各名門ブランド ピンボール・リスト

Stern Pinball/2021

レッド・ツェッペリン(Pro版)

原題Led Zeppelin(Pro)
製作年度2020年
ブランド名スターン・ピンボール
メーカースターン・ピンボール・インコーポレイテッド
スタッフゲームデザインチーフ:スティーヴ・リッチー/ゲームデザイン:スティーヴ・リッチー、ティム・セクストン/メカニクスチーフ:ジョン・ロザーメル/メカニクスサポート:ロブ・ブレイクマン、エリオット・アイスメン/美術総指揮:スティーブン・ジェンセン/ディスプレイチーフ:キティー・ネコ(誰?)、チャック・アーヌスト/音楽チーフ:ボブ・バッフィー/ソフトウェアサポート:ディーン・グローヴァー、レイモンド・デーヴィッゾン、コーリー・スタップ、マーク・ギーダレッリ、タニオ・クライス、マイク・ヴィニコー/声優:ブレンドン・スモール/美術班チーフ:グレッグ・フレーレス/美術サポート:スティーヴン・マーティン、ジャスティン・フレイト/ディスプレイ美術部:マーク・レニジス、マーク・ガルヴェス、トム・カイズヴァート、オリヴィア・ジェンセン、アレックス・ボーレ、デヴィッド・リスコーヴィック、ミミ・アーヌスト/エレクトリカルチーム:チャック・ブリーチ、ジム・シャード、リヤナ・コーツ、サイモン・サンブレイド、アンドリュー・パインズ/エンジニアリング検査技師:デイヴ・キャデュー/マテリアルチーフ:ゲイビー・アルヴァレズ、レティシア・ラミレズ/イグザクティヴプロデューサー:マーク・ウェイナ/プログラムマネージャー:ダニエル・シーベルト/版権監督:ジョディー・ダンクバーグ/テストプレイ:ニック・ウェイナ
標準リプレイ点数
備考
▲生存メンバーらの要望により、アルバムアートワークやツアポースターのタッチそのままの筆致でアートが描かれた ▲大阪心斎橋BigStep《SilverBallPlanet》にPro版が入荷,稼働している。周りがパーッと明るくなるような3rd.アルバム調のキャビネットが眩しい
▲スティーヴはよく金属成形でランプレーンをデザインするが、本当はプラスチックのデザインのランプレーンの方が好きだという。しかしプラ製は上りにくいのだ ▲収録曲は10曲。選択時はLCDでパタンパタンとアルバムアートと曲目がめくれるようなアニメ演出が。これは'60年代のジュークボックス曲目ボードを模したもの
▲Pro版バックボックスのデザインはこんな感じ。尚プレミアム版はヒンデンブルグ号、リミテッド版はイカロスのアートだ ▲バンクターゲット及びリターン/アウトレーンの綴りはL-E-D、Z-E-P、R-O-C-K、R-O-L-Lとなっている
▲デザインチーフのスティーヴは今回も“レジェンドと言われようが別にプレッシャーは無い”と言い切る。一作仕上がる頃には次作の構想で頭がいっぱいだそうだ ▲イカロスは光ったらボコれ。ヒットの度に飛び上がる仕掛けはスケアードスティッフのカエルと同工
▲ヒンデンブルグ号脇のボールロック進捗1-2-3ライト。しかし実際に球はロックされない ▲フィールド下部はイカロスを囲うような各フィーチャーライト掲示。よく整理されており、ファイナルウィザードまでの里程標になっている

― COMMENTS ―
●2020年12月15日。感染症禍による制作環境制限を乗り越え、スターンピンボール社「レッド・ツェッペリン」を完成させた。

 他業種ライセンス相手に対しては峻厳で知られるレッドツェッペリン公式側も、スターン社発表より4日先立って公式フェイスブックでその旨を動画発表。ツェッペリンリスナーもピンボール通をも、ちょいと驚かせてくれている。

 デザイナーは名匠スティーヴ・リッチー

 「ファイヤーパワー('80)」「ブラックナイト('80)」「ハイスピード('84)」「スパイダーマン(2007)」「AC/DC(2012)」等々、各時代の分水嶺的役割を果たす機種を数多く手掛け、業界を何度も救っている。

 ロック音楽の趨勢にもツェッペリンライヴにもリアルタイムで触れて来たスティーヴ自らが永年構想しつつ難攻していた企画で、ピンボール業界最大手スターン社のライセンシングチームが、骨を折るようにしてピンボール化の許諾を交渉。

 切望した「天国への階段」「ハートブレイカー」「セレブレーションデイ」の購入が却下されるという苦渋を嘗めつつも、幾度となく折衝が根気よく摺り合わされ、ようやく10曲こっきり―――という厳然な条件で使用許諾が下りた。アートワークの要求もかなり厳格だった。

 お値段は以下の通り。

Pro版:6,199$
プレミアム版:7,799$
限定版:9,199$

 廉価モデルであるPro版と比較、プレミアム/LE版との差異で最も顕著なのは、やはり盤面下からスピナー装置が飛び出し、尚且つマグナキャプチャで地下へボールをかどわかすボールロック機能[エレクトリックマジックスピナー]だろう。
 スイッチ非使用の光センサースピナーなので延々よく回る。

 殊に、天を仰ぐイカロスのバックグラスアートが強烈なLE版では、パラダイスブルーパウダーコーティングの金属加工に3チャンネルオーディオシステム、照明反射防止ガラス、シェイカーモーター搭載……と、音響的にもゲームの使い勝手も装飾的にもマニア垂涎、至れり尽くせり。

 また3バージョン全てにソフトウェア制御の10チャンネルイコライザーが搭載されており、音に煩い方はミキシングも好き放題。これは今までのスターン台にも洋楽テーマ機種にもなかった機能だ。

 尚、プランジシュート直結の伸びやかな宙返りサイドランプレーンはPro版では省かれ、サイドレーン突き当りスタンダップで代用している。
 サイドターゲットの役はこちらの方が獲り易い反面、マルチボールが一種丸々削られているのは痛恨。

 各曲ワンフレーズ毎にビートに乗って有効アローライト点滅が主要レーンを移動してゆく。サビに入ると全箇所がワッと瞬いて稼ぎ時へ。間奏のギターソロに入るとランプレーンだけ点きっ放しになるので連続ショットで通して通して、もっと通して!
 ……というルールがおおよそ各曲にくばせられている。Goldディスク10枚獲得を目指すのが根幹のルールだ。

 採録された10曲はハードロックスピリッツの強い'60年代後半中心、尚且つピンボールプレイによく馴染む熱いナンバーばかり。

 プレイ中はずーっとツェッペリンサウンドが流れっ放し。
 しかもプレミアム/LE版だと内側サイドキャビネット及びトッパースポットライトの音楽シンクロナイズ・ライトショウによる没入感が加わる。
 ライヴステージ照明をRGB制御LEDライトで、臨場感たっぷりに再現しているのだ。
 尚デザイナーのスティーヴは現役ツェッペリンライヴを二度観に行っている。

 残念ながらツェッペリンメンバーは録り下ろしのヴォイススピーチやパフォーマンスには不参加だが、代わりにヴォイスアクトを務めてくれたのはブレンドン・スモール

 俳優、スタンダップコメディアン、アニメーター、作家、監督、プロデューサー、ミュージシャン……等々多才な肩書を持つアーティストで、あの同スターン社製「エアロスミス」のジャッキーと同じ声役とは思えない程のイケメンヴォイスをご披露。ゲームにとてもマッチしている。

 プレイヤーとしては大満足の一機種なのだが、Sリッチーはその後スターン社を去り、2021年8月にはジャージージャックピンボール社に移籍してしまった。

 原因はやはりツェッペリンピンボールの仕上がりにあった模様。

 本人としてはジャージージャック社製「ガンズアンドローゼズ〜ノットインディスライフタイム」を超える開発と性能をスターンに求めていたのに、それが叶えられなかった―――というのが本心のようだ。
 因みに移籍した時のスティーヴの年齢は71歳である。

 一方、スターン社デザイン部門部長ジョージ・ゴメスは、スティーヴが残した「ジェームズボンド」他3枚のホワイトウッドを“全部ゴミだから捨てた”と傲然と言い放っている。正に消されたライセンス。
 その後ゴメス自ら指揮を執って次作ジェームズボンドの商品化に至った。

 ウィリアムス時代にはスティーヴ・リッチーに師事していたはずのジョージ・ゴメスだったが、スターン時代には上役となって立場が逆転。
 一旦はジェームズボンド企画を引き受けておきながら翻然、他社へ移ったスティーヴの裏切りには怒り心頭だった模様。



【ツェッペリンマルチボール】――――――左ランプレーンに掛かる。3回の擬制ボールロックで発動。

 マルチボール中のジャックポットは赤点滅アローライト。3本のランプレーンと左オービットに点くが、獲得後のコンボ先にもダブルJPが掛かる。
 そして全てのJPを片付けるとスーパーJPが左端下ホールとサイドレーンターゲットに点灯。更に各ターゲットバンク完成でJP倍率まで掛かる。

 尚、ボールロック再点灯はR-O-C-K4枚バンク完成


【ツアーマルチボール】――――――左端下キックアウトホールに掛かる。

 このマルチをリーチにするには?⇒前もって選択しておいたツアー別の課役をやり遂げる。
 その課役選択はどんなもの?⇒同じく左端下キックアウトホールにエントリーが掛かるので、その場で有利なもの、または不得意なものを先に選んで片を付ける。
 そのツアーエントリーを点けるには?⇒右上宙返りスクープランプレーンに規定数通す。

 ……という、面白いが盛沢山の手順。但し初回ではどの工程でもすぐ点いてくれるよう手加減してくれている。

 じゃあどのツアーを選ぶ?

[US1975/ランプレーンが主役]………前述のツェッペリンマルチ左ランプ3回ボールロック手順が一挙両得となるので初回選択におすすめ
[US1977/バンパーがメイン]………これを最後に残さない事。ツアー#4では最難関イカロスヒットが立ちはだかる。またバンパーヒットも大変なので初回選択にも向いていない!
[アールコート/スピナーが主軸]………難しいけど他のフィーチャー進捗との併用が効くので使い勝手が良い
[UK1971/左右オービットが鍵]………サイドレーンショットが苦手ならこれも#4まで残さない方がいいが、オービットショットに慣れていれば全般的に快適なツアー

 おのおのツアー別の課役が異なっており、尚且つツアー回数を重ねる度に難儀さがレベルアップしてゆく……という凝りよう。楽しいったらない。
 しかも、4つのツアー全てのJPルールが異なっている。余りにも複雑なので割愛するが、それぞれの主役ポイントを軸とした展開が設えてあって腹に落ちる。
 尚、どの箇所をあと何回ショット成功させたらツアーマルチロックリットとなるかは、LCDディスプレイでアイコン表示されている。

 全ツアーを制覇すると6ボールのウィザード[ワールドツアーマルチボール]が待っている。


【ソングセレクト/ソングモード】――――――先ずは全曲Goldディスク5枚獲得が目標。それが叶ったら、次は全曲プラチナレコード(Gold10枚獲得)を目指せ!

 搭載トラックは以下の通り。各ボール開始時やトップホールにキャプチャーした時に左右フリッパーボタンとスマートボタンで選択。曲が終わったら自動的に次の曲へ移る。

 先ずは5曲Gold5枚突破を目指そう。トップホールでミニウィザード[マザーシップマルチボール]が待っている。
 えっGold5枚獲れないうちに次の曲にいっちゃった?じゃあもう1回選択し直さないとね。

■グッド・タイムズ・バッド・タイムズ(2:42)
 簡単なショットと難しいショットが交互に課されるというが、別に問題なし

■コミュニケイション・ブレイクダウン(2:28)
  短期決戦マルチボールと相性良し。サビに入ると全アロー点灯!最初に選ぶならコレ

■胸いっぱいの愛を(5:28)
 野太い曲調に痺れるトラック。有効アローは少ないが、ギターソロに入ると中央ランプレーンが点きっ放しになるのでそこが狙い目

■移民の歌(2:22)
 有効アローは両端スタート。但しAメロBメロで点灯箇所が一挙に広がるので、これもシングルボールでは間に合わない。マルチボールで勝負

■カシミール(8:25)
 流麗な曲だが尺が長くマルチボールにそぐわないので、シングルボール対応で優雅にアロー点滅をやっつけると良い。
 尚、長丁場ウィザード6ボールマルチと併発させると曲調とも相まってむしろ脳が痺れる!
 “Tryin'To Find,Tryin'ToFind,WhereeeIaaii'veBeeeeen,AaaaaaahhhAhAhAh〜〜〜” 実はこれが最高の気分

■ブラック・ドッグ(4:45)
 挑発的で野太いビートに気圧されてフィーチャーの印象が残らない

■ランブル・オン(4:43)
  狙いにくい左端からアローライト2枚が忙しなく動き続けて鬱陶しい!最初に片付けるか最後に残すか

■ロックン・ロール(3:35)
 これもギターソロプレイ中は中央ランプレーンアローが点きっ放しに。アップテンポで気持ちがいい。調子が悪い時やピンチの時はコレで乗り切れ!

■トランプルド・アンダーフット(5:32)
  一番ゴキゲンな曲。ズッチャッズッチャッ!とセクションのつなぎ目毎にビートに乗ってアローが移り変わるが、場所も本数も丁度よく、快適!

■永遠の詩(5:27)
  ランブルオン程でないがこれも左端アロー中心でやりにくいったらない。しかし曲は相当いいね


 ―――どれを選んでも、途切れずに順繰りに流れ続ける。各曲Goldディスク10枚=プラチナディスク獲得を目指す

 Gold1枚獲得=セールス10万枚。大体点滅アローライト箇所2度3度ショットで10万枚に達してGold1枚獲得となるが、他のフィーチャーと連動して売り上げ枚数は積み重なってゆくので、ゲーム全体に奥行きが生まれている。

 尚、曲チェンジの局面が来たら、中級者は右回りセレクトを優先してチェンジするのがオススメ。Gold5枚獲ったら長居せず、すぐトップホールにキャプチャーさせ、速やかに次の曲に行こう。

 但し上級者は左回りで。全10曲Gold5枚突破で[トップチャート・ウィザードマルチボール]に突入出来るが、全曲殆ど10枚前後獲ってからトップチャートに行くと、そこでの展開が圧倒的に楽になる。
 もし、プラチナが全然獲れてない状態だと、その分トップチャートでツケを払わされる。あのトロンやエアロスミスのプレウィザードの様に。


【ファイナルウィザード】――――――全曲プラチナ獲得で[レッドツェッペリン セレブレーションデイ]の6ボールマルチウィザード発動!

 開始時のLCDデモが大変に麗しいので是非とも辿り着いて欲しい。
 厖大なスコアが稼げるのは勿論、終了後のシングルボール・アンリミテッド・ヴィクトリーラップが傑作。
 スコアは無限且つ甚大だが、カウントダウンが0で終了となる前に、必死にレーンコンボで稼いでからソーサーに飛び込み時間延長、更に延長、また延長……と、既に疲労困憊のプレイヤーのスタミナはいつまでもつのか!この究極のメンタル勝負こそ真のラスボスとなっている。


【スマートボム】――――――お馴染みモールディングバーのスマートボタンはアドアボールに効用アリ!

 マルチボール終了間際に押してみよう。ボムを持っていれば完全リスタートとなって大逆転となるので非常においしい。

 尚、このスマートボムは各曲Gold5枚/10枚獲得直後にトップホールでの[ソングチェンジ]と同時に貰える。
 コチッ!…コチッ!…と時計仕掛け風のサウンドエフェクトがソングチェンジチャンスの報せだ。見逃すなかれ!


【イカロスXプレイフィールド倍率】――――――上部中央イカロス人形袂のスタンダップに掛かる15秒間のフィールド倍率

 上部中央で天を仰ぐイカロスフィギュアの袂スタンダップに時間制でコレが掛かるのだが、2X3Xどころではなく、10倍,20倍……とXが無限。最高45Xまで上昇したことがある。

 滅多にそこまで上げられないし時間も15秒と短いのだが、その間にマルチのジャックポットをまとめて手早くこそぎとると恐ろしい額になる。

 点け方は全箇所ターゲットバンク完成
 Xの上昇メソッドは連続コンボショットの成功+バンクターゲットヒット。
 尚イカロスX有効時間の15秒はサイドレーンターゲットヒットで時間延長も可能。
 最も困惑されつつ、マニアも唸ったフィーチャーだ。

 尚、イカロスはレギュラーマルチボール中は3回ヒットでアドアボールのご褒美がある。
 どちらにしろ、イカロスが光ってたら即ボコれ。


【サイドレーンターゲット/ツェッペリンアウォード】――――――あの難しいサイドレーンターゲットヒットには旨味のあるご褒美が!

 サイドフリッパーからのサイドレーンターゲットショットを成功させる度にアウォード有り。
 スーパースピナー,スーパーポップス,スーパースリング,スーパーランプレーン,Ex.リット。


【その他】

 左アウトレーンに掛かる[ボールセーヴ]、プランジャーショットをうまく加減してL-E-D3枚バンクのサイクル点滅を仕留めると50万点+ボールセーヴ5秒間延長が貰える[スキルショット]、左右リターン/アウトレーンのR-O-L-L完成アウトホールボーナスADV.、等々。尚ボーナスXは50まで上るので馬鹿にできない。

 左端下ホールに点くエキストラボールリット条件はたくさん用意されてはいるのだが、すぐに手が届かない数値のものばかり。調子がノッてこないとひとつも点かずに終わるのが何とももどかしい。

 Pro版では省かれたL-E-D+Z-E-Pターゲット完成⇒盤面下せり出しスピナー及びマグナボールロックが発動する[エレクトリックマルチボール]は、発売後すぐ誤作動,故障の要因となった。一応修正コードで解決した模様。



 野太い。非常に骨太だ。
 フィーチャーの本数は少ないのに、その仕事量と組み合わせは恐ろしく厖大。

 一見、プレイフィールドも暢達でフィーチャーも非常に小ざっぱりした一本気に見えるのだが、道筋はとても太く永く、その先が遥か地平線まで続いているよう。まるで荒野を進む旅人となった印象をプレイヤーにもたらす。
 しかしその道程は刺激的で興奮に満ちている。

 プレイヤーの攻め方も毎回興趣と変化に富んでいる。

 Goldディスクを集めて目指すソングクリアと、2種のマルチボール、そしてコンボ成功でフィールド倍率X数値上昇を目指すのだが、どのソングを選ぶか、どのマルチボールを順番にするか、歩の進め方と展開が千変万化に変遷してゆく。

 例えば同社製「ゴジラ」の場合、慣れてくると意外や戦略が一辺倒となって面白みが減退してゆく。

 しかしAC/DCや本作の場合、ソングやツアーを変えただけで全く違う世界が繰り広げられる。その巧緻な編成には脱帽しかない。
 特に、ファイナルウィザードを目指すとなると、早く片を付けておきたいソングとレギュラーマルチボールを併発させてやっつけてゆく対策に迫られ、プレイヤー各位の組み立て方が重要となって来るのだ。

 Gold5枚、10枚でトップホールに掛かる[スマートボム]獲得のご褒美も絶対逃せないのだが、これがまた点けるのも獲るのも、とても難しい。
 右オービット⇒トップホールのコースへのショットは呆れるほど難関で、何度も狙ったのにミスショットを繰り返し、挙句落としてドレイン消滅した時は歯軋り千万。
 スマートボムは死にかけたマルチボールの完全復活が掛かっているのでこっちは死に物狂いだ。この歯ごたえも堪えられない。


 音楽については世界的名声が衰えない素材なので割愛するが、そのツェッペリンアートを活写するLCDディスプレイのデモ及びアニメーションの瑞々しさは筆舌に尽くし難い。
 アルバムジャケットやコンサートツアーポスターに用いられたアートの作風を遵守しながらも、彼らの粗暴さと夢想性を、絶妙にくすんだ華やかさで紡ぎだしていく。

 美麗な幻想を見せられたかと思えば、そっけなく乱暴に投げつけるような描写とサウンド処理が錯綜する、その独特の世界観にプレイヤーは幻惑されるばかり。

 殊に、筆勢と作風を貫徹したアニメーションには肌に粟を生ずる。

 ボールロックの度、奮起を抑えるように発着を待つヒンデンブルグ号。マルチ開始時には太虚へ晴れ晴れと飛び立つ、その誇らしげな雄姿。
 ジャックポット獲得の度にサードアルバム各々アイコンである蝶々、歯茎、トンボ等々が、飛行船から吹き上げる突風と共に渦を巻く。
 そしてマルチボールの終了後に総額を表示しながら悠然と去ってゆく飛行船を見届ける度、背筋がゾクゾクする。

 LCDアニメーションアートの極めつけはファイナルウィザードの[レッドツェッペリン セレブレーションデイ]。まるで荘厳な儀式の様な長尺デモは必見である。

 1st.アルバムの飛行船に始まり、のべつ幕なしに活写される名盤アートの中へ中へ……と画角が吸い込まれてゆく。
 最後にマザーシップを照らす議事堂に辿り着き、巨額ヴァリューの雪崩れ込みと共に6ボールマルチのグランドフィナーレが開幕となる。

 終了後もシングルボール・ヴィクトリーラップがてんこ盛りだ。この時コンボ同時進行でイカロスXを密かに上昇させ、潮時が来たらバンクヒット成功+イカロスヒットでフィールドXを発動させた日には、どうなるのか。考えただけでも恐ろしい。

 そのファイナルのセレブレーションデイを目指すと、到達までなんと1時間かかる

 全10曲でプラチナディスク=Goldディスク10枚獲得、しかも途中マザーシップマルチ、ワールドツアーマルチ、ヒットチャートマルチ……と3種の6ボールプレウィザードが立ちはだかる。
 もはやプレウィザードと言うより大仕事だ。

 腕は勿論、十二分な気力と体力がプレイヤーに求められる。


「ジャージージャックを後塵するような演出やシステムが多いのは見苦しい」
「表面は一見初心者向けにシンプルなようで、実は何時間もやり込む奥行きがある」
「点滅しているライトを打てばいいのだが、その理由が全然分からないのは困る」
「ライトショーが最高に素晴らしい。Pro版にもLEDサイドウォールオプションを後追い発売したが、これは絶対買うべきだ」
「アートが全体的に精彩を欠いている。だが物分かりのいいプレイヤーならこれはライセンサーとのすり合わせであり、尚且つその制約内で最大限に良い仕事をしたことは察するだろう」


 ―――等々、プレイヤーから寄せられた評価は賛否両論だが、若干肯定的評価が上回っている。

 筆者による本作の評価判定は非常に高く、星の数5段階評価は5としたいところだが、ハヤる気持ちを抑えて4としなければならない欠陥がある。

 スキルショットがつまらない。サイドフリッパーの用途が乏しい。せっかくLock1,2,3ライトの脇にヒンデンブルグ号のトイがあるのに、その飛行船に実働ロック機能が無い。
 これらの不満点は、プレイフィールドの伸びやかさの裏返しなので目を瞑れる。
 トップランカーの上級者が本腰で臨んでも、ファイナルまで1時間かかる異常さも不問にしたい。

 誹りを免れないのは[ヒットチャートマルチボール]からファイナルウィザードに移行する過程で致命的なバグがあり、修正される気配もないこと。

 ヒットチャートマルチの趣旨は、プラチナ未獲得分を全て回収して[セレブレーションデイ]に直行する……という未獲得回収型のもの。
 もし完遂途中でシングルボールに堕したとしてもカウントダウンが始まり、ヒットチャートモードのまま、ギリギリ粘らせてくれる。

 それはむしろ良いのだが、そのタイムアウトの瞬間とプラチナ10曲達成のタイミングが運悪く重なると、なんと機械は判断を混乱させ、
 “全曲Goldディスク10枚に修正してファイナルにいく”はずが、
 『全曲5枚に減らされてやり直し』となる。
 6枚以上取ってあったはずのものまで減殺!


 要するに9合目から5合目に突き落とされるようなもの。まるでドルアーガの塔のZAPじゃないか。勿論意図的に狙ったフィーチャーや罠ではない。

 今作のコード屋はスティーヴの前作「ソードオブレイジ」でも鼻に衝くバグをいくつも残したままのティム・セクストン
 恐らく今回のこのバグも、限られた世界レベルの上級者しか到達できない領域のため報告のフィードバックデータが乏しく、実際に起きているバグに関しては認識も対応も遅れている……ということなのだろう。

 ウィザードをやり遂げた後の2周目がしっかり作っておらず、表示がおかしくなる……という事態はタートルズやエアロスミスでもあったが、こればかりは看過できない。

 AC/DC,ダークナイト,ウォーキングデッドのキレ良い処理とゲーム運びを思い返すと、2022年1月に他界したかつての同社ソフトウェアエンジニア ライマン・シーツJr.が、いかに余人をもって代えがたい存在であったか。改めて彼の急逝が惜しまれる。



 さて今回のレッドツェッペリン。波乱が巻き起こったであろうメイキングは、どうだったのか。

 ジミー・ペイジら存命のメンバー3人が、ガンズアンドローゼズ,メタリカ,エアロスミス,ラッシュのピンボール化の時と同様、スターン社からのオファーを快諾。メンバー自ら進んでアイディアを出し、目を輝かせて同社ファクトリーを見学。録りおろしヴォイススピーチレコーディングでも喜々としてパフォーマンスを提供!

 ……なんてことなど、あるはずもなく。

 スターン側が何度も正式オファーを真摯に申し入れても、返事すら返さない人たちだったという。

 かつて盛昌を我意に任せたメンバー当人らによる素行の悪さは、今も音に聞く。
 レーベルとの衝突。ファンの少女との淫行。パーティーでの乱痴気騒ぎ。ツアー先ホテルでの破壊行為。
 悪逆で気難しい彼等とのライセンス契約及びその折衝に、どういう苦労がもたらされたかは想像に難くない。

 一応前例として、ツェッペリンのロゴが入るスケートボードやスニーカーの商品は存在する。
 がしかし、その許諾の成功例は稀で、ライセンス契約はとても難しい相手。

 最初は全く取り付く島も無かったことを、今作首領のスティーヴ・リッチーティム・セクストンが異口同音に唱えている。

 とうとう最後まで、メンバーらに会うことも出来なかったそうだ。

 契約上、使えるのは10曲。10曲こっきり。それが条件だった。

 しかも、Sリッチーが絶対に使いたかった「天国への階段」「ハートブレイカー」の使用は、最後まで必死に粘って交渉したにもかかわらず、極めて厳然と、断固として断られた。

 また、ファイナルラスボスと言える6ボールウィザード[セレブレーションデイ]も、同名曲のそのトラックは収録されていない。
 尚そのファイナルのデモでは各10曲を部分的に連ねたメドレーBGMで、なんとか場を盛り上げている。

 スティーヴ・リッチーはピンボールサイドのプレイヤーがツェッペリンに反感を抱かないよう、
 『彼等の立場からすれば当然のことであり、それこそ彼らの権利である』
 ……と、繰り返し念を押している。

 無骨な荒くれ者のイメージが強いスティーヴリッチーだが、公開音声やインタヴューなどではクルーとして支えてくれた大勢のスタッフ一人一人の名前を挙げて謝辞も惜しんでいない。
 当人はいたって思慮深い人なのだ。

 また、気難しくて話し辛い面倒な人物……と漏れ聞かれるプログラマー ティム・セクストンへの印象を尋ねられると、
 “いや、そんなことはない。彼とは一緒に仕事がし易いし、気軽に連絡も取り合っている。彼は才能あるコード屋、いやCorderなんて呼び方は良くないな。ティムにはコード書きやプログラミングだけでは無く、たくさんの功労がある。それより、一緒に仕事するのが一番面倒臭い野郎は、この俺だ。それとな、出来上がったピンボールへの文句は全て俺の責任だから俺に言え。泥をかぶるのは俺だけで十分だ。”
 と語っている。

 そんなスティーヴがツェッペリンピンボールを構想していたのは、なんとアタリ社ピンボール部門に在籍していた'76年か'77年頃からだという。かれこれ40数年以上である。
 ウィリアムス社在籍中にも企画を立てたが却下されたそうだ。

 “'70年代当時はライセンシングピンボール政策が今よりずっと難しかった時代で、最大手バリーの手によって「ウィザード」と「キャプテンファンタスティック」が作れたのがやっとのこと。でも人々が夢見ていたテーマだと思う。レッドツェッペリンは時代を超越した、音楽のカタログを持つバンドなんだよ”


 スティーヴとツェッペリンとの出合いは1968年。

 後に彼の妻となる女性が、楽器店の前に飾られていたレッドツエッペリンのアルバムアートに心を奪われ、衝動的に1st.2nd.3rd.アルバムまでの3枚を購入。
 当時沿岸警備隊に所属していてベトナムに派遣されたスティーヴに、その3枚を贈ってあげたのだという。
 スティーヴは忽ちツェッペリンサウンドの虜となり、ギターを弾いて、音楽を学んだ。
 ツェッペリンはスティーヴの人生に強い影響を与えた。

 1971年、73年のキーザースタジアムとバークレーコミュニティーシアターのライヴにも駆けつけた。

 3列目の席に座って彼等を直視、全身にサウンドを享受した日には、大地が、地球が動いたような衝撃を受けた。
 恐らく彼等こそ世界最初のハードロックバンドである。

 スティーヴはゲームデザイナーの職に就きながらも、ジミーペイジのプレイをコピーしたギター演奏に励み、バンド活動を続けた。

 そして2020年、レッドツェッペリンが、ピンボールどころか、初めてゲームとして商品化された。
 世間は殆ど気付いていないが、これは大変な快挙である


 しかし、前述の様に許諾条件は厳格だった。10曲こっきりがピンボール商品化の条件。

 是非これを使ってほしい、というようなバンドメンバーからの推挙は何も無く、その選曲はスティーヴ自身が8曲、ライセンシング業務担当のジョディ・ダンクバーグが2曲選び出した。
 どれをとっても痺れるような、聞き惚れるようなトラックばかり。

 また、『アルバムアートやイメージを勝手に改竄するな。オリジナルに忠実に描け。』というライセンサー側の要望もきっちり守ってデザインされ、バックグラスやキャビネットアードの作風は、正に元祖のタッチそのまんま。

 AC/DCやエアロスミスの時の様な、ディスプレイアニメーションも含めたクリエイティヴなアート表現が封じられてしまった反面、美術担当のスティーブン・ジェンセンは、むしろ『素材が豊富で、とても贅沢』と受け取り、意欲を掻き立てられたという。

 “レッドツェッペリンのアルバムアート。イメージアート。ビクトリア朝のロゴアート。ヒンデンブルグ号。4つのシンボルマーク。そしてスワンソンレコードのシンボルである天を仰ぐイカロス!とても描き甲斐のある素材ばかりだったよ。”

 “'70年代特有のくすんだカラーリングが魅力的。しかしもっと華やかなアートにすべき、とのスティーヴとスターン社の要望を考慮、1971年のエレクトリック・マジック・ツアー”のアートを現代風にアレンジしてプレイフィールドに落とし込んだんだ。”

 “それからLE版バックグラスのイカロスも強烈だよね。遠くからでもツェッペリンリスナーがすぐ存在に気付ける象徴的なものにしたかったから、10枚ほどの候補スケッチからイカロスを限定版アートに採用したのさ。”



 またプログラム兼ゲームデザイン担当のティム・セクストンも濃厚なツェッペリンリスナーである。

 “僕が初めてロバート・プラントのコンサートを見たのは1988年5月10日、トロントのメイプル・リーフ・ガーデンだった。ロンドンのセンテニアル・ホールで一晩寝て、朝一番に起きてチケットを買いに行ったんだ。でも既に周りには徹夜組がいて、椅子や寝袋を芝生に用意して何人ものファンがチケット販売時刻を待ちわびていた光景をよく覚えている。レッドツェッペリンが解散して以来、ロバートプラントが初めて公の場でツェッペリンの曲を歌うということで、リスナーにとっては見逃せない一大イベントだったんだ。”

 彼のミドルネームはなんと“ペイジ”で、本名はティミー・ペイジ・サクストンだ。冗談のようだが本当の話。
 大学時代にラジオのパーソナリティーを担当し、自分の名前にちなんで“レッド・ツェッペリン”なる芸名でオンエアしていた。

 “スティーヴの様なリアルタイム体験には負けるけど、僕にとってもツェッペリンはとても強大な存在。今回ツェッペリンの仕事が回って来た不思議な縁は返す返す万感の極みだよ。ニューヨーク州で育った僕はスティーブン・キーラーと一緒にロックファンタジーフェスに2回行った。ツェッペリン曲も何度も演奏した。レッド・ツェッペリンは史上最高のロックバンドのひとつだ。ピンボール化はスティーヴの企画だけど、ジョン・ボーグも絶対やりたかった様子だったね”

 そんなティムにとっても、スティーヴの熱い要望全てに応えるのは大変だったようだ。

 『俺が二度経験したツェッペリンライヴの没入感,音,イルミネーションを、映像とLEDで再現しようぜ!』
 『超高輝度のホワイトライトを試す。ジョン・ボーナムのドラムソロやジミー・ペイジのギターソロに合わせて全部踊るように瞬かせるんだ。プレイフィールドは勿論、キャビネットやサイドブレードもだ!』


 ティムはこれらの無理難題に全て応じてみせた。スパイクシステムで対応できるRGBライト数の範囲を把握し、プレミアムとLEでこれを使用した。

 '70年代のツェッペリンライヴ映像は2003年にリリースされたDVD「レッドツェッペリンDVD」を素材に使用許諾が降りている。UKツアー1971年、USA1975年、アールズコート、そしてUSA1977。それをすべての曲のLCD背景映像に転用した。

 “ライセンシング及びゲーム作りで心を砕いたのは、4人揃ってこそのレッドツェッペリンであることを遵守すること。1980年にドラムのジョン・ボーナムが死去、バンドは新メンバーを入れることなくあっさりと解散した。その史実が4人の平等さを自明に物語っている。4人が全て。4人が平等。4人揃わねばツェッペリンに非ず。バンド側はそれを強く求めていた。それを僕たちは厳然と守ったんだ”

 ティムはスティーヴと組むのは前作「ブラックナイト〜ソードオブレイジ」に続き、今回が2度目。
 スティーヴは自身とティムとの仕事ぶりを、ピッチャーとキャッチャーのバッテリーみたいな関係だ……と語る。

 “どっちかが無茶を言って相手を困らせつつ秀でたものが仕上がったりすることもあれば、2人で意気投合してノリノリで開発したら失敗したことだってある。”
 “俺の設計したエレクトリックマジックをそのまま製品化したらエライことになってたな。エリオット・アイスメン、ジョン・ロザーメル、ロブ・ブレイクマンに託したお陰で、あれだけの素晴らしいものになったんだ。”


 またティムは、直情的なソードオブレイジと細密なツェッペリンピンボールではどちらのコーディングが難しかったか?との問いに、こう答えている。

 “面白い質問だけど、それに対する答えなんか存在しないよ。学生時代からずーっとソフトウェアエンジニアで、そのあとIBM社に所属していたけど、常に新しい技術に対応し続けなければならないんだ。ソードオブレイジの時も技術は更新され続け、ツェッペリンの時も常にアップデートがある。言語、技術。自分は常に先頭に追いついていかないといけない。だからその質問に答えはないんだ。”

 “その点、スティーヴの異能は凄まじ過ぎる。アタリで「スーパーマン」をデザインしていた時から常に新しい物を取り入れて現役で業界を牽引している。ステレオサウンドも音声合成音も、電力供給フリッパーも、LEDライトも。新しいものに全部対応して使いこなしている。凄すぎるよ”


 世の情勢及びその影響による制作環境についても触れておきたい。

 ツェッペリンPIN制作期間の2020年と言えば感染症禍の真っただ中
 スティーヴたちにとってこの環境において最も不便したのは、ロケテストプレイ感想やバグ報告が得られないことだった。

 “自分が手塩にかけた初号機にプレイヤーが喜々としてのめりこんでくれる瞬間は、ピンボールデザイナーとして最高の気分が味わえるひとときのひとつ。その場で感想も聴けるし、その時のプレイ状況を見て改善点も精査できる。しかしパンデミック下では難しい。SlackやZoomでは伝わり難いしもどかしい。やはりプレイヤーが打っているその場にいないとダメなんだ。”

 “そこで今回、スターン社内でテストプレイを行ったんだが、マニア揃いの社内プレイヤー連中の感想は参考の後回しにして、代わりに(会長の)ゲイリー爺さんやプレイ経験の浅い営業の新入りに打ってもらい、普遍的で純然な感想を参考にしたよ。”

 当初はもっとボールフローもレーン構成も複雑で、ショットがきちんと決まらずメカエンジニア達も苦労しており、スティーヴも行き詰まった。その時点で損切りを決め、思い切って2020年5月に全部破棄して最初からやり直した。それ以降はトントン拍子にとても順調に進んだという。

 プレイフィールドが随分とすっきりしているのは、複雑になり過ぎたホワイトウッドを潔く丸ごと一枚没にしたからであった。
 Lockと示しつつボールロックのアッセンブルが省いてあるのも、サイドフリッパーで狙えるレーンが一本道しか設えていないことも、そんな中途の大破壊があったからなのだ。

 ティムセクストンにとっても、感染症禍での制作環境の差異が印象に残る仕事となった。

 “リモートだと製品の反映が遅いんだよね。試し打ちや、その都度のコードアップロードが面倒だった。こればかりは社内のラボでやっていた時のようには上手くいかなくなった。特に、何かパッと名案が閃いた時はチャック・アーヌストとジョン・ロザーメルの所にすっ飛んで行って、すぐ実物を交えて話がしたいものだけど、リモートではそうはいかなかったんだ。”

 “反面、リモート作業で良いことと言えば、まだ見せれる段階でないのに制作途中であれこれ言われたり、余計な口出しが入ってこないこと。家の作業だから雑音がシャットアウトできたのが良かったね”


 極めて厳粛なライセンシングピンボールの仕事は他機種より大変だったのではないかと尋ねられると、ティムは
 “そこはライセンスディレクターのジョディー・ダンクバーグにとても感謝している。総ては大変な業務を一挙に引き受けてくれた彼のお陰なのだから。許諾の成功は僕の功労ではないよ”
と謙遜する。

 同じくスティーヴもジョディー達に謝意を述べている。

 “レッドツェッペリンはグッズ化されたケースが少ない。アートやイメージを大変に厳守している。どれも一貫性があり、ポリシーが貫かれている。これは彼らの権利で、守らなければならないスタイルだ。決して彼等の傲岸不遜ではない。バンドメンバーには会えなかったけれど、関係者の仲介を経て意見が伝えられた。メンバーらの要望には応えられたと思う。彫心鏤骨の末にライセンス契約を成功させてくれたゲイリーとジョディーのお陰だよ”

 “もっと大変だったピンボールのライセンシング?そりゃウィリアムス時代の「スター・トレック〜ザ・ネクスト・ジェネレーション」だよ!ピンボールを全く理解してない奴らが3人も口を挟んできて大混乱、当初全く話にならなかったんだ。そこで御大ロジャー・シャープが出動、話を付けに入ってくれて、きちんとした担当者を一人だけ限定して指名してくれた。そこから漸く話が進んで行ったんだ。この時のライセンサー側担当者スージー・ドミニクには今も感謝している。スタートレック制作時の逸話についてはまだまだたくさんあって、それだけで2時間ドラマが一本撮れるぞ!”

 ……ならスティーヴ、その話は次の機会が有れば是非!



▲重要だがとても入れにくい左端下キックアウトホール。打つ瞬間縦ナッジや横ナッジを加えて微調整すると良い ▲とても伸びやかなプレイフィールド全景。カラーリングに'60s〜'70sの空気感がよく出ている ▲豺狼な荒くれ者として悪名も轟かせたメンバー4人だが、確かにサウンドは圧倒的で、ヴィジュアルもセクシーだ
▲狙い打ちの難しいサイドレーンターゲットは筆者好み。いつ当てても貰えるヴァリューが高いのが嬉しい ▲十分通り易く設計したとは思うが、左ランプレーンはきちんと心を落ち着けて狙わないと通ってくれない ▲右上宙返りランプレーンを通すには球威が必要。右オービット経由トップホールはもっと難しい
▲長時間プレイのフィーチャー編成だが、落ちにくい構造なのは助かる。アウトレーンのボールセーヴも簡単に点いてくれて有難い ▲このイカロスのバンパーカップ傑作だよね。KISSのバンパーアートに匹敵! ▲サイドレーンターゲットヒット直後はよく右アウトにボールが直行するが、それを判定してボールセーヴが発動。気が利いている

(2023年3月27日)