Williams/1991ハリケーン | ||
原題 | Hurricane | |
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製作年度 | 1991年 | |
ブランド名 | ウィリアムス | |
メーカー | ウィリアムス・エレクトロニクス・ゲームズ | |
スタッフ | プレイフィールドデザイン:バリー・オースラー/美術:ジョン・ユッシー、パイソン・アンジェロ/メカニクス:ジェラルド・ヘッドバーグ/ソフトウェア:マーク・ペナーチョ/音楽:ポール・ヒッチ/バックグラス画:ジョン・ユッシー/その他:ケヴィン・オコンナー、ティム・コーマン、トニー・ゴスキー | |
標準リプレイ点数 | 800万点 | |
備考 | 国内販売:タイトー/ようつべに動画あるよ!⇒GO! |
▲プレイフィールド上部。なかなかの賑やかっぷり。ただバンパー地帯への道程が乏しいのが惜しまれた | ▲バックボックス。当時トッパーにタイトルロゴやトイオブジェなどを取り付けるのが流行っていた時節で、ハリケーンも例に漏れなかった |
▲見てー!サイクロンにもあったボール運搬観覧車が、今度は2連結。アートワークもカワイイ! | ▲ねこターゲット4バンク。ミステリーを再点灯させたい時はこちらを完成させるべし。Pアンジェロって多分猫が嫌いだったんじゃないかな |
▲こちらはあひるドロップターゲット。完成でトップホールにボールロック点滅。今回マルチボールは重要だゾ | ▲実は物凄くやっかいなダンクザダミーターゲット。Ex.関連で押さえたい場所なのに、位置的にとても危ないポイントなのだ |
▲廻る廻るよバックボックス!因みに使い方は異なるがサイクロンやバッドキャッツ、ジョーカーズバックボックスにもモーター回転盤の仕掛けがある | ▲大胆なランプレーンが弧を描くプレイフィールド下部。クラウンの顔ライトはウィザード進捗の里程標になっている |
▲トップホール/ジャッグラーVUKのショットを斜辺撮影で1枚。仕掛け的には大したことないが見栄えは豪壮だ | ▲フロントキャビネットのアップも1枚。 |
●ウィリアムスから'91年に発表されたピンボール「ハリケーン」! バリー・オースラー&パイソン・アンジェロのコンビによる遊園地トリロジーの第三弾として、シリーズの掉尾を飾った秀作です。 '84年発表の一作目「コメット」及び'87年製の二作目「サイクロン」共々ランプレーンをローラーコースターに見立てた大迫力フィールドが剛健である反面、プレイヤーのヒッティングとコントロール力をシビアに問うフィーチャー編成がマニアを唸らせました。 特筆すべきは2作目の「サイクロン」。ランプショットから戻ってくるボールをさらに2連続、3連続……と立て続けランプシュートを決めてヴァリューを伸し上げるという、いわゆる“回しもの”なる新機軸フィーチャーを開拓。シングルボールのゲーム性に大きな飛躍をもたらした傑作として、今なお人気の高い名モデルです。 その眷属を汲む今作「ハリケーン」も、遊園地及びローラーコースターをテーマにこれまでの2作に引けを取らない豪傑なゲーム性で、我々を大いに魅了してくれました。 一方、大味なプレイフィールドと荒削りなビッグポイントを指弾、“ぐるぐるマワすしか能がない駄作”と辛辣な酷評を寄せる一部マニアも散見。 ピンボール大豊作の'92年国内出荷台の中では、どちらかと言えば佳作程度の部類では?…という評価に落ち着いたのが当時のプレイヤー達による認識。 いやいや、今になって歴史を俯瞰しながら打ってみればそんなことは無い。 ボールを運ぶ観覧車が2連結でキュート。連続回しミリオン獲得がアンリミテッド制で余計に神経が研がる研がる。バックボックススペースをいっぱいに活用したモーター回転アニメイト演出に括目……等々。 前作サイクロンをさらにスケールアップしたゲーム編成が目白押し! さらにコメットにもサイクロンにも無かった戦略性の高いマルチボールの存在感も、存分に呼吸。 ちょっとしたビッグゲームまで用意され、その完成度は決して無視すべきでない領域へ到達していますよ。 発売当時は故障が多く、ロケーションから早々に下げられてしまったオペレーター泣かせの台でしたが、現在になって中部地区のロケーション・アピタ岩倉店《遊友縁日》にて絶好のコンディションで登場。 一方《沖縄昭和博物館》なるロケーションにも現存しているようですが、運営側はどうにも知識が素人からのスタートなのに必死に背伸びしながら解説しようとしていて、正直見ちゃいられないのが玉に疵……。 尚、1991年当時「ハリケーン」をジュークボックスと一緒に太東貿易がディストリしていた事実は有りませんので念のため。 まぁそのあたりは全国行脚なさってるマニアに方々にのちのち教示と啓蒙をお願いするとして、ともあれウィリアムス遊園地トリロジー最終作「ハリケーン」。今各方面から再評価されつつある一機種なのです。 【ジャックポット】トップホールに最高額1,575万点のジャックポットボーナスが掛かる。点け方は、P-A-L-A-C-Eレターの完成。 PALACEの6文字の進展はスポットパレスライト点滅中の右ランプレーンへのシュート。 このライトをリットさせるには各バンク完成やハリケーンミリオン獲得後に時間制でしばし点滅。 尚JPヴァリューは500万から積立てでスタート。主に常日頃のランプレーンで上昇。 【スキルショット】成功回数×50万点獲得のフリッパースキルショット。各プランジャーボールシュート時に右ランプレーンにかかる。時間制。尚上限は200万点。 ボールロック後プランジも該当。PALACEレターも進捗する。 【中央ランプレーン/サイクロンコースターミリオン】中央ランプレーンへの連続ショットで100万点が無制限に稼げる。シュート1回目5万点、2連続ショット10万点、3連続20万点、4連続30万点+クラウンの口点灯、5連続以降100万点。 ミリオン以降のミスショット判定は厳しいが、正確な連続ショットなら本当に無限にミリオンが稼げる。 ヴァリュー再点灯はあひるドロップターゲット3バンクの完成。 【右ランプレーン/ハリケーンコースターミリオン】右ランプレーンへの連続ショットでも100万点が無制限に稼げる。 1回目20万点、2回連続ショットで22万5千点、3回連続で25万点、そして4回連続以降は100万点が何度でも。5回目以降はPALACEレターのADV.も付随。 尚ヴァリュー再点灯は右下4バンクねこターゲット完成。但しその度ミリオンへのノルマが更にワンショット上がって難易度も上昇。 【ボールロック】トップホールでボールロックが可能。緑色のロックライト点滅時にシュート。 ロックライトの点灯は、左下あひるドロップターゲットの完成。 【マルチボール】3ボールマルチ。2回目のボールロック後、アナザーボールをプランジするとスタート。 マルチ中は右ランプレーンにビッグポイント。1回目100万、2回目200万、3回目500万点獲得。4回目以降は100万点に戻る。 【プレイフィールド倍率】マルチ終了直後、25秒間フィールド倍率がかかる。倍率は2X/3X/5X。倍率の高さはマルチ時の活躍ぶりに呼応。 尚、この倍率はミリオンにもかかるが、ジャックポットヴァリュー及びEx.個数には該当しない。 【エキストラボール/ダンク・ザ・ダミー/ボーナス倍率】左右アウト&リターンレーンにエキストラボールライト有り。ボーナス倍率を3Xにまで上げればEx.点灯。 ボーナスマルチプライアは点滅中の中部右寄りダンクザダミー1枚スポットターゲット。これを点けるには、一度ターゲットヒットするか、観覧車レーンへのシュートで時間制点滅。 【ミステリー】ランダムボーナス。トップホール(ロックホール)に点灯。点けるには、中部右端ねこターゲットをバンク完成させる。 内容は、100万単位のビッグポイント、エキストラボール、スペシャル、ボーナスマルチプライア、インスタントロック、スカ0点……などなど。 車輪が回転するドットアニメに併せてバックボックスでコースターの絵が回るアニメイト演出が豪快。 【クラウンタイム】ちょっとしたウィザードモード。25秒間全スイッチ10万点フレンジー+各レーン50万/75万点/100万点のビッグポイント。右ランプにあるクラウンタイムライト点灯中に通せばスタート。 クラウンタイムを点けるには、フィールド下部に表示されるクラウンの顔ライトを全て完成させれば良い。 配分は、[左目]⇒観覧車乗車、[口]⇒サイクロンコースター3連続、[鼻]⇒ダンクザダミーおじさん撃退、[右目]⇒ハリケーンコースター乗車、[左頬]⇒あひるドロップクリア⇒、[右頬]⇒ねこターゲットクリア。 尚クラウンタイム時に稼いだトータルスコアはハイエストとしてネーム記録の賞与があるが、1ボール中に2回・3回と重ねて行使すると、そのまま上乗せされる。 【スペシャル】右ランプレーンにスペシャルライト有り。マルチボール3回行使で点灯。 【観覧車/左レーン】フェリスウィールヴァリューを獲得。この額はバンパーヒットやドロップターゲットヒットなどで上昇。 【クイックスコア】25万点以上の2ウェイズコンボショット。中央ランプ⇒観覧車レーンで獲得。 【バグ】マルチ中に起こる変なバグがある。 3個ともドレインしているのに、ディスプレイでは風船が舞い上がるドットアニメが音もなく延々表示され、アウトホールボーナスカウントにも入らず、そこからしばらく稼働が止まる。 5分程で復旧するので、点が惜しければ根気よく待機すべし。 全体的に緻密さや精巧さより、豪放磊落なゲーム性が功を奏したピンボールです。 棚ボタで点くかも知れないジャクポット、バックボックスのジェットコースターが稼働するミステリーボーナス、愛苦しい観覧車、爽快なヴォイススピーチ…などなど、全編を包むハピネスな祝祭感には胸が躍ります。 何と言ってもフィールドいっぱいにアーチを描き、エプロン間近で大きく弧を描いてUターンするハリケーン・ランプレーン・コースターの爽快なこと。 ランプシュート⇔リターンを繰り返して轟音と共にミリオンを連取!さらに延々に宙返りを繰り返せば、本当に絶叫コースターで宙を滑空しているような爽快感に耽溺、しばし恍惚としてしまいそう。 この特殊なランプレーンデザイン“蛇のとぐろ型プレイフィールド”のアイディアはこの後、ウィリアムス'94年製「フリントストーン」、セガピンボール'95年製「バットマンフォーエヴァー」、スターン'02年製「ローラーコースタータイクーン」同社'05年製「グランプリ」等々で、同様の構造として踏襲されていきます。 がしかし実を言うと、ピンボール揺籃期の'30年代。この蛇型フィールドが一時期的に流行った時節がありました。 時は1932年8月。世界を変えたPINブームの大立者のはずが即「バリーフー」にお株を奪われたゴットリーブが、ようやく「バッフルボール」以来の大ヒットでバリーの鼻を明かしてやったという8の字レーン搭載機種こそ、この「ファイヴ・スター・ファイナル」。 同作による大ヒットに端を発し、「グーフィー('32)」、「モナーク('33)」、「エアウェイ('33)」、「ロケット('33)」で早速ライバルのバリーも同構造を連用、ヒット作を陸続させていた時節がそれ。ゲンコ、ストナー、ロックオラもそれに続けと追従します。 殊にバリー製「モナーク」は、今で言うワイヤーランプレーン搭載モデル。 プランジャーショットでボールは立体通路を滑空、プレイヤーの手前で爽快に宙返りさせるという非常に前衛的な作りは、ハリケーンを60年近く先取りしていたと言えましょう。 これら8の字・Uの字・宙返り交差シュータープランジブームに業界はしばらく湧き上がりますが、そのトレンドは1933年11月、ハリー・ウィリアムスが発明したパシフィック社製「コンタクト」の初電気化プレイフィールド・フィーバーであっけなく終焉へ。 まぁソレはまた別のおはなし。趣旨を'91年のハリケーンに戻します。 そうそう、それにつけても音楽担当ポール・ヒッチによる「ハリケーン」のサウンド及びコンポージングの素晴らしさと言ったら! ジャックポット獲得後のお祭り感いっぱいの行進曲など、聴くだけで誰もが幸せな気分に浸れるような最高の仕上がりを誇っています。 遊園地トリロジーの前作「サイクロン」のコンポーザーだったクリス・グランナーがキュートなカートゥーンタッチの曲調で魅せていたのに対し、Pヒッチは全編祝祭感溢れる楽隊風マーチで華やかに彩っています。 ポールヒッチは「スケアードスティッフ('96)」を最後にピンボール業界からは距離を置き、今ではバージニア州ジェームズ・マディソン大学の芸術学部で教鞭を取っていますが、WMSピンボールのコンポーザーになる前は、シカゴのコメディ集団“セカンドシティ”で作曲を担っていた人。 かのマイク・マイヤーズやビル・マーレイ、ジョン・ベルーシを輩出した即興お笑い劇団の名門で、今回の「ハリケーン」や「ブラックローズ」、「ラジカル!」の勇躍するような劇伴風ミュージックを手掛けることなど、ポールにとってはお手の物だった訳ですね。 一方、プレイフィールド設計やルールデザインはバリー・オースラー及びバックグラス画はジョン・ユッシーとなっていますが、ゲーム性と世界観はカートゥーン好きPアンジェロの幻惑的マジックが横溢しているのは言わずもがな。 そう、ハイスピードやアダムスファミリーに比肩する歴史的傑作「ピン・ボット('86)」の生みの親であるパイソン・アンジェロ(故人 1954〜2014)の、遊び心いっぱいの児戯と絵取りが盤面からは弾けんばかり。 遊園地を駆け巡る人物ひとりひとりを細やか且つイタズラっぽく描きこんだアートワークが、オースラーの台というよりパイソンの作品である印象をプレイヤーに焼き付けています。 プランナーであり美術担当でもある彼はピンボール業界随一の道化者としても知られ、その底抜けに陽気な人柄と多才ぶりは、多くのスタッフやファンたちに愛されました。 「クリーチャーフロムザブラックラグーン」のデザイナーとして知られるジョン・トルデオーの渾名である“ドクターフラッシュ”の名付け親は、実はアンジェロだったりします。 業界誌などで写るイベントや取材における彼のスナップは、毎回毎回ぶっ飛んだ帽子のセンス且つおどけたポーズで大はしゃぎ。 彼のテンションの高さと能天気さ、サービス精神の旺盛さが嫌でも伺えてしまいます。 しかし、WMS最大の危急存亡を招いた問題作「ポパイ('94)」「ザ・ピンボール・サーカス(未発売)」における、そのハイコストで無茶な企画を通しておきながら深刻な損益をもたらした仕事ぶりはウィリアムスとの間に亀裂を生み、それらの企画を途中抜けしてカプコンピンボール社に移籍した時節から彼の名に影が差し始めます。 新天地カプコンにおいてもパイソンは再びクリエイターの立場で同社と衝突。 結局彼のデザインした特殊筐体「フリッパー・フットボール('96)」は千台も売れない不本意な失敗作となりました。 U.S.A.カプコンのピンボール部門解体後はウィスコンシン州ベイテックゲームズ社に移籍。ありきたりな大型エレメカ筐体の仕事で食いつないでいたようですが、心残りだった「ピンボールサーカス」商品化の展望を公に宣明しており、最後までピンボールへの情熱を手放していなかったようです。 そんな彼のピンボール業界へのカムバックが永らく待ち望まれていた2010年のこと。彼の体が末期癌に蝕まれていることが発覚。 以来闘病生活に入り、彼を愛する支援者たちから募られた支援金は一万九千ドルにものぼりました。 症状に一時的な寛解が見られ、ピンボールエキスポなどのイベントでも相変わらずのパフォーマンスぶりで大暴れしてみせたにもかかわらず、誠に残念ながら、2014年にパイソン・アンジェロ氏は逝去。 彼の才華と人柄を知る者の誰もが紅涙を絞りました。享年60歳。 パイソンはウィリアムスにやってくる前の'79年頃までは、なんとディズニースタジオで筆を執るアニメーターだったという来歴の持ち主。 彼が創出した夢の国「ハリケーン」や、他遊園地シリーズ2作「サイクロン」「コメット」。そして「ピンボット」「ザ・マシーン」「タクシー」……等々。 奇想天外なアイディアと豊富なアトラクションに満ち溢れたプレイフィールドこそ、私たちピンボーラーにとって彼が遺してくれた永遠のディズニーランドであるような気が致します。 “Hurry,Hurry,Hurry! Step Right This Way......” |
▲汽車に見立てたトップホールたもとのライト表示。ロックライトやミステリー、JPライトもあるゾ | ▲アートワークがやっぱりアンジェロらしい!彼の遊び心が随所に。 | ▲右ランプレーン/ハリケーンコースター入口。すいすい通せると滅茶苦茶気持ちいいし、スコアはうなぎのぼりだ |
▲左端レーンはフェリスウィール入口。実は観覧車はヴァリューが低くて通し甲斐が少ないのだけど、仕掛けとしてはとても楽しい | ▲フィールド全景。そうそう、この感じ。パイソンアンジェロがいた頃のウィリアムス台って、みんなこんな雰囲気だった | ▲ジャッグラーがお手玉してくれるトップホール。ジャックポットが掛かったら何がなんでも入れよう! |
▲左リターン/アウトレーン付近。Ex.ライト有り。レーンチェンジ可。 | ▲中央ランプ、サイクロンコースター入口。ミリオン連取でクラクラ恍惚状態へGO! | ▲最後の1枚は右アウト/リターンのアップで。因みに結構落ちやすいですヨ。 |