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Jersey Jack Pinball/2020

ガンズ・アンド・ローゼズ〜ノット・イン・ディス・ライフタイム(リミテッド版)

原題Guns'n roses〜Not in This Life Time(Limited Edition)
製作年度2020年
ブランド名ジャージー・ジャック・ピンボール
メーカージャージー・ジャック・ピンボール・インク
スタッフデザインチーフ:エリック・メウニエル/プレイフィールドデザイン:エリック・メウニエル、スラッシュ/ルール:キース.P.ジョンソン/ソフトウェア:テッド・エステス、キース.P.ジョンソン、ジョー・カーツ、JTハーキー、ビル・グルップ、ダンカン・ブラウン/3Dスカルプチャー:マット・リーステラー/デジタルグラフィック:ジャン・ポール・デ・ウィン、クリエイティヴ・ワークスUK/美術:デイン・ヘンリーJr.、アリエン・ビューラー、マーク・モーリトー、ジャン・ポール・デ・ウィン、ジェスパー・エイブルズ/音楽:ヴィカス・ディオ/マニュアル:バリー・イングラー/メカニカルエンジニア:ダン・モルター、ピーター・ドーン、ジェームズ・ピーカーズ、ウォーリー・ウェルチ/エレクトリカルエンジニア:トニー・トゥーミナーロ、ベン・ストーヴァー
標準リプレイ点数
備考
▲Eメウニエルは本機種デザインチーフ就任時、自作に影響が出ないよう過去の旧作デコ版ガンズピンボールにはなるべく接触しないようにしていた。 ▲前作パイレーツ同様、サイドフリッパー内側に通過レーンがある。スキルショットプランジャーレーンとの兼用だ
▲バイレベル上段。ベース型ランプレーンとエレキギター型ランプレーンに連絡する。しかも極めて原始的なキネティックディヴァーターで振り分けボールロックされる。『プリンコみたいだろ?』 ▲フィールド上部。各レーンやバンパーで楽器のミニチュア化を実現。尚ドラムスティックはベータ―製の本物。ところでチャイルドオブマインのギターアルペジオの楽譜が書かれている
▲フィールド下部。複数リターンレーン設置を強行して左右フリッパー周りが狭苦しくなる例があるが、今回のガンズではスリングショットを小型化して無理なく実現。 ▲今回のガンズメンバーは現行バンドメンバーの7人。かつての印象である荒くれた仲の悪い者同志のイメージは融解。和睦して今こそ絶好調期のようで何より。
▲今回金属ワイヤーランプレーンが独特の作りとなっているが、これはライヴ会場のキャットウォークをイメージしたもの。 ▲ギター型のロックポケットやベース型のワイヤーレーンなんてよく実現化したよね。これ企画当初からのスラッシュによるアイディア。

― COMMENTS ―
●2000年代のピンボール市場氷河期の間、孤塁を守り続けてきたスターンピンボール社の臥薪嘗胆が報われ、2010年代はピンボールマシンのホーム需要とバーケード需要が伸展。シェア8割の最大手として隆盛したスターン製商品は質も信頼性も高く、もはや怖いもの無しと思えた。

 が、ここ数年スターン社を猛追しているのが今作を発表したジャージージャックピンボール社である。創業者はジャック・グァルニエリ

 ジャックグァルニエリは1975年にピンボールのオペレーターとしてキャリアをスタート。
以来アーケードゲームビジネスに携わり、業界にとって極めて難儀な時節である1999年にピンボールの販売代理店[ピンボール・セールス・コム]社を立ち上げた。
 型落ちや中古ではなく、新機種のホーム需要に重点を置いた販売業務を興している。

 その後ベルギー及び米国のプライズ大型筐体及びプライズ機大手のエロートUSA社の最高責任者就任を経て、2011年のジャージージャックピンボール社の設立に至った。彼のピンボールへの愛と思い入れは本物である。
 尚このジャージージャックなる会社名は、コラムニストとして健筆を揮う米リプレイマガジン誌のペンネームをそのまま用いた……とのこと。

 ただひとつふたつミソがついたのは、当初ジャージージャックはエロート社の出資で立ち上げられた……と報じられていたはずが、のちにエロート社から
 “会計不正操作によりエロートの財源から160万ドルがジャージージャックに流用された”
 と、ジャージージャック社及びグァルニエリが訴えられてしまったこと。
 横領なら刑事事件とすべきであり、それが出来ないならグァルニエリの方に分がありそうな事案なのだが、この件に関しては別の機会に稿を持ちたい。


 さて、そのジャージージャック社が発表してきたピンボールは「オズの魔法使」「ホビット」「ダイヤルド・イン」「パイレーツ・オブ・カリビアン」「夢のチョコレート工場」と評価はうなぎのぼり。そして2020年、今作「ガンズアンドローゼズ〜ノットインディスライフタイム」の発表に至っている。
 その後の「トイストーリー4」「ゴッドファーザー」といったビッグタイトルを発表、コレクターズエディションを毎作即日完売させる手際にも驚くばかりだ。

 尚、ガンズアンドローゼズのピンボールと言えばデータイースト'94年製「ガンズ・アンド・ローゼズ」にも触れなければいけない。駄作の多い'94年発表のピンボール機種の中では奇跡的傑出の一作なのだ。
 ことによると同年ウィリアムス製「スタートレック〜ネクストジェネレーション」の評価をも凌ぐ人気を獲得しており、コンディションの弱ささえ目をつぶれば同年の最高作である―――と、今もなお語り継がれている伝説の名モデルだ。
 またピンボールコレクターでもあるバンドギタリストのスラッシュが協力した充実の各トラックと、ギミックも色彩も非常に多彩で華やかなプレイフィールドデザインは、今打っても十分迫力がある。未だにスタジオ録音盤がオフィシャルリリースされていない未発表曲 「Ain't Goin' Down」がピンボールに特別収録される!というガンズリスナーもびっくりな椿事まで巻き起こした。


 さあお立合い。そんなガンズピンボール最新作が、前述ジャージージャック社から2020年にリリースとなり、ピンボールプレイヤー連中は否応にも膝を乗り出して期待を高ぶらせたが、出荷されたそのマシンは、その想定をも上回る完成度だった。
 これにはガンズピンボールの元祖且つ旧デコピン/現スターン社スタッフ達も唸っただろう。
 現に専属デザイナー契約を結んでいたはずのスティーヴ・リッチーは本機種に強い影響を受けた「レッド・ツェッペリン」を発表後、スターンからJJPに移籍してしまっている。

 日本国内でJJPガンズは大阪心斎橋ビッグステップ《THE SILVERBALL PLANET》に、2020年の10月発表,発売の同月中にスピード入荷してマニアを驚かせている。
 残念ながら日本の低電圧によりフリッパーストレングスの弱さに悩まされる電圧環境だが、それを差し引いてもプレイする価値のある、強烈に革命的な一機種になっていることを保証したい。

 デザイナーは若き俊英エリック・メウニエル

 前作「パイレーツオブカリビアン」ではまだ30歳になるかならないかの嘴の黄色いヤツがデザインチーフに就任、大作映画ライセンシングを手際よくさばいて美麗な傑作に仕上げてしまった……!と、ピンボール業界を大いに驚かた。
 そんな彼の才能の真価が問われる第2作目が本機種。
 JJPパイレーツ以上に難解、且つ奥行きが遥か彼方まで茫洋とした果てしないゲーム性でありながら、カラーLEDをこれでもか!というくらいにふんだんに盛り込んだ光彩溢れ出す筐体。“ライヴを自宅に持ち帰ろう!”なる惹句は伊達ではない。

 あまりに複雑で莫大なフィーチャー編成なので、成文化して解説できるのは掻い撫で程度。ご了承願いたい。



【バンドメンバーコレクト】――――――メンバー7人全員揃えてライヴに備えろ!

・アクセル/ヴォーカル………トップレーンA-X-L完成
・スラッシュ/ギター………レコード型ウィーリングディスクぶん回し回転数の閾値突破
・ダフ/ベース………上段フィールドからベースギター型最上階ランプレーン通過
・リチャード/ギター………中央左寄りの高架下スピナーレーン通過
・メリッサ/キーボード………センタースクープシュート(青緑発光時)
・ディジー/キーボード………センタースクープシュート(紫発行時)
・フランク/ドラムス………右ランプレーン通過orバンパーヒット閾値回数突破

 勿論、トップレーン完成にはボーナスX上昇、ウィーリングディスクにはスラッシュソロ指数加算……と言った他の役割やメリットがそれぞれ備わっているので、いつなんどきも役を完成し直しても損はない。


【Songモード】――――――熱狂ライヴ開幕!熱狂メーターを沸点に漲らせて演じ切れ!!全21曲。

 中央スクープにかかる。メンバー全員揃えるとこれがリット。演奏トラックはお任せでもいいが、開始時にアクションボタン+左右ボタンでで選択も可能。
 1曲最後まで演じ切るのが目標。基本はシングルボールだが、曲によって異なる課役によるアドアボールを、追加、追加、また追加で持ちこたえ、ひたすらマルチボール状態で延長させる。あらかじめギターランプレーンにボールロックしておけばマルチボールスタートとなって断然有利。

・3分持ちこたえると!⇒シルバーレコード獲得でプレウィザード挑戦権獲得。
・演奏最後まで持ちこたえると!⇒スクープで[アップローズジャックポット]獲得。パフォーマンスが良ければLCD表示の熱狂メーターが沸点を保ち、アンコールが巻き起こって追加Songのチャンスもアリ。
・シングルボール状態のまま苦戦していると!⇒熱狂メーターが底をつき、観客からブーイングを浴びて強制終了。だからホールデイングで最後まで流そうったってそうはいかないのだ。ドレイン扱いにはならないのは武士の情け?
・シングルボールかつかつで辛い!もう降参したい⇒1フェーズクリア毎に中央スク―プで降参か続行かを選択できる。少額Jp.受け取って退散するか?それともアドアボール救援で続けるか。安全策として降板するのも手だ。

 ソングトラック内容は以下の通り。

[Welcome to the Jungle]4:31………………お馴染みのガンズスタンダードナンバー。全メジャーショット,ループレーン,スタンダップ、とクリアの度に狙い目は目まぐるしく変化。
[It's So Easy]3:21………………フレンジーもの。ボールロックが多ければ絶対有利。シングルボールに不向き。
[Nightrain]4:26………………課役は左右ランプレーンとトップレーンだが、日本国内稼働では不利。非推奨。
[Out ta Get Me]4:20………………オススメのソング。フィールド左半分,右半分の交互ショットが課されるので、ある程度は得意なショットが選べる。'80年代風ネオンが走るサイバーパンク風アニメーションも魅力的な一編。
[Mr.Brownstone]3:46………………高架下スピナーが主軸。点滅スピナー⇔点滅メジャーショット一箇所ずつクリア。この織りなしを繰り返して全課役をクリアする行程は厖大だが、スピナーショットが得意なら有為。
[Paradise City]6:46………………バンパーが主役。メチャ打ち上等だがトップレーンマグナキャプチャも稼働するのでシングルボール時は左右ループを正確に狙おう。旧デコガンズでは勝利の曲だったから燃える!
[My Michelle]3:39………………点滅サイクルおっかけもの。連なる2本の点滅が時計回りにメジャーショットを巡る巡る。正確に狙いたいがホールディングすると熱狂メーター冷えるし、どうしよう?ってなソング。曲は相変わらずカッコイイ。
[Sweet Child o' Mine]5:55………………ガンズ代表曲だけあってアガるー!ランプレーンとループレーンを交互に課すので難しそうだが、左右どちらかは選べるのでマルチでもシングルでも何とかなりそう。曲としてもゲーム上でもオススメのソング。
[Rocket Queen]6:13………………非推奨。左から1本ずつ順番に通す課役で、国内低電圧では左ランプレーンが毎回鬼門になるので進みやしない。あのディヴァーター段差で球が飛ぶし。やってらんない
[Live and Let Die]3:04………………スタンダップ⇒スピナー⇒ランプ&ループ⇒全メジャーショット⇒スピナー、と課役とフェーズは多いもののメチャ打ちで何とかなる曲。実はポールマッカートニーの曲なんでポップなノリ。
[Don't Cry]4:44………………例によって鬼門の左ランプレーンが軸のソングの為、非推奨。スタンダップと交互に織りなす課役は厄介。シングルでもマルチでも扱いきれない。
[Double Talkin' Jive]3:23………………これも点滅サイクルおっかけものだが、移ろいがスロー、且つスニーカーのアップから始まるクリップ映像が眩しいくらいにクール。尺もコンパクトで過ごし易い。
[November Rain]8:57………………9分近いフレンジーなので、シングルボール時には不向き。
[Coma]10:13………………Comaサイドターゲット⇔全メジャーショット1個ずつやっつけるという煩雑な工程。しかしサイドターゲットはサイドフリッパー経由で狙わなくともメチャ打ちでしょっちゅう当たるので何とかなるソング。曲もカッコイイ。但し10分もたせる体力があるかどうか。でもロケの大会ではコレで勝負だ!
[Civil War]7:42………………ショットで点滅が消えるのではなく、曲の経過でランプレーン,ループレーンの課役が移動するソング。右ループやサイドループを打つのが得意なら臨んでOK
[Estranged]9:23………………左右ランプ/ループ⇔4枚スタンダップ。スタンダップだけの課役だと気づきにくいんだよね。それを理解できてれば大丈夫かな。コーマもそうだが尺の長い曲なので、ゴールド,プラチナ,ダイヤモンドディスク獲得に挑戦したい方はどうぞ。
[You Could Be Mine]5:43………………これも低電圧フリッパーでは避けたいソング。課役ショット一箇所のみ繰り返しを課されるので、左ランプで停留されるとお手上げ。
[Chinese Democracy]4:43………………フレンジーもの。野太いビートの曲調にも痺れる
[Better]4:58………………テクノポップ調で始まる曲がゴキゲン。メジャーショットとウィーリングディスクが好きに打てる課役も楽しい。オススメの1曲。
[This I Love]5:34………………フィールド左側半分⇔右側半分が曲調で折り返す課役。痺れるようなバラードで、アクセルの熱唱には胸まで焦がされそう。
※[Patience]5:57………………※隠しSong。パッチアイテムにある“ウソアルバム”を獲得しておくと出現。アルバム4枚分のパフォーマンス分数が稼げるという優れモノ。

 全ソングクリアで何か起こるかは不明。但し最高の設置環境で設定を甘くしたとしても2時間以上かかると思われる。


【プレウィザード/アルバムモード】――――――Songに勝利した者に与えられるシングルボール勝負のプレウィザード。

 中央スクープに掛かる。ソングでシルバーレコードを獲得した者にはハイレベルなシングルボールバトルが待っている。シルバー以上にゴールド,プラチナ,ダイヤモンドレコードを確保しておけば更なるスコアヴァリューが期待できる。
 ライフ制ではないのでどれも非常に厳しい。開始時ボールセーヴも短く、消灯後に落とせば容赦なくボールロストだ。

◆サースト・フォー・カーネージ………粘液モンスターを操り、変態ロボットを倒せ!
 アルバム[アペタイトフォーデストラクション]のナンバーをクリアした者にはコイツらが現れる。格闘ゲーム風画面がスタート、全メジャーショットが点滅するのでそこをしとめると、同じトコがリットするのでもう1回そこをやっつける。点滅アクションボタンへの手動プッシュも忘れずに。

◆デザート・デモリション………7人のバンドメンバーと砂漠でカーレース!
 アルバム[ユースユアイリュージョンT]のナンバーのクリアでコレが始められる。プレイヤーは最初ドベだが、アクションボタン押しっ放しで加速。追い抜いた際に点滅リットアローへのシュートで各メンバーを撃破。これを7回繰り返す。

◆ティアー・ダウン・ザ・ウォール………壁に貼られる6つのポスターアートを大砲で破壊。
 アルバム[ユースユアイリュージョンU]のナンバーをクリアするとコレが出来る。決め手は点滅レーンショットよりウィーリングディスク+アクションボタン。ディスクで大砲の向きを変え、ボタンで撃破。勿論レーンショットで各ポスターのヴァリューを上げ続けるもよし。

◆シャル・ウィー・プレイ・ア・ゲーム?………中華人民共和国からのハッキングを撃退せよ!
 アルバム[チャイニーズデモクラシー]のナンバークリアで得られるのがこれ。全メジャーショットがUSA国旗色と中華色に盛んに入れ替わるので、USAのタイミングのみを狙うべし。'80年代ビデオゲーム風のタイポグラフィーが面白い。


【ブースター・マルチボール】――――――通常モードで開始できるマルチボールが4種も!

 総じて2ボールマルチだが重複獲り可能で、3マルチ4マルチ5マルチと賑やかすことも可能。マルチ中はバンドメンバーコレクトが可能なのが有難い。
 ハリーアップありアクションボタンあり、とそれぞれジャックポットは多彩だがここでは割愛。

◆メイク・サム・ノイズ マルチボール………サイドフリッパーアンダーに掛かる。プランジャースキルショット成功でリット。そうそう、まさか貴方。各ボール開始時にプランジャーを思い切り引っ張って何も考えず打ち放っていないわよね?
◆スロー・ザ・ライツ マルチボール………バイレベル上段ターゲットに掛かる。間断なく3回連続ヒットで開始。
◆イグナイト・ザ・フレームズ マルチボール………宙に浮くスラッシュの帽子の影になって見えにくいが、ウィーリングディスクの後ろにあるP-Y-R-Oスタンダップターゲットに掛かる。4回ヒットで開始。
◆ターニット・アップ! マルチボール………外側左リターンレーンA-M-P完成で開始。


【スラッシュ・ソロ】――――――急いでディスクを回してギターボールロックを決めろ!

 シングルボール勝負のハリーアップ。センタースクープに掛かる。ほぼ全モードを通して加算されるウィーリングディスク回転数が閾値を超えるとこれが点灯。
 制限時間内に改めてディスクを回した後、急いでギターランプレーンにボールロック。成功後は点滅ショットのヴィクトリーラップ。但しヴィクトリーもシングルなので気が抜けない。

【ツアー・マルチボール】―――――――2ボールマルチ。ボールループ成功で世界ツアーへ。

 上述のブースターマルチ4種とは別口のマルチボールで、左右ループレーンに掛かる。
 左右ループ、及びサイドループがジャックポットで、左右ランプレーン突き当りスタンダップがアドアボールに。
 尚これをリーチにするには通常モードで左右ループ,サイドループを通しまくり、世界地図を完成させよう。


【ウィザードモード/ノー・シンパシー・フォー・ザ・デヴォー】――――――悪魔から楽器を取り戻せ!

 筆者未踏。4つのアルバムモード、スラッシュソロ、ツアーマルチ全て制覇で到達。120秒に亘る多段階フェーズの最終ウィザードで、バンパーをアクションボタンで作動させたりリヴァースフリッパーがあったりと、壮絶なゲーム性となっている模様。 

【その他】
 様々な成功でSongモードでのステイタスが上がる[ソングレベル]、花火,銃,薔薇,トップハット,バンダナ,ポスター,メリッサキャンディー,フェイクアルバム等々に様々なアイテム効力がある[パッチ]、G-N-Rの3文字完成でセンタースクープに掛かる[ミステリー]、時間制限内に課役クリアという条件付きの左アウトレーンボールセーヴ[コーマ]など。
 他にもパッチアイテムの組み合わせで化学反応的効力が発生するし、Song中の副次的フィーチャーとしてバンドフレンジーやタイマーロック―――等々。
 盛沢山過ぎてとてもではないが全部は追いきれない。壮絶なゲーム性には舌を巻くばかり。本気で一生遊べる台だ。



 凄まじい程にカオスでコスモなピンボールである。フィーチャーの厖大さと複雑さ。その茫洋ぶりにはぐうの音も出ない。

 その難解な役の数値やステイタスは、ジャージージャック自慢のフルサイズLCDでおのおの表示されているものの、アイコンの氾濫でむしろ尚更分かりにくくなり、何度プレイしても何が何だか把握しきれない。
 しかし対人ボードゲームやカードゲームと違い、役の数値や計算、場面転換は全部マシン側が進めてくれるので、プレイヤーは好きに打つだけで没我の境地を堪能できるのだ。

 特筆すべきはやはり[Songモード]だろう。

 今までのピンボールはメインの見せ場をマルチボールとし、ボールロックの手順や役の完成を経てマルチに突入させて盛り上げるのだが、本機種では場の作り方も捉え方も違う。

 マルチの乱発ではなく役の完成で入れるSongモードが見せ場なのであり、それはシングルボールかマルチボールかの区別は無い
 前もってボールロックしておけば有益なマルチボールにもなるし、シングルボールスタートでも手際よく課役を決めればバンドフレンジーやフェーズクリアを果たし、アドアボールも勝ち取り、優勢へ逆転も可能。
 このルール編成は新鮮且つダイナミックだ。

 ただそのSongモード構造の欠点として、通常モードのマルチボールが希薄になってしまうという穴が空きそうになるのだが、それは
 “各マルチでジャックポットやスーパーJp.を取り進めておけばSongのステイタスが上がる”
 というフォローで巧みに繕っている。各マルチボールに無駄足はひとつもないのだ。


 Songの“熱狂メーター”も巧いアイディアだ。

 “ソングで3分以上稼げばいいのならホールディングして時間を稼いだり、安全なショットだけしてやり過ごそう”なんて上級者の浅知恵は通用しない。スイッチ数やレーンショットが貧相だと忽ちパフォーマンス性が低いと判断されて熱狂メーターが底を打ち、観客のブーイングと共に強制終了の憂き目に遭うからだ。
 アダムスファミリーの頃にコスいプレイヤーがよく使った、ホールディングでやり過ごした時間稼ぎのセコイ手は、もう通じない。

 プレウィザードと言える4つのアルバムモードも、アニメーションデモといいゲーム性といい、非常にセンスがいい。
 長丁場シングルボールで大抵1個犠牲が出るのはシヴィア過ぎであり、「トイストーリー4」のミートカルーセルみたいな緩いライフ制とまでいかなくともコンプ勝利でEx.リットぐらい欲しかったところだが……
 いやいやこれこそ上級者にとって腕が試されるフィーチャーだ。丁寧に練られたアニメーションも、アクションボタン活用も、実に楽しい。

 他にも、曲に合わせてプレイフィールド上でスウィングして踊りまくるスポットライト、両脇サイドブレードで稲光るように閃光を走らせるRGBLEDライト、ガンズのトラックもライヴ映像も好き放題に盛り込んだ音響と映像、LEDライトそのものがボールの通過と収納を感知する高機能センサー、バックパネルにまで設置されるライヴステージのジャンボトロンを模したLCDスクリーン、本物ドラムスティックや丁寧にミニチュア化された各楽器の名ブランド、尚且つ複雑なボールフローなのに無理なく各所へ開通が成された上出来のプレイフィールド……Etc,Etc.

 ピンボールとしてもゲームとしても仕上がりは極北的で、すれっからしのマニアもあっけにとられるばかり。メウニエルの前作パイレーツを凌ぐばかりか他のデザイナーの手による「ホビット」や「ダイヤルディン」をも凌駕。

 エリック・メウニエルはスターン社のキース・エルウィンと双璧の、現在最も才華を顕わしている若手ピンボールデザイナーと称讃すべきだろう。


 がしかし、ジャージージャックはそろそろ、米国120ボルトより20ボルト低い、日本国内での稼働をも前提として製品を構築してくれんもんかね。
 5段階評価で5点満点つけたいのに、こんな低電圧非対応のなまくらフリッパーストレングスでは手放しで絶賛できやしない。

 ダイヤルディンやトイスト4では何とかなっているのだが、この度のガンズの急勾配左ランプレーン⇒バイレベルフィールドのボールロックやベースギター通過は、いくらなんでも流石に苦しい。
 スイッチ判定が低い位置で助かるとはいえ、左ループも辛い。勿論、他社機種では拾えるはずの際どい球を拾うパスフリッピングにも悪影響。

 これに長時間プレイのコイル熱ダレが加わるとホールディングや通常のUp/Downすらヘナヘナと腰砕ける事態すら発生する。
 ロケに依存して打っている以上あまり贅沢を言える立場ではないが、バックハンドショットですら左フリッパーからすいすいボールロックしている本国のプレイ動画を見てると羨ましい限りで、国内での環境が何とももどかしくなってしまう。

 私の場合どうやってボールロックしているかというと、右フリッパーからデッドパスした瞬間のボールを左で逆スピン剛速球にして打ち上げるか、または右フリッパーから打つ瞬間強烈な縦ナッジでズドンと打ち上げるか。
 ミスショットにならないか、またはTILT判定をくらわないことを必死に祈るのみ。

 まぁ上級者の私にはこれぐらいの難儀さが丁度いいかな。



 さて今作のガンズアンドローゼズ。ビハインドストーリーを知りたくて検索かけても、洋楽ファンのサイト各位が取り上げて下さることのお気持ちは有難いが、結局全部おんなじ参照資料の翻訳丸投げで、読み物としての情報量は頼りない。
 よってこちらで過去のピンボールマニア向けメルマガニュースや長尺インタビュー音声をマイクで拾ってきっちり調べてみたところ、非常に興味深い輪郭が浮かび上がって来た。

 このピンボールは、エリック・メウニエルの才覚は当然ながら、同時にスラッシュのお人柄と、その挺身で出来ていたのだ


 情報リークのガードが堅いはずのジャージージャック社製ガンズピンボールの情報が最初に漏れたのは、2018年の夏の終わり頃のこと。
 火元はやはりスラッシュで、イギリスの新聞タイムス紙に『現在ピンボールの制作に携わっている』と、口を滑らしてしまった。
 ピンボール界隈の楽屋雀達は状況からして“これはスターンではなく、ジャージージャック新機種のことだ”と直感。

 そう、スラッシュは2年もの製作期間の間、映画で言うところのイグザクティヴプロデューサーの役割を果たしていたのだ。
 
 元々ジャック・グァルニエリはスラッシュと知己の仲であった。グァルニエリの会社《ピンボールセールスドットコム》からスラッシュはピンボールマシンを毎度の如く購買するお得意様。

 そんなスラッシュから、グァルニエリ及びジャージジャック社に企画が持ち掛けられる。
 “ガンズアンドローゼズのピンボールを作ってみないか。俺たちのライヴ[ノットインディスライフタイム]をテーマに。こんな感じでどうかな!”
 ……と、スラッシュはプレイフィールドのスケッチまで描いてJJP社を訪問してくれたのだという。

 そのスケッチは後の完成品とは似ても似つかないが、バイレベル上段からギター型ランプレーンにボールを乗っけるのはその当初スラッシュのスケッチにあったアイディアである。

 この時、前作パイレーツオブカリビアンを丁度製品化し終えてスケジュールが暫く未定だったのが、JJPリードデザイナーの中で最も髪が無いのに最も若いエリック・メウニエル。彼に本機種デザインチーフの白羽の矢が立ったのだった。

 頭髪は草木も生えぬ不毛地帯の為いつも帽子をかぶっているとは言え若干30歳
 そんな齢のメウニエル相手に、俺たちが'86年のLAライヴの時に……とスラッシュが話しても、当時まだメウニエルは生まれてもいない。それを伝えると、
 “Ohー!俺がジジィの年齢になっちまったことを実感させないでくれよぉ”とスラッシュが嘆いたりする多少のジェネレーションギャップはあったそうだが、製作期間中のメウニエルとスラッシュは非常に良い関係を築くことが出来たという。

 『ガンズなんてヤバイ連中だろ?と散々振り回された話を期待してくる奴がいるけど、全然そんなことは無かった。スラッシュはとても知的でいつも落ち着きがあって、尚且つ世界一高名なギタリストの一人。話しにくいどころか、何でも話せるきさくで怜悧なミュージシャンなんだ。制作期間中はアートの進捗状況、映像の進境、プレイフィールドのレイアウトを毎日彼とリモートで話し合っていた。スカイプを通して寝っ転がったまま、“今日はニュージーランドのホテルにいるよ”とか、“今ドイツでライヴが終わったとこだよ”、等々。メッセージを送れば10分で返事が返って来る。僕が話してる最中に遮って自分が話し始めることすらしない、優れた人間力を持ち合わせた実直な人格者なんだ。』

 巷間で口さがなく噂されるガンズやスラッシュの狂暴なイメージとは異なる、とても人懐こくフランク且つ常識人であったことをメウニエルは語る。

 スラッシュは曲の許諾購入、メンバーの肖像使用など、ライセンシングに関して全面協力。
 他のバンドメンバーとのパイプ役はスラッシュ自身で、プレイフィールドに本物のVATERドラムスティックを使ったり、ギブソンやフェンダーなど有名楽器ブランドの名前を使う許可まで、スムースに仲介してくれている。
 尚スターンの「ザ・ビートルズ」でクリス・フランチはGretchen,Rickenbacker,Vox等の楽器メーカーから許諾を得るのにとても苦労した、と語っている。


 購入した既存のガンズナンバーは全21曲。がっつりフルレングス。しかも隠しSongとして[Patience]のボーナストラックつき。
 それどころかラスボスウィザードの曲なんてスラッシュの書きおろしである。

 加えるに、ノーマルBGMは定番曲をイージーリスニング化した、いい感じにメロウなインスト音楽がかかるが、これもメリッサ・リースが手掛け、スラッシュがギターを弾き、ダフ・マッケイガンリチャード・フォースターの手にも渡ったのちにJJP側サウンドチーフのヴィカス・ディオがソフトウェアへ落とし込んで整えている。

 しかも、使えるライヴ映像はのべ3時間、ライヴ18回分。
 ガンズのマネージメント側から“好きに使ってくれ”と、6テラバイト分のハードドライブ2台の素材がどすんと送られて来ている
 これをスタジオ録音の正規トラックと口パクを同期させ、27インチ液晶のフルサイズスクリーンLCDへ威風堂々ぶちこんで、プレイヤーを豪壮な映像と音世界に引き摺りこんでゆく。

 更にLCDアート担当のジャン・ポール・デ・ウィンの筆致も冴えた。彼の弟まで正規のアシスタントとして雇用され、何百時間と掛けて丁寧にライヴ映像をゲーム性へ昇華させている。

 尚、スラッシュの着ていたファックユーTシャツ等にモザイクがかけられたのはご愛敬。


 白眉はポール・マッカートニー作曲の『Live and Let Die』の奇跡的収録だろう。

 これは元々“ノットインディス〜”のライヴ曲ではなかったが、'91年にガンズがカバーしてヒットさせた曲。むしろ現行世代にはガンズ版の方が通りが良い。
 「ユースユアイリュージョンT」の収録曲でメウニエルのフェイヴァリットだった為、当初の20曲に加えてこのトラックがどうしても欲しい。
 しかし元の20曲とは権利元が違い、マッカートニー側と交渉しなければならない。

 先ずバブリッシング権所有のソニーミュージックに許可を求めたが、けんもほろろに「No」の返答で一蹴。
 更にライセンス権所有元であるマッカートニーのエージェントへはしつこく5回連絡したのに、5回とも梨の礫。
 正規の窓口二か所からは門前払い状態で、取り付く島も無かった。

 “ライヴアンドレットダイは諦めなければならないみたいだ……”とメウニエルがスラッシュにこぼしたところ、
 『よーし待ってろ、何とかする。ポールに直接電話してみるよ!』
 ……とその場でスラッシュが動いた僅か15分後。Live and Let Dieが使えるよー!との連絡がメウニエルの元に入ったのだから凄まじい。
 その後エージェントやソニーの担当者が“俺のダチに恥かかしてんじゃねぇ”とポールに〆られたかどうかまでは分からないが、スラッシュの快刀乱麻な早業,離れ業には恐れ入るばかりだ。

 彼は他にもロック用語的なアイディアにも貢献。

 “ソングモード中に全6ボールロックという至難の業をやり遂げたら特別なジャックポットを授与させたいと思ったけど、Jackpotっていうありきたりな言葉は避けて、もっと特異な音楽用語を命名したいんだ。何かいいの無いかな。例えばクレッシェンドとか……”
 とメウニエルが一例をあげたところ、スラッシュは
 『クレッシェンドぉ?ロック野郎はクレッシェンドなんて絶ってぇ言わねぇよ!……そうだな、6ボールロックのジャックポットなら………うーん、火花が散るようなイメージの、PowerCodeなんてどうだ!?』

 こうして[パワーコード・アウォード]なる独自の用語が生まれたのだとか。

 またスラッシュがギタープレイなどでも協力してくれたのは勿論、JJP社訪問の際に彼は衣装とヘアメイクをバッチリ決めた姿でグリーンスクリーンの前に立ち、ハイスコア用のショットを提供してくれている。
 ダイヤルディン以降JJP機種にはカメラ撮影機能が装備されているが、スラッシュとのツーショットとしてプレイヤーの姿が記録される。しかもQRコードでSNS即時投降も可能というスグレモノ。セルフィー好きのプレイヤーにとってはたまらないだろう。

 更に、スラッシュのみならず他のバンドメンバーが全員がヴォイススピーチ録音に参加、もしくはヴォイス使用を許可してくれているのも特筆。

 主な録音参加はスラッシュ、ダフ・マッケイガン、メリッサ・リースの3人だが、他のメンバーも断片的にヴォイスの収録を行った。
 中でもパワー漲るメリッサの演技にメウニエルは圧倒されている。

 『彼女の大車輪ぶりは最高だった。演技もコールアウトも素晴らしくて、4時間もレコーディングに集中してくれたんだ。激しくも熱いひとで、元気で快活、それでいて気立てが良くて陽気な才媛。仕事もし易いし明るいし、何の問題も無かったよ。彼女の経歴見ると驚くよ。ジャズに映画音楽にシンセサイザーにCM音楽に。NFLの試合前での国歌斉唱とか。まさにスターだ。メンバーの中では声の演技が最も突出していて、本職の声優さんみたいだったな。因みに甘いもの好きというのも本当で、チョコレートとキャンディーをずーっと食べていたよ。』

 と、メウニエルはメリッサの才能も人品骨柄も激賞すると同時に、彼女とのセッションの充実ぶりを満面に振り返っていた。


 一方、プレイフィールドアートを手掛けたのは、ピンボール産業では新人ということになる、デイン・ヘンリーJr.
 重厚な筆勢でありながら愛らしいコミックタッチの引き出しも豊富なアーティストで、スリーイレブン、フーファイターズ、メタリカ等々既に多くのバンドのアートワークを手掛けている。
 過去にスターンからのお誘いもあったが無下に断ってしまった。ピンボールの仕事の楽しさとスケール感を知った今では後悔しているという。

 メウニエル達がウェブ上で彼をみつけて本作美術のオファーを送ったところ、デインは詐欺かいたずらかと思って信じていなかったそうだ。
 “ピンボールのアート?ふーん、別にいいけど”という態度と反応がメウニエル側にも伝わってしまっている。
 しかし機密保持契約書にサインし、ガンズピンボールの企画書を見せられ、スカイプでスラッシュと対面させられてようやく目が覚めて大慌てのデイン。
 『エリック、これが現実だなんて信じられないよ。僕が実際にやっているなんて。これは僕が聴いて育った音楽なんだ。彼と一緒に仕事ができるなんて!』

 そう歓喜したのもつかの間、初めのうちはピンボールアートを理解できておらず、絵画やポスターの様な捉え方でプレイフィールドを描こうとするデインは、メウニエルから注意と指導を受けてしまう。
 各パートのダフやスラッシュやアクセルを個々に描いてサマになるまで、しばらく時間を要することとなった。
 しかし最終的な出来あがりは珠玉の美麗さとなったのは、皆様もご存じの通り。

 他、アートワークに関してはアリエン・ビューラー、マーク・モーリトー、ジャン・ポール・デ・ウィン、ジェスパー・エイブルズの外部及び専属の傑物らが手掛けている。

 アリエンビューラーは本家本元ガンズアンドローゼズのポスターアーティストで、ガンズのマネジメント経由でオファーを承諾。
 サイドキャビネット赤レンガの壁のコラージュが禍々しくも鮮烈で、LCDアート内でも活写されている。
 例のケルト細工風十字架内にメンバー全員の頭蓋骨があるイメージアートは有名だが、オフィシャルに新メンバー7人が描かれるケルト十字架髑髏は、本機種リミテッド版が初めてだ。

 スタンダード版キャビネットアートを担ったのはマークモーリトー。
 [デザートデモリション]でも登場する全員バケモン化されたメンバー全員のキャラデザはモーリトーとメウニエルによるもの。
 “ドクロの肌の色は紫色で、舌はピンク色で頼む!”というスラッシュの要望通りで、このアートワークは当人にもとても気に入ってもらえたという。

 『ガンズメンバーの描写を単なるガイコツではなく、ゾンビでもなく、超越的で不死身の鬼神として描きたかった。これはほら、あのブラックナイトや「テイルズフロムザクリプト」のクリプトキーパーの様な、あんな永遠に不滅のカリスマ性を出したかったからなんだ。デインたちはその要望に応え、とても魅力的なキャラクターデザインとアートワークを生み出してくれた。ガンズが鮮烈にデビューして脚光を浴びた'80年代後半から'90年代初頭だけのイメージにしたくなかったんだ。永遠のアンデッドとして、時代を超越したデザインにすべきだ……ってね。』


 プログラマーらの功労にも言及しておきたい。

 今回のソフトウェアチーフは御存じキース.P.ジョンソン
 コーディングの凄腕は勿論、ピンボールの腕前もジャージージャック社内ではベスト3に入る程のピンボーラー。公式トーナメントでも毎度の如く上位を賑わせている。
 かつてスターン社で「ザ・シンプソンズ〜ピンボール・パーティー」や「ワールドポーカーツアー」のルールを整えた賢人でもある。

 そんな彼が構築したのが4種のブースターマルチボールのオーディオトラック。
 重ね取り可能なマルチの特徴と性質を活かし、オーディオトラックBGMを4種それぞれ分担させた。ドラムやパーカッション中心、ギター中心、キーボード中心、等々。4つ全て重ねればゴキゲンなフルサウンド音楽が完成するという趣向。これはヘッドホンで聴きたい!
 因みにパイレーツオブカリビアンの大砲発射はキースのアイディアだそうだ。

 そんなキースを中心に、計6人ものプログラマーがそれぞれ実際のシステムに携わっている。
 デバイスドライバに携わったり、Bluetoothやインターネット接続に携わったり、新規採用ボードのファームウェアに携わったりと、さまざまな仕事をこなしている。

 また、そのエンジニア達は各々にトラックを選んでもらい、そのSongモードのソフトウェア構築を担当している。
 21曲ものSongモードにおいて、例え同じフレンジーものでも、同じ点滅サイクルおっかけものでも、全部イルミネーション演出や点滅示唆が異なっているのは、それぞれ異なるコーダーがおのおの600個のRGBLEDの裁量を任され、采配を揮っているいるからなのだ。
 

 またゲーム性やアートワークのみならず、メウニエルはピンボール産業において革新的なサイドブレードとセンサーの発明特許を取得している。

 《ホットレール》と命名されたそれは、プレイフィールドを両脇で固定させるウッドレール自体が、独自の開発で内部に頑丈なLEDが仕込まれているというもの。勿論RGB制御可能。つまりLEDがウッドレールでウッドレールがLEDなのだ。買い直さなくても良いし設置も移動も改造も容易く、眩く光り輝くウッドレール。

 もうひとつは《LEDセンサー》。
 スキルショットでは円形に括られた6つのLEDライトを目標にプランジを加減するが、実はこのLED自体がセンサー機能を備えている
 物理的スイッチを省き、狭い場所同志でひしめくような設計が容易い。ギターのボールロック検知もこのLEDセンサーが登用されている。フルカラー制御で千変万化に瞬くのでプレイヤーにとって戦況が把握し易い……という利点も大きい。
 ライティングの面でも画期的なピンボールイノヴェーションである。

 企画が立った2018年4月と言えばジャージージャック社がニュージャージーからイリノイに転居する大掛かりな移管作業があった時節で、尚更あらゆる作業が煩雑となったはず。
 また、絶賛された彼の前作「パイレーツオブカリビアン」を凌駕し得る作品を作らねば、というプレッシャーも双肩にのしかかりかねない。

 しかし彼は“自分がやりたい理想のピンボールを実現化する”という芯を食った原動力と心持ちで挑む冷静さがあり、何の気負いもなく、利便性が格段と上がった新体制に臨んでいる。

 『僕にとってもジャージージャックにとっても移転後に開発した初めての機種なんだけど、オフィスも開発部もファクトリーも全部門が同じ敷地内にあるというのは非常に効率的で、従業員全員とファミリアに仕事できるようになった。これは重要なこと。パイレーツがライン上にある時は全ての仕事をリモートで済ますのは無理があったので、半年の間は月に一度、一週間ジャージージャックのファクトリーに赴かねばならなかった。妻も働いてるから子供の送り迎えとか大変なんだよ。何だかパイレーツのデザインチーフなのにファクトリー工程では蚊帳の外にいる様だった。でも今はみんながここにいて、みんなで製造を進めてゆくことが出来る。アッセンブルラインの工員、ラインリーダー、製造責任者の全てを管掌し、満足な差配をこなすことが出来たんだ。』

 因みにエリックメウニエルは「ダンジョンズ&ドラゴンズ」永年の求道者。SF/ファンタジー小説の読書家でもある。
 またエリックは過去にボーイング787機の開発にも携わっていた。貴方がもし同機に搭乗した日にトラブルなく無事故で空港に離陸,着陸,生還できたのなら、それは彼のお陰なのかも知れない。


 さて、完成した「ガンズアンドローゼズ〜ノットインディスライフタイム」は珠玉の仕上がりとなり、バンドメンバーらに贈呈されたが、
 “Ohファック!どえらいピンボールが出来上がっちまったぜ!ファーック!”
 と、例によってスラッシュはその驚愕の仕上がりにファックファックを連呼する感激ぶり。それこそ彼からの何よりの感嘆と称賛の言葉であるのを知るメウニエルは万感ひとしお。
 これらの大満足と手応えにより、製品に対して絶対の自信を誇れたという。

 かいあって、上質の最高級品であるコレクターズイディションは12,500$するのにもかかわらず、受け付け開始1時間でSoldOut
 売れ過ぎて品が不足して各所ディストリにしわ寄せが行ってしまい、謝罪と共に手付金を返金してリミテッド版を発送するという嬉しいながらも困ったトラブルまで発生していた。

 尚、リミテッド版は9,500$で、スタンダード版が6,750$。購入者にはポスターが付属しているが、ランダムでスラッシュ肉筆サイン入りのものが混ざっているそうな。
 
 完成後、現行ガンズとは疎遠となった過去のメンバーからも、なんかジャージージャックに連絡来ちゃったそうだが……どう対応したのやら。


 ところで、その後もジャージージャック社もエリックメウニエルも快調なキャリアを歩んでいるが、スラッシュは今もちょくちょくJJP社に遊びに行ってるんだそうで。

 なんとメウニエル2023年の発表の新作ピンボール「ゴッドファーザー」では、またスラッシュがレコーディング参加で情熱的なギタープレイを捧げている。なんで?

 聞けば、スラッシュはライヴでかのニーノ・ロータの名曲「愛のテーマ」をよくカヴァー演奏している為、是非俺にも!ということになったらしい。どんだけピンボール産業に参加したいんだよ。

 こうなったらスラッシュはもう、外部ライセンスコンサルタントかイグザクティヴプロデューサーとして、JJP正規の役職に就任してしまえー!!



▲左ランプレーンシュートは低電圧の日本稼働では大変苦労させられる。おまけにディヴァーターの段差があって時々球がつまづくんだよ…… ▲バーやブレードの真っ赤なパウダーコーティングが非常に美麗なリミテッド版。お陰でプレイしないクセに写真だけ撮るヤツとかもいるんだよ ▲プラチナディスクの上に浮かぶトップハットが魅惑的。これは勿論スラッシュのトレードマーク
▲頭蓋の山からスタンドマイク掴んで雄たけびを上げるアクセル。マット・リーステラーの功労により素晴らしい出来。 ▲中央スクープ。Songやプレウィザードやミステリーが掛かる重要箇所。キックアウト軌道が安全なので、困った時はココに入れてしまえば安心 ▲メウニエルにバンド経験は無いが、「ロックバンド」「ギターヒーロー」等の音ゲーに熱中していた。熱狂メーターのアイディアはそこからのようだ
▲左リターンレーン及びアウトレーン。ここにもA-M-Pでマルチ、G-N-Rでミステリー、COMAボールセーヴ試練など、かなり役が作り込んである ▲六角形の照明やジャンボトロンもガンズのライヴステージを模したもの。ジャンボトロンは咄嗟にゲームのヒントや役の説明が表示される ▲虹色LEDサイドブレードが眩い!Eメウニエルは本作でこれを発明し、特許を取得した。

(2023年12月27日)