Spooky Pinball/2016ロブ・ゾンビーズ・スプークショー・インターナショナル | ||
原題 | Rob Zombie's Spookshow International | |
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製作年度 | 2016年 | |
ブランド名 | スプーキー・ピンボール | |
メーカー | スプーキー・ピンボール・LLC | |
スタッフ | プレイフィールドデザイン:チャーリー・エメリー、ベン・ヘッケンドーン、デニス・ノードマン/美術:アレックス・ホーレイ、マット・リーズテラー/ドットアニメ:デヴィッド・ヴァン・エス/ソフトウェア:デヴィッド・フォーセット | |
標準リプレイ点数 | ― | |
備考 | 製造台数標準版:250台、限定版:50台 |
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【1st.インプレッション&雑感】 スプーキーピンボール社製「ロブ・ゾンビーズ・スプークショー・インターナショナル」が、大阪は心斎橋BigStep内3F《SilverBallPlanet》で稼働中である。誠に有難い。 今でこそ独特のマーケティングで頭角を現しているスプーキー社だが、2016年の段階で同社はカスタマイズの旦那芸から延長してきたような、無名の家庭内工業といえる存在。 このメーカー製の機種が日本のロケーションでプレイ出来るとあって、当時は虚を衝かれたような驚きがあった。これがなかなか奇妙な打ち心地。 子供の頃、ボウリング場やスーパーのゲームコーナーで旧スターンの「ホットハンド('79)」やスペイン製プレイマティック社「カーニバル('77)」に出くわし、明らかにバリーやゴットリーブとは肌合いが異なる奇妙なピンボールで遊んだ感動を思い出した。 独特のロケーションが独特の販路で設置したゲームとの出会いは、今も昔も僥倖である。 さてこのゲームの主題はロブ・ゾンビ。 多種多様な肩書を持つ多才な鬼才ロブゾンビ先生全面協力の元、彼による10曲のナンバーの他、彼自身のヴォイススピーチのみならず彼の妻シェリー・ムーン・ゾンビ嬢もレコーディングに参加している。 アートワークも作劇も、血みどろホラブルの極北。最初から最後までハードロックかかりっぱなし。阿鼻叫喚の地獄絵図。 バトルとドラマ重視の「ウォーキングデッド(スターン社2014年製)」とも趣が異なり、ストーリーラインはさっぱり分からないのだが、兎にも角にもそのご趣味の世界をピンボールの役の完成に準えて、プレイヤーがケダモノ達の饗宴に付き合わされる施し。 (個人的にホラーは大好きだがアルジェントやデパルマ系の私の嗜好とはどうも毛色が違う……) ゲーム性を鑑みると、プレイフィールドデザインはバイレベル高架下活用ループやスムースなランプレーンできちんと繋がりが有り、構成はしっかりしている。 各フィーチャーの方も、マルチボールを主体としながらミニゲームが並行する現代ピンボールの平均的なゲーム作りではなく、ミニゲームノルマクリアでこそご褒美マルチボール獲得!という構成。各イベントクリアへのモチベーションを明確化している。 リターン/アウトレーン全リットで点灯するボールセーヴルールの戦略も重要。 各ミニゲーム+別口マルチボール⇒ウィザードという基本を押さえ、現代ピンボール製品としてある程度まとまっている。 ところが、ロケーションでの稼働状況はというと、ソフト/ハード共に、不安定。 故障や誤作動、ボールスタックが多いだけではなく、ウィザード目指して長丁場に臨むとマシンの方がくたびれて昏倒する。 ディスプレイが飛んだり、ゲーム進行が膠着したり、音楽の再生が死んだり……と散々だ。プレイヤーが筐体底の電源off/on操作で復旧してあげないと次のプレイが出来ない有様。 これは五段階評価でいうと★ひとつの点数しか付けられないが、“商品化してファクトリー生産して出荷した”ことを高く評価し、大目に見て★2つの温情評価を下したい。 新参ピンボールメーカーの中には、1台もまともに完成出来ずに、破産だの、起訴だの、比べようのないくらい悲惨な末路を辿ったところがいくつもある。 そんな中、スプーキー社のように今もコンスタントに新機種を発表し続けて会社を拡充し続けるのは容易なことではない。そこだけでも礼賛したい。 そんな彼らはどうやってピンボールメーカー及びそのファクトリーを竣成させたのだろうか。 スプーキーピンボール社は当初ウィスコンシン州の家庭内工業が発祥。 オーナー且つプレジデントで、チーフデザイナーであるチャーリー・エメリーは元々印刷会社SSiデカールズ社に勤めていた。 2011年頃、その技術と経験と情熱を活かし、親子揃って大好きなゴジラのカスタマイズ台をこしらえてゲームショーイベントでの衆目を集めるうち、後にスプーキー社のデザイナーとなるベン・ヘッケンドーンから仕事の依頼が入った。 ヘッケンドーンは2006年頃からオリジナルピンボールの制作を始めており、キャビネット、プレイフィールド、ディスプレイ、コントロールボード等々を自分なりにガレージ制作。 しかし結局5年近くかかり、続いて挑んだ2作目も出来が悪く、自分でも気に入らなかった為全て解体。 しかしこの時チャーリー・エメリーと出会い、3Dプリントパーツの技術を習得。この経験と人脈が後述のモストホーンテッドへと繋がることになる。 ヘッケンドーンはこの時、モストホーンテッドのゲームデザインのみならず、pinHeckコントロールシステムを自家製で構築したのだった。 話は前後するが、ヘッケンドーンとの邂逅もあり、情熱と自信が漲り始めたチャーリーは印刷会社を辞め、私財を投げうって自社を設立。 社名は家族でやってたホラー動画配信のチャンネル名からとって、スプーキーピンボールLLCとした。2013年2月1日のことである。 ヘッケンドーンも合流し、1年もの制作期間をかけて、処女作「アメリカズ・モスト・ホーンテッド」が完成した。 電子機器以外の製造・設計は家庭内工業で全てまかない、当時10代のチャーリーの娘モーガン・エメリーもワイヤーハーネスを捌いている。 スターンの大きなファクトリーの様に1日に何十台も製造することは当然不可能で、試行錯誤と彫心鏤骨の末、手塩にかけてやっと最初に作った1台はペンシルヴェニア州で買い手が付く。 そこのピンボール・スター・アミューズメンツ社の、ジョー・ニューハート氏に購入して貰えた。 設置したロケーションはローレンス・パブ・アンド・イーテリー。 ピンボールなんて前時代の産業なのに、ベントンステート銀行も理解を示して融資してくれた。地域の人たちも皆協力的で好意的。 チャーリーは今も彼らの名を全て空で言える程、恩は忘れられないという。 その後モストホーンテッドは2年かけて250台製造し、完売を果たした。 2作目且つ初ライセンス作となる本機種「ロブ・ゾンビーズ・スプークショー・インターナショナル」の制作に入ると、テナントしていたベントンビジネスインキュベーターが手狭となった為、2016年3月にリッヂアヴェニュー184へ移転。 1日に3,4台のペースでの製造か可能となり、ロブゾンビ300台を完売させることに成功した。 その後も、「ドミノズ(2016)」、「宇宙家族ジェットソン(2017)」、「トータル・ニュークリアー・アッナイレーション(2017)」、「アリスクーパーズ・ナイトメアキャッスル(2018)」、「リック・アンド・モーティー(2020)」、「ジョン・カーペンターズ・ハロウィン(2021)」、「ウルトラマン怪獣ランブル!/Ultraman Kaiju Rumble!(2021)」 ―――と、極めて灰汁の強いラインナップの快進撃が続いてこんにちに至るのだが、フロントマンであるチャーリー・エメリーはピンボールイベントの壇上でピンボール製造業の難しさを訊かれた際、太々しくもこんな持論を展開している。 “いや、ピンボールの製造は難しくなんかないね。ピンボール会社をまわすコツは、まず本業を辞めてピンボールに専念する。それから購入者から前金を取ったりしない。焦げ付いて集中できなくなるからな。更に、自分より遥かに頭のいい奴と組む。私財も全部なげうつ。そして一番大事だと分かったのは、搬出だね” ……と、あっけらかんと言い放った。 またチャーリーはビデオピンボールが嫌い。 “本物のピンボールは大変に複雑。ビデオプラットフォームなどでの再現は不可能であり、ピンボールは必ず本物でなければならない” ―――と言い切っている。 (2021年9月20日) |
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