のスピナーループと大砲だ
▲エプロン部中央にはミニサイズ液晶が。ここにはコンパスが表示され、おすすめショットの方角を示してくれる ▲フィールド上部。メカニカルでアクティヴな仕掛けがぎっしり!
▲サイドフリッパーの裏にはアンダーホールが。ここにはワールズエンドスーパージャックポットがかかる ▲樽をかたどったバンパー地帯も楽しい。狭間ショットラインが2つもあるし。

― COMMENTS ―
「パイレーツ・オブ・カリビアン」のピンボールと言えば、スターンが雌伏に喘ぎながらも産業復興の地歩を固めていた2006年にも一度登場していて、日本では個人輸入のような特殊な形で国内設置されていた。

 映画の評判は今更言うまでもないし、スターン版ピンボールの方もプレイヤー人気の高さは勿論、業界側の識者達からも傑作の1台として数えられている。

 ……が、個人的な嗜好で申し訳ないが、筆者は映画1作目を劇場まで観に行ったものの全くときめかずに2作目以降の観賞を断念。
 スターン版ピンボールの方も当時一口かじったものの目立ったやりごたえを感じることが出来ず、プレイすべき新品且つ良好コンディション台が設置されていた食べごろ時節を逃している。

 これではなんとも顔向けできないゆえ、それらの賛辞や解説は他者に譲るとして。

 今回は同モチーフの再ピンボール化となる、ジャージージャック2018年版に関してのみ玩味してゆきたい。

 尚、なぜジャジージャックは一度手垢がついた同映画のピンボール化に挑んだかというと、CEOのジャック・グァルニエリの並々ならぬ思い入れから来ている。

 彼がディストリビューターだった2006年当時、映画本編もスターンのピンボールも、公私において強力なフェイヴァリットだった。
 憧れのデザイナーであるデニス・ノードマンと面識が出来たし、何より自社が仕入れた100台が僅か1日で完売した成功作。そんな強い感情移入があった。

 列強ピンボールメーカーに伍する今、グァルニエリは映画4作目まで公開済みのこのシリーズを、是非自らの手で再び世に送り出したいと思い立った。

 尚ジャージージャック側の構想段階で映画5作目の製作ニュースが飛び込んできた為、尚更鼓舞されつつも企画の変更を余儀なくされたそうだ。


 さて、大阪心斎橋BigStep《SilverBallPlanet》なる、最良のロケーションに恵まれたこともあり、今度こそ筆者はじっくり楽しんで打つことが出来た。

 プレイした第一印象は散漫な印象。

 一見豪華なワイドキャビネット・賑やかなプレイフィールドに豊富なショットが用意されているものの、どの箇所も決定的指標としてプレイヤーを先導出来ていない。

 フィーチャー内容も同様。
 ピンボールフィーチャーの定石は、マルチボールが縦軸で、時間制ミニゲーム並列が横軸となり、多少伸びる枝葉を採取しながらもその太い両輪をまわして最終ウィザードを目指すのが、現代ピンボールゲーム性の最適解と言える。

 がしかし今機種のパイレーツでは、映画5作、全てがか細い縦軸となっており、更に毎回異なる映画エピソードイベントを細かに準え、興味も目標も5つに散逸している。

 しかし、それが欠点ではあるが、最大の魅力となる長所にもなっている。

 5種類のマルチボールが各レーン,各ポイントに散在し、役の完成で1つ目勃発、連鎖反応で2つ目3つ目も同時発令。これに毎回異なる内容の時間制ミニゲームも絡んできて、毎度毎度無限の組み合わせが生起するような作りとなっている。

 スターン版「ロードオブザリング」「シンプソンズピンボールパーティー」の様に複数のモードを片っ端から重ねて奥行きを深めようとすると、今度はフィーチャーひとつひとつの概要が把握できない……という落とし穴があるのだが、そこはいっそ考えなくていい。
 お気に召すまま、好きに打ち返せばいい―――というスタンスで自己解決に努めるべきだろう。

 マルチボールルールの具体的な内容、関連個所を挙げると……

【映画1作目ブラックパール号の呪い・マルチボール】――――――上段ミニフィールドスピナー&大砲発射+上部左寄りループレーン
【映画2作目デッドマンズチェスト・マルチボール】――――――宝箱ボールロック
【映画3作目ワールズエンド・マルチボール】――――――アローライト点滅クリア&左ランプレーン渦巻落下
【映画4作目オンストレンジャータイズ・マルチボール】――――――上部左寄りループレーン規定数ショット完遂
【映画5作目デッドメンテルノーテイルズ・マルチボール】――――――魔のバミューダ海域左下スピナーレーン

 ……あっそうか成程、上段ミニフィールドスピナーループショット繰り返して幽霊船の呪いを満タンにしてから大砲に球を込めてスマートボタンで大砲発射してマルチボールリーチ!マルチの最中にもう1回球を込めてイギリス船撃破でスーパージャックポットだな、とか。
 宝箱に3つロックしたらマルチ開始なら、スーパーJPは宝箱にかかるな、あぁやっぱり映画5作目のスーパージャックポットはバミューダだ、等々。

 分かりにくいルールも、勘のいいプレイヤーなら何となく察知できる構成にはなっている。特に、5本のマルチを殆どリーチ状態にして次々連鎖させる「ブラムストーカーズドラキュラ」的な楽しみ方が滋味深く堪能できる。

 あとひとつ、オマケ的なマルチボールが[トルトゥーガ]
 “あっははー!ゴオゥルド!”なるコールと共に、ジャージージャックご自慢のフルサイズディスプレイにて金貨やほうもつが現れた際、スマートボタンを連打して回収する。50枚集めると全レーンにヴァリューが掛かるトルトゥーガマルチボールのリーチ。右下キックアウトホールで開始。
 金貨だけでなく延べ棒とかカップとか、時々大物が出現するのが楽しい。

 勿論、映画5本のマルチとそのミニゲームをクリアすると、それぞれドラマチックな5つのプレウィザードモードが用意されている。複雑なショット行程を課すフェーズが幾重にも連なる長丁場だ。
 そして5つのプレウィザードをこなした後には最終ウィザード[ブレイク・ザ・カース]がプレイヤーを待ち受ける。

 他にも楽しい役物として、バンパーヒットで右下キックアウトホールに[ミステリー]が点灯するが、ミステリーレベルが1〜10まである。
 獲得内容を美味しくしたければすぐに獲らずに更なるバンパーヒットで粘ることになる。流石のレベル10ではスペシャルが当たることも。

 サイドホールに掛かる[マップアウォード]は、まるで“いつどこでだれがなにをしたゲーム”みたいな、先程のモノとは別脈ミステリーフィーチャー。
 『ボーナスX!………5つ分!………獲得だ!』
 『金貨10枚!………2つ分………点灯!』

 という具合に、文節3カテゴリから組み合わせられるランダムボーナス。
 場合によっては、『エキストラボールを!………他のプレイヤーから!………略奪ー!!』
 なんてこともあり得るそうだが、滅多に出ないし、また[略奪/Plunder]で役を得た場合、今度は相手側も高確率でプランダーを引き当てやすくなるので、心得る必要有り。

 12本も課されたコンボショットは宝物獲得に準えてある。コンボを決めた瞬間は忙しくて全然バックボックスで確認していられないのだが、全部手に入れるといいことがあるらしい、とか。

 リターン/アウトレーンのレターP-I-R-A-T-Eをレーンチェンジをすばしこく活用して完成を重ねると、これもハリーアップやボーナスホールド等が得られる[パイレートアウォード]など、まだまだ盛沢山。

 ただ1点留意して選ぶべきなのは、ゲームスタート時のキャラクターセレクトはそれなりに考えた方が良いだろう。
 このゲームには大量のマルチボールが潜んでいるので、やはりマルチ関連で有利に運べるヤツを選んでおくのをお勧めしたい。


 総評としては5点満点で4点。

 初めの印象は薄いし、大量にフィーチャーを設えてあっても決定打に欠けるように感じるが、その細やかな役同士がいくつも組み合わさって幾千通りの戦況が展開され、毎回異なる戦略をプレイヤーは楽しむことが出来る。
 まるで名機「AC/DC」や「ブラムストーカーズドラキュラ」の様に。

 スマートボタンの使い方も素晴らしいし、個人的には良く思っていないフルサイズLCDも、映像演出による映画的ダイナミズムが多いに奏功している。

 [チャプター]、所謂ミニゲームのこなすべき本数が映画5作×5シーン、計25本!加えて長丁場プレウィザードも5本!
 というのはいくら何でも多過ぎて最終ウィザードへの道のりは前途多難、1時間以上かかるのでは?
 ……と、上級者ほど頭を抱えてしまうが、そんなことなど気にせずに気軽に打ち返し続けていれば、のべつ幕なしにあれこれふりかかってきて次々楽しめる構成。

 実はチャプター、ランダム出現で映画1作につき5本こなせばいいノルマだが、実際は何と105本も用意されている
 俳優の動画が使えないのを逆手にとって、本編映像から遠景映像や船員ゾンビ、調度品のアップを大量に拾ってきて、まぁ出るわ出るわ。どうりで毎回初見の映像が出てくると思った。

 何度プレイしても新鮮味があるのはええけど、“あのミニゲームとこのマルチリーチを重ねよう”という戦略が楽しめないのは難点。
 尚且つルール全体が難解なボードゲームと化してしまっているが………うん、まぁ深く考え込まず、それはそれでひとつの方向性として楽しんでいきたい。

 それから毎回国内プレイヤーが難儀している、ジャージージャック台日本稼働の最大の難点であるフリッパーの脆弱化はどうか。

 やはりもどかしさは感じられるが、とりあえず全メジャーショットは届いてくれるのでどうにか楽しめる。

 あげにくいブラックパール号ミニフィールドへは、左リターンへ勢いよく蹴りだされるデプススクープからのキックアウト助走を利用して、えいやっと打ち上げる。
 右下ミステリーホールからセンターに向かう危険なキックアウトは左デッドフリッパーキャッチの際に右ナッジで対応。
 宝箱ロックも大変だけど、打つ瞬間の縦ナッジで、まぁ何とか。

 ただ「ダイヤルド・イン!」や「ガンズ・アンド・ローゼズ」などではこの日本国内低電圧の悪影響が深刻なので、これについては今すぐ解決してもらいたい!
 日本にも来てるんでしょ。頼むよグァルニエリ社長。


 さて、本作のデザイナーは新鋭エリック・メウニエルで、企画立案当時は若干28才。70過ぎの老境チーフデザイナーも多いこの保守的な業界では大抜擢である。ジャージージャック社に起用されるまでの経緯を簡単に追ってゆきたい。

 エリックはゲームオペレートを生業とするコインオペ一族の家に生まれた。
 アーケードゲームやコインオペメカニクスに囲まれた幼少期を過ごした結果、既に7歳で大人顔負けの修理を熟すようになっていたという。

 成人後、一旦は医療機器の道を志すがやはり血は争えず。
 シカゴのゲームイベントにて、ジャージージャック社ブースのジャック・グァルニエリ社長と運命の出会いを果たし、一挙にピンボールの世界に開眼。

 グァルニエリの情熱に胸を打たれ、同社処女作「オズの魔法使い」を購入。ピンボール産業への情熱が抑えられなくなったエリックは元居た職場を去り、ジャージージャック社へ飛び込んだ。

 グァルニエリ社長は、エリックがアーケードゲーム稼業の家庭で育ち、メカや設計やコードに強いのは勿論、ディストリもオペレートも製造も全てを熟知し、プレイヤー視点による熱意にも溢れたオールラウンドの才人であることに伯楽一顧。
 彼を戸惑うことなく「パイレーツオブカリビアン」のチーフデザイナーへと抜擢した。

 サポート及びプログラマーとしてエリックを支えたのは、ピンボールのフィールド設計もソフトウェア技術も共に優れた功者であるキース.P.ジョンソン。「ザ・シンプソンズ〜ピンボールパーティー」等スターン社でのキャリアも錚々たる剛の者だ。
 またアドヴァイザーとして、業界レジェンド パット・ローラーやバリー社やアルヴィンG社で活躍したメカニカルエンジニア ウォーリー・ウェルチから数々の啓蒙も享受した。

 商業ピンボールを初めて手掛けるエリックは人にも環境にも恵まれた訳だが、ディズニー相手のライセンシングビジネスの折衝は、流石に苦労が絶えなかったようだ。

 20人ほどの俳優たち一人一人に肖像使用の許可を得るプロセスも大変だったし、船,宝箱,デビルズトライアングルは映画のアートスタッフから、ことこまかな許可を得る過程を辿らねばならなかった。
 映画会社のデザイン部、制作部、法務部、サウンド部門。常に襟を正しながら全てをまわって礼を尽くし、許諾を貰っていった。

 酒や乱闘や流血は描くな(銃や大砲はOKなのに?)、ファミリー向け描写を心がけろ……というディズニー側の要求は、ファミリー層向けピンボールを作ることを公言し続けるジャージージャック側のポリシーと合致するものがある。

 ただ、中には
 “映画の時代と世界観を正確に考証すべく、マルチボールやジャックポットといった用語は使うな”
 などという、ピンボール産業全体への干渉と言えるような世迷言を要求する愚昧なディズニー社員も居て、そいつへの説得にも余計な労力を費やしたという。

 他、必要な資料として懇請した5作分の脚本は[開封後は3日で読めなくなるスクリプト]なるものが送られてきて、時間内に必死に精査してメモを取る必要性に迫られた、とか。
 ジョニー・デップは声のとりおろしが出来るどころか、映画本編から抽出すら不可だった、とか。
 俳優/キャラクター達の使える肖像は静止画のみで動画は不可だとか、あのメインテーマ『彼こそが海賊』だけは何とか使えないかと懇願した映画サウンドトラックも、結局使用不可―――等々。

 ディズニー側の課す厄介な難題や制約も、ジャージージャック側チームの創意工夫でひとつひとつ解決しなければならなかった。

 尚、音楽はデヴィッド・シールの功労により、本家本物と雰囲気そっくり、だが楽曲はきっちり別物のスコアが存分に揮われた。
 とりおろしヴォイススピーチは、ジョシャミー・ギブス役のケヴィン・マクナリーがジャージージャック側のオファーに応じてくれている。

 俳優の肖像が静止画しか使えぬことを逆手に取り、すごろくのコマのような扱いでアイコン的に徹底活用。LCDで表示される転用動画もゾンビや動物、海原や湾の遠景、船や調度品のアップばかりでうまくやりくりしている。

 ただひとつだけエリックやジャックにとって心残りだったのは、サンプル台で大いに衆目を集めたはずの、三輪スピニングディスク商品化の失敗だろう。

 フィーチャー項目が記され、その項目に合わせて回転や停止を制御するスピニングディスクはウィリアムス時代のパットローラーが「ノーグッドゴーファーズ」で実現しているが、それがなんと同心円状に三輪構造で、それぞれが意思を持つが如く独立稼働
 時計回り、反時計回り、スピードも停止も自由自在。勿論ボールの動力も翻弄され、風や波間に揉まれる船の如く球の行方はあらぬ方向に。
 しかも三輪の隙間からLEDライトの光が神々しく漏れ出ている。美しいことこの上ない。

 パットローラーもジョンボーグも成し得なかったこの驚異的なスピニングディスクは、発表時にプレイヤーから大いに注目を集めた。

 ところが、実際にロケテストに出すと問題が頻発。商品化を断念し、30年前水準のありきたりな1枚ディスクに変更された
 それに加えてボールロック時の宝箱開閉メカもトラブルにより削除することに。
 この断腸の思いによる損切りの決定と変更まで、10ヵ月という時間の浪費を要したという。

 ただ、出っ張り段差や円盤の傾き等のスピニングディスクでありがちなトラブルは今のところ発生していないし、ゲームの出来が上質なこともあって、本作の評価はそれほど揺らぐことは無かった。

 これがデビュー作とは思えないほどのいい仕事を熟したメウニエルはその後、「ガンズアンドローゼズ〜ノットインディスライフタイム」を2020年に完成させ、更なる礼賛に浴している。

 ジャージージャックと3年契約を結んでいた音楽担当デヴィッド・シールは契約の更新をせず、本作を最後にディープルート社専属になることを声明。

 しかしその会社は残念ながら破綻してしまい、シールは割を食らう事に。
 しばらく彼の新作は聴けていないが、元々ピンボールを愛するフリーランスのコンポーザーなので、またすぐに動き出すだろう。
 ジャージージャックは新たな音楽班の顔としてヴィカス・ディオと契約している。

 一方ジャージージャック社CEOのジャック・グァルニエリはパイレーツ開発・発表時、公私ともに快調だったご様子。

 オズの魔法使いもパイレーツも再ロットが決まり、ライセンスを更新。ファクトリーも1日十数台ペースの製造力を保ち続けている。
 販売代理店もコロラドに1件、ネブラスカに2件、オレゴンに1件新たに開拓。
 JJPに勤める娘さんが出産、お孫さんが誕生したそうだ。

 今回の「パイレーツオブカリビアン」本体のお値段は、スタンダードイディションが8,500$、リミテッドイディション9,500$、コレクターズイディション12,500$。

 但し他社がゲーム性を大幅に落として廉価版を製造しているのに対し、ジャージーは相変わらずゲーム内容本分には優劣が発生しないように心がけてくれている。
 四千ドル高い豪華版の付加価値はレールのパウダーコーティングやシェイカーモーターの搭載、LEDデコレートライトショウ、トッパーの付属などで訴求している。

 ピンボールイベントの壇上で
 “なぜフルサイズLCDを導入しておきながら本格ビデオモードを搭載しないのか”
 という、変わり者からの質問に対し、ジャックは

 『大仰なビデオモードを作ろうとすると描写が過激になるし、ボタン2+1で操作しなければならない。ピンボールのゲーム性を深めるのとは別の領域を作ることになる。それはピンボールのプレイヤーにとって、あまり良いことではない』

 ……と、納得の回答を述べている。ピンボールの本分を噛みこなしたCEOならではの、頼もしい声明ではないか。


 さて最後に日本国内での動きにも触れておくと、本作発表時にバンダイナムコテクニカが日本国内でのJJPディストリビューターとして名乗りを上げた。
 〈ジャパンアミューズメントエキスポ2019〉自社ブースに「オズの魔法使い」「ホビット」「パイレーツオブカリビアン」の3機種を展示している。

 しかし、案の定マニアの予想通りではあるが、この話には何の進展もなく、ジャージージャック機種国内ピンボール販売は立ち消えとなった

 確立操作クレーン機が店先を占拠する日本のゲーム文化の恥ずべき現状を考えれば、ジャージージャックやスターンが率いるピンボール産業の理念は高邁過ぎる。

 今やゲームセンターは、余りにも変貌し過ぎてしまった。

(2022/2/24)

▲メールストロムとは大渦の意。ここにはよくマルチボールやジャックポット、ミニゲームヴァリューがかかる ▲陳腐で単調になりがちなミニフィールドだが、ここでは激しく横転を繰り返させて飽きないスリルを醸し出してくれる ▲ジョニーデップの顔をでかでか描くのには反対意見もあった。著名俳優はピンボール業界に嫌われないよう後々考えて行動しよう
▲奥が見えない行き止まりDevil'sTriangleは“魔のバミューダ海域”なる設定でマルチボールイベントが潜む魅惑的なポイント ▲宝箱(チェスト)は実働ボールロック箇所として機能。リット方法も入口両脇ターゲットヒット、とシンプルなルール。だが難しい ▲バンパー狭間ラインの右ループレーンは上級者でも打ち抜くのは大変。いっそ偶然スイッチ反応だけ期待する作戦もアリか
▲"青春の泉"と詩情感のある名前の付いた左ループ。マルチボールの役が2つ関連する重要箇所だが、とても入れにくい ▲プレイフィールド全景。この情報量の多さよ。バックボックスでのインフォメーションの氾濫はさらに壮絶 ▲ブラックパール号へのランプレーン。ホールド状態からはなかなか上げられないので、リターン助走で打ち上げよう
▲左アウトレーンを1本内側に設えるというイレギュラー構造。よくチャプタースタートリリース直後に落ちるので要注意 ▲右下ミステリーホール。いやそれよりも難関はすぐ右上のEx.スイッチラバーなんだよね ▲右アウトレーン。落ちてもボールセーヴゲートでの救いがある。残りTILT猶予表示ライトにもご注目

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